会期三ヶ月におよんだ渋谷ヒカリエの展覧会 Fermentation Tourism Nippon 〜発酵から再発見する日本の旅〜 (通称『発酵ツーリズム展』)が終わりました。
最終日の夜に開催した公開打ち上げイベントで報告したトピックスをブログで掲載します。展覧会のまとめレポートとしてご笑覧ください。
発酵ツーリズム展を振り返る12のトピックス!
4月末から7月末まで、三ヶ月弱の期間で入場者数は約5万人(おそらく48,000〜49,000人ほど)。ニッチなテーマでこの人数は快挙と言っていいのではないでしょうか?
オープニングイベントの記念写真。思えばここからムーブメントが広がっていった…!
各界の第一線で活躍している知人もたくさん遊びにきてくれました。写真はおみそはんことDJみそしるとMCごはんさん。ロバート・キャンベルさんや女優の加藤紀子さん(←ハードコアな発酵好き)はじめ、J-WAVEでお世話になったレイチェル・チャンさん(←ハードコアな日本酒好き)は角打ちイベントにもゲストで登場してくれました。
料理家やクリエイター、まちづくりなどに関わるたくさんの人に来場&爆買いしてもらいました。ありがとう〜!
こちらも驚き。連日たくさんのメディアで展覧会の様子を紹介してもらいました。仕掛け人は、今回PRを担当してもらった友人の大木聡子ちゃん。
彼女の辣腕によってかつてなく企画がバズっていきました。大木さんが攻めのPR(プレスリリース配信)、D&DEPARTMENT広報担当の清水さんが守りのPR(実際の取材対応)と、攻めと守りの役割がバッチリ噛み合っていたのも印象的でした。
今回一番目だったのはテレビ取材。NHK民法BS、さらに海外の番組までものすごくたくさんの映像露出がありました。
ワールドビジネスサテライトに取材されるNukaBotとドミニク・チェンさん。
今回はお披露目系の企画も盛りだくさん。魅力的なプロダクトやサービスたちがこの企画から巣立っていきました。嬉しいなあ。
展覧会の公式書籍であり、僕の新著でもある旅行記『日本発酵紀行』が売れに売れまくり、発売二ヶ月目にして10,000部を突破しました。すすす、スゴい…!
浅草 Readin’ Writin’ BOOKSTOREの落合さんと。全国の志あるお店に応援してもらっているよ…!
なお今回も前作『発酵文化人類学』と同じくDIY流通にチャレンジ。僕のブログでの事前予約や本屋さんとの直取引、さらに今回は食料品店やセレクトショップ、銭湯(!)に至るまで全国各地の素敵なお店に(委託ではない)直接注文をしてもらい、もはや本というより味噌とか醤油のような売り方で全国に広がっていきました。
・新著『日本発酵紀行』なんと校了前に初版部数上乗せ!実質発売前重版…?
(あ、あと今度あらためてお知らせするけど、15,000部達成したら写真集が出るのです…)
やりすぎ。明らかにやりすぎてる…!もはや純粋な狂気…!
2日に一回を上回るペースで開催される関連イベントも発酵ツーリズム展の名物。
会期中最も多くの参加者(200名超!)を記録した『発酵ニュージェネレーション角打ち』。遠野醸造やWAKAZEの酒とともに新世代醸造家のトークが繰り広げられました。人はいりすぎでスタッフ全員死んだ…!
昨日、渋谷ヒカリエで開催した、若手醸造家による「発酵ニュージェネレーション」トーク&角打ち、ありがとうございました!!
たっくさんの方がお越しくださり、「発酵」というキーワードで盛り上がってよかったです?
素敵な機会をくださったヒラクさん@o_hiraku本当にありがとうございました!! pic.twitter.com/Itp5p6JzKy— 立川哲之/旅する酒造家 (@tachikawa_tetsu) June 15, 2019
角打ち、ワークショップ、トークイベントなど多彩な企画が連発。連日全国からスター醸造家たちが集結。写真右から福島・仁井田本家の女将、滋賀・七本鎗のトミー、熱燗DJつけたろうと僕。みんな最高だったよ〜涙
「一体誰が買うんだこれ?」と事務局一同首をかしげるしかなかったハードコアすぎる品揃えのミュージアムショップ。フタを開けてみれば飛ぶように売れていく謎の発酵ブツたち。
イベント終盤の冷蔵庫。発注しても発注しても速攻で空っぽになる驚異の売れ行き。とある週末は一日で70万円の売上(展覧会関連商品のみのカウント)を記録したそうです汗
なお売れ筋商品は、
・富山の黒作り
・新潟のかんずり
・佐賀の松浦漬け
・福島の三五八漬け
・高知の碁石茶
・青ヶ島のあおちゅう
などなど。このへんはまあ売れるだろう…と僕は自信あったのですが、驚きだったのは展覧会スポンサーでもある愛知のもやし屋、ビオックの種麹。
微生物そのものも売ってます。愛知県豊橋の創業600年のバイオメーカー、ビオックの種麹、四種!!!売ってます。
・米麹
・麦麹
・豆麹
・醤油麹の四種。「誰が買うんだ?」って思うじゃないですか。売れてるんです、これが。 #発酵ツーリズム のお客さん、半端ない。 pic.twitter.com/VbSKYOerQE
— 小倉ヒラク | Hiraku Ogura (@o_hiraku) June 2, 2019
どう考えても正気とは思えないこの品揃え、それぞれ三回ずつくらい追加注文してます。豆麹とか醤油麹とか誰が買うの?って思うんだけど買う人いっぱいいるんです。
関西の誇るクリエイター集団Re:Sの藤本智士さんを棟梁に、石川のデザイナー財部くんやD&Dチームが力をあわせて生み出したポップかつ緻密なデザインが大好評。
ヒラクがいた!!すごくいい展示だった。バリエーション、展示方法、直筆の書き込みやきちんとしたデザインフォーマットが入り混じり。匂いが実際嗅げるのも素晴らしい。1年半かかったと言っていたけど、ちゃんとやり込むとここまでというのが見えてすごく刺激になった。#発酵ツーリズム pic.twitter.com/6j7b8KcCi6
— わざわざ+問tou 平田はる香 (@wazawazapan) June 30, 2019
ヒカリエFermentation Tourism Nippon、各都道府県の発酵食品。実物の脇にはヒラクさんの手書きポップが各展示に寄り添う。ちょっと下手めな手書き文字という「ほころび」。その弱さが、ものすごく強く、興味を誘う。「弱い文脈の強さ」の実例 #コンテクストデザイン 的。
なおくさやは嗅いで後悔。 pic.twitter.com/MSTvdFMEOq— 渡邉康太郎 / Takram コンテクストデザイナー (@waternavy) June 9, 2019
ともすると伝統やサイエンスに寄りすぎてカタくなりがちな「発酵」の裾野を拡げることができたのは、間違いなくデザインと編集の力。クリエイティブチームの舞台裏はこちらの記事からどうぞ↓
・『ヒラク、この日いないってよ』イベントレポート | note
「現在進行系で生きてるものを展示したい」というキュレーター(←僕)のわがままにより、展示物の発酵が日々進行していくというハードな状況に。
展示物の発酵臭を嗅げる仕掛け。新島のくさやで悶絶する人多数。笑
時間が経つとともにビニール袋がパンパンになったり、酵素でドロドロに溶けたり。「これはさすがに腐敗に傾いているのでは…」となったものをこまめに取り替えてメンテナンスしていました。展示担当の竹川さん、おつかれさま。ほんとに。
発酵臭が満ちた会場内に消臭スプレーを振りまくの図。
なおこのプロダクト、発酵によってつくられたバイオ消臭剤、きえーる。展覧会のスポンサーブランドです。ショップでめちゃ売れまくった…!
ただ展示して終わりではない!今回の展覧会ではd47食堂のシェフ、中山さんを巻き込んで知られざるローカル発酵レシピを発掘。展覧会コラボ定食をつくったり、幻のレシピの再現をしたり。食体験のアーカイブに精を出しました。
〈発酵定食に関するお知らせ〉本日から5月26日までd47食堂は「良い食品博覧会」メニューに替わるため、発酵定食はお休みとなります。次回は27日からは、珍味づくし定食!鮒寿司茶漬け、すんき、奈良漬、あかど漬けなど、ついつい日本酒を飲みたくなる。。白、赤、黒の甘酒飲み比べも!#発酵ツーリズム pic.twitter.com/aH0jiBDYQ0
— d47 (@d47store) May 15, 2019
えー、十和田民と全国の発酵クラスタに朗報です。『ごど』の再現に成功しました。偉業を成し遂げたのはヒカリエd47食堂のシェフ、中山さんです。4/26からの展覧会企画中に食堂で食べられるのでよろしく! #発酵ツーリズム @iwando22 pic.twitter.com/yFs7pFEIB9
— 小倉ヒラク | Hiraku Ogura (@o_hiraku) April 5, 2019
展覧会終盤に開催した『ごど作りワークショップ』。青森県十和田の謎のハードコア納豆をつくるという誰得感しかないワークショップに30名以上の参加者が詰めかけました。これを機に十和田発酵食品協会なる組織が誕生してしまった…汗
ゲストの『十和田大好き矢部聖子(←フルネーム)』さん、どうもありがとうございました。
シェフの中山さんもグッジョブ!
展示の90%以上を本格的な英語バイリンガル仕様にしたことで、来場者の2割が海外からというスゴい事態に。翻訳チームリーダーの柳澤まどかさんによる七人体制(翻訳者+チェッカー+校正)によるハイレベルな英語キャプションは海外のお客さんに大好評。
なお反響は英語圏にとどまらず、アジアやヨーロッパのメディアにも波及。写真はタイのWEBメディアのレポート記事。この記事を読んでわざわざ渋谷に旅しにきたタイの女の子と会場で遭遇しました。ありがとね、ほんとに。
・発酵ツーリズム展は「尊い」!haccola編集部がふたたびお邪魔しました | haccola
ちなみに会期中盤の6月には、僕は展覧会の運営をチームに任せてヨーロッパ五カ国の講演ツアーに出ました。発酵ツーリズム展の話にみんな興味津々。来年以降海外でもスピンアウト企画がスタートしそう。
パリの日本文化会館での講演、とっても好評でした。古代漢字から始まり、神話、農業史、微生物学を経由して47都道府県の知られざるディープローカル発酵文化の紹介、そして社会運動としての発酵の勃興まで1時間半語り倒しました。講演会なのに終わった後ブラボー!という声が。みんなありがとう。 pic.twitter.com/NBntZnRT8G
— 小倉ヒラク | Hiraku Ogura (@o_hiraku) June 23, 2019
(あ、あとこちらも後日正式発表しますが『日本発酵紀行』のフランス語版が出そうです…)
今回の展覧会をやっていちばん嬉しかったことの一つ。
全国から集った発酵ラバーによる愉快なコミュニティが生まれました。
そもそもこの展覧会、行政や財団から助成金ではなく、志のある個人や組織からの応援によって成り立っています。スポンサー企業にくわえ、600万円近く調達したクラファン企画で支援してくれた人たちがスタッフとして展覧会の運営に関わってくれました。
わざわざ高知からスタッフの仕事しにきてくれたみりん娘、この企画に参加するために仕事やめて状況してきたリサちゃん、展覧会きっかけで仕事やめて広島に行くことになったユイちゃんなどなど、人生が変わってしまった人もちらほら。
イベントに何度も足を運んでくれたみんな、角打ちで毎週のように飲み倒したみんな。
僕がつくりたかったのは、どれだけ微生物のマニアックな話をしてもドン引きされない場だったんだよ。楽しんでくれてありがとう!
「旅」をテーマにしたこの展覧会。終盤にはなんとリアルなツーリズム企画がスピンアウトしてしまった…!驚
関連イベント一発目を飾った山梨の発酵チームを訪ねる『発酵ツーリズムやまなし』はおかげさまで大盛況!味噌とワインの現場を訪ね、醸造家たちの話をディープに聞き、ブドウ畑の下で甲州ワインとお寿司のマリアージュに酔いしれました←天国。
今年の秋以降、全国各地へのツーリズム企画がスタートします。また僕のブログやSNSでお知らせするのでどうぞお楽しみに!
えーそして最後に予告です。
発酵ツーリズム、事業化します!
また詳細決まったら正式発表しますが、物販やミュージアム機能がついたお店ができます。で、そこを母体にツーリズム企画や巡回展(すでにいくつも問い合わせが汗)をオーガナイズします。
つまりこの展覧会の事務局がそのまま会社になるイメージです。
花火打ち上げて終わり!ではなく、継続的に発酵ラバーたちが集える場所をつくるよ。
全国の発酵に関わる皆さまにもらったこのご縁、引き続きすくすくと育てていく所存です。
展示やイベントに参加してくれた醸造家やお父さんお母さん
スポンサーを引き受けてくれたカルピスさん、環境ダイゼンさん、ビオックさん
クラウドファンディングや出版プロジェクトで支援してくれたみんな
D&DEPARTMENTはじめ展覧会スタッフのみんな
会場に遊びにきてくれたみんな
本当にどうもありがとうございます。
発酵ツーリズム、展覧会は終わったけど本当の船出はこれからだよ!
さ、この写真見ながら、寝よ。 pic.twitter.com/nsEwx72zm0
— クロエミホ (@chloemiho) July 22, 2019
【追記】イベント打ち上げ時の事務局長クロエさんとプロデューサーのおのっち(親子ではない)。二人ともこれからも引き続きどうぞよろしく!