引き寄せる力 〜山田ズーニーさんの魅力〜

糸井重里さんがやってる「ほぼ日」に「大人の小論文教室」というコーナーがあります。

そこで読者の小論文のコーチをしているのが、山田ズーニーさん。民ちゃんの本棚から抜き出して読んでみたら、ヒラクもすっかりファンになりました。

ズーニーさんのファン、たぶんたくさんいますよね。

わかるぜ、その気持ち。

ズーニーさんの魅力は、「引き寄せる力」にあります。

「引き寄せ」とかいっても、自己啓発系のワーディングじゃないですよ。

読者のモヤモヤとことばにできない不安や痛みを、自分に「引き寄せる」誠実さ。そこが徹底しているんです。

コーチって「教える立場」だから、普通に考えれば「あなたの問題は◯◯だから、△△すれば解決しますよ」ということをすれば基本は成り立つ。

…なんだけど、ズーニーさんはそういうことはしない。

まず、相手が感じた不安や痛みが「自分も感じているかどうか」を点検するところから始める。

「表現の才能が無いことがツラい」「人に上手く自分の気持ちを伝えられないことがツラい」「人間関係がキレイに割り切れなくてツラい」そういう訴えに対して、テンプレ化した解決方法は示さない。

「えっ…でもこの気持ちって、私にもあるかも…」と、読者に悩みを自分に「引き寄せる」。

この引き寄せ力が尋常じゃないほど強いんですよ。ズーニーさんは。

「相手の身になって考える」というレベルではありません。

「相手の問題を自分に引き取って考える=というか自分の問題として相手より悩み、掘り下げる」という異次元まで突入しています。

ずいぶん思い悩んだりモヤモヤしてばっかりで大変そうだな〜と思うわけですが。

しかし、その作業を積み上げるなかで、ズーニーさんはある種の「超人」になっていくわけです。

どんなスゴさかというと、「言語化できないけど重要そうなものを発見する」ダウジング能力と、「それを言語化=解明するまでのプロセスを言語化する」メタ表現能力なんですね(ややこしい例えですいません)。

モヤモヤしている人が打ち明ける「あるある的な悩み」のなかから「あっ、これって以外にみんな気になっているけどうまく説明できない問題かも」と、高確率で気づくことができる。

そして、その悩みを自分に引き寄せ、それを自分の悩みとし、自分の人生の答えとしていく一部始終を「大人の小論文教室」という読み物を通してリアルに実況中継していく。

あ、わかった。ズーニーさんは「悩みのイタコさん」だったのね。

他人の悩みがズーニーさんに取り付き、ズーニーさんという超高感度のフィルターを通して、その悩みの声がカタチをとってあらわれてくる。

その瞬間に、ネガティブな感情が発するネガティブな波動が清められていくわけです。

そのお清めの瞬間、読む人の人生もまた浄化されている。

いや〜、これはすごいテクだ。

まだ読んだことないひと、ぜひ書籍でもWEBでもご一読ください。

http://www.1101.com/essay/

 

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小倉 ヒラク

発酵デザイナー。1983年、東京都生まれ。 「見えない発酵菌の働きを、デザインを通して見えるようにする」ことを目指し、全国の醸造家や研究者たちとプロジェクトを展開。下北沢「発酵デパートメント」オーナー。著書に『発酵文化人類学』『日本発酵紀行』など多数。