最後の打ち合わせは、虎ノ門にて金沢工業大学事務局の皆さまと。「発酵デザイン」のプロジェクトをご一緒しませんかと打診があったのですが。
な、なんと…!ついに研究機関からこんな声がけがあるとは。
これはつまり、ワケもわからぬまま作った「発酵デザイン」という概念が、ついに現実世界に届いてきたのであるよ。
さて。
話を聞いてみると、石川県(←ここも発酵大国だからねえ)の発酵文化にイノベーションを起こすような取り組みを考えていたら、僕のとこに行き着いたらしい。
バイオサイエンスとローカル経済を橋渡しできるような「学際的なプロジェクト」がやれるといいなあ…とイメージしたいたところに僕のやってきたことがポコッとはまったそうな。
おお、なんということだ。
そしてその着想は先見の明があるのだよ。
あまり知られていないことだが、日本の発酵産業は環境工学や医療を含めると軽く兆単位の市場規模であり、今後さらにその技術が応用される領域は拡大されていく。
その時に、専門技術と具体的なサービスやプロダクトの間をつなぎ、直感的に使えるデザインに落としこむという発酵デザイナーの仕事は無限のニーズがある。
しかし、現状はこの広大な海のなかで船を漕ぎだしているのは、僕ただ一人なのであるよ(←けっこうさびしい)。
そこで、もし今回のプロジェクトが実現したらぜひ全世界に向けて「発酵デザイン」という新領域があることをアナウンスできる機会にしたいし、大学機関から未来の発酵デザイナーが羽ばたいていくようなきっかけになったらいいなと僕は真面目に願っている。
なぜかというと、日本は1,000年以上も微生物を応用したテクノロジーを発達させ、近代以降に西洋の微生物学の知識を取り込んだうえでさらに独自の発酵サイエンスを確立してきた文化的DNAがあるからだ。
もっと単純に言えば、キャプテン翼くんばりに「菌はともだち」なマインドセットを持っているのであるよ。
「MITがバイオイノベーションがアツい」という話を聞きつけて、「じゃあウチでもやりましょう」というのも先見の明はあるのかもしれない。しかし、それはあくまで「先進事例のキャッチアップ」という発想であって、基本的には後手に回っている。
この「キャッチアップの速度を競う」という現象にビジョンは存在しない。というかあんまし面白くない。そうではなく「発酵デザイン」という概念をソリッドに現実化し、むしろ世界に対して「先手を取る」ということが面白いのではないかと僕は思う。
激動期の社会には、大きなビジョンを持った日本人が登場してきた。日本の微生物学の方法論を示した高峰譲吉や坂口謹一郎博士、そして国連創設のきっかけとなる協同の精神を提唱した賀川豊彦(←いまCOOPの仕事でよく調べている)もそう。
自分たち自身がイメージした世界観を、自分たちなりの言葉とやり方で現実にしていく。そしてそれを外の世界の人たちと分かち合えるようにデザインしていく。僕はそういうことがやりたい。
金沢工業大学の皆さま、うまく縁がつながったら、高峰譲吉が登った山頂の景色をいっしょに見たいものですね。きっと風通しよくて、気持ちいいと思うんだ。