WEB制作で起こる、デザイナーのアイデンティティ・クライシス。
こんにちは、ヒラクです。気づいたら、井の頭公園の紅葉が美しい時期になりました。
さて。
ただいま、SMALL WOOD TOKYO のWEBサイトを絶賛改変中でして。
最近、自社プロジェクト・クライアントワーク問わずWEBの仕事がどんどんと増えています。元々僕グラフィック上がりなもんで、WEBはやっぱり全然「思想が違う」のよね〜、とつくづく思うんですね。
というわけで、グラフィックデザイナーから見たWEB設計の特質をメモしてみることにします。
情報を入れる箱の仕様から設計する。
まず特筆すべき違いは、コンテンツ設計の前に、「コンテンツを入れる箱の設計」が非ッッッッ常に重要であること。
紙のデザインって、紙の物質性から逃れられないんですよ(当たり前ですけど)。
折ったり、ページを束ねたりしても、原則「ページ順に時系列で見る」というルールが前提になっている。大きさもA版かB版の定形が基本。開く・めくるという動作が「コンテンツ送り」の大原則になっている(工作とか仕掛け絵本は別で、これは紙を使ったプロダクトデザインに近い)。
これは紙の限界と言えると同時に、実は「フレームは決まっているので安心してコンテンツとか表現のことに集中してくださいね」という親切でもあるのですよ。
対してWEB。いや〜これが大変。物質性を持たないものなので、紙みたいな制限が存在しないんですよ。
まず「大きさの枠」が存在しないので、1ページあたりの情報量をいくらでも増やせる。つまり、無限にスクロールしていったり無限にアニメーションしていく、「ネバーエンディング・ページ」というものが選択できる。そして、紙での「ページをめくる→次のページ」という原則も崩壊し、「ここのリンクをクリック→他のWEBサイト」という、紙でいうとページをめくった瞬間に他の本の特定のページが出現するという不可能が可能になる。
ということで、まずは「どのようにコンテンツを収め、複数のコンテンツ間の導線を引くか」みたいな情報設計が必要になる。
それは取りも直さず、「どのようにディスプレイの向こう側の人とコミュニケーションを取りたいか」というコミュニケーションの設計を指します。
紙の場合は、その物質性によって「あなたができるのはここからここまで」というフレームが決められていたけど、WEBはそのインターフェイスの技術革新によって「たいがいなんでもできまっせ。おまえさんで決めてくんなはれ」という、設計者への丸投げ状態になった(←いまここ。WEB制作者が立っている地平)。そして、コミュニケーション設計に係わる大きなファクターとしては以下↓
ユーザーの行動が『見える化』される
これもまた紙と全然違います。
10年昔は、アクセスカウンターぐらいしか指標はありませんでしたが、今やgoogle analyticsというサービスが登場したことにより、自分のWEBが『誰にいつ、どのように、どんな頻度で、どれぐらいの時間、どこのページを見られているか』全部統計とれちゃうんですね〜。
100の記事があったとしたら、週刊少年ジャンプみたいに全部ランキング付けができます。
トップページの全てのリンクボタンに対しても、ランキング付けができちゃう。
記事から記事への遷移もわかるから「読者の大半は黒子のバスケ→ワンピースの順で読んで、その後は暗殺教室かNARUTOかに行く人が別れる」みたいなこともわかる。
さて、この「ユーザーの行動の見える化」によって、何が起きるのか。
あえて言おう。それは
デザイナーのアイデンティティ・クライシスであると。詳細は以下↓
デザイン手法が徹頭徹尾『帰納法的』になる。
これまでの話をいったんレジュメします。
WEB制作ではまず、
「コンテンツを入れる箱の設計」が必要で、そのために
↓
「ユーザーとのコミュニケーション設計」が必要で、そのときに
↓
「ユーザーがどのように行動しているか」を分析する。そうなると…
↓
「エゴを捨てて、まずは外部データを分析せよ」ということになる。
つまり、発想する前に、分析せよということなんですね。
「こういうものを作りたい or 作ったらいいんじゃないか」ではなく、「分析した結果、こういうものを作るのが必然」みたいな風に思考方法がぜんぜん変わってくる。
なので、デザイナーの個性は(おお、恐ろしいことだが言ってしまおう)「発想の独創性」ではなく「分析手法の独創性」に置き換わる。
そう考えると、今始まっているのはデザイナーのサイエンティスト化なのかもしれない…。
【追伸】というわけで、来年年明けに、親友のWEBプロデューサー村上烈くんと一緒に『WEBクリエイター以外の、WEB制作入門』というイベントを++オフィスで開催します。詳細は12月半ばにまたお知らせします。「そもそもWEBサイトって、何のためにつくるの?」そんな素朴な疑問にお答えします。