こないだスープ作家の有賀さんが浦和PARCOの催事に立ち寄ってくれた時のこと。
僕の新著について嬉しい感想を伝えてくれました。
ヒラクさんの新刊『僕たちは伝統とどう生きるか』、面白くて一気に読ませる本でした!
啓蒙主義的な「大文字の伝統」ではなく、多様さを手から生み出す「小文字の伝統」を守り楽しんでいこうという視点は新しいし、何より強いメッセージを感じます。発酵デザイナーからの、作家・小倉ヒラクの誕生。 pic.twitter.com/iQDZSIocut— 有賀 薫 (@kaorun6) June 14, 2026
出版から二か月、これまで体験したことのない反応をもらっています。
醸造や食の業界に留まらず、工芸はじめものづくり全般、ビジネス領域、政治や哲学、さらには時事ニュースまで。発酵の本を書いていた時にはあり得ない、広範囲からの声が届いている。
夕方はNews Connect土曜版にお呼ばれ。野村高文さん @nmrtkfm と新著の話をしてこちらも最高でした…!#ぼく伝 pic.twitter.com/vWcBn0gg14
— 小倉ヒラク | Hiraku Ogura (@o_hiraku) June 3, 2026
例えば。
竹細工のつくり手からの「自分のやっていることは小文字の伝統です!」という共感。
麹屋さんや酒蔵からの「これからのものづくりの指針にしたい」という嬉しい感想。
特別番組をご一緒した斎藤工さんからは「この本を読んでから、映画に関わる意識が変わりました」という言葉が印象的でした。
哲学者の知人、下西風澄さんからは「戦後、日本のリベラル層が向き合ってこなかった課題に挑んでいる本ではないか」とコメントがあり、
小倉ヒラクさんの新著は、これまでリベラルが語ることを避けてきた「伝統」や「日本」という概念を、官僚でもあった柳田國男の思想やナチスドイツの有機農法における「失敗」を踏まえながら、むしろ多様性として語り直そうという試みの本で、重要なお仕事だと思います。明日対談なのでよろしければぜひ… https://t.co/c9VnBkATJ3
— 下西 風澄 (@kazeto) April 23, 2026
批評家の宇野常寛さんからは「この本は和辻哲郎の風土論をアップデートしうる可能性がある」とめちゃ褒めてもらいました(宇野さんふだん辛口だから嬉しい)。
生物・自然科学領域の先輩からの声も届いてこれもとっても嬉しい。
『僕たちは伝統とどう生きるか』(小倉ヒラク著)、面白かった。消えゆく民芸の価値はよく聞かれるから考えてて、案外、地球外惑星でファーストチョイスになる合理性あるよなと思ったりしたけど。オンリーワンうんち野郎としての繋がり、循環、暮らしに価値があるのかなと考えさせられた。 pic.twitter.com/gqh9a8M9I3
— 藤井一至 (土の研究者) (@VirtualSoil) June 4, 2026
トークショーでもうひとつ話したかったのは、 ヒラクさん @o_hiraku の書籍にあった「意識は向かい合うか、あるいは全く触れ合わないしか選べない. しかし身体は、向かい合うことも無視することもなく、ただとなり合うことができる. 理解し合うことがなくても一緒に何かをすることができる. 」です.…
— Soichi Ogishima (@ogishima) June 6, 2026
お寺の住職から「最近お墓を放棄する人が増えている時代に、受け継ぐとは何かを考えさせられました」という声があったり、林業関係者から「ぜひ林業に携わる人たちにもヒラクさんの話を聞いて欲しい」と講演会のお誘いがきたり。
デザイナー時代にお世話になっていたデザイン振興会からも登壇のお誘いがきました。
他にも友人のデザイナーから「この本をテーマに読書会しました」という声もあって、醸造業界とならんでデザイン業界に刺さっているようです(ありがたし)。
他にも紹介しきれないほど本当にたくさんの声をもらって、著者である僕も「こんな伝統の世界もあるんだ」「こんなところにも小文字の伝統が流れているんだ」と興奮しっぱなしです。
改めてみなさまありがとうございます。
僕は作家だったのだ。
冒頭の有賀さんの話に戻るとだな。
この本を書いて、たくさんの声が返ってきて、(ほんの少しだとしても)社会の価値観を動かしている。その状況を見て、
「僕はもう、作家と名乗ってもよいのでは?」
と自然に思えるようになりました。
これまで何冊も本を出し、展覧会やったり名目上アーティストとして作品展示したりしてきましたが、作家と名乗ったことはなかったんです。
僕は発酵や地域の文化、サイエンスやデザインの「ナビゲーター」であり、主体的な表現を追い求めるのが領分ではないと思っていたので。
なんですがスープ「作家」と名乗っている有賀さんから、
「作家とは肩書でなく状態である」
という言葉を聞いて、腑に落ちることがありました。
こないだポッドキャストのNews Connectで、小説家の岩井圭也さんと今村翔吾さんの対談を聴いていました。
この中で今村さんが作家を続けていくには「魂を燃やさないといけない」というような話をしていました。今村さんにとって、作家でいることは目的ではなく、魂を燃やすことが目的。そのために作家という状態でい続けている。
なるほど。僕もそうだ。
僕がデザイナーをドロップアウトして微生物の世界に入ったのも、そこが未知のフロンティアでかつ僕のようなことをする人がいなかったので、とにかく面白かった。魂が燃えていた。それが原点。
新著を書く前まで、実は僕はちょっと燃え尽きていました。
それは単に忙しかっただけではなく「社会に求められるもの」を優先しすぎていて、魂の火が消えかけていたのが原因。
新著も、最初はものづくりの危機に対してどうするか…!という使命感から書き始めましたが、未知のテーマに挑む難しさや面白さを感じて、最後はヘロヘロになりつつ生きてる実感を感じていました。
過去の自分を更新する。未知に挑戦し、世界を変える価値をつくる。何より世界を面白がる。
作家とは「どこまでも世界に飽きない状態」だ。
ここ数年は自分なりに責任背負って「社会から求められていること」を頑張ってきた気がします。で、いったんそれも一段落ついたのでしばらくは「自分が面白がれること」を愛でたいと思います。頑張りすぎは己を追い詰める…面白く生きる
— 小倉ヒラク | Hiraku Ogura (@o_hiraku) June 9, 2026
新著『僕たちは伝統とどう生きるか』をもって、自分は作家であると宣言するぞ。
使命を持ちながら使命に潰されず、面白く生きます。
Published by