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手前みそのうたについて。


みんなでつくろう、手前みそ!


NHK「きょうの料理」でついに放映!のアニメ、「手前みそのうた」。
今回は改めて、この歌が生まれた舞台裏をみなさまお話しします。

うたができた経緯

公開されたのは今から1年ほど前の2011年の11月。
企画が持ち上がったのは、その年の春先。

山梨の老舗お味噌屋「五味醤油」の若旦那、五味仁さんがあちこちで「手前みそづくりワークショップ」を開催していた頃のこと。
デザインの打ち合わせ後、二人でゆるりと飲んでいた時に、突如アイデアが降ってきたのです。

「味噌って誰でも手作りできるんだけど、難しく思われがちなんだよね」

「やってみれば簡単だけど、理屈で説明すると面倒に見えるのかも」

「子供でもすぐにわかるような、何か楽しいことできないかな」

「…!!じゃあ、子供が見てもすぐにわかるアニメを作るっているのはどう?」

「それでいこう!!」

後日、すぐに友人のシンガー森ゆにちゃんに「手前みそのうたをつくろう!」とオファー。
そして初夏に送られてきた、恐ろしいほど中毒性の高いデモトラックを聴いた瞬間、「これは行くところまで行くかもしれない(どこによ)!!」と確信。
聴いたら最後、おみそを作らずにはいられないアニメの制作が始まったのです。

みそダンスについて

気鋭のダンスユニット flep funce!との出会いから生まれたのが、「大豆シスターズ」の踊る、とってもキュートな「みそダンス」の振り付けです。
鍋をもったり、団子をなげたり、おみそをつくる過程がダンスになって、最後は「みそができたぜ、イェイ!」と手前みそピース。

ちなみにこぼれ話ですが、アニメの中で新幹線と競争したり、クレジットを食べたりするヤギの太郎くんは、完成したみそダンスの観客第一号。
振り付け制作のために合宿した青梅の山奥に飼われていたので、一緒に踊ってみました。
けっこう喜んでくれていたのでは(よもや自分がアニメに出ているとは知るまい)。

うたについて

歌詞が完成するまでにも、紆余曲折ありました。
サビの♪うちの数だけ みその味のフレーズが生まれるまでに長い試行錯誤があったのです。
「地域ごとに違う、手前みその多様性を大事にしたい」という当初の想いをあらわす一行を探すために、吉祥寺のバーで飲みながら(またかよ)ゆにちゃんと若旦那と僕の3人で頭を悩ませていたことをよく覚えています。

そして、裏方で素晴らしい仕事をしてくれたのがwater water camelのギタリスト、田辺玄さん
卓越したレコーディング技術を駆使し、POPかつ耳に残る録音に仕上げてくれました。
ゆにちゃん曰く「あえてちょっと不穏にした感じが良い」とのこと。
確かに、ちょっとクセがあるのが何度も聴いてしまう要因なのかもしれません。

アニメについて

アニメ制作に関しては、新人デザイナーのトモちゃんに手伝ってもらって、原画もアニメーション編集も完全手作り。
マスコットキャラクター「大豆シスターズ」が踊る「みそダンス」は、flep funce!の踊りを分解し、それを一枚一枚絵を起こして紙芝居のようにコマで動かす、という戦前の「のらくろ三等兵」もびっくりのアナログな手法でもってアニメ化されました。

一枚描いてはスキャンして着色して配置して歌のリズムにあわせて動きを微調整し…の無限ループは連日深夜に及び、ランナーズ・ハイになったところで「クライマックスは微生物の宇宙へワープ」という謎のアイデアがまたもや飛び出し、麹菌、酵母菌、乳酸菌などからなる「発酵ミクロコスモス」が発生。

お味噌のタルを開けると、発酵ビッグバンが起こるという衝撃のラストシーンが誕生しました。
(お味噌ができる過程では、爆発的な菌の増殖が日々繰り返されるのです)

登場するキャラクターについて

アニメに登場するのは、五味家の若旦那とその妹の洋子ちゃんのユニット発酵兄妹と、そのお母さんのまーこさん(&全国のお母さん)。
flep funce!の二人が「中の人」を務めるのは、手前みそのシンボル大豆シスターズ
ゆにちゃんと玄さんも元気に「ハイ!」とかけ声をかけに登場します。
アニメのまーこさんは「本人に激似」です。ご興味のある方は甲府まで会いにいってみてくださいね。

手前みそのうたのこれまでとこれから

…さて。そんな沢山の人たちが力をあわせて生まれたこの「手前みそのうた」。
お披露目は、秋葉原のアート施設「3331 ARTS CHIYODA」で開催した甲州発酵物産展
物産展に来てくれた観客の皆様と一緒に踊ってから、地元山梨を中心にじわりじわりと口コミで広がりました。

↑甲州発酵物産展vol.2でパフォーマンスするゆにちゃんとflep funce!。

そして、2012年の夏には、山梨県北社市のスーパー市役所マン、浅川祐介さんが仕掛ける食育プログラム見つめよう食の原点の教材として採用されました。
その結果、北社の子ども達みんなが歌と踊りを覚え、「子供がみそみそ騒いでいるが、なにごとだ!」と親御さんが戸惑うという超局地的スマッシュヒットを飛ばし、着々と「手前みそムーブメント」が準備されていったのです。

↑須玉保育園で園児と踊る五味醤油の若旦那(熱さに表情がヘタり気味)。

そんな風に、この「手前みそのうた」は、たくさんの人の共感と応援に後押しされて、お味噌のごとく、時間をかけてゆっくりゆっくりと発酵し、全国デビューするまでに熟成したのです。

これからより多くの人の目に触れて、また発酵が進んでいくことでしょう。
このアニメが、食の明るい未来をつくるきっかけとなれば幸いです。

手前みそのうたのライセンス

最後に「手前みそのうた」に興味を持ってくれた皆様にお知らせです。

手前みそのうたは、「お味噌と発酵醸造文化、及び郷土料理の素晴らしさ」を伝える目的であれば、どなたでもご利用できます。

お味噌づくりのワークショップや、各種食育プログラムにご利用する場合は、使用許可はいりません。どうぞ地域の郷土食と子どもたちの未来のためにご活用ください。
※ただし、特定企業・団体の営利目的の利用については権利者と相談の上、可否を決めさせて頂きます。
コピーライトは、
音楽と歌詞:森ゆに
アニメとキャラクター:小倉ヒラク

それでは、みんなでレッツ手前みそ!

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