41歳は現実的諸問題と概念の反復横跳びの一年にします。

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41歳になりました。
誕生日を迎えて思うのは「無事に生き延びれてよかった…」ということ。

心の火が消え、戦乱で死にかけ、一文無しになり、執筆で神経衰弱になった。
度重なるトラブルの中で本当に色んな人に迷惑をかけたし、20年来の友人の訃報もあった。
でも僕は折れなかったし、胸を張れるような結果も出した。

2023年の僕はどん底だった。
でもどん底から這い上がって強くなった。

2023年の振り返りに書いた通り、40歳の一年はほんとにほんとに大変でした。

3月後半に2週間ヨーロッパのレクチャー行脚を終えて発酵デパートメントの4周年をお祝いした後、4月半ばくらいからGWにかけてなるべく出張もいれずにのんびりしていまた。

2年間苦しんだ資金繰りの問題もいったん片付き、お店のチームビルディングもできてきて、出版社と約束していた本も無事2冊書き終わり、心配ごとから離れてちょっと休める…

となった途端、これまでの蓄積疲労がどっとぶり返してダウンしてしまいました。
限界ギリギリまで頑張る日々が続くと、自分がどれだけ疲れているかもわからなくなる罠…!

荷物を背負う練習

考えてみれば。
20代も30代も僕は自分勝手に生きてきたなと思います。

自分のやりたいこと、興味あること第一。良き出会いと時代の流れに助けられてかろうじて社会性を持って生きてこれた(たぶん)。

で自分の好奇心で始めたことがずいぶん大きくなって、今や自分の身の丈を大きく超えてしまった。発酵デパートメントの事業規模も創業時の3倍くらいになり、国境も超えて世界中のシェフや発酵ラバーが聖地巡礼のように訪れてくれるようになった。

嬉しい…が、重たい!
僕個人ではもはやこの荷物、背負えないよ〜!!!

となって潰れかけている41歳。
しかしここでラクはできぬ。これまで自分本位でやってきたぶん、周りのみんなや社会の期待に応えねば、責任という荷物を担いで歩いていく訓練をしなければいけないタイミングなのだ、自分よ。

僕は生来「ビッグなことしてやるぜ!」という野心に乏しい性質。
なのですが、自分のやっていることがだいぶビッグになってきてしまった。
(しかもお金もメンタルもリスクもめちゃ背負っている)

正直けっこうツラい…が途中で投げ出すわけにはいかない。
野心や功名心とは別のモチベーションが僕には必要だ!と痛感した矢先に、

最近で最もインスパイアされた存在、それがチベットの千手観音。
千手観音の無数の手はなるべく多くの衆生を救うためにあり、額の上に小さい顔がついているのは再び自分が調子乗らないように見張っている監視役の自分だそうな。

「頑張った自分にごほうび〜♪」すら許さない徹底的利他のスタンス。
30代まで好き勝手生きてきた自分の次の10年は、他の誰かへの貢献、そしてインフィニティ慈悲。
41歳は荷物を背負って歩く訓練をする一年にしようと決めました。

調子乗ったら身体が粉々に砕け散る予定です。

現実的諸問題と概念の反復横跳び

コロナ禍のなかでお店をオープンしてからの数年間。
物流や在庫管理のこと、お金や人のこと、法律や税金のこと…と現実的諸問題に悩みまくってきました。
これまでの僕はフィールドワークして展覧会やって本書いて、と主に概念に関わるクリエイター仕事をしてきたので、正直めちゃくちゃしんどかったです。

で。
ようやく現実的諸問題が多少なりともわかってきたら、また概念の世界がカムバックしてきました。
最近やっているプロジェクトは規模も大きいし、地域の様々な立場の人たち、海外の全然違う文化圏の人たち、国家運営に関わる官僚のような人たちの境界に立って仕事をする立場になってしまいました(たいへんだよォ)。

営利事業と公共性、きっちりしたお役所仕事と好奇心で動くクリエイター仕事。
ものづくりとまちづくり、ローカルのお父さんお母さんと海外のファインダイニングのシェフたち。

立場や前提が全然違う人たちが同じ方向性を向くために必要なのは、概念。
何を大事にし、何を価値とし、誰のために、何年後の未来のためにやるのか。
それを言葉にし、概念にして明らかにし、みんなでシェアする。

現実的諸問題の最初のハードルをなんとか超えたら、また概念が戻ってきた。
今年はこれまで自分のやってきたこと、大事にしていることをアップデートして概念にしなければいけない。
しかし現実的諸問題も同時に片付けねば。理想とオペレーション、美意識とコストを天秤にかけつつ、現実的諸問題と概念の反復横跳びをするのだ。願わくば千手観音の慈悲と無私の心を持って。

30代でそれなりに色んなこと成し遂げたんじゃないかしら…と思っていましたが、全然まだまだ。
40代になってようやく真人間の道が見えてきました。
大好きな発酵文化の未来のために、死なない程度の荷物を持ち、かつ周りの人たちの力も借りながら今年も一年頑張りたいと思います。

いつも応援してくれている、気にかけてくれているみんなありがとう。
お店のみんなや友人たち、家族にも感謝。
死なないようにがんばります。

 

 

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