時間をかけて、物事をより良く。発酵は「継続すること」の価値を教えてくれる
今週はラジオ番組の収録はじめ。あわせてラジオ局の制作チームと一緒に夜の甲府で新年会。気づいたら「いつもの山梨コミュニティ」が集まってにぎやかな会になりました。
今年もYBSラジオ『発酵兄妹のCOZY TALK』をお願いします。ペコリ。
遅効性のコミュニケーション
ラジオもいつの間にか二年目の年越しを迎え、もうすぐ70回目。
まあ企画倒れにならない程度に継続はしたことになる。
でね。二年目を迎えるあたりから、ちょっとずつ地元の人から「ラジオ聴いてますよー」と声をかけられることが多くなってきた。
山梨の外に出て地方へ行っても、会う人から「ラジオネットで聴いてまーす」とコメントをもらったり、twitterでつながっている人からお便りをもらったりする(ふぁーびーさん、豆タンクさんたち、ありがとー)。
なるほどラジオは遅効性メディアなのであるよ。
淡々と継続して継続して、ちょっとずつ広まっていく。小さなものが積み重なるようにして、いつのまにか「あ、ヒラク君たち面白いラジオやってるじゃん」となる。
(スポンサーの皆さま、どうもありがとうございます)
この感覚はブログによく似ている。
僕のブログも、最初の3〜4年はほとんど誰も読んでない自分のための備忘録だった。だけど、何十人かいつも読んでくれている人がいて、時たま感想をくれたりするのが励みだった。
2014年くらいから色んな人が読んでくれるようになって、最近は毎日のようにメッセージが届く。こじらせ女子からのお便りだったり、発酵食品についての質問だったり、高校生の人生の悩みだったりする(あと仕事の依頼ね)。
これはラジオにお便りが届くような感覚で、そのメッセージの一節がまたブログのトピックスになったりする。ラジオもブログも一方通行のコミュニケーションではなく、学生の頃の文通のような楽しみがある(とかいって最近の学生は文通じゃなくてLINEとか?)。
双方向のコミュニケーションは、短時間で強いインパクトを伝える広告的なコミュニケーションよりも成立するのに時間がかかる。そのかわり、一度成立するとなかなかフェードアウトしない。「暮らしのサイクルの一部」になるからだ。
時間をかけること、継続することの価値
そもそも僕の専門である「発酵」自体もおんなじだ。
じっくり時間をかけて価値が生まれていく。暮らしの習慣の一部になる。
僕が小泉先生や五味兄妹と出会って、発酵の世界に導かれてからもう10年目くらい。
その頃に「手前みそつくるぞ!」と言っても、給食センターのおばちゃんくらいしか興味を持ってくれなかったし、「菌」と言うと「えっ、ばい菌…?」とイヤな顔されて、「発酵」と言うと「ああ、光るヤツ?」と真顔で返された。「麹」と言っても若い人には何のことだかよくわからなかった。
つまり「何やってもフィードバックゼロ」の状態なのだったけど、五味さんも僕もやたら盛り上がって色んなワークショップを企画して、アニメーションつくって、発酵専門の物産展まで手弁当で開催してしまった。当時ほとんどゴーストタウンと化していた甲府の街で飲みながら「食育とか言っても普通の人興味持たないから、アニメにしようよ」とか「歌って踊るワークショップってのはどうかしら?」とか冗談みたいなことを話しているうちに、なぜかどんどんそのアイデアが実現していった。
当時は五味さんも僕もヒマだったし、別になんの肩書きもなかったから元気が有り余っていた。そして「自分で思いついたアイデアがカタチになる」ということが純粋に楽しかった。そして発酵文化が盲目的に好きだったのであるよ。
時が経って、五味さんも僕もそれなりに社会的責任を負うようになり、そして発酵文化も信じられないほど若い人に興味を持ってもらえるようになった。おばちゃんたちしか相手してくれなかった「手前みそワークショップ」は、都心のおしゃれなギャラリーが満員御礼になる。趣味ではじめた「こうじづくりワークショップ」も1,000人の人が受講し、毎日たくさんの問い合わせがくるようになって、もはや僕の手をはなれて「ムーブメント」になった感がある。
・ブームからムーブメントへ。 発酵デザイナーがデザインする社会 | colocal
小泉先生はじめ偉大な先人たちのバトンがなんとなく受け渡されたと言えるんじゃないかしら。ほんと素晴らしいことだ。僕も五味さんたち醸造家仲間と一緒に文化がつながれていく瞬間を見れてほんと嬉しいと思っているぜ。
で。
僕は去年から東京のイベントは極力遠慮して、地方の小さなコミュニティと話す機会を優先している。発酵が都会でトレンドになったとしても、発酵文化の主役は地方だからだ。
最先端のトレンドにいつもアンテナ張ってるわけじゃない、ごくごくフツーの若いお母さんとか子どもたちが「面白い!自分もやってみよう!」とならないと真の文化とは言えないのであるよ。
発酵が「時間をかけてものごとを良くしてくこと」だとするならば。
これはまだまだ「白味噌」くらい(さっぱり甘くてわかりやすく美味しい)。更に熟成させて「八丁味噌」くらい(クセはあるけどコクが濃厚)になるまでやらなければなと思うのでした。まだまだ、これから。
ということで。
こうじづくり講座の1,000人記念パーティ、定員20名をもう少し増員することにしたのでご興味ある方お申込みどうぞ。スペシャルな発酵ゲストもやってきますよ。
【追記】フォームから届くメッセージのお返事ですが、忘れた頃のタイミングにやってきますので気長にお待ち下さい(仕事に関するものはなる早で返すことを心がけてます。一応)。
メッセージをくれる皆さま、ほんとにありがとう。
photo by 五味洋子(発酵妹)