共感型ビジネスの鍵は、アーカイブかもしれない。

「やっぱりこれからのビジネスは、共感型だと思うんだ」

…なんて最近よく聞きますよね(このブログを読んでいる皆様は特に)。

えーと、うん。それは間違いない。そうだとすると、じゃあ「どうしたら共感してもらえるのか」って話になるんですけど、実は答えは結構具体的で。

「いかにアーカイブするか」

って話になるのでは、とこないだのキロク学会で気づいたんですね。

アーカイブ=共感が集まる箱である。

例えばNPO法人。

いかに寄付を募るかが経営の死活問題に関わってきたりします。

寄付してもらうためには、当然その組織のやっていることに共感してもらうことが大事なんですけど、どのポイントで「共感」のトリガーが引かれるか。

考えてみればそれって結構具体的で、WEB上の活動実績(ポートフォリオ)だったり、配布している会報の出来だったりする。

実際のアクティビティに関わる人は通常そんなに多くない。ので、そのアクティビティの「アーカイブ」を知って「ああ、ここ良いことやってるな」ということが外に伝わる。つまり、実際の出来事の「キロク」の出来が財政状況に直結してくるのですよ。

NPOでなくとも、例えば僕たちがやっているプロジェクトなんかは、便利さとか安さだけでは勝負できないのである程度プロジェクトの背景を知ってもらわないと選んでもらえない(そりゃそうだ)。

ということはですね、アーカイブとはつまり「共感の集まる箱」みたいなものだとも言えます。

いくら良いことをしていても、そのキロクがコンテンツとして残らないと、結局共感のトリガーは引かれることはない。

そして、コンテンツを収める箱がつまり「アーカイブ」の仕組みです。

フレンドリーで、魅力的な箱をつくろう。

では次のステップ。

いま僕たちは「コンテンツ供給過剰気味の社会」に住んでいます。なので、箱を作っただけではそれはコンテンツの海のなかで沈没してしまいます。

つまり、作っただけで威張ることはできない。その箱は、フレンドリーかつ魅力的であるのが望ましいわけです。

じゃあ何がフレンドリーで魅力的なのかって話ですよね。

ちょっと分解して考えてみましょう。

「フレンドリー」さに関していうと、ざっくり2つの要素があるかなと。

1つ目は、情報がキツキツじゃなくて、検索性の高いデザインとインターフェイスです。残念な例でいうと、自治体のホームページなんかですね。

はじめての人でも迷わず、何度来ても奥が深いというユーザー体験の設計ができるかどうかが差になる。

2つ目は、「言霊」かなと。「アタイら良いことやってんだから、正座して聞きなッ!」というよりは「こういうことやってんだけど、アナタはどう思う?」という「自分の正当性を自分で定義しない」という基本的な姿勢があるのが好ましいかなと僕は思います。

それで「魅力的」の定義といえば。

これは正直「面白いかどうか」になるよね。文章術だったり、記事の構成だったり、写真の美しさだったり、デザインの良さだったり、僕たちが雑誌を読んだ時に「最近のポパイは面白い」とか「やっぱ現代農業は突き抜けてんな」とかそういう印象の裏側にある色んなテクニックの総体ということになります。

おおそうか、そうなのか。ここまで書いてきてわかった。

「共感」をビシネスの原動力にしたいと思う人は、いま「情報分類&設計のエキスパート」および「雑誌の編集者」のような人材が必要になってきているのだな。これからそうういうビジネスを立ちあげたい人は、「学芸員/博物館員」とか「フリーペーパーの編集経験者」とかをリクルートするのが吉ですね。

松岡正剛さんがかつ言ったように、いま僕たちは「編集技術」と「情報設計術」が社会一般のスキルとされる世界に立ち会っている。

その複合技である「アーカイブ」があちらの世界とこちらの世界を隔てるキーなのかもしれないと思った次第。

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小倉 ヒラク

発酵デザイナー。1983年、東京都生まれ。 「見えない発酵菌の働きを、デザインを通して見えるようにする」ことを目指し、全国の醸造家や研究者たちとプロジェクトを展開。下北沢「発酵デパートメント」オーナー。著書に『発酵文化人類学』『日本発酵紀行』など多数。