アイデアとは、理解すること。

アイデアとは、理解すること。

こんばんは、ヒラクです。

相変わらず原稿と格闘する日々を過ごしております。

今夜はちょっとしたメモ。「アイデア」について考えた事です。

どうやって「アイデア」を出すか、という事は、僕みたいな仕事はもちろん、広告代理店やプランナー、企画の仕事をしている人には切実な問題だと思われています。

なので、本屋にいくと「どうやってアイデアを出すか」みたいな本が沢山並んでいる。

なのですが、正直ヒラクはどう思うかというと、実は「アイデア」で悩むということ自体そもそも前提として無理があるんじゃないかと思うんです。

僕はアイデアを沢山出す、ということをしないし、そもそもアイデアを考えようとはしません。

というか、アイデアに重きをおかない。

なぜかというと、アイデアは結果でしかないからです。

何の結果かというと、理解の深さの結果です。

人をハッと振り向かせる、共感を集める、という事がアイデアの力だというのは、間違えではないのですが表面的な問題だと思うのです。

気になる、共感するという現象は、人が「何となく思ってたけど、カタチにできなかった」ということを具体的に示した、ということです。「そうそう、これって私も考えてたんだよね」と、いかに多くに人たちに思わせるかということです。上手くカタチに現すためには、無意識に思っている人たちよりもさらに深くに立ち入って問題を考える必要がある。

とすると問題なのは、示した人がどれだけ「深く理解したか」という事にかかってきます。

で、何を言いたいかというと、「アイデアを出そうと頑張る前に、まず目の前にある課題を根本まで理解するように頑張れ」ということです。

それをさらに具体的に表現すれば、「メカニズムを解明すべし」ということになります。さらに、「そのメカニズムがどんな影響をもたらすかイメージすべし」ということです。

例えば、デザインを頼まれた場合、頼んだ人が作った商品には必ず「技術」がある。

そしたら、その「技術の本質」をよく考えてみる。丁寧によく考える。

そうするとやがて、「深い理解」がやってきます。

その「深い理解」は、「作った人の視点」と、「受け取る人の視点」を繋ぐ力があります。

具体例では、このブログを見ている広告関係やデザインの人にわかりやすいようなものだと、「ウォークマン」の例があります。

「作った人の視点」でいうと、大きなスピーカーと再生機器が必要だったものが、携帯できるように小さくなったという、「大きさと重さの問題」が大事です。

「受け取る人の視点」でいうと、今まで部屋の中でしか聞けなかった音楽が外でも聞けるようになったという、「シチュエーションの問題」が大事です。

ここまで理解していくと、「歩いている風景に、自分の好きな音楽を重ねられる」という価値が見えてきます。

ここに気付くまで考えるというのが、とても大事なプロセスなんだな、と思うわけです。

不思議な話なのですが、技術を作る人は「意味」を考えることなくモノを作り出します。理屈なしに、可能性を追いかけて技術を実現する。そのモノが持っている意味を考えないことが多いのです。

アインシュタインが特殊相対性理論を作ったときも、それが何を意味するかは考えなかった。

原子力爆弾が爆発した後に、ようやくその意味に気付いたのです。

そこで気付くのは、「作る」と「わかる」は違う、ということです。

そして、本質的なアイデアとは、「作る」と「わかる」を繋ぐ「深い理解」である、ということなのです。

全ての技術は、理解の前に作られます。

そして、アイデアとは、技術を理解し、「技術の本質」を現すものです。

技術を作った人の無意識をトレースして、それを受け取る人のシチュエーションをトレースする。

その前提なくしてのアイデアは、どれだけ方法論を構築したとしても、ただのこじつけにしか過ぎないのではないか、という風に思います。

「深く理解する」。その瞬間に、アイデアはもうすでにある。

そんな風にヒラクは思うのでした。

今夜はここまで。おやすみなさい。



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Published by

小倉 ヒラク

発酵デザイナー。1983年、東京都生まれ。 「見えない発酵菌の働きを、デザインを通して見えるようにする」ことを目指し、全国の醸造家や研究者たちとプロジェクトを展開。下北沢「発酵デパートメント」オーナー。著書に『発酵文化人類学』『日本発酵紀行』など多数。