イギリス・トットネスの後は、街へ。
ロンドンとアムステルダムの「インディペンデント・バイオラボ」を訪ねてきました。
2016年のはじめに「今年は発酵デザインラボをカタチにするぞ!」という目標を掲げました。
・最高にDIYでナイスグルーブな発酵デザインラボをつくり始めたよ。バイオの世界はめちゃ楽しい
半年かけてけっこういいセンまで来たんだけど、さらなる可能性を求めて僕のようにいわゆる大学の研究室とは別のところでバイオテクノロジーの研究をしているハッカーたちに会いに行ってきたのだぜ。
ロンドン:Bento Lab
まず向かったのは、ロンドンのBento Lab。
実は僕、彼らのクラウドファンディングプロジェクトを支援しておりまして。
自宅でDNAの抽出や解析ができるスターターキットの事前オーダーをしたのさ(写真は試作品)。で、実際に開発している人に会いにいこうと思ったわけよ。
ミュージアムとしても有名なSomerset Houseの地下に、ギークなスタートアップたちの集まるコワーキングスペースがあります(地上とのギャップにびっくり)。
わりとざっくりしたオフィス&ワークショップスペース。
右のナイスガイ、Phillippさんが代表。ちなみに右はいっしょに遊びにいった友だちのガエル。
コンパクトな筐体に、遠心分離器(DNAを細胞から分離する)、PCR(DNAを増幅させる装置)、イリュミネーター(分離・増幅したDNAを可視化する)など、遺伝子工学の基本となる機材がオールインワンになっているナイスなパッケージ(大学の研究室で揃えるより2ケタぐらい安い)。
「今年の秋には完成する予定。それにあわせてワークショップもやるからヒラク君も来たら?」
い…行きてえ…。
Phillippさん、ありがとー。
アムステルダム:Waag society
続いて、アムステルダムの観光地ど真ん中にあるwaag societyへ。
いかにも観光地!というお城のようなレストランの反対側に回ると…
めちゃイマドキなシェアオフィスがあり、そこを抜けると…
なんとウェットラボ(微生物やDNAの実験をする部屋)が!
何かをろ過している装置(何かは不明)。
ヤマダ電機感あるインキュベーター(温度調整器)。オートクレーブ(熱と圧力で滅菌する装置)は圧力釜で代用。
オープンソースの設計図をもとに、レーザーカッター(FAB)で組み立てたPCR。
DIY感すごい。笑
遠心分離器もオープンソースで。
培養や触媒に使う薬剤は、スーパーで売っているもので代用。
僕もおんなじことやってるぞ…!
「あなたも似たようなことやっているから、たぶんすぐラボつくれると思うわよ」
案内してくれたXiamyraさん。ありがとー。頑張りまーす。
ちなみにこのラボは、Biohack academyという市民バイオテクノロジー好きサークルの拠点になっており、日本でも渋谷ロフトワークに支部があります。
ゲオルグくんというナイスガイが、アムステルダムと同じように機材のDIYやワークショップをオーガナイズしているので興味がある人はぜひ参加してみてください。最近の活動だと、僕のワークショップにも何度か遊びに来てくれたことのあるMayumi Sakaiさんの「音楽と酵母プロジェクト」などが展開されているようです。要チェックやぞ。
発酵デザインラボの現実味が増してきた
さて。Bento LabとWaag Societyを訪ねてみて、すごく励みになったなぁというのが第一印象。
実際に会って話してみたら志もやっていることもとても近くて、設備や機材で工夫していることも発想がかなり似ていた(←なるべく安く、手づくりで、市販で手に入るもので代用)。
実験の安全性や基準をしっかり押さえれば、僕個人でもちゃんと継続的な研究ができそうだなあと背中を押してもらえる機会になりました。
でね。
今回の体験や、発酵デザインラボの今後については林千晶さんと一緒に来年出版予定の書籍にまとめられる予定。興味ある方は引き続き Check It Out!
【オマケ】アムステルダムの科学博物館に行ってきました。
いやあ、ここめちゃ面白かったんだよね。
「科学博物館」というわりにはひたすらポップ
自然エネルギーの説明パネルのデザイン性すごい。
古代ギリシャ時代からの科学史のレトロスペクティブがめちゃ楽しい。
観察→仮説立て→実験→結論のフローが、インフォグラフィックを駆使して子どもにもわかるように解説されている(←感心)。
施設内のワークショップスペースでは子どもたちが実験を楽しんでいました。
さすがオランダ。科学博物館に性教育コーナーが…!
アムステルダムの科学博物館、めちゃ面白い。お台場にある日本科学未来館も素晴らしい場所だけど、アムステルダムのはまったくもってアカデミックな佇まいがなくてひたすらポップでキッチュ。子どもたちが大はしゃぎしてました。いやー、僕もそのうちこういうのやりたいなあ。
— 小倉ヒラク (@o_hiraku) 2016年7月11日
微生物学や分子生物学は、未来の核になるテクノロジー。
国家単位でたくさんの人とお金が動く流れは加速していくだろうけど、その前に市井の僕たち一人ひとりがリテラシーを持つことが何より大事だと思う。
その時に、ハードル低く楽しくかつエッセンシャルに科学と向き合えるような場所を、ヒラクはデザインしていきたいと思います。