こちらのブログでは久しぶり、ヒラクです。
今年も例年のようにたくさん文章を書いてはいたのですが、雑誌や新聞などの連載記事や寄稿、そして発酵デパートメントのECサイトやメルマガの記事等がメインになってこちらのブログはご無沙汰になっておりました(来年2022年はもう少し折々に近況報告も兼ねて更新したいものです)。
今年は負け続けの年でした
振り返って2021年を一言でいうなら「負け続けの年」でした。
ここ5年くらいは毎年何かしら大きなプロジェクトの立ち上げや、新しいテーマの発見など、手応えのある挑戦ができていた。のですが、今年は基本的にそういうことがありませんでした。
去年から長引くコロナ禍のなか、2020年春の緊急事態とともにはじまたお店を存続させるので精一杯、それなりに国内でフィールドワークをしたりもしたのですが、これまでにない「これだ!」というようなテーマやトピックスを捕まえることもできず、お店の運営や人間関係に悩みまくり、先の見えない状況のなかでの決断の連続…となかなかハードな一年でした。
仕事の成果としてもわかりやすく上手くいったものはなく、地味なことをコツコツ積み上げながら三歩進んで二歩下がる、ならまだ良いのですが、ちょっと積み上げたと思ったらガラガラ崩れて二歩進んで三歩下がる、の試行錯誤の連続。
毎年なんだかんだいって出版していた著書も、今年は書き終わることができず、前に進んでいる手応えのない、停滞(あるいは後退)している感の強い一年。なんとか崩壊することなく年の瀬を迎えられたのも、ひとえに周りのみんなに支えられてのことでした。
そう。今年の僕は負け続けのハードな一年でした。
認めよう、僕は負けたのだ。
たまには止まることも悪くない
自分の中で進んでいる手応えのある時ほど周りからは「?」と思われてたりするし、停滞期にこれまでやってきたことが認めてもらえるようになったりする。自分の実感と外からの見え方はしばしば食い違う。停滞期もまた意味があり、常に進み続けるといつか誰もいない彼方に消えてしまうんだよ…。
— 小倉ヒラク | Hiraku Ogura (@o_hiraku) October 1, 2021
いやー今年はもうダメだこりゃ…と観念した秋頃にこんなツイートをしました。
僕の実感としては「負け」の一年だったのですが、2021年はかつてないほどマスメディアに登場していた年でもありました。テレビはじめ新聞やラジオ、雑誌の特集など数えきれないくらいたくさんの媒体に僕の活動やお店のことを取り上げてもらいました。取材してくれた皆さま、本当にどうもありがとうございます。
でね。
自分は停滞しているかわりに、自分の周囲はよく動いている。
この2つは関係していると思うんですよね。ここ数年の先走っていた過去の自分の動きが、今年止まった自分に合流した。だから今年の自分は数年分の動きが一つにまとまって分厚く見える。だから周りの人が見つけやすいし、理解しやすい。
そう考えると、たまに停滞することも悪くない。
常に進み続けると、そのうち誰にも見えない存在になってしまうので(それはちょっと寂しい)。
以前能楽師の安田登さんから、世阿弥の「男時(おどき)」と「女時(めどき)」の話を聞きました。男時は勢いがあってどんどん前に進んで結果が出る時期、女時は不安で前に進めず結果も出ない時期。人生にはこの2つが交差しながら紡がれていく。常に勢いの良い時期だけを過ごすことはできないわけです。
世阿弥にならうならば、今年は迷いの時期。ならば開き直ってちゃんと負けよう!と秋口くらいに覚悟して、状況が改善されないことを前提にして、それでも自分のできることを淡々とやり続けた年末。ようやく来年以降への突破口が見えてきた(ような気がする)。
お店のこともそうだし、来年出る本(読み物としては3年ぶり)の方向性、さらに秋に向けての展覧会の巨大なプロジェクトなどなど。来年はかなり賑やかな年になりそう(たぶん)。
発酵の肝は仕込みだ!
2021年はそんな感じでダメダメながらめちゃ忙しかったわけなのですが。
10月以降そもそもたいして大きくないキャパシティが崩壊して、ほとんど休みのとれないハードスケジュールが続きました。
毎日の予定をこなすのが精一杯で、仕事ご一緒してくれた皆さまと丁寧に向き合えないことも多かったな…というのが今年最大の反省。忙しすぎは信頼を失くす…!そもそも少ない信頼ゲージがビックリするぐらい目減りした2021年後半。皆さまほんとにすいません。
ということで。
2022年は良いアウトプットに励むためにも、はじめましての取材やイベント出演は控えます。新規の仕事はこれまでご縁のあった皆さまとだけ。すでに決まっているやるべきことに集中したいと思います。
僕自身はたいして成長しない人間なのですが、5年前と比べると自分を取り巻く環境が大きく変わりました。これまで知らなかった色々な業界、領域の人たちからお声がけしてもらう機会がどんどん増えて、関わる仕事の規模もどんどん大きくなっています。
それはそれで嬉しいことなのですが、みんな忘れないでほしい。僕がポンコツ野郎であることを。眠くなるとするお昼寝しちゃうし、体力ないし、〆切に追われているはずなのにゾンビ映画とか見ちゃうし。基本的にキャパシティ小さめなわりにはマイペース人間なので、2022年はキャパオーバーしてさらに信頼ゲージを減らしたくないので、人前に出る仕事はぼちぼちにしたいと思います。
そう。2022年こそ、僕は菌になるのだ…!
それではよいお年を。
【追記でお礼】今年仕事をご一緒してくれた皆さま、発酵デパートメントのみんな、イベントやワークショップに参加してくれた皆さま、本当にどうもありがとうございました。来年も良きご縁を。