「いつもやる気」はありえない。価値の創造と運用のマネージメント。

こないだ大学の後輩でもあるメディアアーティストの市原えつこさんから「独立して二年間経って、独立当初のようなやる気がなくなってきました」という相談がありました。

https://twitter.com/etsuko_ichihara/status/982610076899786753

で、僕がその時思ったのは「そもそも常時やる気なんておきない」ということ。「100%内発的なやる気」はレアメタルのような希少資源なので、ゆっくり採掘するのが吉です。

僕の話をするとだな。

僕は自分でもビックリするぐらい「やる気あるタイム」が少ない。たぶん創造的なことをできる時間はよくて15%くらいで、あとはやるべきタスクを消化したり調べものしたり整理整頓したりお昼寝したり。

「なんだその怠け者っぷりは!もっと気合入れて仕事したらどうなんだ?」

という突っ込みも聞こえてきそうですが、僕はやる気タイムの割合を増やす気もなく、考えているのは限られた15%の価値をいかに引き出すか

思うに、「やる気」ってのはそんなに出ないからこそ価値があるんですよね。

だから「常に100%創造的な自分」を目指すライフハックって「三食全部サーロインステーキ食べる」みたいで胃もたれしそう。「たまに出るやる気」にレバレッジをかけて日々をのらりくらりと暮らすのが結局は長く続くと僕は思います。

やる気を「希少なもの」とカウントするのか「常時あるもの」とカウントするので仕事に対する取り組みが変わってくる。

「希少なもの」としてカウントすると、やる気ないタイムは「希少資源のマネージメント」として割り振られることになります。常に資源を採掘しまくるより、適切な量を採掘してその価値をマネージしたほうが生産性が良い、と言えるのではないかしら?

表現やプロダクトが生まれるのは「やる気ある(創造的)タイム」ですが、その表現やプロダクトの「価値」が生まれるのは「やる気ない(運用)タイム」だったりする。

だからやる気ないタイムはやる気あるタイムと同じく大事なんです。

やる気ない自分は、やる気ある自分のマネージャーの役割。

やる気あるハイテンションな時に「こんなことやりたい!」と用事を仕込んでおいて、やる気がフェードアウトしたタイミングで「やれやれ」と用事を片付けていくバランスで僕の仕事は回っています。ずっとやる気あると片付かない用事がどんどん増えるので、やる気はぼちぼちくらいじゃないと破綻する…!

「いつもやる気100%」って思うほど良いものじゃないと思う次第です。

 
 
 

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小倉 ヒラク

発酵デザイナー。1983年、東京都生まれ。 「見えない発酵菌の働きを、デザインを通して見えるようにする」ことを目指し、全国の醸造家や研究者たちとプロジェクトを展開。下北沢「発酵デパートメント」オーナー。著書に『発酵文化人類学』『日本発酵紀行』など多数。