こんにちは。小倉ヒラクです。
9月終わり、関西に旅に出た直後から大風邪を引いてほとんど外界と音信不通になっていました(山梨に帰ってきた今現在もまだ発熱と咳がひどくて家で静養中)。
何度も熱や胃痛や喘息症状でぶっ倒れながら、
鳥取県智頭町:柿の葉寿司
香川県小豆島:醤油
和歌山県湯浅:金山寺味噌
京都市大原:しば漬け
と西のローカル発酵の現場をまわってきました。その合間にイベントに出演したり、仕事の打ち合わせしたりもあって。普通だったらベッドから起き上がれない状態で長距離移動&業務フル回転。
ここ数年で最もハードな旅(体調的に)となりました。
これから47都道府県ぶん延々と続く発酵の旅ですが、序盤にこれだけツラい体験したので、あとは「何でもバッチこーい!」と笑顔で乗り切れる自信がある…!
日本の超ディープルーツの再発見
醤伝来の地、和歌山県湯浅で江戸時代から続く金山寺味噌の工場
今回の旅は、前回の出版ツアーのようにその土地の文化の拠点になっているようなイケてる場所に行くのではなく、アクセスも不便で地元の人すら知らないような地域へ行って、何百年も静かに受け継がれてきた郷土食の担い手にえっちらおっちら会いにいっています。
多くのケースは、70過ぎのおばあやおじい達。
仕込みの現場に一緒にいて、その土地のこと、家族のこと、醸造方法のことなどを聞き出していくわけです。ポイントは単純な聞き書きではなく「仕込みの現場に一緒にいること」。現場で工程を見ていくと、聞き書きでは説明するのをうっかり飛ばしてしまいがちな重要ポイントを見逃さずにすむ。話を聞くことよりも、僕も醸造家の立場になって現場を共有するのが大事なんですね。
ということで、連日小さな蔵や畑に入っていくわけなんですが。
そこで目の当たりにする景色がディープにファンタスティックすぎて
「あれ…?ここって現代日本だっけ?」
と感覚が狂いまくる瞬間ばかり。現代日本の無意識下に何百年も伏流してきた超ディープルーツにやられて、さらに発熱が…涙
体調不良のピークは和歌山湯浅。肌寒い夜、咳で倒れそうになりながら熊野古道を歩いていると自分が幽霊になったような錯覚に陥りました。
昨日熱にうなされながら歩いた和歌山県湯浅の夜の街並み。古い巡礼道の面影を残す路をヘロヘロ状態で歩いていると自分が幽霊になったんじゃないかという錯覚に陥りました。きっと昔の人は自分が死んだことに気づかず、お盆がくるとなんとなく家族の家へフラフラ戻ってきてしまう…その時の気分。
— 小倉ヒラク | Hiraku Ogura (@o_hiraku) September 28, 2018
僕、つげ義春の田舎をあてもなく旅する漫画が大好きなんです。ここでも主人公が「半分死んだ存在」になって、この世の終わりのような場所を歩いていく。生きた人間がある時ふと死んで、死んだ人間がある時ふと生き返る。そんな生死の境が曖昧になる体験が、かつての日本人の旅の感覚にはあったのかも。
— 小倉ヒラク | Hiraku Ogura (@o_hiraku) September 28, 2018
文化の古層への冥界巡り
小豆島。見渡す限りの木桶の海。マジで感覚がおかしくなる…!
どうやら今回の旅はただのフィールドワークじゃないらしい。
これは日本の文化の古層への冥界巡り。ふだん僕たちが意識しない百年、千年という時間スパンで流れている「文化の無意識」を僕は辿っているようだ。
つまり僕のこの謎の発熱は冥界巡りをスタートするためのイニシエーション…!
この先に、何かとんでもない世界が待っている…!!
いったいこの先どんな「文化の古層」の景色が待っているのでしょうか。
これから定期的にレポートしていくので、どうぞお楽しみに。
しばらく現世から離れます
人間をやめて微生物になり、さらに現世から冥界に降りるというディープトリップ…!
そんでもって。友人の皆様へ業務連絡。
今回の旅で僕は人間界というか現世から離脱することになるので、しばらく社交の場にもカジュアルな飲み会にも顔出せないと思われます(精神的にも体力的にも)。
僕は友だちという時間が大好きなので、とても心苦しいのですがおそらくこんなにディープな体験は一生に何度もできないと思うので、徹底的に彼岸の世界へ行ってきたいと思います。
来年の春以降に現世に戻ってきますので、桃の花の咲く頃に会いましょう。
それでは最後に和歌山で出会った醸造家夫婦のポートレートをご覧ください。