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続・そもそも発酵とは何か。呼吸と発酵の違いを解説!

hoteishiki

去年に書いた『そもそも発酵とは何か』についてのエントリーについての感想をちょくちょくもらいます(ありがとー)。割とユルい解説だったので、今度は微生物学的な観点からの補足をノートしておきます。発酵好きの方、ヒマな時にどうぞ。

・そもそも発酵とはなにか。簡単にメモしておくぜ

発酵とは、エネルギー獲得のための代謝である

えーとね。発酵には、実は工学的な定義があります(つまり狭義の発酵)。別にフツーの人は知らなくてもいい概念なんですけど、一応定義するとね、

▶発酵=微生物が酸素を使わずにエネルギーを獲得するための代謝活動

これが狭義の発酵の定義です。読んだ人の99%が「え?どういうこと?」とアタマが痛くなって速攻でお風呂でも入ってベッドに寝転びながらyoutubeでハリネズミの動画とか見て癒やされたくなるレベルにややこしいので、もうちょい解説します。

ポイントは2つ。
「酸素を使わない」というのと「エネルギー獲得」のための代謝活動というところね。

微生物(発酵菌)は生き物なわけなので、僕たち人間と同じように生きていくためにエネルギーがいる。でね。人間がどのようにエネルギーを作っているのかというと、外部から食べたり飲んだりして取り込んだもの(有機物)を空気(酸素)と反応させて、それでエネルギーを得る。超ざっくり言うと、食べたものと酸素を混ぜたときに発生するエネルギーで生きている。

これを「呼吸」によるエネルギー獲得といいます。
人間も魚も虫も、動物と呼ばれている生き物は基本的にこの方法論でエネルギーを得ている(魚は水の中にある酸素を使ってエネルギーをゲットする。ちなみに植物も実は呼吸しているんだよ)。

ところが。
微生物は動物や植物と違って、この「酸素呼吸」がマストじゃないのさ。

ちょっと寄り道になるけど、今から20億年以上前の話をしよう。
地球が誕生した当初から20億年くらい前まで、実は地球上には酸素(O2)がほとんど存在していなかった。なんだけど、微生物自体は40億年前くらいに誕生していた。ということは、酸素がなくても生きていける生き物が大昔の地球にはいたということだ。

そして、その末裔は今でもウヨウヨいるわけで、その遠い遠い子孫が、もしかしたら発酵に関わる菌かもしれない(家系図ないからわかんないけど)。

発酵のエネルギー獲得のしくみ

ではちょっと前に話を戻して。
発酵とは「微生物が酸素を使わずにエネルギーを獲得するための代謝活動」と定義しました。あわせて「地球に住む動物や植物の大半は酸素を使わないとエネルギーをゲットできないが、微生物はそうとは限らない」ということも説明しました。

顕微鏡2
人間「呼吸しないでどうすんの?」

こうじ_ウィンクA
菌「発酵するのさ」

発酵によるエネルギー獲得のしくみはどうなっておるのか?
超要約すると、酸素と反応させることなしに、微生物の持っている酵素を使って食べたものを分解していくというプロセスになります。

僕たち人間にはできないが、発酵菌にはこういう芸当ができる。

しかし!この発酵によるエネルギー獲得には問題もある。
呼吸に比べて、ものすごく効率が悪いという問題だ。

酸素を使うと、食べたものを効率よくエネルギー化することができる(専門的に言えば、取り込んだ有機物を酸化剤と反応させることで大量のATPを獲得できる←ムズい表現だな)。
動物や植物など、微生物と比べると巨大な生き物は、酸素を使わないと生命を維持することができないし、逆に言えば酸素を使ってエネルギーをゲットできるからこそこんなに大きく複雑に進化したと言える。

発酵は、酸素が必要ないかわりに効率が悪い。同じ量のものを食べたとしても、ちょっとしかエネルギーを取り出せない。赤ちゃんがご飯を食べた時のように、ムダな食べかすがいっぱい出る。しかし、この食べかすは僕たち人間にとって役に立つ

hoteishiki

僕のワークショップでよく使っているこの化学式。
左のグルコースが食べたもので、右のATPがエネルギー=元気、そして真ん中の乳酸が食べかすなのであるよ。この乳酸が酸っぱくておいしいから、人間はヨーグルトを食べる。
もしグルコースを酸素を使って分解すると、10倍〜20倍以上のエネルギー(ATP)を取り出すことができる。菌にとっては効率悪いが、人間にとってはウレシイ事なのだ。

これが、僕たち人間が発酵を大好きな秘密。
なかなか奥が深いですねえ。

【追記】研究が進むうちに、酸素を使わずに呼吸する菌や無機物を食べる菌などが発見されて、この工学的な定義も変わりつつあるようです。菌すげぇ。

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