【発酵デザイン入門】微生物が地球をつくった。 ミクロの生態系を探るDay4<前編>

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世界は微生物でできている!

発酵の概念を拡張し、暮らしにまつわるバイオテクノロジーを包括的に学ぶgreenzの講座『発酵デザイン入門』第四回の講座レポートをお届けしまーす。内容がめちゃ濃いので前後編に分けます。過去のレポートは以下から。

・【発酵デザイン入門】発酵で社会をよりよく!未来の科学のリテラシーを考えるDay1

・【発酵デザイン入門】発酵なくして人類の文化なし!食と暮らしのテクノロジーを深掘る Day2

・【発酵デザイン入門】生命のミクロの秘密を顕微鏡で覗こう!生物のデザインを紐解く Day3

微生物が地球をつくった

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セクション7のテーマはこれ。
いま僕たちが当たり前に生きている地球環境や生態系は、実は微生物がつくりだした。

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えーと、植物かな?day4_%e3%83%98%e3%82%9a%e3%83%bc%e3%82%b7%e3%82%99_07

正解は、シアノバクテリアという光合成をする微生物。
実はこいつが地球環境全体の命運を握っている。

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学校では教えてくれない、微生物から見た地球の歴史。
生物学の授業では、目に見える動物たちが陸上に上がった五億年くらい前からの歴史しか教わらない。しかしその前の35億年が、様々な生物が生きていける現在の生態系をつくったのであるよ。

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地球史上最大の革命は、今から25億年前に起きた。
前述の「シアノバクテリア」という微生物が、「太陽光エネルギーを吸収して生きる」という、いわゆる「光合成」の方法論を発明する。

これにより、地球上に「酸素」という物質が生まれた。

光合成を引き起こす酵素をRubisCoといい『地球上でもっとも多く存在するタンパク質』と言われている(ちなみに酵素はタンパク質の一種。詳しくはDay3を参照)。

・【発酵デザイン入門】生命のミクロの秘密を顕微鏡で覗こう!生物のデザインを紐解く Day3

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光合成で大量のエネルギーをつくりだすシアノバクテリアは、ものすごい勢いで地球上の海中を埋め尽くした。やがて彼らの放出した「酸素」を使ってエネルギーを獲得する生き物が現れる。この時、「酸素」という方法論が発明される。

そこから長い時間をかけて、シアノバクテリアがつくりだした酸素が飽和して、海水に溶けきれずに地上に逃げていった。そしてその酸素を追いかけて、生き物が地上に出ていった。

↑の本は、今から6〜5億年前に起こった(らしい)「生物種の大爆発」を追った名著。内容の真偽については諸説あるけれど、とにかくシアノバクテリアが増えまくって酸素が飽和しまくったタイミングで、酸素を使って生きる動物種の大爆発が起こったのであるよ。

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動物の大爆発の次に、植物の大爆発が起きる。
ハードコアな氷河期が終わり、地上を光合成を行う植物たち覆い尽くし、大規模な「森林帯」が形成される。

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Day3で植物の細胞のデザインを解説した図。
細胞のなか、右側にある緑色の「葉緑体」は、なんとシアノバクテリアが植物内に寄生したものだと言われている。

シアノバクテリアは、そのままだと地上で繁殖することができない。
しかし植物内に寄生した状態なら、陸上に出て光合成をしまくることができる。

考え方によっては、植物というのは「シアノバクテリアの乗り物(ガンダムとかエヴァンゲリオンとか)」と定義することができるかもしれない。

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約3億年くらい前に、現在デファクトスタンダードになっている生態系の循環モデルができあがった。

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とはいえ、地球上には酸素や太陽光もない環境がある。
20世紀初頭、ロシアの微生物学者ヴィノグラドスキーは、酸素も光も発酵のエサになる有機物すらない極限環境で生きている微生物を発見する。
コイツら、鉄や硫黄などの金属、硝酸や窒素などの無機物を食べて生きていた。

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僕たち人間の生きる世界である「酸素や光のある世界」と、極限微生物たちの「無機物の世界」が複雑に絡み合いながら地球環境は循環している。

 

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引用:暮らしと微生物(培風館)

有機物の主たる炭素の循環図。これは、植物の「光合成」が起点となり、動物の「呼吸」によってまた還元されるという循環を成す。
見逃せないのが、地下で起こっている「炭素の濃縮プロセス」。石油や石炭、天然ガスは、土のなかに還った生物の排泄物や死骸を微生物が発酵させることによりできたものなのであるよ。

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引用:暮らしと微生物(培風館)

次に、農業等で重要になる窒素循環の図。
作物(植物)にとって、窒素は大事な構成要素。よって作物の生えてくる土のなかにはじゅうぶんな窒素がなければいけないのだが、窒素はふだんは空気のなかに溶けて地中には降りてこない。

この時に活躍するのが、微生物。窒素固定菌や根粒菌と呼ばれる特殊な菌が、空気中の窒素を取り出し、土のなかに還元していく。
有機農家には微生物博士が多いが、それもそのはず、作物が豊かに育つかは、窒素を土のなかに呼び込む微生物の活躍にかかっている(ちなみに化学肥料は「窒素を直接土のなかに投入する」という発想のプロダクト)。

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コンポストの仕組み。全く性質の違う微生物を、温度と時間の2つのレイヤーをかけて順々に働かせ、植物の繊維質など、分解しにくいものも土に還してしまう。
コンポストとは「作物を育てる時に余分な栄養を枯らし、かつ窒素をたっぷり蓄えた堆肥」と定義することができる。

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ついでに水の浄化にも微生物が活躍する。

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これ、完璧僕の趣味。訳わからん環境で生きる不思議な微生物たち(極限環境微生物と呼ばれる。学会もあるんだよ)。
最近はけっこうな大金をかけて、地中や海底、上空にいる微生物たちの研究がなされている。目的は何かというと、「地球外の生命の可能性」を検証するためだ。

漫画『テラフォーマーズ』みたいに、近未来、人間たちは極限環境微生物を火星に放って酸素や有機物をつくらせ、火星移住のプラットフォームを整備するのかもしれない…

と僕が言うのもそんなに突飛な話ではないかもしれない。
なぜかというと、「生態系は微生物がつくった」からだ。

ワークショップ:コンポストをつくってみよう

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Day4のワークショップは、簡易コンポストをつくる実験。

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・腐葉土
・台所の生ゴミ
・発酵液(酵母液に納豆やヨーグルトを加えて発酵させたもの)

を発泡スチロール箱に仕込んで分解していく。

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低い温度や高い温度、酵母液の有無など条件を変えて、分解状態がどう変わるかを観察しました。

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一週間経過した状態のコンポスト。
表面に見える白いモヤモヤはカビ。カビが葉っぱや繊維を溶かして分解し、地中のバクテリアが糖分やタンパク質などを分解します。もう2〜3週間経つと、柔らかいものならほとんど土に還ってしまう。これ全て、微生物のちからなり。

それでは後半に続く!

photo by 吉川修平 & 高橋奈保子 & 井上薫 ありがとー!

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