山梨の山の上で菌を育ててわかったこと。
山梨に引っ越してきて三ヶ月が経った。
最初は廃墟だった家も、ようやくちゃんと住めるようになってきたので、こうじを育てて、お漬物、調味料なんかをつくりはじめています(そのうち酵母や乳酸菌もやる)。
そもそも山梨の標高1,000mの山の上に引っ越したのも「菌がよく育ちそうだから」という理由があったのだけど、実際この場所で菌を育ててみてどうだったか。
えーとですね。
結果から言うと「ハマればよく発酵するし、ハズすとものすごく腐る」ということがわかりました。よくよく考えてみれば、発酵菌が元気だということは、雑菌も元気ということで、ちょっとでも気を抜くと甘酒がバイオハザード級の異臭を放ったり、お味噌の表面に「これはモザイクか?」と思うほどのカビが繁殖したりして、腐敗ぶりもまた東京よりもワイルドなんですね。
もちろん、うまくコンディションをつくれると、キレイに発酵するので、つまりここは現状「良いも悪いも含めて菌がいっぱいいて、しかも元気」という環境のようです。
…でね。2年前に大阪の「発酵男子のCOZY TALK」でタルマーリーの格さんと話したときのことを思い出したんですね。
格さんは当時、千葉から岡山へ引っ越してパン屋さんをやっていたのだけど、当初はうまく菌が育つことができなかったので、乳酸菌を入れたスプレー(だったと思う)を建物の壁や天井に吹きかけていたらしい。
これの真意がようやくわかった。
水と空気の良い場所で、しかも新建材を使っていない建物は菌を育てるのに適している。
なんだけど、デフォルト状態だと「発酵菌も雑菌もよく育つ」ので、それを少しづつ「発酵側」に寄せていく必要がある。
具体的にいうと、酵母菌等の発酵菌がたくさん住み着いたり、ph値が調整されていくことで、「発酵菌が優勢になる環境」をつくっていく。この菌の生態系を「マイクロフローラ」というんだけど、こいつの「生物多様性」をいい感じに高めていくわけなのだね。
格さんがお手本にしたのは、寺田本家の酒蔵らしいんだけど、400年ぐらいかけて「発酵側に寄せてきている」から、そうとうな仕上がりっぷりなんでしょうね。で、その400年という時間をショートカットするためには、何かしらの工夫が必要だということで。
とりあえず今僕の手元には、木曽町でもらった「すんき漬け」から分離した乳酸菌があるのだが、こいつでスプレーをこさえてみるか。
いやあ、発酵道は奥が深いなあ。