「メジャー感」とはなにか。名も無き人の人生を肯定するということ。
新緑芽吹く山梨の我が家。冬が終わったよ〜
今日のエントリーのテーマは「メジャー感とはなにか」。
親友の村上烈・ナナ夫妻とともに行ってきた「アラバキロックフェス @ 仙台」。メジャーなアーティストを見るぞ!と気合を入れて参加したのだけれど。なかでもスピッツとウルフルズのライブに大変感銘を受けました。
でね。そこで気づいてしまったのですよ。「メジャー感とはなにか」ということに。
メジャーであるということは、パーソナルであるということだ
メジャーであるということは「不特定多数の人へ向かっている表現である」と思っていましたが、実は違いました。メジャー感を感じさせる表現であればあるほど、実は「自分だけに向かって歌ってくれている」と錯覚させる力があるのです。
なぜそのように感じさせるのか。
それは「完璧に自分に歩み寄ったところから表現がデリバリーされる」から。ええと、もっと具体的に言えば「聴いた瞬間にすぐに心に入ってくる」ということです。
「これって、どういうことを言いたいのかな?」と類推することなく、瞬時に認識できる表現なんですよ、スピッツもウルフルズも。この「わかりやすさ」がまず大前提。
その上で「自分の実体験とシンクロしてしまう仕掛け」があるんですね。
えーとね、これちょっと解説しますと「普遍的なテーマ」を扱いつつ、「超具体的なディテール」を描くという二段構えになっておるのです。
「普遍的なテーマ」ってのは、まあつまり恋愛だ。世にラブソングはいっぱいあるけれど、どうしてメジャーなアーティストの歌が風化しないのかというと、歌詞の抽象度がいい感じなんですね。
スピッツの「運命の人」の冒頭の歌詞を見て下さい。
バスの揺れ方でわかった人生の意味が解った日曜日
「翼広げて〜」とか「お前を守るために〜」ではなく、「バスの揺れ方」で人生の意味がわかって、しかもそれがなぜか「日曜日」。突っ込みどころ満載ですが、なぜかこういう言葉を聴くと「ああ、そういえば僕にも人生の意味がわかった日曜日があったな」と思ってしまう(←その後、実際にその日曜日はあったことになる)。
もう一個、ウルフルズの「バンザイ」の一節もいいんだ。
スゲェスゲェ幸せな気分の時は帰り道で君を思い出す
コンビニをうろうろしながら思い出し笑いをかみ殺す
おー、うろうろする学生時代のトータス松本(←たぶん学ラン)の姿が思い浮かぶ。そしてこの歌詞もまた「そういやオレもうろうろしたぞな…」と自分の青い時代をフラッシュバックさせるのであるよ。
整理しますと、「わかりやすい」が前提にあって、その上で「テーマが誰にでも当てはまる普遍的なもの」なんだけど、実はディテールは「具体的かつ個人的」というステップを踏むと「受け取る人の人生とシンクロする」という現象が起こる。
この瞬間、「あ、マサムネさん、ワタシのために歌ってくれてるんだ」と激しく感情移入する事態が起きる。そうやって涙を浮かべているマサエちゃんの隣のチエミちゃんも「このうたはワタシのことを歌ったものなの!」と号泣していて、その隣のサトシくんも(以下同)。
メジャーであるということは、名も無き個人の人生を肯定する
それではもうちょい先に進もう。
メジャーな表現は「自己啓発系」ではない。押し付けがましいことはしない。
では何をするかというと「人生色々ある。嬉しいことも悲しいこともある。どんなヤツにも人生がある。それでええねん」と言うだけなのである。
よく駆け出しのアーティストが「◯◯のメッセージを伝えたくて〜」なんて鼻息を荒くしているが、表現がメジャーになってくると、いわゆるメッセージ性は消えていき、「それでええねん」というという肯定感がブーストしていく(←これもしかしたら日本特有の現象かもしれないと、マーヴィン・ゲイの”what’s going on”を思い浮かべながら思った)。
「変われ」と言われても人は変わらない。
人が変わるのは、自分の「変わろう」という気持ちを肯定できた時だ。
そして人が自分を肯定するときには、誰かが肯定してくれることが大事だ。
そして草野マサムネさんやトータス松本さんは、その歌声を使って何万人の観客に「同時個別カウンセリング」をすることができる。まるで、昔からの友人のように「お前の人生はそのままで尊い」ということを告げる。「バスに乗って恋人に会いにいく自分」、「コンビニで思い出し笑いをかみ殺す自分」の価値を「アート」として僕たちに贈り返してくれる。
この衒いのなさを「メジャー感」と言うのであるよ。
さて。
私事で恐縮ですが、僕これから新しいアニメや絵本の制作が始まります。
そこで目指すのは「メジャー感のある表現」。次のステップに進むタイミングで、アラバキロックフェスに行けたのは本当にタイムリーでした。あっこちゃん、千浦さん、頑張ろうね。
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