【発酵ツーリズム佐賀】松浦漬け:捕鯨一族の執念が生んだ港の珍味

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松浦漬け(佐賀県唐津市呼子港)| 松浦漬け本舗

プリプリ・こりこりの高級珍味

僕の母方の実家は佐賀県唐津の玄界灘の漁村。虚弱児だった僕は中学生くらいまでよく唐津の実家に預けられて漁師のおじいちゃんに身体を鍛えてもらっていました。

その時たまに食べていた不思議な食べ物があったな…と思い出したのが『松浦漬け』。
これなんと!クジラの上顎の軟骨部分を酒粕漬けにして食べるという空前絶後の発酵珍味なのですよ。

佐賀県唐津の呼子港の一角に明治時代から店を構える松浦漬け本舗がこの珍味の唯一の製造元。クジラの上顎部分の油抜きしてスカスカになった軟骨を糖分や唐辛子などで調味した酒粕の床で発酵・熟成させていきます(詳細は門外不出のためシークレット)。

できあがるのはクラゲのような不思議なテクスチャーの食べ物。
食べてみるとプリプリ・コリコリで酒粕の発酵フレーバーが染み込んで味わい深い。
子供の頃は「何このヘンな味?」としか思ってなかったのですが、日本酒とあわせると地獄のように美味い。

今や唐津を代表する高級珍味として地元民に珍重されているようです。
パッケージもレトロで最高。カッパ型の有田焼の器とあわせてゲットしたいところです。

どうやってつくる/食べる?

▶How to 仕込み
A:クジラの上顎の軟骨を油抜き処理して刻む
B:糖分・香辛料などで調味した酒粕にAを漬け込む
C:数ヶ月以上発酵・熟成させて完成

☆詳しい醸造法は門外不出のため不明

▶食べかた
・酒肴として
・地元の人はご飯のおともにも

▶食べられている地域
佐賀県唐津一帯

▶微生物の種類
酵母、乳酸菌類

旅のメモ

松浦漬を考案した山下一族は唐津港で活躍した捕鯨組合の有力スポンサー。
つまり捕鯨一族の名主。クジラのことを知り尽くしているがゆえに考案された発酵食品であると言える。ちなみに江戸〜明治に獲れていたシロナガスクジラは超巨大で、時には30m級の大物が穫れたこともあったらしい。写真のような巨大クジラでは上顎の部分だけでも数十キロあったらしく、油を取った後の使いみちのない軟骨をなんとかしたい…!という執念から生まれたのが松浦漬けなんだね。

当初のレシピでは、山下家の本家のすぐとなりにあった酒蔵(ここもおそらく山下家)の酒粕で漬け込んでいたそう。ちなみにうちの母はその酒蔵(松浦誉)のことを覚えていた。ていうか、どうやら母方の家系(山下家)もどうやら漁師一族の血筋を引いているそうです。僕のおじいちゃんが漁師だったのも系譜があるわけだ。びっくり。


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