先日、僕がここ10年愛用してきたカメラ、ソニーの初代α7が帰ってきた。
去年の夏過ぎ、長年酷使しすぎて派手に壊れたのが、ほぼ新品同様で(しかもそれなりにお金かかって)戻ってきた。
繰り返すが、初代の無印α7である。
2026現在、六代目α7Ⅵまで出ているのに、僕はなぜ初代にこだわるのだろうか。
2019年中国雲南省への旅でもこのカメラがお供でした。レンズはTamronの28-75mmズーム
初代α7は、僕にとってベストフィットなカメラ。
最大の長所は、軽くて薄いこと。
フルサイズ機なのに本体およそ450g。僕の基本セットは韓国メーカーSamyangのパンケーキレンズをつけて500gちょっと。
そのへんの高級コンデジよりも軽い。フルサイズでしかもレンズ交換できるのに。最高…!

ソニーのオフィシャルサイトより
対して最新の六代目α7Ⅵは720g。二代目α7Ⅱでもすでに600g。
初代と初代の変型α7Sのみが500gを切っている(このカメラも心惹かれるが画素数が少なくて展覧会に使えない)。なぜどんどん重くなるかというと、機能がどんどん追加されていくからだ。
初代α7は、余計な機能がついていないすっぴんなのがいい。
手ブレ補正もなし、フィルターもなし、VLOG用の気の利いた動画モードもなく、もちろんAIモードもない(初代が発売された2013年のAIはまだニューラルネットワーク使えるかも…?ぐらいの頃)。
つまり。
フルサイズで写真が撮れますよ。
良い写真になるかどうかはあなた次第です。
という潔いスペックなんだよ。機械側が先回りしていい感じにしてくれるということがない。
僕が基本で使っているレンズはオートフォーカスすらないものも多いので、手ブレ補正なしで、ピント合わせるのも手動、という20世紀的な原始の撮影スタイルになる。
α7ユーザーなら思うかもしれない。軽いのがいいならCシリーズがあるではないか、と。
確かに500gちょっとで最新の技術が搭載されている。デザインもちょっとレトロでいい。

ソニーのオフィシャルサイトより
しかし、問題はファインダーなんだよ。
マニュアルフォーカスで撮るには、カメラ本体の真ん中についているファインダーがあったほうがいい。写ルンですスタイルのはじっこについている小さいファインダーでは心許ない。
あと初代α7よりもボディが分厚くて僕にはちょっと持ちにくい。なのでやっぱり初代がいい。
まとめるとだな。初代α7の尊さは、
・めちゃくちゃ軽くて薄い
・なのにちゃんとファインダーがついている
・シャッター音が時代錯誤でいい(←ほめてる)
・しっかりフルサイズ画質
・Eマウントのレンズの選択肢が多い
そのかわり、犠牲になるものとしては
・手ぶれ補正やフィルターはじめ撮影アシスト機能がほぼない
・バッテリーが小さくて撮影可能枚数が少なめ
・その他便利機能がぜんぜんない
機能が少ないことについて、僕は写真の仕組みを理解し、己の手で上手に撮ることを強制される、という意味でポジティブに捉えている。
こんな写真を撮ってきた
ということで。
初代α7で過去に撮ってきた写真をいくつか挙げておく。13年前の素朴なカメラと、便利機能のないすっぴんレンズで僕はこんな写真を撮ってきた。

長崎県対馬のせん。写真集『発酵する日本』の表紙になった。
藤原印刷と現場で何度も色校を出し直して、クラフトプレスの第一号になった。懐かしい。
レンズは韓国のSamyangの35mm単焦点。オートフォーカスが役に立たず、周辺減光が出まくるオールドレンズみたいなクセ物なのだけど、彩度が低くて生っぽい質感の発酵の魅力を写し取ってくれるレンズで、今でもずっと愛用している。ポンコツなスペックなのに当時はけっこうな値段でした。

中国雲南省ダーリーでの昼食。
2023年出版の『アジア発酵紀行』の取材のために、遠くの山並みから食卓の寄りの写真までカバーできるTamronの28-75mmのズームレンズを使っていた。SONY純正やカールツァイスよりも土っぽい色味が好み。最近のレンズは画質がHi-Fiすぎて色が目に刺さる…

北海道、標津で凍った海を歩く。
晴天にも関わらず、暗い。α7はこういう写真が撮れるのが気に入っている。

滋賀、沖島。2019年の光景なのですが、Samyangのオールドレンズライクな質感も相まって昭和とかの記録写真にしか見えない。

能登の発酵の宿、ふらっとにて。
α7の暗い部分を殺さない長所と、Tamronの自然な緑と土の色がよく合っていて好きな一枚。

初代α7が帰ってきた今年2026年の写真。
沖縄、多良間島でのスナップ。レンズは最近面白いレンズが多い中国製。TTartisanの50mm単焦点。フルサイズとしては破格の1万円ちょっとくらいで買える。オートフォーカスなしで全体的にボヤッとした空気感で、Samyangとは違う感じでオールドレンズ感がある。


僕の初代α7で撮る世界には、まだ21世紀は来ていない。





拙著『日本発酵紀行』『発酵する日本』を飾った写真の数々。
たしかほぼ全部Samyangで撮ったと思う(もしかしたら一部カールツァイスかもしれない)。

最終的に僕が撮影した写真は、2019年に渋谷ヒカリエd47 MUSEUMの発酵ツーリズム展でこのような巨大タペストリーになった。会場設営が終わった夜、誰もいない会場でその生々しさに息を呑んだことをよく覚えている。
写真を撮ることは、旅の記憶と結びついている。
身軽に旅するためにも、僕には軽くて小回りの効く初代α7がぴったり。
カメラを受け取る時に受付のお姉さんが「この値段だったらα7Ⅲあたりの中古買えるのに。物好きですねえ」と呆れられたけど、僕にとってはこれがいいのだ。暗い蔵で、腕をプルプルさせながらマニュアルで写真を撮る。己の目で見えるものより良い感じの写真はいらないのだ、僕は。
追記:近い将来、写真展できたらいいなとこの記事かきながら思いました。夢よ叶え!
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