2025年の振り返り。死ぬ時に持っていけるのは良い景色

 2025年も終わりとなりました。毎年恒例の一年の振り返りをしたいと思います。

一年をまとめると二つ。
① 一生忘れないような良い景色をたくさん見た一年でした
② チームでの仕事の歯車がこれまでになくうまくいった一年でした

それではいってみよう!

2025年の仕事の振り返り

それでは時系列で今年の仕事の振り返りをしたいと思います。

3月:こうふはっこうマルシェ

山梨の放送局、YBSで五味醤油の兄妹と三人でやっているラジオ番組『発酵兄妹のCOZY TALK』がきっかけになって2018年に生まれたマルシェイベントが、山梨きってのモンスターイベント化。今年は一日で二万人以上のお客さんが詰めかけて、甲府駅前広場がパンクしそうになりました。
このイベントがユニークなのは、全国から個性的な醸造蔵が集まること。当初から企画の発酵兄妹三人で「地域のイベントだからこそ内輪で閉じるのではなくて、日本の最前線が山梨に集まるイベントがやりたい」という願いが結実した一日になりました。
ちなみに打ち上げもすごくて、今年は100人以上でやりました。一次会が終わったらみんな思い思いに甲府の街に散って、最後は猛者たちが台湾スナックで合流するゴールデンコースでした。

4月:発酵デパートメント五周年

前半戦は、なんといっても発酵デパートメント下北沢の五周年記念。
2020年の4/1にオープンして三日で新型コロナウイルスによる緊急事態という人生史上最大の罰ゲームみたいなスタートでしたが、なんとか五年間生き延びることができました。

4月に開催した五周年記念パーティでは、発酵デパートメントにゆかりのある料理家をはじめ、発酵コミュニティが大集合して忘れられない一日になりました。

五周年にあわせて、発酵デパートメントのレシピ本『発酵デパートメントとつくる いますぐハッピー発酵最強レシピ』が刊行。まさか僕の人生でレシピ本を出すことになるとは…(とはいえレシピつくったのは自分じゃなくて錚々たる料理家の皆さまですが)。

 書籍情報はこちらから

5-7月:発酵ツーリズム東海

5月からは、観光連動型展示会、発酵ツーリズム東海が愛知岐三重三県で開催。
2ヶ月の開催期間中、50以上の醸造蔵が協力してくれて、130以上の観光プログラムを実施。
なんと来場者のべ12万人以上を記録する大ヒットになり、日経トレンディの「2025年地方発ベストヒット」に選出されました。すごーい!

ブレイクのきっかけになったのが、東海道新幹線を一両貸切にしての「発酵新幹線」。日本酒を飲みながら岐阜のお座付き芸を堪能するという斬新すぎるアイデアは、僕の長年のアニキ分である岐阜のNPOオルガンの蒲勇介さんの発案。

観光プログラムはもちろん、東海三県のクラフト文化が結集し、「うまみ神」という新たな神様まで生まれた展示は過去最高のクオリティでした。

今回の東海のプロジェクトでは、現代的なガストロノミーの文脈に即した取り組みもたくさん。
アルケッチャーノの奥田シェフを招いての三重VISONでのディナー会&マルシェはとりわけ印象に残る熱気とクオリティでした。

8月:阪神百貨店催事「発酵マーケット 麹」

八月の終わりは、毎年恒例、阪神百貨店一階の催事場を一週間全面ジャックしての「発酵マーケット 麹」。今年も60組以上の醸造蔵が参加するとんでもない発酵祭りになりました。
期間中に百貨店内でお客さんと一緒に麹をつくったり、お昼から醸造家たちと一緒に角打ちで飲んだくれたりと、アヴァンギャルドな内容にもかかわらず6日間で2000万円以上の売り上げでした。どういうこと???

10月:NHK クローズアップ現代

6月にXはじめSNSで投稿した「伝統的な発酵食品は生産の危機にあるかもしれない」というポストがたくさんの人に読まれ、10月にNHK「クローズアップ現代」の番組になりました。

お米の値上がりだけではなく、地域の少子高齢化や気候変動、昭和につくられたインフラの老朽化など複合的な要因で起こっているものづくりの課題が多くの人の知るところとなりました。
発酵デパートメントやっていると、おそらくこういう問題にはやくから気づいてしまうんだと思います。来年以降もさらに厳しい状況が進むので、僕のブログ読んでいるみんなにも醸造蔵や農家がものづくりを続けられるように力を貸してほしいデス。

11月:長岡技術科学大学との協働「発酵を科学するラボ」

11月には新潟、長岡技術科学大学からの招聘で、日本の伝統的な発酵食品を最新の技術で解析する「発酵を科学するラボ」がスタート。きっかけはここ三年間続けている全国の高専の学生との取り組みでした。

発酵デパートメントで取り扱っているような、一般的な発酵食品ではないけれど、その地域ならではのユニークなストーリと味わいが詰まっている発酵食品の研究を進めています。

研究の第一弾のテーマは、たくあん。
宮崎のキムラ漬物宮崎工業の長期乳酸発酵のプロセスを追いながら「日本人にとってたくあんとは何であるのか?」を科学していきます。
ちなみに写真は先日行ってきた、大根のやぐら天日干しでの記念写真。
伝統的なたくあんは、つくる現場が絵になるし、味もすばらしい!

来年からは、今度は沖縄との取り組みも始まる予定です。
発酵デパートメントでも定期的に研究の進捗をお知らせする予定です。

発酵デパートメント大躍進!

2025年は発酵デパートメント大躍進の年でした。
5周年を迎え、過去最高記録を大幅に更新する売り上げを達成。
これもやっぱりチームの歯車が噛み合ったからだなーと思います。スタッフのみんな多謝!

口コミやSNSを通じてここを目指してくる海外のお客さんが急増。気づけば来客のおよそ40%が海外からのお客さんになり、アジア最大の発酵コミュニティのハブとなりました。

毎日のように、アジア、ヨーロッパ、アメリカ、中南米、中東やアフリカまで世界中の発酵ギークが押しかけて、売り場に立っていると「おや?僕はいったいどこの国にいるのかしら?」と思うことも多々ありました。

山梨2号店オープン!

僕のホームである山梨県甲州市塩山に、発酵デパートメント二号店がオープンしました。
かつて農政局として使われていたレトロな建物の一角を倉庫兼ショップとしてオープンしています。塩山はまったくもって観光地ではないのですが、地元のセンスの良いお客さんに支えられて初年度からちゃんと経営が成り立っていますv。

春にプレオープンして、年の後半から本格的にイベントやお酒の販売も開始してじわじわと地域に根付くお店になってきていまう。同じ敷地にはコーヒー屋さんやアウトドアショップ、週末オープンの本屋さんやクラフトビールのタップルームなどもオープンし、下北沢のBONUS TRACKを思わせるようなカルチャー複合施設になってきています。山梨にお立ち寄りの際はぜひ!

海外のシェフとの取り組み

発酵デパートメント目指してやってくるのは主にプロのシェフたち。
そんな彼らに腕試しで、日本の食材を使って発酵料理を振る舞ってもらうプログラムを何回かやってみたら、ものすごいインスピレーションの宝庫でびっくり!

日本人が見慣れている食材を、こう使うのか!という斬新なアイデアがいっぱいで、毎回参加してくれた人たちとたくさんアイデア交換をしました。
僕はソムリエとしてペアリングを担当したのですが、日本人のシェフの料理ではできないような実験的なペアリングを毎回試せてめちゃくちゃ面白かったです。

来年は3月、台湾からシェフを招聘してPOP UPイベントをやります。お楽しみに。

発酵ツーリズム インバウンドツアー

こちらも毎年恒例。
アメリカの醤油蔵San-Jの佐藤さんとの出会いから始まった、海外のフードプロフェッショナルを招いた発酵の旅。今年は京都〜奈良〜大阪を巡りました。京都はもちろん素晴らしいのは知っていたのですが、今回サプライズは奈良のポテンシャルの高さ!奈良漬、醤油、酢、発酵ずしと様々な発酵文化が凝縮されたエリア感に改めて可能性を感じました。

ちなみにハイライトは、大阪でのハンズオンの味噌ラーメン作りのワークショップ。
料理のプロたちがともにキッチンで作業する熱気が印象的でした。
事務局の佐藤さん、むつみさん、外村さん、おつかれさまでした!
訪問先のみなさまもThanks!

民藝×発酵〜民藝を食べるフェア

年の後半に最も気合を入れたのが、発酵デパートメント店頭での「民藝×発酵〜民藝を食べるフェア」。発酵デパートメントオープン時からレストランスペースで使ってきた全国各地の民藝品をショップでも買えるようになりました。

フェアのために改めて窯元を訪ねてみると、民藝と発酵は似ている…というよりいっしょ。
土地に根差した暮らしから生まれた民藝と発酵。根っこは一緒である!というコンセプトで、発酵食品と民藝品が一緒に並ぶ個性的な売り場が爆誕。

僕が「民藝扱うぞ!」とお店のみんなに宣言した時はみんな「はてな?」でしたが、蓋を開けてみれば入荷が追いつかないほどの大人気。

沖縄のやちむん、愛知の常滑焼、長崎のスリップウェア、福井の越前漆器…、ずっと僕たちが使ってきた愛らしい民藝の道具たちが発酵デパートメントの新名物になりました。

ヒラク個人では、青春の再来のような年になりました

来場者12万人の巨大プログラムの企画や、クローズアップ現代の番組、長岡技術科学大学とのラボ立ち上げなど、規模も影響力の大きい仕事を無事やりとげ、僕個人としてもキャリアハイと呼べるような年になりました。もちろん忙しかったんですが、例年のように「自分でなんでもかんでもやってる」という感覚はなく、プロジェクトに関わるみんなの歯車が噛み合って結果を出せたチーム戦の実りある一年でした。

仕事としては結果も出て大充実でした。
が、それ以上に印象的には個人的なこと。今年は素敵な人たちと一緒に忘れられない景色を見た、青春の再来のよう一年となりました。

三重、答志島へ向かう連絡船で。大阪みつか坊主の斉藤アニキと。

台湾の坪林(ピンリン)の茶園で、お茶農家のチャンユウさんと。

沖縄の発酵旅のレンタカーはなぜかフィアット。
発酵デパートメント店長のしおりさんとキッチン担当みうらさんがリア充のふり。

味噌青年部会の年次の会合は地元甲府で。
同年代の仲良しの醸造家たちと朝三時まで飲み明かしました。

富山の民藝を訪ねる旅の一枚。
善徳寺でBOSEの元チーフデザイナーのケンさんとみんなでデザイン談義。D&D富山のひとみ店長と井波のマイメン、たけいくん、発酵デパートメントの番頭よしおかさんと。
この旅は今年いちばん印象に残った旅かもしれない。。。

スイス・ベルンでの発酵シンポジウムの打ち上げの一枚。
発酵デパートメントと山梨で受け入れた元インターンが三人も参加(スイス、リトアニア、日本の3カ国)。さらに15年前に東京でゲストハウス経営してた時代のルームメイトのアンドレアスも合流してテンション高いスイス旅でした。

仕事が充実してるのはもちろん大事だけど、キャリアも財産も棺桶には持っていけない。
死ぬ時に持っていけるのは、気の合う誰かと過ごした素敵な景色と時間。そういう意味では、僕が死ぬ時に見る走馬灯のなかに出てきそうな場面が詰まった、楽しくて心温まる一年でした。

あらためて、今年もたくさんの人たちに助けてもらった一年でした。
来年もどうぞ良きご縁を。

【追記】今年のスペシャルサンクスは、蒲勇介さんはじめ発酵ツーリズム東海チームのみんなと、阪神百貨店の吉田おじさんと、みつか坊主斉藤アニキの大阪チームに。お世話になりました。

Published by

小倉 ヒラク

発酵デザイナー。1983年、東京都生まれ。 「見えない発酵菌の働きを、デザインを通して見えるようにする」ことを目指し、全国の醸造家や研究者たちとプロジェクトを展開。下北沢「発酵デパートメント」オーナー。著書に『発酵文化人類学』『日本発酵紀行』など多数。