能登の発酵のいま

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先週しばらく能登に滞在してきました。今回は珠洲や能登町など、震災直後はアクセスが難しかった場所を中心に。今は下道含め道路はかなり復旧し、金沢や能登空港から問題なくアクセスすることができます。地元の飲食店やお店も少しずつ営業を始めているタイミングでした。

■いしり / カネイシ
最初に訪れたのはいしりメーカーのカネイシさん。
地盤改良した工場は無事だったものの、商品を出荷する道が崩れてしまい震災直後はだいぶ苦労したそう。今年の仕込みは例年通り進んでいますが、悩みは原料のイカの不漁。震災前からの気候変動の問題が深刻になってきているそうです。
今は一部の業務用を除いて普通に商品ゲットできます。

■ 日本酒 / 数馬酒造
軒先を通りかかった時に女将と偶然会えました。4月から酒造りを再開したそうで、蔵のある通りに活気が戻っていました。復興の第一歩はものづくりとお祭りの復活なんだな、と実感。活性にごりがめちゃ美味しかったデス。能登の酒飲もうぜ、みんな!

■ 焼酎 / 日本醗酵化成
珠洲の海岸近くにある焼酎メーカー。戦後に建てた鉄骨の工場は無事でしたが、熟成酒を入れてある大量のタンクが傾いたりしていて、製造再開の前に現状の把握途中でした。驚いたことに、工場はまだ水が来ていなくて、瓶詰めができない状態。珠洲の復興の先の長さを実感しました。日本でも有数の古酒焼酎の文化の今後、僕も何か力になれないだろうか…と思っています。

■ ワイン / ハイディワイナリー
輪島門前町の丘の上にある瀟洒なワイナリー。工場は深刻なダメージを免れましたが、併設のレストランは現在休止中。ブドウ畑も地形が一部変わってしまってしまいましたがブドウはとっても元気でした。ほんとに自然の力は恐ろしくもあり尊くもある…。
ワインの在庫も無事で、通販やイベントでゲットできます。

なお門前町は海岸が数メートル隆起し、町も大きくダメージを受けていました。ほとんど人影を見かけなかったので、町の今後はどうなるのか….

■ 輪島塗レスキュー / ふらっと
発酵をテーマにした宿、ふらっと。現在は建物を直しながら、ボランティアの受け入れをしています。震災後に彼らが始めたのは、解体される古い家屋から輪島塗の御膳セットをレスキューすること。僕も一日ボランティアしてきました。古くは江戸時代から家々に継承される輪島塗の漆器。お盆にいくつかの椀や皿になった「御膳」が標準で5セット木箱に入れられたものが、伝統的な家にはあります。お客さんをもてなしたり、親族の集まりで使う御膳は世代を超えて継承される能登の食文化のシンボル。家は解体されても、御膳は捨てられない…という人がたくさんいて、ふらっとがその受け入れ先になっています。

ふらっとの船下チカコさん・ベンジャミンさん夫妻とボランティアの合間に震災後のことをたくさん聞きました。ベンジャミンさんの「建物は壊れても、魂は壊れない」という言葉が印象的でした。

正月から半年、震災は徐々に世間の記憶が薄れかけているタイミングですが、能登の発酵文化の復興は今ようやくスタートという感じです。僕も長い目で能登の未来に関わっていけたらと思っています。

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