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フィンテックは新世代のセーフティネットなのか? polcaやVALUについて考えてみた

お盆ですね。僕は連日の出版イベントから数日間だけ解放されて、お家でのんびりしてます(お盆はイベント集客できないからね)。

さて。最近僕のSNSのタイムライン上では、VALUやpolcaなど新しいお金の流通サービス(いわゆるフィンテック)の話題が盛り上がっています。表面上は資金調達や投機の新しいインターフェイスのように思えるんですけど、その下には世界観の地殻変動があるのではないか…?
こういう新しいカタチのサービスはいったい社会(&そこに生きる僕たち)にどんな意味があるんだろう?というギモンに対して連続ツイートしたので、ブログでも改めてまとめておきます。それではお暇な方はご一読どうぞ。

VALUは個人が自分の株を上場することで、資金調達ができるサービス
polcaは少額支援に特化したハードルの低いクラウドファンディングサービス

セーフティネットとしての貨幣交換システム

polcaみたいなサービスに若い人たちが関心を持って理由は「ラクして儲けたい」ではなくて「セーフティネットが欲しい」でしょう。20人に500円づつもらった1万円は、道で拾った1万円と違います。20人が自分を気にかけてくれた結果としての1万円が欲しいのです。

手軽な小額送金サービスを使うとお金の流動性がどんどん高くなります。すると「お金を自分で所有している」という感覚が薄くなり「誰かから流れてきたお金がたまたま自分のとこにある」という感覚になる。「どれだけお金を流せたか」という利害関係者を増やすことに価値が生まれる。

つまりみんなで恩を貸し合うわけです。

「成功すること」ではなく「生き延びること」という視点がフォーカスされてきています。
成功のためには誰かに勝たなければいけないけれど、生き延びるためには味方を増やさなければいけない。味方を増やすための具体策として「お金の単位を分割し、仲間内での流動性を高める」という方法論が登場する。
社会が安定していると「個体のパフォーマンスの強弱」が重視されます。ヘマしても死なないので「個として勝ちにいく」というチャレンジが普及する。
でも社会が不安定になって再分配が上手くいかなくなると「コレクティブなセーフティネット」を個が集まることでDIYしようとする。

大きな社会の大きなセーフティネットやインフラが機能しなくなっているので、感度の高い人はオフグリッドのエネルギー供給をDIYするし、同じような発想でWEBサービスを使って経済的なセーフティネットをDIYしようとする。分割してDIYすることがリスクヘッジになる。

その流れに新しいテクノロジーが合流する。そんなタイミングに僕たちはいるわけです。

大きな流れで言えば。「成功志向のマッチョな単独の個」から「コミュニティ志向のコレクティブな個」へとこれからを生きるお手本モデルがシフトしていっているのでしょう。
推奨される振る舞いが「威嚇して勝ち名乗りをあげる」から「気前よく他者に振る舞う」に変わっていく。お金を稼いだら寄付や支援に使う。

これから「お金を稼いだら他人のために使う」という振る舞いがどんどんトレンドになっていくはずですが、これは「情報強者はレバレッジをかけられるけど、そうじゃない人はギリギリの生活しかできない」という「再分配機能の崩壊」を個人の及ぶ範囲で是正するという「揺り戻し行為」なんだと思います。

ここ数十年間の「利己的に利益を追求する世界」が大きく変わって「コレクティブな個の世界」が世界が始まっていきます。

つまり違うOSで社会が動く。
大変だと思うか、ワクワクするか。僕は当然ワクワクだ!と言いたいとこだけど本音で言えば 大変3:ワクワク7くらいです。
まだ多くの人の実感が追いついていませんが、今起きているのは「新しいテクノロジーの登場」ではなくて「生存戦略の地殻変動」なのだと思います。

【追記1】新しいテクノロジーが社会全体をより良い方向に導いてくれるかといったら全然そんなことはないと思います。フィンテックがつくり出す互助的なコミュニティは、当面は「情報強者だけが乗れるノアの方舟」に留まるでしょう。この流れとはまた別に、行政単位や自治体単位で社会福祉や教育施策を地道に見直していく努力が「なるべくたくさんの人の生存を保証できるインフラ」のために必要だと思います。
というか、それぞれの立場の人がそれぞれの役割で「より良い未来」を考えるのが必要なんじゃないかしら(あまりにも当たり前のはなしだけどさ)。

【追記2】この「恩送り」の発想は、こないだ対談した文化人類学者の小川さやかさんの著書『その日暮らしの人類学』と小川さん個人のパンチありすぎる人生から着想を得ました。小川さん、ありがとう!

【追記3】ちなみに僕のVALUはこちらから 「なんとなく始めてみました」じゃなくて、このブログで書いたような仮説をもとにしばらく使ってみようかなと思っています。

 

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