下北沢にオープンする『発酵デパートメント』の求人始まりました。

今年渋谷ヒカリエで開催されて大きな話題を呼んだ(と言ってもいいよね、たぶん)発酵ツーリズム展が常設のお店になります。しかも下北沢の駅徒歩3分の好立地で、しかも30坪(共用部とかテラス入れるともっと広い)のけっこうな広さ。

11/4から事業立ち上げの求人が始まっているので、転職やアルバイトを探している人はぜひ(そうでない人も友達にお知らせしてね)。


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僕のブログでは事業立ち上げに至った経緯と、求人の補足をメモしておくよ。

またチームでやりたい!と思った

僕は5年前まで東京でデザインの会社を経営していて、山梨に引っ越すタイミングでまた個人事業主に戻って発酵の道に入った。デザイナーへの道を降りて、一度キャリアをやりなおすためもあったし、会社運営に関わる難しい問題に直面して、まあ率直にいえば経営に失敗してまた一人でやり直し、という状況で発酵デザイナーを名乗り始めた。

そこから幸運に恵まれてどんどん仕事が発展していった。で、3年くらい前の時点ですでに個人でやるには無理がある事業規模になっていたんだけど、東京時代の苦い経験もあり、とにかく限界まで一人でやってみよう!とかなり無理しながら頑張っていたんだよ。

なんだけど、2年前の『発酵文化人類学』の出版前後からまたチーム戦が楽しくなってきた。

編集チームの橋本選手とハヤノさんと作戦を立てまくった2017年の出版プロジェクト。

ドミニク・チェンさん、ソン・ヨンアちゃん、デザイナーの輝一くんたちと2018〜2019年につくりあげたNukaBotのプロジェクト。

異なる職能の人たちが協働しながら、一人では実現できない面白いプロダクトが生まれたり、大きなインパクトが広がっていく。

「チーム戦って面白い…!」とふたたび思えるようになった頃にはじまった、発酵ツーリズム展の大プロジェクト。

壮大なテーマ、ハンパない予算感、そして5万人規模。これまでの僕の人生最大のプロジェクトを実現すべく、数ヶ月かけてチームビルディングを考え抜いた。

全てのきっかけになったのが、D&Departmentの黒江美穂さんとの出会い。そして資金調達を請け負ってくれたおのっちこと小野裕之を事業プロデューサーに、Re:Sの藤本智士さんをクリエイティブディレクター、アートディレクターに財部くん、広報のさっぴちゃんこと大木聡子さん、翻訳に柳澤円さん、D&Dのチームのみんな、ここに書ききれないほどたくさんの人達と一緒にかつてなくユニークなプロジェクトをやり遂げることができました(みんなありがとう!)。

準備期間や展示期間を通して、たくさんの議論や出会い、悩みの告白や人生の転機、本当に色んなことがありました。よく泣いてよく笑ってよく飲んだ。

でね。僕は思ったよ。
やっぱ、チームで仕事するっていいもんだな!って。

小さなミラクルがたくさん起きた

そんなこんなでプロジェクトのゴールが見えてきた今年の6月、小田急グループと一緒に下北沢の再開発プロジェクトに関わっていたおのっちから、

「この展覧会、お店にしない?」

という提案が。それを聞いた当初は「まさか〜」と思っていたのだけど、だんだん「いや、この流れを展覧会という一時的なもので終わらせるわけにはいかないのでは…?」と思い始めた。

それはなぜかというとだな。
このプロジェクトを通して、全国各地で小さなミラクルがいくつも起こっていったからなんだ。

例えば。
会津若松で麹屋さんを営む石橋さん。僕が訪ねた時、旦那さんは「小さい蔵ですし、跡継ぎも見つからないし、いつまで続けられるかと…」と弱気だったのが、展覧会のミュージアムショップで大ブレイク。初回入荷分が3日で完売し、追加注文する度に即品切れになり、ビックリしたご家族から「お父さん、GW返上で麹つくってます!」と連絡がくるまでに(ご迷惑おかけしてすいません)。そしてなんと!会津からヒカリエまでやってきてくれて、展示会を見に来たお客さんに嬉しそうに麹文化の解説をしてくれたんだよ。取引先も増えて、親族で仕事を手伝ってくれる人が出てきたそう。ほんと良かったぜ。

青森県十和田の幻の発酵食、ごど。十数人のお母さんたちが細々と作り継いできた現場の見学をコーディネートしてくれた、地元で食育の活動をしていた僕の同年代のお母さん、十和田大好き♥矢部聖子(←芸名だそうです)。「ごどをつくるワークショップやりたいね」なんて話してた折に、娘を連れてヒカリエに遊びに来てくれて企画が実現することに。そのワークショップがきっかけになってごどが地元十和田でブレイクし、矢部さんの活動が広がっていった。で、こないだ僕のとこにメッセージが来て、

「実はヒラクさんに会った時、家族のことで色々問題があって。これからどうやって生きていこうか…と思ってた時に、私はごどに賭けてみよう!と思って、交通費とか大変だったんですけど娘を連れてヒカリエに行ったんです。そのおかげで今は地元でたくさんのご縁を頂きました。発酵って、生きる力ですね」

なんて、十和田大好き♥矢部聖子、泣かせるなよ…。


笑顔の裏に苦労をいっぱい抱えていた十和田大好き♥矢部聖子。

他にも本当に数えきれないくらい、たくさんの出会いとポジティブなご縁に恵まれた。

ほんとうに、ほんとうに嬉しかった。
奥歯ガタガタになって親知らず抜くぐらい大変だったけど、やって良かった。みんなに出会えてよかった。

最初は僕のワガママから始まったプロジェクトだけど、色んな人の力が重なったらそこに意味が生まれた。誰かの人生や、ずっと受け継がれてきた文化に未来が宿った。

この流れを、僕のできるかぎり続けてみよう。そしてこのナイスなチームと、全国の発酵文化を継承するナイスな醸造家たちともっと縁を育ててみよう。

自然にそういう気持ちになって、僕はおのっちと小田急の提案に乗ってみることにした。

過去と未来をつなぐお店

ということで。7月から新たな事業を立ち上げる準備が始まった。
下北沢の一等地(駅徒歩3分)に、それなりに大きな店をつくる。とうぜん個人事業主では無理なので、会社を立ち上げる必要があった。

その時に「私やります!」と真っ先に手を上げたのが、展覧会の事務局長の黒江さん(めちゃ嬉しかった)。その瞬間、これはD&Departmentの展覧会からスピンアウトした初めての事業になることが決まった。そしてお金や人事周りはおのっちが見てくれることになり、会社の体制が整った。

詳しくは数日中に正式なプレスリリースを出すが、この事業は展覧会をきっかけに、ローカルメディアやソーシャルデザイン界隈の中心プレイヤーたちが集まって生まれたものだ。それは単なる食を超え、発酵というキーワードを柱に、文化の継承と未来への発展を担う大事な仕事をすることになる。

「発酵のブームはいつまで続くんですか?」と色んなメディアから聞かれるが、少なくとも日本では数百年間発酵は最重要トレンドの文化だ。もちろんこれからもずっと日本を代表する文化の一つとして受け継がれ、発展していくだろう。その時に「過去と未来をつなぐ場所」として新しくできるお店と、その母体となる会社が機能することを目指すんだよ。

・みんなまだ、発酵のポテンシャルを舐めている 「なんだこれ」な発酵食が続出の小倉ヒラクさん「日本発酵紀行」 | 読書好日

正直ここ三ヶ月くらい、僕も色々悩んだ。僕は半分研究者のような立場だから、本を書いたりフィールドワークしたりするのと経営を両立することができるのだろうか?と自問自答したりした。なんだけど、ここ数年海外でお世話になった研究者の多くは自分で事業をやったり作家活動もしたりしていて、

「自分が活動するためのプラットフォームやお金も自分で作れるようになるといいよ」

とアドバイスをもらってきた。何より、一人だと全てはできないけれど、今回はチームがいるから。きっとお互いの領域を重ね合わせて社会的に意義のあることができるはず!と自信を持つことにした。これは何かを捨てたり諦めることではない。チームで力をあわせて社会(と何より自分)を変えていくチャレンジなんだ。僕は独りじゃない…!

起業や求人に関してメッセージ

…という経緯で、新しい事業の立ち上げメンバーを募ることになった。
店舗運営のマネージャーやクリエイティブ案件のディレクター、キッチンや小売の担当スタッフを求人しているので、ご興味ある方はぜひどうぞ。


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で、いくつか補足。

オタクだけじゃなくてヤンキーも来てね!
「発酵のお店やるよ!」というと発酵オタクじゃないとダメなのかな…と思われそうだけど、僕たちは積極的にヤンキー気質の人に来てほしいと思っている。発酵そのものよりも「小売の仕組み回すのに興味あります!」とか「目標達成するのが快感です!」みたいに、ヤンキー気質の人が俯瞰して状況を見れたりするので、ぜひ「自分ヤンキー気質あるかも…」という人にも申し込んでほしいな(とオタクの僕が言っておかないと誰も来てくれなさそう)。ちなみに経営メンバー3人でいうと、僕(小倉ヒラク)が圧倒的オタク、小野が圧倒的ヤンキー、黒江がその中間くらい。

バイリンガル仕様にするので語学得意な人はぜひ!
展覧会と同じく、お店も海外の人がアクセスできるようにデザインするので、接客でも他言語が話せる人(ネイティブのように堪能じゃなくても良い)歓迎です。僕たちのほうでも何かしら他言語に触れられて学びのある環境をつくるつもり。

デザインや開発案件もやるよ
この事業立ち上げをきっかけに、僕が個人事業としてやってきたクリエイティブ案件や商品・サービス開発(つまり本の執筆とか講演とか以外)は新会社に移す予定なので、その案件をディレクションできる人も募集します。デザイン/編集スキルとか微生物学の知識とかがある人が来てくれたら嬉しい。取り急ぎ決まっているのは、展覧会の巡回展やツーリズム企画など。国内にとどまらず海外の案件も出てくる気配が濃厚です。

…とこうやって書くとなんかスゴいことやる会社みたいだけど、基本的には地道にお店を回し、情報をアーカイブしたり色んなメーカーとやりとりをしていくコツコツ系の会社になると思います。発酵が好きだったり、ものづくりと関わるのが好きだったり、色んな土地の人やモノと出会いたい人はぜひ応募してね。

色んな人の想いを託されつつ、でも基本無理しすぎないように地道に前に進んでいきたいと思います。根気のいる仕事だけど、手間のかかるプロセスを楽しんで働ける人と出会えたらと願っているよ。どうぞよろしく。

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