はじめまして、小倉ヒラクです。

僕は世に言う「何をやっているかよくわからない」類のひとなので、自己紹介ページをつくることにしました。お時間ある方、ご一読くだされば幸いです。

↓なお「発酵デザイナー」としての経歴の最新ダイジェストはこちらから↓
・発酵デザイナー5年間の活動まとめ

僕は何をやっているひとか

現在僕は「発酵デザイナー」という仕事をしています。
どうしてそんな不思議な肩書になったのか、順を追って説明させてください。

▶もとは「アートディレクター」でした
僕の職能は、社会で流通している肩書でいうと「アートディレクター」という仕事からスタートしました。「考えること」と「デザインすること」が高度に合体している職能です。例えば、企業の経営者や自治体の職員と一緒に経営的な課題をデザイン表現で解決することを目指して、やることの段取りを整えたり、適切な表現をしてくれる素敵なアーティストを口説いたり、お金の計算をしたり、時には自分の手を動かしてデザインすることもあります。

課題を解決するためには手段を選ばないので、グラフィック、WEB、プロダクト、イベント企画、空間設計、映像…と、表現の幅はものすごーく多岐に渡ります。

いわゆるデザイナーと何が違うかというと、「そもそも何が課題で、そのために何をデザインして解決するのか」という「そもそもを考える」というところから仕事をスタートするところです。単純に「チラシやWEBサイトを作ってほしい」ということではなく、もっと抽象的な悩みや、数値などのデータから課題の整理をしていきます。

で、この「整理作業」が肝なんですね。
依頼者のヒアリングやリサーチをしながら、問題がなるべくシンプルに、愉快に解決できるやり方を発想する←ココ、アートディレクションの肝心要。

従来の「多人数が関わる広告の仕事の棟梁役」ではなく、「アナリストやファシリテーターを兼ねたデザインのディレクター(おお、横文字ばっかりになってしまった)」というのが僕のなかの暫定の定義です。

▶「リサーチする」「概念をつくる」のも仕事です
アートディレクターとしてのヒアリング&情報整理の技術を磨いているうちに、デザインをつくるためのフィールドワークや文献・データの読み込みなどの「情報や文脈のリサーチ」もまた独立して仕事になっていきました。大学時代に学んだ文化人類学の方法論が役に立って、リサーチを通してものごとの価値を可視化していくような概念のデザイン・体系化を仕事の中心に据えるようになっていきました。

▶微生物が好きすぎて「発酵デザイナー」になりました
そんな紆余曲折を経て生まれた肩書がこの「発酵デザイナー」です。発酵醸造学という、お味噌やお酒などの発酵食品ができる仕組みに興味を持ち、独学で勉強をはじめました。最初は純粋に趣味だったのですが、デザイナーとして発酵醸造メーカーのアートディレクションやアニメ、絵本等の制作を手がけているうちに微生物学の世界にのめり込み、東京農大醸造家の研究生を経てほんとに発酵の専門家になってしまいました。現在では発酵文化の研究者とデザイナーのハイブリッド」という世界で唯一の不思議な存在に。

・ビジネスの動機は「愛」。 偏愛を貫いてオンリーワンになる 発酵デザイナー 小倉ヒラク × 青木耕平 | クラシコムジャーナル

発酵デザイナーの定義は、見えない発酵菌たちのはたらきを、デザインを通して見えるようにするひとです。顕微鏡でしか見えない無数の菌たちが織りなすミクロコスモスを、グラフィックにしたり、アニメや歌や踊りにしたり、展示会やワークショップやトークイベントにしたり、「発酵醸造技術の素晴らしさを世に伝えるべし」という小泉武夫先生はじめ農大の先生たちの薫陶を受けて、日々楽しく活動しています。

このテレビ番組でなんとなくアウトラインがわかります。

ちなみにネーミングは、活動を取材してくれた毎日新聞の記者の明珍さんから授けられました。どうもありがとうございます。

僕はどんな世界を目指して仕事をしているのか

生態系と人の営みが調和した社会」を目指して日々仕事をしています。
僕は、自分が今まで培ってきたデザインやコミュニケーションの技術を、この社会の実現のために役立てたいなあと思っています。

で、これが大きな理想。
そのなかで、じゃあ僕が寄与できる領域はなにか。

それが発酵・微生物の領域です。目に見えない生き物たちの営みをつぶさに見ていくことで、未来をつくるテクノロジーや仕事のあり方が生まれるのではないか。そして僕の職能は、そこにいわゆる専門機関の研究者やメーカーとは違う貢献ができるのではないかと考えて様々なプロジェクトを行っています。

主な経歴:
2005年 11月 パリ20区のギャラリー&カフェ”pataques”で個展を開催

2008年度 全日本DM大賞 銅賞受賞(スキンケア会社在籍時代・会員向けDMの制作)
2011年 10月 アニメ「手前みそのうた」を五味醤油と制作、youtubeで公開する
2011年〜2013年秋 山梨の発酵にまつわるプロダクトを集めた「甲州発酵物産展」を開催(全3回)
2013年 11〜12月 自由大学にて発酵醸造学の入門講座の講師を務める

2014年 10月 グッドデザイン賞2014受賞(食の楽しみを伝える取り組み【てまえみそのうた】)
2014年 秋〜 東京農業大学醸造科の研究生になる。穂坂賢教授のラボで本格的に微生物学を学ぶ
2015年 3月  生まれ育った東京から山梨県甲州市へ引っ越し。微生物を育てるために山中に居を構える
2015年 4月〜 DVD絵本「おうちでかんたん こうじづくり」とともに「こうじづくり講座」をスタート
2015年 春〜 絵本や講座が注目を集め、なぜかいっぱいメディアに出るように
2016年 6月  ハンガリー・ブタペストで国際学会デビュー(きっかけはSNS)
2016年 秋  greenzにて顕微鏡操作や菌の分離を教えるハードコアな「発酵デザイン入門講座」が好評を博す
2016年 12月 発酵DIYのテクニックをまとめた実用絵本「発酵菌ですぐできる!おいしい自由研究
出版
2017年 2月 「こうじづくり講座」の受講者が2年で1000人を突破し「ヒラクは意外にしつこい」と評判に
2017年 春〜秋 ソトコトの連載『発酵文化人類学』書籍化→全国を55ヶ所行商。3万部超えのヒットに。
2018年 春  『発酵文化人類学』の仏語訳版の出版プロジェクトがスタート。フランスとの縁が復活。

2018年 春〜 山梨の自宅の敷地に発酵ラボをDIYで建設スタート。本格的な微生物研究に入る。
2018年 夏 上野東京都美術館の企画展『おべんとう展』に新作アニメを出展。美術館デビュー!
2019年 秋 47都道府県の発酵文化を訪ねる旅をスタート
2019年 春 渋谷ヒカリエ d47 MUSEUM にて”Fermentation Tourism Nippon ” 展のキュレーターを務める
2019年 夏 『日本発酵紀行』出版

僕のこれまで

▶1983年:東京で生まれる
免疫不全の虚弱体質で生まれ、中学生まで毎年夏、母方の佐賀の玄界灘の実家に預けられ、自然に親しみました。この時の体験が、のちに生態系に関わる仕事に進むきっかけになり、「免疫力弱め」という体質が、のちに発酵大好きの素養を育てることになるとは露とも知らず、無邪気な幼年期を過ごしました。

▶2000年頃: 10代終わりから一人旅に目覚め、パリで絵描き修行
高校では美大受験をしましたが、学費が払えず断念。早稲田大学の文学部へ進学します。高校の終わり頃から『シェルタリング・スカイ』や『深夜特急』の世界に憧れ、バックパックかついでの一人旅にハマります。就職活動全盛期の大学4年次に、ユーゴスラヴィア人の絵描きとの運命的な出会いがあり、パリへ渡って展覧会を開き、時代錯誤にも絵描きの修行に明け暮れます。ちなみに大学で主に勉強したのは文化人類学。卒論は、ユダヤ文化について(←自分の世界と全然違う文化を研究するのが文化人類学の基本。なので、一神教の文化について調べようと思い立つ)。フィールドワークの知識が、後にデザインの仕事の役に立つとは露とも知らず、能天気な少年期を過ごしました。

▶2007年:無職で卒業、借金してゲストハウスを始める
パリから戻った頃には、就活時期はとうに終了。無事、無職のまま卒業すると何を血迷ったか借金をしてゲストハウスの運営を始めます。旅が好きだけど、東京で表現に関わる仕事をしたい。ならば、住んでいる家をゲストハウスにして、そこだけバックパッカー空間にしてしまおう!という発想でした。予想以上に繁盛し、世界中の馬の骨が集まりだします。毎晩世界各国のアヤシい旅行者とパーティをしているうちに「このままだと人生がカオス過ぎてダメになる」と思い、やっぱり社会と接点を持とう!と思うように。

この頃の僕がどんな感じだったかは、こちらの記事からどうぞ↓

▶2008年〜2010年:スキンケア会社でデザインの仕事をスタート
カオスすぎる人生の舵取りを修正するため、当時ベンチャーだったスキンケア会社に入社。最初はバイトで軽い気持ちで入ったものの、予想以上に仕事が楽しく、デザイナーとしてチラシの版下データ作りからWEBの制作、広報誌の取材や企画までデザインに関わる仕事全般、就活したことないくせに新卒採用の人事の仕事まで幅広い仕事を経験したのちに独立します。ちなみに入社時のスタッフは10人弱。3年後に独立する時は100人近くになっていました。

▶2010年〜2012年:元気が有り余って独立。地方の一次産業に関わる仕事へ
独立したものの、インハウス出身の若造デザイナーにすぐに仕事が来るわけがなく、なぜかお鉢が回ってきたのは地方の一次産業や生態系に関わる研究調査など、いわゆる華やかなデザイン業界とは全く違う領域の仕事。田んぼや森に入り、各種数値を計測し、まちの寄り合いで旦那衆と酒を飲み…という、都会育ちの僕が体験してこなかったような「その土地に深く入っていく」という経験が、自分の仕事のベースとなっていきました。この時期に、微生物や自然エネルギー、森や水などの自然のエコシステムを学んでいくことになります。

▶2012年〜2014年:世の価値観が変わり、仕事が発展。合同会社をつくる
2011年の震災の後に、世の中の価値観が大きく変わります。その時に完全に日陰者でしかなかった自分の仕事に共感してくれる人が増えてきました。その流れのなかで出会った仲間と一緒に会社を起業。そこで会社の経営のイロハを学びつつ、林業再生や、地場産業のリデザインに関わる仕事を多数プロデュース。アートディレクションと事業経営の腕を磨いていきました。

▶2014年〜2015年:再び独立。本格的に微生物の研究をスタート
サラリーマン時代から関わっていた発酵の仕事が本格的になり、いわゆる「ソーシャルデザイン」と大きく括られるような領域から、自分が本当に夢中になれる、かつ生態系や人間の暮らしにとって本質的な領域である微生物の道を極めるため、もう一度会社から独立。東京農業大学の研究生として、醸造学科の穂坂教授に弟子入りし「発酵デザイナー」のキャリアをスタート。山梨県の老舗味噌屋、五味醤油とつくったアニメ『手前みそのうた』がグッドデザイン賞を受賞し、さらに2014年末に続編である『こうじのうた』も公開。それに前後して30年生まれ育った東京から山梨県甲州市の山の中に拠点を移し、微生物と戯れまくる人生へ。気づけば誰もいない海で船を漕いでいる状態になっていきました。

▶2015年〜2016年:仙人になるつもりが、最前線へ
デザイナーの道からドロップアウトし、山の中へと拠点を移したことで「もう数年間は山ごもりして仙人になろう」と覚悟したのですが、フタを開けてみれば様々なメディアの取材が相次ぎ、あわせて日本中から仕事のオファーが届くようになり、東京にいた時よりむしろ多忙になるという驚きの展開に。日本中を旅しながらフィールドワークやイベント出演し、山梨ではひたすら微生物の研究に励むワークスタイルが確立。都会離れどころか人間界からも離れた浮世離れした生活を送るように。

▶2017年〜:発酵文化人類学とともに全国巡業。出版&ソーシャル業界に一石を投じる
十数年の活動の集大成である書籍『発酵文化人類学』を出版、それとともに今までやっていた仕事をストップし全国55ヶ所の行商ツアーに挑戦。DIYすぎる本の売り方が出版&ソーシャル業界に波紋を呼び、ニッチな本にも関わらず半年で2万部を売り、どうやら世間の注目を集めたらしく、ついに発酵デザイナーの肩書が確立。

▶2018年〜:テクノロジーにより深く関わりつつ、フィールドワークを重ねる
2018年春に全国の発酵仲間が山梨に集結するマルシェイベント『こうふはっこうマルシェ』第一回を開催。当初の予想を大幅に上回る18,000人の来場者を記録。夏には東京都美術館『BENTO おべんとう展―食べる・集う・つながるデザイン』に美術作家として参加。アニメーション『おべんとうDays』を出品。同時期に国際学会ALIFE 2018にて微生物の働きを可視化するデバイスを東京大学池上高志ラボと開発。さらに情報学者ドミニク・チェンさんとの出会いから人間とコミュニケーションできる発酵ロボット『ヌカボット』の開発がスタート。アートやコンピューティングと発酵の世界を合体させたプロジェクトを手掛けるように。2018年秋からは全国47都道府県の発酵文化を訪ねる旅を開始。よりディープかつスケール大きく活動が進化していきました。

▶2019年〜:発酵ツーリズム展の成功と海外展開、そしてお店ができるよ!
2019年春からヒカリエd47 MUSEUMにて全国47都道府県の知られざるローカル発酵食品を紹介する展示会『Fermentation Tourisim Nippon〜発酵から再発見する日本の旅』が開催され、3ヶ月弱の会期で約5万人の来場者を記録する大ヒット企画に。展覧会にあわせて二冊目の著書『日本発酵紀行』を出版。展示と出版の企画を持ってヨーロッパ五カ国をツアー、大盛況!の流れで海外翻訳版のプロジェクトもスタート。今までよりさらに多くの人に発酵の世界の魅力が広がっていきました。そして2019年秋からヒカリエの展覧会を下北沢にお店として出店するプロジェクトがスタート。発酵デザインラボ株式会社をヒカリエ展覧会の中心メンバーと起業し、発酵カルチャーの拠点を2020年春に立ち上げるべく奮闘中(←今ココ)。

…とこんな感じで仕事をしてきました。
そんな僕の遍歴については書籍『発酵文化人類学』『日本発酵紀行』をどうぞご一読ください。

「へぇ〜面白そう!一緒に何かやってみたい」
「よくわからんヤツだな。一度話を聞かせてもらおう」
「私もてまえみそのうたを踊りたい!」

と、思ったらそこのアナタは、下のフォームからご連絡ください。
では、良きご縁が生まれますよう。

    Back to Top