発酵の「いま」が一目でわかる!発酵ムーブメントの見取り図 <2016年度版>

雑誌SPECTATORの特集『発酵のひみつ』でも触れた、「いま発酵という概念は社会でどう捉えられているか」の見取り図をバージョンアップしてブログにまとめておきます。

美容・オーガニック・ライフスタイル・イノベーションの4軸

僕が発酵文化に関わる活動を始めたのは、今から7〜8年前のこと。当初は給食センターのおばちゃん達とワークショップをやったりしていて、若い人からの関心ほぼゼロからのスタート。
この当時、発酵といえば「美味しいもの好きなおじちゃん・健康志向のおばちゃんの趣味」でした。

さて、そこから一体どんな風にムーブメントが広まっていったのか。大枠でいうとこの4軸で整理できそう。メインの4軸の周辺に、関連しそうなキーワードをまとめておきました。

▶オーガニック
最初のターニングポイントは、2011年以降。環境や自分の生活環境に不安を抱える人たちが発酵に持つようになりました。僕の講座に参加する人で一番多いのはこの人たち。
マクロビや菜食主義の実践者、伝統文化の継承に関心があり、精神世界にも深く興味を持つ、ざっくり言えばオーガニック志向の人。

▶美容
それからちょっと遅れて、今度は美容と発酵が結びつきはじめます。発酵食品を食べてカラダをキレイにしていつまでも美しく健康でありたい!という欲求です。これには実は技術の進歩が背景にあります。今まで謎に包まれていた人間の腸内細菌についての解析が進んできたことによって、微生物によって体質コントロールができる可能性が見えてきたのですね。ちなみに僕の講座にも毎回1〜2人は発酵美女がいらっしゃいますぞ。

▶ライフスタイル
2014年の雑誌ソトコトの『発酵をめぐる冒険』以降から、カルチャーやライフスタイル(←横文字表記が重要)として発酵が注目されるようになりました(と思う、たぶん)。ローカルカルチャーの再認識とともに、パーマカルチャーに代表される農的ライフスタイルや政治意識の強い対抗文化に関心のある人たちをアツくさせる何かが発酵にあるようです。
ちなみに、『発酵男子のCOZY TALK』が回を追うごとに人気になっていくのは、正にこのあたりに理由があるのでしょう。

▶イノベーション
僕の知るかぎり一番新しいのがこの流れ。去年後半から、IT業界のトップランナーから「発酵に興味あるんだけど」とコンタクトが相次ぎました。で、話を聞くに「ITの次はバイオなんだよね」ということらしく。これはどんな背景があるかというと、主にアメリカで勃興しつつあるアナーキーなバイオテクノロジーなんですね。
DNA解析や細胞培養の技術のコストが劇的に下がったことにより、大学の研究室の外にいる人たちが、まるでプログラミングコードを描くように生命の操作ができる可能性が見えてきたわけです(←ほんの少しだけど)。ITのリテラシーで生物学のハッキングをする「バイオパンク」や「バイオハック」という流れが、日本でももしかして流行るかも…!?
という期待感が発酵のムーブメントとも結びつくのが2016年以降。ちなみにこの辺は、MAKERSムーブメントとも相性が良いです(実験器具を自分で設計する、という発想)。

 

こうやって見取り図をつくってみると、ものすごく多様なトピックスが関連づけられているのにビックリします(僕が発酵を学び始めた頃にはこんな事になるとは考えも及ばなかった)。

…で。発酵デザイナーはどうなのよって話ですよね。
僕、実はだいぶオーソドックスな発酵(農大の系譜の『発酵醸造学』)をやってきたわけなので、そこを基軸にしてなるべく広い分野を見ていきたいなと思っております。

これからますます色んな人が発酵に興味を持つようになって、単なるブームとは言えなくなっていく。その時に取っつきやすい入り口を作れる存在でありたいぜ。