11月から下北沢の発酵デパートメントで「発酵〜民藝を食べる〜」フェアを開催します。
店内で民藝の道具たちを扱うとともにランチに「民藝を食べる定食」の提供もスタートします。
なぜ発酵デパートメントで民藝を扱うのか?
その理由をステートメントにしたためたので、フェアに先駆けてみなさまにお伝えします。
発酵デパートメントによる、民藝を食べる宣言
発酵とは食べる民藝だ。
私たち発酵デパートメントは、これまで「使う」ものだった民藝に「食べる」の動詞を加える。土地に根ざし、日常的に食べられ、微生物という目に見えない自然の働きに委ねることによって生まれる発酵。民衆的であり、ハレよりもケであり、他力を活かしたものづくり。
民藝が生まれて100年が経つ。
創始者の柳宗悦や河井寛次郎が生きていた当時、工芸や芸術に比べて社会的な地位が低かった「食」が社会の根幹を成すものづくりとして大きな関心を集めるようになった。そのなかでも日本、アジアに根付く発酵は、民藝の精神を引き継ぐ食のクラフト文化だ。
発酵=民藝。この「発酵民藝」は三つの要素で成り立つ。
一、他力(微生物)の力によって生まれるもの
二、自然と楽しく働いて生まれるもの
三、素材を余さず活かし切って生まれるもの
味噌や酒は麹菌や酵母、乳酸菌など様々な微生物たちが働くことによって生まれる。人間の仕事は微生物が心地よく働けるように環境を整えること。他力に委ねるものづくりが、結果的に個性と多様性を花開かせることになった。
発酵食は「後世に残す芸術作品」としてできたわけではない。冷蔵庫も便利な物流もなく、限られた食材を保存して長い冬や飢饉を生き延びるための知恵として生まれたものだ。手元にあるものは余さず使い、土地の風土と微生物の他力と一体になあることで、どんな料理人も生み出せない、一口食べたら忘れられない滋味深さがあらわれる。
その美しさは、美しくあろうとして生まれたものではない。人が世界の限界を受け入れ、人間ならざる存在に己を委ね、今日も無事に生き延びられることを願った結果なのだ。
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「発酵〜民藝を食べる〜」フェアでは、民藝の道具たちを発酵食品と一緒に並べることで、両者が持つ「生きるための美」の意味をみなさまと一緒に考えていきます。折々に民藝に関わるゲストを読んでの勉強会も開きます。取り扱う品も徐々に増やしていくのでぜひ当店に足をお運びください。
発酵デパートメントオーナー 小倉ヒラク
民藝を食べる定食がスタートします。

発酵デパートメントでは、5年前のオープン当初からレストランでは「民藝の器を使う」というルールがあります。沖縄のやちむんや岐阜の美濃焼、福井の越前漆器や愛知の常滑焼など、お店に来たことのある人なら見たことのある器を商品として手に取れるようになります。
それと連動して、レストランスペースでは器が引き立つランチメニュー「民藝を食べる定食」をスタートします。各地の個性豊かな器たちと、七種類の発酵菌が味わえる発酵デパートメントならではのランチを楽しめるのでぜひ食べに来てください。
民藝を学んで体感できるイベントも開催します

さらに。民藝と発酵の世界観のつながりを実際に学べるイベントも開催。
11/2は常滑焼について。僕の古くからの友人の高橋孝治さんを、11/24は荒物について。松野屋の代表、松野弘さんをお呼びして、道具の魅力、生まれた背景を楽しくトークします(両日とも僕がホストします)。

シーズンごとに開催している料理家の近藤ゆりこさんとのディナーイベントでもテーマは民藝。
この日は器はもちろん、「民藝なお酒」のペアリングもやります。昨日から告知してもうすでに残席わずかなので気になる人はすぐにご予約どうぞ。
「民藝もある食材店」ではなく「食べる民藝店」です
ということで。
これから春まで発酵デパートメントは民藝推し。器や道具を手に取れるのはもちろん、味噌や醤油もまた「食べる民藝」としてまた新たな視点で楽しんでもらえるよう定期的に企画を盛り上げていきます。毎月ちょっとずつ民藝の道具の取り扱いも増やしていくのでお楽しみに。
(実はすでに店頭では道具の取り扱いがはじまっていたりします)

民藝と発酵のつながりをより詳しく知りたい人は↓の記事をご一読あれ。
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