【発酵文化人類学】表紙デザイン決定!の舞台裏は悩み120%だった件
2月末にSNS上で投票を呼びかけた、新著『発酵文化人類学』の装丁デザイン。
200を超える投票を頂いた結果、A案に決まりました。みんなありがとう!
どちらも甲乙つけがたい素晴らしい2つのデザインをデザインファームBAUMに提案してもらったわけですが、正直どちらか片方に決めるのは心苦しかった。
特にプロの編集者からの支持が多かったB案。投票数こそ劣るものの、
@o_hiraku @Re_Satoshi_F 好きなのはBかな〜。
— 三島邦弘 (@mishimakunihiro) 2017年2月24日
プロからのこういうコメント見ると悩ましい。。。
ヒラク「予想どおり、けっこう投票が割れたなあ。みんな色々意見をくれたし、基本はAでいくとして、B案の要素も生かしたいなあ…」
BAUM宇田川さん「ヒラクさん、ちょっと待って!こういう二択をする場合、勇気をもってどちらかを捨てるべきで折衷をすべきじゃないと思うんですよね。今回はコミュニティを信じるか、編集のプロの意見を信じるかのA・B案になってますけど、ファン層とプロってよしあしの原則が違います。Aは今まで築いてきたコミュニティとその周りのため、Bはまだ出会ってない人のためのデザイン。ヒラクさんが選ぶのはどっちですか?」
ヒラク「確かにその通りだ…!アレもコレも欲しいという都合のいいハナシはありえない。ここは勇気を持って進むべき道を決めねば…!」
振り返れば、コミュニティのみんなと歩んできた道のりでした
宇田川さんからメッセージをもらってしばらく悩んだ結果、これまでの発酵デザイナーの道のりを振り返ってみようと思いつきました。 微生物の山を登るのだ!と決心してからの自分の活動は、僕が各地で出会ったコミュニティのみんなに支えてもらってやってこれたのでした。
絵本「てまえみそのうた」が出版された時の一コマ。このアニメや絵本は、全国各地で手前みそワークショップをやっているみんなからの要望で生まれたもの。僕自身、まさかこんなにブレイクするとは思っていなかった。
年間で1,000人以上の人が受講してくれた『発酵デザイナーのこうじづくり講座』も、スタート当初に興味を持ってくれた少数の人たちの声を聞きながらアップデートし続けていたら結果的にムーブメント化していった。
5年目を迎えた、全国の醸造家たちとのトークイベント『発酵男子のCOZY TALK』も、最初は一回きりの趣味のイベントのはずだった。それが、どんどんと仲間が集まってかぐれ表参道の名物イベントに育っていった(わざわざこのイベントに参加するために全国各地からお客さんがくるんだぜ)。
去年のハイライト、greenzの学校『発酵デザイン入門』の記念写真。この時集まったメンバーから新しいプロジェクトも生まれていった。
独立当初からお世話になっていた岐阜のアニキ、蒲さんとORGANチームと発酵をキーワードに仕事を一緒にすることになったり…
ジモコロの取材をきっかけに、発酵おじさんがデビューしたり…
地道に活動を続けていたら、海外でも微生物大好きコミュニティとの縁をもらったり…
昔から大好きだった仕事百貨にラジオ番組のスポンサーになってもらったり…
なんかリア充の大学生みたいに集合写真を貼りまくって恐縮だけど、振り返ってみれば僕のキャリアは「偶然の出会いを温めていったら、いつのまにか見たことのない景色を見ていた」というパターンだなと思うわけです。
自分の意志で何かを仕掛けて、それで状況をコントロールしていくような能力は僕にはなくて。目の前にいる人と向き合っていったら、いつの間にかブレイクスルーしていた。
できるだけ身近な人から、できるだけ小さなものから(←微生物研究家だし)、できるだけハートウォーミングなコミュニティからスタートする。 それが普遍的な方法論かはわからないけれど、少なくとも僕にはふさわしい。
「そんなこと言っているから、いつまでもパッとしないんだ、ヒラク君は」
いいや。そんなことはないんだよね。
まったく大志を持たず、世捨て人になるつもりで社会に出たヒラクが今おかれている状況は、10年前から考えれば「考えられない山に登っている」のだな。
今いる自分がいる場所は自分が行こうとした場所ではなくて。出会いの連鎖が僕の運命を変えていった。
考えてみるに、僕のつくってきたものは僕ひとりのものではない。僕とあなたのあいだにある謎のブラックホールから、出会いの放射力によってポンッ!とこの世に飛び出してきたものだ。やみくもに未知の出会いを求めるのではなく、すでにある出会いを信じてみることが、結果的に遠くへ行くための最良の道なのだと思う。
…ということで。 B案も捨てがたいが、今回はこれまでの自分の出会いを信じるためにも折衷案はナシ! ストレートにA案で行きたいと思います。尖りすぎだって?いいじゃん、世の中の誰も無視できなくなるほど尖りまくってやろうぜ!
僕の活動を客観的に見てみれば「少量の麹づくり」みたいなもんで、最初から「広げること」を重視しぎると熱が拡散してうまくいかない。だからこのフェーズでは「熱を育てること」が大事。「広げること」を提案してくれたプロ編集者の意見は将来の自分への期待だと受け取ってそのうち恩を返すぜ。
— 小倉ヒラク (@o_hiraku) 2017年3月3日
それでは、表紙の実物があがってきたらまたお知らせしまーす。投票してくれたみんな、本当にありがとう。「B案がいい!」というメッセージもちゃんと受け取ってるよ。
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