鳥の描きかた

はじめに ふたのひらいた カゴを 描こう

つぎに なにか 鳥の 好きなもの

むずかしいもので なくていい

きれいで 鳥のよろこびそうな ものを描こう

それから その絵を そとにおこう

おうちのにわ 林や森のなか

木のうしろに 絵をかくして

じっと しずかに いきをころして

そうしたら ほら 鳥がやってくるよ

でも鳥が きみのカゴに はいるには

ながい 時間が かかるかも

くじけないで 待ってて ごらん

はやいか おそいかは 絵のできには かんけいない

鳥が やってきた

しずかに しずかに

さあ カゴにはいったよ

ペンをだして とじた ふたを 描こう

消しゴムで カゴの格子を 消していこう

まちがって 羽を消さないようにね

そうしたら 絵のなかに 木を描こう

いちばんきれいな 枝をえらんで

つぎは みどりのはっぱ

風の そよぎ

お日さまの きらめき

どうぶつのなきごえや 初夏の あたたかさ

ぜんぶ 描きおわったかな

さあ 鳥が うたいだすぞ

もし うたわなかったら

きみの絵は 好きじゃない というサイン

もしうたったら だいせいこう!

そうっと 羽をいっぽん ぬいて

絵の はしっこに

きみの名前を サインしよう

jacques prevert “pour faire le portrait d’un oiseau”

traduit par Hiraku Ogura

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小倉 ヒラク

発酵デザイナー。1983年、東京都生まれ。 「見えない発酵菌の働きを、デザインを通して見えるようにする」ことを目指し、全国の醸造家や研究者たちとプロジェクトを展開。下北沢「発酵デパートメント」オーナー。著書に『発酵文化人類学』『日本発酵紀行』など多数。