そもそも麹(こうじ)とは何か? 和食のエッセンス、ここにあり!

前回の僕がこうじづくりを始めた理由に引き続きまして、今回は「そもそもこうじとは何か?」をお届けするぜー。

そもそも麹(こうじ)とは何か?

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麹(こうじ)とは、蒸したお米や麦に麹菌という、カビの一種が生えたもの。

カビと言うと「えっ、ばい菌?」と思うかもしれませんが、カビはカビでも、麹菌は「人間に役立つ、食べられるカビ」なのです。

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引きで見るとこんな感じ。これはお米がモコモコした「米麹」。

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寄りで見るとこんな感じ。お米粒から、胞子の花が咲いています。Photo by 深澤 久美子

麹菌の正式名称は、和名で「ニホンコウジカビ」、洋名では「Aspergillus Oryzae(アスペルギルス・オリゼ)」。

日本の国菌です(ドヤァ!)

「出たw。そういうトリビア披露でいきがってる発酵デザイナーwww」

「ちなみに国鳥はキジ、国花は桜だってことはとっくに知ってましたけど…!?」

「フォロー外から失礼します。国菌じゃない乳酸菌や納豆菌に失礼だと思います。」

押さえておきたい!こうじの特徴3つ

さて。そんな「人間に役立つ、食べられるカビ」の特徴は以下↓

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▶日本の風土で育つ穀物と相性が良い

麹菌は、お米や麦や大豆など、日本の田畑で育つ穀物にくっついて発酵します。

学名にあるOryzae(オリゼ)とは「稲」のこと。もともと稲のなかに住んでいるカビなので、日本の風土にバッチリなのですね。

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▶和食の特徴である、旨味と甘味をつくってくれる

麹菌が持っている2つの酵素が、和食のベースとなる、旨くて甘い独特の味(←お味噌汁や肉じゃがをイメージしてください)を作り出します。

旨味を作るのは、たんぱく質を分解するプロテアーゼという酵素。甘味を作るのは、デンプン質を分解するアミラーゼという酵素。

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▶毒を出さない

これ超重要。通常、麹菌と同じAspergillus(アスペルギルス)属のカビは、カビ毒を出します。ところがなぜか麹菌だけは毒をつくるDNAが欠落しているので、僕たちは美味しいとこだけ恩恵に預かることができるのでうす。

こうじ=タモリであるという仮説。

ではもうちょい先に進みましょう。

なぜこうじが和食のベースとなるのか?その答えは先ほど説明した「麹菌の生成する旨味・甘味成分」と、「他の発酵菌を呼んでくるタモリ力」にあります。

麹菌:「発酵しに来てくれるかな?」

酵母・乳酸菌:「いいとも!」

こうじがつくる旨味=糖分は、乳酸菌や酵母の大好物。

こうじ=タモリ

糖分=笑っていいとも or タモリ倶楽部

他の菌=中居くん・関根勤 or 安齋肇・杉作J太郎

のように理解してもらえれば良いかと思います。

発酵食品の味わいが複雑なのは、このように複数の菌が寄ってたかって色んな美味しい成分を作り出すおかげ。笑っていいともが毎日見ても飽きなかったように、お味噌汁も毎日飲んでも飽きません。裏を返せば、こうじ=タモリがいなければ、杉作J太郎はただのエロいおじさんになってしまうのです。

「ヒラク君は、発酵の話がしたいのかね?それともタモリの話がしたいのかね?」

「それな」

我々はこうじの「旨味中毒」にかかっている!

海外旅行に出て、最初の3日くらいは「チーズ美味い!ワイン美味い!」と盛り上がっていたのが、4日目くらいから「あ…味噌汁飲みたい」「醤油ラーメン食べたい」と感じることがあります。

これは「うおォン…旨味…旨味が欲しいよぉォォッ…!」と細胞が悲鳴を上げている状態であります。どうやらこうじの作る旨味成分には中毒性があるらしく、日本列島に住む我々は総じて「旨味中毒」にかかっていると言っても過言ではないのです。

僕が20代前半の頃経営していたゲストハウスには、ベジタリアンのゲストがたくさんいました。ほとんど全員が発酵食にハマり、帰国後メールで「味噌欲しい…醤油欲しい…!」とリクエストが来たりしていました。

「ふふふ…ようやく気づいたようだね。」

「はるか昔から、僕たちは君たちを操っていたのさ。」

「醤油、味噌、みりん、酢。日本酒、焼酎…。これらが無ければ君たちは生きていけない。」

「全ては計画通り。日本列島はもう、僕たちが掌握した。」

「機は熟したッ…!次のターゲットは、世界だ!

それではご覧ください。こうじのうた、英語字幕付きバージョンです。

Published by

小倉 ヒラク

発酵デザイナー。1983年、東京都生まれ。 「見えない発酵菌の働きを、デザインを通して見えるようにする」ことを目指し、全国の醸造家や研究者たちとプロジェクトを展開。下北沢「発酵デパートメント」オーナー。著書に『発酵文化人類学』『日本発酵紀行』など多数。