もはや「糠床の時代」がすぐそこに。 ~乳酸菌に関するお話

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「発酵デザイナー」と名乗ってから、ほんとうに「発酵デザイナーとしての仕事」が来るようになった(←名前って大事ですね)。

こないだは、カタログ通販大手の商品開発部の人たちが++のオフィスを訪ねてきた。
「発酵にフォーカスした新事業を考えている」そうなのである。

++に連絡をくれた女性スタッフが、「いま、発酵がキテいる!」と直感し、資料を調べたりもやし屋(麹の卸問屋)さんの話を聞いたりしたつくった企画書に、80過ぎの会長が「いいぞいいぞお」となったらしい。(その書類には、なんと僕が企画に関わったイベントもリストアップされていた)
ターゲットは「30~40代のセンスの良い女性」ということで、「万田酵素」とか「発芽玄米」のようなものとは違う、お洒落なものになる予定だそう。

改めて、「発酵」が市民権を得るようになったのね。

へ〜、そうなのか。
思えば6年前の夏、京都の下鴨神社の古本市で小泉先生の本を見つけたのがきっかけで発酵醸造学にハマり、五味醤油の末妹といっしょに小泉研究室へおみやげを抱えて「お参り」し、神から「お前ら何してるかよくわからんけど、発酵醸造学の素晴らしさを世に伝えるべし」とミッションを与えられてから日々コツコツと微生物の世界を研究してきました。
当初は「ハッコウ?光るヤツですか?」、「菌?バイキンとかウィルスですか?」と怪しい目で見られていたけど、今や時代は変わった。
イベントには、お肌ツヤツヤでお洒落な女性たちが集まるし、若い世代の醸造家たちも協力してくれるようになった。「麹って、要はカビでさ…」と言っても怪訝な顔をされなくなった。

日本各地の、「まちの自慢のオーガニックカフェ」のスタッフさんは「てまえみそのうた、知ってます!」と目をキラキラさせて言ってくれるし、いや、本当に楽しい時代の流れになってきたなあと思うぜ。

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次のトレンドは、「糠床」だッ!

で。話は商品開発に戻ります。
これからナウでヤングでヒップな発酵商品をつくるなら、「糠床」のリノベーションがいいと思うよ。

糠床って、スゴいんだ。
何がスゴいかというと、時間をかけて色々な食材が複雑に発酵していくことによる「菌の共和国=ミクロコスモス」の多様性なのです。
糠をスターターとして、色んな食材のタンパク質とか糖分とかに菌がわんさと寄ってくる。それを何年とサイクルさせていくうちに、麹菌、乳酸菌、酵母菌、さらに混ぜる人の手にくっついている常在菌とか、各種雑菌がひしめきあう「バンコクのカオサン通りにあるドミトリーの相部屋」みたいな状況ができていく。

さて、そんな糠床。ヒラクが注目するのはだんぜん「植物性乳酸菌」だね。
糠床1gあたり10億匹、つまりインドの人口よりちょっと少ないぐらいの菌たちが糠床にぎっしりと詰まっている。で、この植物性乳酸菌というのは、ヨーグルトなんかの「動物性乳酸菌」よりも、麹菌や酵母菌との共存にむいている。さらに!歴史的に動物のお乳を飲んでこなかった日本人のお腹によくマッチしている。腸のなかで免疫をつくるのに活躍するんですね。

「乳」酸菌というぐらいだから、ヨーグルトとかチーズのことを第一に思い浮かべるけど、乳製品のない日本食でも乳酸菌は重要。
そのなかでも、もっともファンキーに乳酸菌を摂れまくる食べ物として、僕は糠床につけたぬか漬けを推すね。

「中村部長、これは、ビシネスチャンスではないですか…!?」
「むむむッ…!!山田クン、今すぐ糠床についてリサーチを開始したまえ!」

というわけで。
糠床でなにか開発したろやないか、という人はご連絡くださいね。

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