仕事における「キャッチ&リリース」。

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昨日事例紹介のエントリーを書いた通り、みつか坊主新店舗のプロジェクトが終わりました。
このプロジェクト、ヒラクのなかで、目下「2013年度もっとも考え抜いた仕事」にノミネートしております。

作業量が膨大だったとか、クオリティチェックが厳しかったプロジェクトは他にもあるのですが、これだけ幅広い領域のことを考え、まとめていくものは今までなかった。

例えば「建築」という領域だと、デザインに入る前の「下水道どうする」とか「天井の防音どうする」とかから考える。「コミュニケーション」という領域だと、スタッフがどういうモチベーションで働きたいか、お客さんがどんな気持ちで食事を楽しむか、ということを考える。

「スカウト」の領域も大事で、建築だけとってみても、設計はもちろん設備や構造のことについては素人なわけだから、「そういうのができそうなスペシャリスト」を呼んでくることが必要になってくる。

さらに「経営」の領域も不可避。店舗をつくるからには収益を上げたいわけだから、お店の回転率とか単価とかのことも経営者といっしょに話して考える。

そういう自分の専門外の分野を、「素人の立場」で一生懸命考えぬいていく。

これ、なかなか奥が深いんですよね。

全てのことの専門知識を得ることは不可能なので、何が必要とされるかというと「線引きする勘」です。
まずはいったん「自分のこととして悩み」、そのあと「あ、ここから先はムリ」と言って、誰かに引き取ってもらう。その誰かがいなかったら「よくわからんけど、たぶんこの人ならできる」という人を探してきて「こんな感じの仕事を頼みたい」と説明するわけです。
この「キャッチ&リリース」のタイミングの丁度良さ。今回これをだいぶ訓練しました。
「大枠だけイメージをつくったら、あとは専門家に任す」、そんな簡単には事は運ばないのですよ。空調の室外機の設置場所について、建築のプロと一緒に悩む。チラシに入れる価格表記について、ラーメン店経営のプロと一緒に悩む。
何にせよ自分のこととして引き受け、かつタスクを抱え込まないという責任感があるんだかないんだかよくわからない役割がプロジェクトが動いていくときに必要なんですね(今回改めて時間したぜ)。
考えてみたら不思議なもんです。

訓練していくと人間は不思議な直感が働くようになってくる。
自分にはできないことができそうな人を見分ける力(なんで自分ができないのに見当がつくのか)。
自分では知らなかったはずの答えを、対話を通して引き出す力(他人と自分の思考をシンクロさせる)。
おかげさまで、鍵谷くんや長谷川さん、平沼さんのおかげで「建築」という領域にけっこうディープにシンクロしたし、「飲食店経営」という領域を、斉藤さんや西さんのおかげで「自分が経営したらどうか」という視点まで掘り下げて考えることができた。
こういうのを正に「仕事を通して成長する」という風に表現するのではなかろうか。
僕の勝手な思い込みかもしれませんが、今回はプロジェクトに関わるコアメンバーがお互いのことをミラーニューロンのように反射しあって、大量の刺激を交換しあえたのでは。
ううむ。良い仕事だったぜ。
みなさま、またチームを組めたらヒラクは幸せですぞ。

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