旅のゴールに辿り着き、目指すは海の外へ!2019年の振り返り。

▶︎ 読みもの, 発酵ツーリズム&日本発酵紀行,

春に全国47都道府県の旅を終え、渋谷ヒカリエの発酵ツーリズム展を開催。夏には新著の『日本発酵紀行』を出版し、ヨーロッパ講演ツアーへ。秋から冬にかけて雑誌Discover Japanまるごと一冊監修はじめ様々なメディアで大きめの仕事があり、年末には中国雲南省へのディープ発酵旅の様子が雑誌TRANSITの特集寄稿に。さらに12月には展覧会が事業化し、5年ぶりに会社立ち上げ。来年4月にオープンするお店『発酵デパートメント』の事業がスタートしました。

これまでの人生で最もよく働き、同時にインパクトの高い仕事をした一年でした。5年前に発酵デザイナーを名乗り微生物の世界で生きてくぞ!と決めた時に「とりあえずここまで辿り着きたいな」という場所に来てしまったのが今年。

前著『発酵文化人類学』執筆からスタートした日本の発酵文化を巡る旅が物理的に終わり、やりたいと願ったことが(いったん)達成されたのが2019年。

旅が終わった…という感慨とともに、毎年恒例の1年の振り返りブログをまとめました。

・挑戦して凹んで限界への旅に励んだ2018年の振り返り。

・一球入魂!旅と学びと出会いに満ちた2017年の振り返り。

今年の活動の振り返り

今年の僕は何やっていたのか、時系列で振り返るよ。

▶1〜3月:47都道府県の発酵文化を巡る旅

47都道府県のローカル発酵文化を訪ねる旅の大詰めでひたすら日本各地をまわっていました。写真は北海道東の標津町。アイヌと会津藩が出会って生まれたサケの山漬けを求めてマイナス30℃ちかい極寒の地を歩き回っていた時の一枚。日本のDOPEな現場に行きすぎて年始からアタマがおかしくなっていました。

▶4〜7月:渋谷ヒカリエ “Fermentation Tourism Nippon” 展開催

そして始まった発酵ツーリズム展。全国47都道府県から一つずつユニークな発酵文化を紹介する、味噌・酒・醤油がほとんど出てこない前代未聞の展覧会は、あまりにも盛況で当初予定していたスケジュールを二週間延長し、最終的には来場者数5万人に。

海外メディアも入れると400近いメディア掲載、期間中のミュージアムショップの記録的な売上、全国の醸造家が登場する豪華イベント×45回などなど、これまでの僕の仕事のなかで最もインパクトのある集大成のプロジェクトとなりました。関係者&応援してくれた皆さま、本当にありがとう…!

プロジェクトの詳細はこちらをご一読あれ。
・来場者5万人!発酵ツーリズム展を振り返る12のトピックス

▶5月:新著『日本発酵紀行』出版

展覧会の公式書籍として、僕の二冊目の著書『日本発酵紀行』がリリース。専門書っぽかった前作『発酵文化人類学』とは打って変わっての紀行文形式。事前予約の時点から話題になり、半年で1万部を超えました(もうすぐさらなる重版)。

高揚感とともに書き上げた一冊目とは違い、二冊目はのたうち回りながら書いた労作。人生ではじめて「書く苦しみ」を味わいました。本を書くってほんと大変だ…。

▶6月:ヨーロッパ五カ国講演ツアー

6月には二週間かけてヨーロッパ五カ国の講演&レクチャー行脚。イタリア〜チェコ〜ハンガリー〜フランス〜スペインでのべ400人以上に発酵文化の面白さを伝えてきました。

とりわけ20歳の頃に住んでいたフランス・パリでは旧友とも再会してほんと嬉しかった。来年はパリを拠点にしばらくヨーロッパで仕事するよ!

・ヨーロッパツアー無事終了!400人に日本の発酵文化を伝えてきたよ

▶5〜8月:『日本発酵紀行』出版ツアー

5月から7月は、週末にヒカリエで展覧会イベント、週日は日本各地で出版イベントというイベント祭りでした。新著を注文してくれた本屋さんでトーク行脚して、各地の発酵ラバーがあたたかく迎えてくれました。今回の出版のテーマが「本屋さんにとって意義ある本」だったので、ある程度結果が出てよかったデス。

なお8月には、神楽坂のかもめブックスにて『日本発酵紀行』をテーマにしたミニ写真展が店長の前田さんキュレーションのもと開催。素晴らしい展示で感動したよ…!

・発酵する文学。神楽坂かもめブックスにて『日本発酵紀行』展開催中!

新著もたくさんの人に読んでもらえてほんと光栄です。

▶9〜10月:雲南章へのディープ発酵旅

展覧会が終わって一息ついた後、三週間弱の中国雲南省の旅へ。きっかけは『発酵文化人類学』の担当編集、ハシモトさん。雑誌TRANSIT編集部に移籍したハシモトさんから「中国のDEEP発酵文化を掘りにいきませんか?」とお声がかかり、中国の西端、雲南省を国境付近を南下しながら、様々な民族のローカル文化を巡る旅に。

この旅の様子は年末発売のTRANSIT「中国の食」特集に寄稿されました。ハードな旅に挑んだハシモト選手は、リス族の村に移住するよう説得されていたよ…!おつかれ。

▶10月:Discover Japan『すごいぜ!発酵』監修

今年も色んな雑誌やメディアと仕事しましたが、中でも大仕事はDiscover Japan『すごいぜ!発酵』特集号をまるまる一冊監修したこと。同時期に刊行されたdancyuの『おいしい発酵』でもけっこう大作の寄稿して、さらに年末TRANSITの紀行文に情熱を注ぎました。各編集部の皆さま、お世話さまでした。

・Discover Japan発酵特集監修 & dancyu発酵特集巻頭記事

▶11月:山梨のセルフビルド発酵ラボ稼働

そして!2017年から一年半以上かけてコツコツDIYしてきた、山梨の山の中のニュー発酵ラボが稼働。完全セルフビルドかつオフグリッドのウェットラボが実現してしまったー!

▶12月:会社設立&下北沢に店舗つくる事業スタート

発酵ツーリズム展が発展して事業化。下北沢の再開発地の商業施設 BONUS TRACKの目玉店舗の一つとして世界の発酵が大集合する『発酵デパートメント』をつくることに。下北沢駅すぐ近くの好立地に30坪を超える店ができるわけなので、法人を設立しました。あわせてお店の求人も開始。なんと!100人を超える応募をもらってチーム一同ビックリ。

・下北沢にオープンする『発酵デパートメント』の求人始まりました。

無事法人登記も終わり、さあ来年はお店オープンだ!というところで2019年の締めくくりでした。こうやって書き出してみると改めて色んなことがあったなあ…。

2019年のトピックスと来年への展望

▶個人戦からチーム戦へ

5年間一人でできる仕事の限界に挑んできましたが、規模が大きくなってきたため本格的なチーム戦に移行。発酵ツーリズム展ではチームビルディングを重視して、色んなプロフェッショナルの力の掛け合わせでできることを模索しまくりでした。

▶NukaBotプロジェクト発酵中

情報学者のドミニク・チェンさんとの出会いから始まり、韓国のデータサイエンティスト兼アーティストのソン・ヨンアさん、新鋭デザイナーの守屋輝一くんが加わり実現した発酵ロボットNukaBotがミラノ・トリエンナーレとヒカリエの発酵展で衝撃のデビュー。

テレビや雑誌に引っ張りだこで、来年はさらにバージョンアップした新型NukaBotがあのデザインミュージアムで公開予定。そして味噌や藍染などにも対応した新バリエーションの開発もスタートしました。NukaBotプロジェクト、来年も発酵しまくります。

▶過労で倒れました

11月半ばに無理がたたって倒れました。不安になって人生初の人間ドックへ。「余命半年です」と宣告されるのを覚悟しましたが、結果はあんがい健康でした。年末はゆっくり休んだし、2020年もがんばるぞ!

▶ヨーロッパに拠点をつくるよ

さいきんすっかりヨーロッパでの仕事が増えてきたので、来年以降ヨーロッパに拠点をつくることにしました。来年はまずパリに2〜3ヶ月滞在しながら、活動のさらなる海外展開にチャレンジします。やるなら本気でやるぞ…!
(ちなみに写真は昔住んでたベルヴィルを再訪した時の写真。ミュージシャンのマキさんと下町カフェの看板娘、ノワゼットちゃん)

▶幻の発酵文化が各地で復活!

発酵ツーリズム展をきっかけに、消えかけていた(あるいは消えた)発酵文化が復活。写真は青森県十和田のハードコア納豆『ごど』のワークショップの様子。現地で出会った野菜ソムリエ、矢部聖子さんの奮闘によって食の専門家やメディアから注目される存在に。

他にも、僕がオリジナルレシピを発掘して再現した大阪の『守口漬け』や、宮崎日南海岸の謎の海藻発酵『むかでのり』など、展覧会や書籍がきっかけでスポットライトがあたったローカル発酵食品がたくさん生まれて、ほんとに頑張ってよかったよ…!

▶三冊目の本の制作スタート!

『発酵文化人類学』『日本発酵紀行』に続く三冊目の本は東アジアがテーマ。東アジアを十字に走る交易路のなかで、どのように民俗と微生物が交差していったのか?例によって「言うのは楽しいが実行するのは地獄」系の壮大なテーマになります。刊行ははやくて2021年以降かな…。

ということで。展覧会が始まる前までは

「いやーこの企画終わったらもうあとは余生ですよ。わっはっは」

とか言っていたのに、蓋を開けてみれば来年も大変な一年になりそう汗。
しかし!五年のサイクルが終わり、次のゴールへ向かうために活動のフィールドをさらに拡げていかねばならない。さらなる高みをめざして、来年もがんばるぞ!僕は世界一の発酵デザイナーになるのだから。

それでは最後に展覧会期中、最もボロボロだった頃の僕の様子をどうぞ。

2019年にお世話になった皆さま、本当にどうもありがとうございました。
来年も良きご縁がありますよう。

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