先日行われた発酵デパートメントの五周年記念イベント、ご来場くれた皆さま、お祝いのメッセージやお花をくれた皆さま、本当にありがとうございました。
五周年を記念して出版された『発酵デパートメントとつくる いますぐハッピー発酵最強レシピ』の参加作家もなんと全員集合!のめでたすぎる会でした。
写真左上から、自炊料理家の山口ユカちゃん、ごはん同盟のしらいのりこ、ジュンイチ夫妻、スープ作家の有賀さん、そして僕小倉ヒラク。
ワインを持ってきてくれたソレイユワインの鈴木さんはじめたくさんの醸造家や料理家、発酵ラバーやクリエイターたちが集まる賑やかな一日でした。
人間の想像力、すごくない?
2020年4月。
コロナ禍のさなか、無人の下北沢でオープンした発酵デパートメント。誰も来ない店内で段ボールを開けたり閉めたりしながら「ここを文化を醸す場所にしよう、世界中の醸造家やクリエイターが集まるぬか床のようなお店にしよう」と想像していたことを思い出します。
それから5年。
何度も大ピンチを迎え七転八倒しながらもなんとか軌道にのり、ほんとに世界各地からの発酵ガチ勢で賑わう「発酵の聖地」になっていました(平日のお客さん、半分くらい海外から、欧米、中南米、アジア、中東各地から)。
人間の想像力ってスゴいもんだなと思いました。ゴーストタウンになった東京、空だけが抜けるように青く、これから世界がどうなるかもわからない。
ほんとはオープン記念で賑わうはずの、朝から晩まで誰もいないお店のなかで僕は世界中の人たちが発酵や食文化や芸術の話題でつながってなにやらアツく語っている、そんな場所を事細かにイメージしていました(ヒマだったし)。
ぼんやりとした期待は実現しない。
けれども細部を細かくイメージし、そこに至るまでの道のりを想像し、集まる人達の顔はどんな表情?そこに置かれているものはどんなユニークなもの?その場所が発するグルーヴ感はどんな感じ?ということを来る日も来る日も考え続けていくと、少しずつ現実が変わっていく。
点を線にする五年間。そして…
発酵デパートメントの五年間は、僕の人生に散らばった点を線につなげる日々でした。10代から20代にかけて世界各地をブラブラしながらゲストハウスを運営していた放浪時代、20代の地方を巡りながら地域の難問と向き合い続けたデザイナー時代、グローバルに開かれた可能性と、ローカルの逃れられない課題。
この2つは僕の人生のなかでは矛盾したものではなく、発酵デパートメントという場を通して、自分らしく世界の未来に関わるための指針になったのでした。
発酵文化は地域の共同体の歴史に根ざしたもの。同時に世界中の人たちがアクセスできるオープンソースでもある。
長く蓄積された時間を、時代に即したデザインで「ひらいていく」。これが僕たちの役割なんだなと思います。
五周年を経た発酵デパートメント。
春の陽気もあいまってか、お店全体の雰囲気がキラキラしています。
お客さんもみんな目をキラキラさせて、一般的な食材店に来ているテンションじゃない。
「ここにカルチャーがある。そしてそのカルチャーに自分も関わっている」
という期待感、高揚感を受け取っているよ。
僕という個人の点が線になったこれまでの五年間。それはお店に遊びに来てくれるみんな、スタッフのみんなの力があってなし得たこと。そして次の五年間は、発酵デパートメントに関わるみんなで線を面にしていく五年間になるといいな。
…というと他人任せなので。
そうなるように強くイメージしようじゃないか。
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