ポストSF世代の感性とは。

こんばんはー、ヒラクです。寝苦しい夜が続きますね。

先日「リトルトーキョー」なる場所を訪ねて虎ノ門に行って来ました。

greenzと東京仕事百貨が立ち上げた、「もう一つの肩書きがもてる街」というコンセプトのイベントスペースというか、シェアオフィスというか、そんな場所。

森ビルがデベロップしているバベルの塔みたいな巨大ビルのすぐ横、元お寿司屋さんをスタッフみんなで手作りしている味わいのある物件なんですね。

こういう場所を選ぶセンス、元の物件をまんま残しながら手作りで改装しちゃうセンス。

すごく「今っぽい」のだよな?。

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小学生の頃に見たSFのアニメや漫画の描く21世紀って「ピカピカの高層建築が立ち並ぶ未来の都市」の世界だった。六本木や汐留のごく一部のエリアだけ切り取れば外れていないのかもしれないけど、フォーカスをすこしずらしてみると、そこにはおびただしい数の「くたびれて、うらびれた昭和のレトロ物件」が残されている。

都心のど真ん中だってそうなんだから、地方へ行ったらその状況はもっとすごい。

山梨の甲府、静岡の伊東、滋賀の大津。「これどうすんの?」って言いたくなる街並みが延々と続いている。

結局、SF未来都市が日本中を覆うにはお金と資源が足りなさすぎたんだろうね。

ポストSF世代の僕たちにはどんな未来が待っているのだろう。

ずっと先を見通すのは難しいけれど、まあこんなことは言えるかも、

僕たちには、全てを望むようにゼロからつくるだけの資源は残されていない。

今この瞬間、過去の中に消えていきそうなものを、制約のなかで再生させていく。で、そのプロセスを「ワクワクできる」ようにデザインしなおしていく。

そういう行為を「創造的=クリエイティブ」なことだと定義する。

そんな感じの感性が「今っぽい感性」なんだと思うんですよね(そう考えると、自分の「感性」すら時代の制約のなかでかたち造られているわけだ)。

実際にその現場にいるとわかるんですけど、「ゼロからつくること」よりも「すでにあるものを直す」ほうが圧倒的に難しい(WEBサイトとかもそうでしょ)。

それはなぜかというと、自分の発想やイメージをそのまま反映させることができないから。必ず「前のひとの意向」とか「どうしても動かせない条件」とか「関わる人の固定観念」みたいものが入ってくる。

なので、まず「必要な条件」と「変える条件」をヒアリングして選り分けていく作業が必要になる。それが終わってからようやく「自分の発想とイメージ」を発動させることができるわけです。

つまり、自分で一から作り上げるプロセスよりも、文脈を理解して関係者に納得してもらうという「コミュニケーション力」が試されるわけです。

そんで、そういう状況を「面倒くさいなあ」とナチュラルに思わない人が、時代に必要とされる人なのでしょうね。

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小倉 ヒラク

発酵デザイナー。1983年、東京都生まれ。 「見えない発酵菌の働きを、デザインを通して見えるようにする」ことを目指し、全国の醸造家や研究者たちとプロジェクトを展開。下北沢「発酵デパートメント」オーナー。著書に『発酵文化人類学』『日本発酵紀行』など多数。