だだちゃ豆右衛門 アートディレクション

庄内地方に伝わる在来種の枝豆「だだちゃ豆」のテイストを極限までお菓子に凝縮したシリーズのコンセプト開発からデザインまで、地元のクリエイター達と一緒に作りあげました。

プロデュース:吉野薫(木村屋)

アートディレクション:小倉 ヒラク・三浦雄大


デザイン:三浦雄大

CL:: 有限会社 木村屋

プロジェクト期間:2015.12〜2016.03

デザインにあたって考えたこと

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の包装紙の裏側は、オリジナルの学級新聞。

▶商品といっしょに、庄内在来の文化をつたえる

今回のプロジェクトでは、単に売れる商品をデザインするということにとどまらず、山形在来のだだちゃ豆のアイデンティティをしっかり定義する、というミッションがありました。

というのも。

この「だだちゃ豆右衛門」は、県内の研究メーカーと共同で「いかにだだちゃ豆を有効利用できるか」という課題に挑む商品開発だったのですね。

このサイトをよく読んでいる人は皆さまご存知でしょうけど、地域に根付いたメーカーは、自社の利益だけでなく、地域全体の産業や文化を支えるためにビジネスをします。なので、僕としても在来の文化をしっかり伝えられるデザインをつくる必要があったわけです。

そこらへんの詳しいストーリーは僕も以前取材してもらったWEBマガジン、colocalでどうぞ。

・ハイテク技術で超濃厚!鶴岡発の最新だだちゃ豆スイーツ〈だだちゃ豆右衛門〉

▶「だだちゃ豆」のキャラクターを確立させる

さてこれが基本要件。

ここからはデザイナーの腕の見せどころ、どのように伝えるかのアイデアです。

「だだちゃ豆のキャラクターを確立する必要があるわけだよなあ…」

「じゃあ、だだちゃ豆のキャラクターをデザインすれば良いのでは?」

という、いつも通りのひねりゼロの発想によって生まれたのが、庄内地方のだだちゃ豆農家のシンボルである、「だだちゃ家のお父ちゃん、豆右衛門=だだちゃ豆右衛門」なのでした。

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左は福を運ぶ大黒様、右がだだちゃ豆右衛門。可愛らしいキャラクターの原案はなんと木村屋の社長!

▶地元のおじちゃんおばちゃんにも愛されるデザイン

地域の商工会や産業振興課の人と話すと「東京や大阪に販路をつくりたい」という要望を聞きますが、僕は基本的にその考えかたに反対です。

大都市での消費はトレンドの変遷が速すぎるし、もし万が一ブレイクしても生産がパンクしてクレームになったりします。一時のトレンドが終わっても、地域のメーカーはこの先の100年を見据えて商売を続けていかなければいけない。

ならば、やっぱり基本は地元で愛されること

デザインやソーシャルなことに興味がある一部の人だけでなく、地元のおじちゃんおばちゃんの生活シーンのなかに当たり前に存在できるようなものが、空気のように長く続く。

知り合いの鶴岡の農家のおばちゃんが、お茶菓子としてお盆に載せていて、子どもが遊びに来た時に「これお食べ」とあげられるようなお菓子にしたかったのだぜ。

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包装紙にも使える新聞形式のパンフレット。地元の農家さんを応援する記事や、子どもも楽しい絵描き歌を掲載。クリックして拡大。

▶地元のクリエイターと一緒につくるぞ!

昨年の『かわらチョコ』は、県外のチームで制作しましたが、今回は鶴岡在住のクリエイター、三浦雄大さん(IDEHA Creation)と一緒にデザインをつくりました。

作業分担としては、基本の販売方針とコンセプトを決めるのが僕、そこから先のデザインや編集はぜんぶ三浦さんチーム。つまり実質地元鶴岡で生まれたデザインと言って良いでしょう。

僕の地域でのデザインプロジェクトって、長く続くケースがとっても多い。

その時に大事なのは、長く続くほどに地元のクリエイティブ力や人のネットワークが育っていくことだな〜、と思っています。

地元のメーカーと、クリエイターが信頼関係で結ばれて良いものづくりをする、そういう土地がこれからも輝き続けられる文化をつくっていくのだと思っています。

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三浦雄大さん。例によって山伏修行を経てきたクリエイターです。グッジョブ!

とにかく美味しいお菓子ですぞ

ということで、デザインの話はおしまい。

最後に商品の紹介をしまーす。

▶ダックワーズ、フィナンシェ、だだちゃモチの3つのラインナップ

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食べてみてビックリなのが「本気でだだちゃ豆の味がする!」ということです。

いわゆるお土産菓子の「なんとなくフレーバー」ではない本気の味。ホクホクとした素朴な豆とお洒落なスイーツの味が不思議にバランスの取れたお菓子です(木村屋さんのお菓子はどれもすごく美味しいんだよな…)。

木村屋さんの店舗では、セットじゃなくても買うことができるようです。

普段使いのお菓子に、鶴岡土産にぜひどうぞ。

今回のデザインもかなりチャレンジしたものになりました。

デザイナー側からの提案を勇気を持って受け入れてくれた木村屋の皆さま(特に吉野薫さん)、本当にどうもありがとうございます!

そして最後にお願い。

山形の皆さま、こういう郷土愛が結晶化したような商品が末永く愛されるようにどうぞ応援してください。春になったらまた鶴岡遊びに行くから、みんなでごはん食べ行きましょうぞ〜。

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小倉 ヒラク

発酵デザイナー。1983年、東京都生まれ。 「見えない発酵菌の働きを、デザインを通して見えるようにする」ことを目指し、全国の醸造家や研究者たちとプロジェクトを展開。下北沢「発酵デパートメント」オーナー。著書に『発酵文化人類学』『日本発酵紀行』など多数。