旅でワンダーな気持ちを思い出す。

今回の海外滞在、思ったよりも忙しい。

ブダペストでは昼間は学会の聴講とワークショップの準備、夜は参加者や主催者との会合で忙しかったし、トットネスのシューマッハカレッジでは毎日朝7時から夜10時くらいまでスケジュールがぎっしり。しかも週末はカレッジでこうじづくりワークショップを開催したり、大工仕事や庭仕事を手伝ったりしていたので、のんびり一人になって考え事でも…という思惑は粉々に吹き飛んだ。

朝から晩まで間断なく膨大なインプットを続けているので、パソコンを開く元気も出ない。大変ハードではあるけれど、しかしアウトプットするヒマがないほどの状況というのは、去年見事にオワコン化した僕が待ち望んでいたことなので、とてもうれしい。

・僕がオワコン化する理由。報酬は今でも未来でもなく、過去に支払われる。

今回のヨーロッパ滞在で実感しているのは、時代が大きく動いているということ。良きにしろ悪きにしろ、もう今までのままの文明を続けていくことはできない。

だとしたらどうする?僕に何ができる?

という、ラディカルな問いが、新しい視点を生む。新しい視点は、必然性のある知識をもたらしてくれる。ラディカルな場所から始まる知識だけが、僕だけの引き出しになる。

(流行りに乗るための、あるいは理論武装するための知識はただのトリビアだ)

今回の旅は、10代の時にはじめてバックパッカー旅行に出た時のような、未知なものへのワンダーな気持ちにあふれている。

今ここで学んだことを咀嚼したら、また何か語るべきテーマが生まれているような予感。

それまで、もう少しのあいだ、めいっぱい旅の空気を吸い込んでいたいのだぜ。

 

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小倉 ヒラク

発酵デザイナー。1983年、東京都生まれ。 「見えない発酵菌の働きを、デザインを通して見えるようにする」ことを目指し、全国の醸造家や研究者たちとプロジェクトを展開。下北沢「発酵デパートメント」オーナー。著書に『発酵文化人類学』『日本発酵紀行』など多数。