発酵文化人類学ができるまで。ヒトと自然のつながりを探る旅

ようやく現実界に帰ってきた。
ソトコト本の原稿の大詰め、日本各地への連続出張、さらに濃ゆいイベントの連発であの世に片足突っ込んでいたのだぜ。

文化人類学というディープゾーン

まずソトコト本『発酵文化人類学』。当初自分が想定したよりはるかにディープなトピックスがいっぱい出てくるのね。雑誌の連載は一回完結なので、特定の発酵文化が楽しくわかるような内容にしている。なんだけど、単行本では複数の発酵文化を比較しながら解説し、さらにそこに文化人類学の理論を重ね合わせるというアクロバットに挑戦している。結果どうなるかというと、ブドウの話をした後に、酵母の話をして、そのあと現代美術の話と脳科学が出てきて、最終的にマリノフスキーの交換儀礼の話に着地する…という不思議な展開になる。

大学時代に熱心に学んでいた文化人類学の古典(1930年代〜60年代)の知識が役に立ったわけだが、この時代の文化人類学の主要テーマはトーテミズムや神にまつわる様々な儀礼、呪術や神話など、超絶ディープな領域。この世界は日常生活では触れない、人間の起源における「文化人類学的ディープゾーン」。ここに足を突っ込むとアタマがおかしくなるんだよね。

学生の時だったら下宿の片隅でおかしくなってもそんなに社会に迷惑はかけないわけだが、社会人のおじさんが「人類における儀礼の起源は、神への負い目から発生しており…」とかブツブツ言っているのはかなりヤバい。この状態にハマると、ビジネスメールの返信が滞り、SNSのタイムラインがさっぱりアタマに入らなくなり、いつも楽しみにしているフリースタイルダンジョンすら見る気にならないほど現世から離脱してしまっている。

つまり、生きながらにして三途の川を渡っているような感じだ。微生物界と同じく、文化人類学界もかなり浮世離れした世界なのであるよ。

旅とイベントのしすぎで脳みそがクラッシュする

さらに。
「発酵文化人類学」の原稿をガリガリ書きながら、あちこち旅してまくったのもますます浮世離れに拍車をかけた感があったね。
ここ三週間の移動を書き出してみると、

・山形県鶴岡→秋田県象潟→秋田市→博多→奄美大島の10日間の旅
・福岡県久留米に2日間の旅
・大分県日田→大分県竹田→佐賀県唐津に3日間の旅

と、ほとんど旅ばっかりしている。しかも鶴岡や象潟、日田や竹田などはかなり濃密なルーツを秘めた土地なわけで、そこで出会う景色や人の濃さもハンパない。以下時系列でざっくりと振り返ってみると…

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東北の旅。ローカルメディア『のんびり』と『ジモコロ』共同の取材旅行に、なぜか僕も同行(山形のアテンド役&酒蔵の取材)。しかもその取材の様子をソトコトがさらに取材するという「メタ取材旅行」になっていました(なんかややこしいな)。この旅の詳しくは次号ソトコトの特集で大々的に登場予定。どんな内容になるのかしら?

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秋田県象潟でみんな集合の図。左からソトコトチーム→ジモコロチーム→のんびりチーム。巷で噂のローカルメディア3TOPが集まるなんてそうそうないんでないの?
(ちなみにジモコロチームのカメラマンの小林くんは長野で『鶴と亀』というフリーペーパーをつくってる)

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吹き飛ばれそうな吹雪のなか、秋田の厳しい冬の風情を味わいました。

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象潟は、のんびりが再発掘した版画家、池田修三さんの故郷。秋田の人に愛された池田さんのストーリーは感涙ものでした。

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東北の旅の終着点は、秋田市の酒蔵、新政。
杜氏の古関さんと話が盛り上がりました。『発酵文化人類学』の終盤に新政の話がたっぷり出てきます。乞うご期待!

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秋田から一路福岡・博多へ。7回目になった僕がホストのトークイベント『コトバナプラス』。今回のゲストはコープこうべの本木さんと、九州大学の田北さん。大好きなお二人を呼んでのイベントは今回も超満員御礼。7ヶ月連続満員でスゴくないですか?

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翌日はたまたま同時期に開催していたgreenz主催のイベントへ。おのっち&Qちゃんのgreenzチームをはじめ、全国から集まったよくわからない面子で深夜まで盛り上がりました。

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福岡から奄美大島へ。三日前まで象潟で吹雪に凍えていたのに、晴れの日の奄美大島はTシャツでいけるぐらい暖かかった!カラダがぶっ壊れる〜!

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目的の1つは、黒糖焼酎の現場を見に行くこと。はじめて対面した黒糖焼酎は摩訶不思議な発酵食品でした。訪ねたローカル醸造所、富田酒造場は若いお兄ちゃんたちが楽しそうにやっているリアルローカルな黒糖焼酎メーカーでした。

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黒糖焼酎のもろみ。スゴい色!そして舐めると舌がしびれるくらい酸っぱい!

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たまたま入った居酒屋さんが大当たり。奄美の島唄のパトロンであり、黒糖焼酎のコレクターでもある『ならびや』のマスターに色んなことを教えてもらいました。しまいにはマスターと二人でドライブに出てお互いの人生について語り合うという謎の展開に…

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もうひとつのお目当てはこちら。奄美特産の大島紬の染色を手がける金井工芸の若旦那に会いに。シャリンバイというバラの木の皮の煮汁を発酵させて染める独特の染色、噂には聴いていたけどめちゃくちゃ味わいがあって素晴らしい…!
次の発酵デザイナーのユニフォーム、大島紬の発酵染めでつくりたいんですけど、enricaの町田さんどうですか?

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photo by 中村さん 

奄美大島から東京に移動して、五年目を迎えたトークイベント『発酵男子のCOZY TALK』の司会進行。寺田本家の優さんと五味醤油の六代目のレギュラーメンバーに加え、スペシャルゲストに鹿島のPARADISE BEERの唐澤さん。今回もサイコーに盛り上がりました。

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そのあといったん山梨の我が家に戻ってからの、J-WAVEの番組『ロハストーク』の収録。小黒一三さんと色々話し込みました。新著の原稿を丁寧に呼んでくれていた小黒さん、開口一番「君、かなり本読んできたんだね?」。おおお、レジェンド編集者にそう言われるとめちゃ嬉しい。新著のこと、発酵文化のこと、人類の文化にまつわる様々なトピックスを横断して話が弾みました。番組公開は3月最終週から。

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マジメに話してる風の発酵デザイナー。

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品川にて、世界各国の文化を楽しく学ぶイベント『Lunch Trip』に出演。今回のテーマは「ミャンマーの発酵食品」。早稲田のミャンマー料理店「ノングインレイ」の店主、スティップさんとアジアの発酵文化のルーツを巡る愉快なおはなしで盛り上がりました。

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日本の発酵文化にもちょっと似ていて、かつ大陸フレーバーも濃厚に引き継ぐミャンマー、シャン族の発酵料理。奥が深かった…!

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そうこうしているうちに、今度は大分。まずは前々から行ってみたい思っていた日田へ。COOPの仕事でお世話になっている九州で一番の凄腕プロデューサー、江副さんと淡路島の仕事で出会ったgrafの服部さんのイベントへ。その後、日田チームと一緒に洋酒博物館でフィーバー。

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洋酒愛がハンパないマスター。ちなみにサービス精神もハンパない。柿次郎さん、ここジモコロ案件ですぞ…!ちなみに日田は街並みもサイコーでした。

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翌日は竹田へ。はじめて来た街だけど、これがまた風情があっていい感じ。

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竹田の用事は、江副さんがプロデュースしている地域ブランドのデザインプロジェクト「竹田の食べ方」のトークイベントのゲスト。竹田の郷土食の守り神、佐藤双美さんのはなしを聞きました。スティップさんといい佐藤さんといい、何十年も土地の味を守り続けてきた人の話を聞くと心が暖かくなるぜ。

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ちなみにみんなで『こうじのうた』を踊りました。地元のおばちゃんがノリノリで踊ってくれたのがサイコーに嬉しかったぜ。

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地元の食マイスターがつくったセンスフルなお菓子を食べてみんなご満悦。
上の三枚の写真 by たなかみのる

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竹田の次は、レンタカーで一路佐賀県の唐津へ。僕の大好きな唐津焼のルーツを訪ねました。秀吉の朝鮮出兵とともに興ったとされる唐津焼ですが、さらに掘り下げるとビックリな歴史が判明。やはり九州のクラフト文化は奥深い…!

わずか三週間のあいだにこれだけ用事があると、摂取した情報カロリーを消化できない…!
とりあえず3月後半はなるべく山梨近辺でおとなしくして、アタマを落ち着かせたいと思います。

でね。今回とても嬉しかったこと。
各地域で会ったみんなが「発酵文化人類学」の出版のことを知っていて、色んなメッセージをくれました。旅のあいだに出会ったみんなの言葉が、本のいろんなところに反映されているので、どうぞ実物が届くのを楽しみにしていてね。

北から南、西から東。日本の土地の隅々に人の営みと自然の恵みが結び合わされた多様な文化が息づいている。「発酵文化人類学」の舞台になるのは、ヒトと自然がおりなす暮らしの芸術の世界なのだよ。3月末校了に向けてラストスパート。最後まで頑張るぞ!

 


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