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ハスラー・ギーク・ヒップスター。

未知のものを発見する、仕組みをつくる、価値を与える。
新しい価値ができて、そこに需要が生まれる。事業やプロジェクトが生まれる時には価値のデザインのトライアングルが必要。そしてそのトライアングルは一人ではムリで、役割分担が絶対必要〜!!

プロデュースおじさんの職能3分割

…と最近痛感するわけです。
それはなぜかというと、仲良しのクラシコムの青木耕平さんとgreenzのおのっちさんの影響。

青木おじさん、おのっちおじさん、あと僕で「プロデュースおじさん」という謎の三人組が結成されています。

・プロデュースおじさんの脱力系ビジネス論がログミーで読めるよ!

この三人はキレイに職能が三分割されていて、

青木さん=ヒップスター
おのっち=ハスラー
ヒラク=ギーク

の役割。これが前述の「価値づくりの役割分担」なんですね。

ギークは自分の好きなことを延々と掘り続けるオタクで、ハスラーはそのオタクに「チームでやったらもっと掘れるよ」と声をかけて仕組みをデザインし、ヒップスターは「掘った穴を洞窟ホテルにして一儲けしよう」と掛け合わせで新しい価値をつくる。

それぞれ得意な力の使いどころが違うので一緒にいるわけです。

全部できる自分を手放せ!

「自分は全部できる!」と、器用な人ほど思いがちです。
実際に全部できたりするんだけど、それぞれが中途半端なレベルでまとまってしまう。自分の目指すもののレベルや規模が上がってきたら「全部できる自分」を手放してしまうほうが、実は自分の目指すものを実現しやすいのではないか…!?
と気づいたのは、青木さんとおのっちさんとよく一緒にいるからなのでした。

発見するのと、仕組みをつくるのと、価値を与えるのはそれぞれが違う領域のデザイン。

一人で全部やっても大した価値はデザインできない。自分ができるどれか一つを選んで最大化させる。そしたら同じく最大化を頑張ってる違う領域の仲間ができるのでもっと面白いことができるしお互いリスペクトできる。

僕のケースでいうと、ハスラーとしては無能、ヒップスターはまあまあできるが無責任になる、同じことを延々続けられるのでギークがベスト!ということにここ最近気づいたわけで。どこかのタイミングで自分の弱みや中途半端な強みを手放さないとキャリアがこじれるんだよ(特に「中途半端な強み」を見切るのが難しい)。

ほんと、僕もそう思います。

 

【追記1】なおヒップスターの青木さんは「ヒップスターの価値と思い違い」について詳細に掘り下げているので興味ある人は検索してみるといいんじゃないかしら?

抽象性のサーカス。

さいきん仲良くなった友人にALL YOURSというアパレルブランドをやっている木村くんというナイスガイがいる。彼は思考力も行動力も過剰な「止むに止まれぬ理由でなんでもやりすぎてしまう系譜」に生きる男なんだね。

・木村くんゲスト回のラジオ『発酵兄妹のCOZY TALK』はこちらから。

世間には木村くんのように自分の言うこととやること一切に着地と答えを探さずにはいれない苦行に励むレア人間が一定の割合で存在している。

世間で流通している友人関係や仕事でのコミュニケーションって「ふわっとしている」ものが大半。

「◯◯さんって良い人だよね」

という世間話から、

「直近の事業課題は△△で〜」

というビジネストークまで、よく考えてみれば「良さって何?」「直近っていつからのこと?」という掘り下げなしになんとなく「そうだよね〜」という空気感で処理されている。

ところがたまに「そうだよね〜」と空気に流されるのが苦手なヤツがいて、そいつは「何それどういうこと?」としつこく問わずにいられない。しかもその突っ込みは他人だけでなく絶えず自分自身にも向けられる。結果そいつが言うことやることから「ふわっと感」が排除されることになる。

この強度が日常にドロップされると過剰感になる。

言葉や行動に強度を求めずにはいられない気質の人は、ふんわりした日常のコミュニケーションの場で自分の過剰さが浮き上がってしまう。それに耐えきれず自分の過剰さを相対化するために過剰な人種とつるみだすと、過剰な人間で構成される過剰なコミュニティが形成され、よりハードコアに世間から浮き上がっていく。

ご存知だろうか?
世の中には「ニッチな趣味でつながるサークル」が数多あるのだけれど(鉄道とか蘭とか)。それと同じ熱狂度で「抑えきれない過剰さでつながるサークル」が存在している。

このサークルが集うお茶会や飲み会は常人には理解できない強度で定義された概念がバンバン飛び交う抽象性のサーカスになるんだよ。

現実世界から抽出された概念を華麗にジャグリングし、社会を構造的に分析することで走り出す「仮説という名の馬」を乗りこなし、つながるはずのない事象を形而上学的次元で接合させるアクロバティックを「ブラボー!」と愛でるのが「抽象性のサーカス」。このサーカスは過剰界の住人以外には見ることができない。

 

「まだやってたのかおじさん」になりたい。

ここ一年色んなジャンルの人たちから「発酵×◯◯」で企画をやりたいと声がかかります。

直近の2〜3ヶ月だけ取ってみても

・発酵×密教(高野山飛鷹全法さんと)
・発酵×経済(ミシマ社三島さんと)
・発酵×コミュニティ(コルク佐渡島さんと)
・発酵×精神医学(星野概念さんと)

などなど、異種格闘技戦にも程がある…!な状態になっているんだよ。

「これは一体どうしたことだ?」と思いつつ、発酵好きを越えてたくさんの人が微生物の世界に興味を持ってくれていることはほんとに嬉しいことです。

で。こういう流れがしばらく続くと考えた時にだな。
僕は、まだやってたのかおじさんになりたいなと思うんですね。

「えっ、どういうこと?」

例えば僕に「発酵×◯◯企画やりましょう!」と声をかけてくれた人は、その企画が終わったらまた自分の領域に帰るなり、また別のコラボできるところへ移っていくわけじゃないですか。
それで10年以上経って、その人がある時ふと

「そういや昔、発酵×◯◯ってやったなあ…」
「あれ、一緒にやった小倉ヒラク君って今何やってるんだろう?」

と思い出して僕のことを検索してみた時に、

「やってた!ヒラク君まだやってたのか〜!!」

という存在になれたらいいなと。
これがつまり、まだやってたのかおじさん

世間の興味も流行も移り変わっていくじゃないですか。毎シーズン、たくさんのトレンドワードの船があっちこっちの海を渡っていく。

そのなかで僕は発酵&微生物という「港」でいれたらいいなと。
しかもその港はスーパー開かれていて、いつでも各国からの船から人や荷物が降ろされてくる。歴史が積み上がっているので「あの港から見える景色を一度見てみたいもんだ」と噂される。そういうの最高…!

ということで、僕はまだやってたおじさんという港になります。
ちょっと奥まったところにあるけど、見晴らし良くていい風吹いてるよ。

【10/13&11/3】発酵デザイナーのこうじづくり講座 in 甲府五味醤油

お味噌やお酒、和食のもととなる「こうじ」。
ちょっとした工夫と知識があれば、初心者でも家庭でこうじ菌を育てることができます。

発酵デザイナーが東京農業大学で研究に研究を重ねた「おうちでかんたん こうじづくりメソッド」で、和食の真髄である「こうじ」を手づくりしてみませんか?

2015年にスタートし、のべ1000人以上が受講した「発酵デザイナーのこうじづくり講座」、待望の第6期(2018年春)をスタートします!

楽しくこうじづくりをスタートできる4つのポイント!

1:一度覚えれば自分で繰り返し作れます。
従来の常識を打ち破る、素人でも再現できるカンタンメソッドなので、一度ワークショップで仕込み方を覚えると、次回からお家で繰り返し手づくりすることができます。

2:一人暮らしでも使いきれる量を仕込みます。
忙しいシティガール&ボーイでも気軽に使いきれる少量で仕込むので「作ってみたものの、使い道が…」という心配はありません。保存方法やレシピも伝授します。

3:教材のこうじづくりキット&絵本がついてきます。
何度でも繰り返し使える「こうじづくりキット」一式と、教科書となる絵本「おうちでかんたん こうじづくり」を贈呈。いつでもどこでも何度でもこうじづくりを楽しめます。

4:発酵の原理がわかる楽しいレクチャーも同時開催。
仕込みの合間に、発酵の仕組みと日本の醸造文化のツボがわかるレクチャーと、みんなでこうじダンスの実演をします。歌って踊って楽しくこうじのことを学びましょう。

第6期の会場は、山梨県甲府!

第5期までは東京での定期開催でしたが、今期から僕のホームである山梨での開催となります。そんな簡単にアクセスできなくなるぶん、山梨を満喫できるプログラムを盛り込んでみたぜ!

会場の五味醤油の蔵見学できるよ!
新会場は甲府の老舗味噌屋、五味醤油のワークショップスペース<KANENTE>。
ワークショップが終わった後は、発酵ニュージェネレーションの代表格である五味兄妹がけっこう丁寧に蔵の案内をしてくれます。プロのこうじづくりの現場をじっくり見てみよう!

会場ではホストに一緒にラジオ番組『発酵兄妹のCOZY TALK』をやっている五味兄妹がもてなしてくれます。ワークショップ後には蔵やお店を見学&お買い物できまーす。

夕方は夜の甲府で山梨ならではの発酵の真髄を体験!
せっかく山梨に来るのだから、すぐ帰らないで夕方から甲府の街に飲みに繰り出してみたらどうでしょうか。五味醤油から徒歩数分の『発酵居酒屋 かえるの寄り道』をはじめ、オススメのスポットがたくさん。飲み行くぞ!希望者にはワークショップ時にインフォメーションをお伝えしますのでぜひどうぞ。

熱燗体験の会場は<かえるの寄り道>はこんな感じ。発酵しまくりメニューがいっぱいのフレンドリーな料理屋さん。

最近あちこちから「実は山梨ってめちゃユニークな発酵大国なんじゃないか…?」と噂されている通り、他の地方では味わえない国産ワインや郷土食をはじめ、様々な発酵文化が根付いています。特にここ数年はイケてる飲食店が続々オープンし、お店の無限はしごすらできる…!

ついでに最近はゲストハウスもできているので泊りがけでもいいかも…?
僕も夜飲みに行くのでお時間ある人はいっしょに乾杯しましょう。

さらにパワーアップした特典いろいろ

出版ツアーで全国の醸造蔵を訪ね、さらにアップデートしたこうじづくりメソッドを導入!これまでより高い成功率になった…はず!
(とりわけ詳しくアドバイスくれた菱六の助野さん、どうもありがとうございます!)

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スペシャル種麹プレゼント!
素人でも扱いやすい種麹を使い切りぶんだけプレゼント!おうちでも試してみてね。

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講座オリジナルのアドバンスド資料
教科書となる絵本『おうちでかんたん こうじづくり』には載ってないマニアックな情報を網羅した資料を講座参加者にこっそりお渡しするよ…!

五味醤油のお手製お味噌汁or甘酒振る舞うよ!
五味醤油のこうじを使ったお手製味噌汁or甘酒も味わえます。プロのこうじづくりのテクニックも教えてもらえるかも…?

二泊三日の初日「仕込み」を体験。続きはコミュニティページで

本来、二泊三日かかる糀つくり。
このワークショップでは参加しやすいように、一日のWSでこうじを作ることができるよう工夫しています。当日みんなで仕込み、レクチャーでこうじができる仕組みを知ることで成功率を高めます。(万が一失敗した場合でも、無駄なく使える活用法をお教えします)

ワークショップ終了後は、各自が自宅へ持ち帰り、こうじが成長していく様子をFB上でグループを作ってシェア。どのタイミングで、どうしたらいいかをアドバイス&フォローします。
https://www.facebook.com/DIYkoji

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最終的には、こんな感じでお米にこうじ菌がモコモコしていきます。
参加した仲間と一緒にこうじを育てていくなかで「人生が変わった!」という人も。

そのほかにも発酵の基礎知識、糀の活用方法、こうじ使いの裏ワザなどを懇切丁寧に伝授します。人数限定なので、ご参加はお早めに!

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発酵デザイナーのこうじづくり講座

10/13(土) 14:00〜17:30 ※12席限定
11/3(土) 14:00〜17:30 ※12席限定

場所:五味醤油ワークショップスペース<KANENTE>
→会場へのアクセスはこちらから
→新宿駅からのバスも便利です ※中央三丁目で下車徒歩2分
参加費:7,500円(こうじづくりキット&こうじ600g&DVD絵本&種麹&スペシャル蔵見学)
定員:各回12組程度 子供連れ歓迎&子供のぶん無料!
※すでに「おうちでかんたん こうじづくり」の絵本をお持ちの方は絵本のぶん値引きします

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こうじづくりワークショップ専用申込みフォーム

お名前 (必須)

メールアドレス (必須)

ご希望の日にち (必須)
10月13日11月3日

参加人数 (必須)

何かあればご自由にどうぞ

小倉ヒラク:発酵デザイナー。「見えない発酵菌たちのはたらきを、デザインを通して見えるようにする」ことを目指し、全国の醸造家たちと商品開発や絵本・アニメの制作、ワークショップを開催。東京農業大学で研究生として発酵学を学んだ後、山梨県甲州市の山の上に発酵ラボをつくり日々菌を育てながら微生物の世界を探求している。ラジオパーソナリティの他海外での発酵の伝道師として活動中。『てまえみそのうた』でグッドデザイン賞2014を受賞。新著『発酵文化人類学』が3万部を超えるニッチなベストセラーにl

最後にイベントレポートもご一読あれ。

記念すべき第一回を開催した「てしごとぶ nou.」のイベントレポートを連載しておきます。
そうそう、こんな感じの講座なのです。

糀(こうじ)と過ごした3日間

和食文化の基礎を築くものである麹。
お米に花が咲くと書いて糀(こうじ)と呼んだそうで本当にモコモコふわふわお花が咲いたようになるのです。
今回は、趣味から研究者にまでなってしまった発酵デザイナーのヒラクさんをお招きしててしごとぶで去年作ったお米で、こうじ作りをしました。

こうじ作りといっても、WSでやる作業はシンプルでお米を蒸して、種麹(麹の元のようなもの)か、みやこ麹(スーパーで簡単に手に入る麹です)をぱらぱらとまぶし、箱に詰める。

1日目はそれだけなのです。

その後の温度管理が勝負なのですが、なんだ、こうじ作りってとても簡単じゃないか。とビックリしました。(先生の工夫の賜物です)しかも、ヒラクさんは、麹がどういう状態にあったら心地よいのか、どうなったら失敗してしまうかなどをとてもわかりやすく、素人でも簡単に感じられるように解説してくれるのです。

また途中、ヒラクさん(コージーズ)のこうじのうたに合わせて参加者みんなで踊ったのですが(振付がついてます!)なんだか、踊ったことで、場に麹菌が広がった感じというか、参加者みんなが米粒で、発酵したようなほっこりとした盛り上がりをみせました( ^ω^ )

楽しかった!笑

そして、お米を蒸す間に、麹の歴史や文化、科学を学ぶ。
これがまた面白い。

中国にも似た菌はいるけれど、ここまで味覚のベースになって、使いこなしているのは日本独特であること。
日本に存在している菌を、目的毎に選び出し、技術を生み出して使いこなしている麹の文化こそ、クールジャパンであるということ。大豆と麹と塩というとてもシンプルな食材である味噌は、なぜか地域それぞれに味の個性があること。

ヒラクさんの話を聞いていると、こうじが可愛らしくて、愛おしく感じてくる。

そして、日本の食文化、農の文化の深さと面白さを垣間見ることができました。話の途中で、和食の危機について話をしてくれたのですが、

醤油も味噌も、その後ろにある麹の文化、それがないと成り立たない食文化であるけど、それが見えない、問題が遠く見ないところにあると問題意識は薄れる。
だからこそ、五感で感じて欲しくて、この活動をしている。と話してくれました。

てしごとぶの活動も、そこが一つの目的であって、遠くなってしまった、私たちを支える食や農、暮らしのこと。それはとても遠くて、自分ごとにするのは難しいのだけど、自分たちの手を使い、五感を駆使して感じる考える。

全てはそこからだと考えて、手を動かし、感じる場所を作っています。
麹を通してそういった活動をしているヒラクさんに今回WSをお願いすることができて本当に良かったと感じた瞬間でした。

さて、話が少し飛躍しましたが、こうじ作りの本番は、WSが終わってから!という、てしごとぶでも前代未聞の、それぞれ持ち帰り、実況中継しあうという今回のWS。

早速持ち帰った夜から、3日間、逐一皆で、糀の今を報告しあいました。
これが、なんと楽しいこと!!!同じ環境で作ったはずでも、持ち帰ると糀の動きは全く違う。

それぞれ出先で仕事をしたり遊びをしたり、過ごし方はバラバラなのに、同じ目標に向かってこうじと向き合っているこの3日間がとても面白かった。
糀くんも、だんだんと着実に姿を変えていって、これが、菌が育っていく過程なんだ、と実感することができました。

さてさて、こうじ中心に過ごした3日間。
いろんなことを学び、感じました。

やっぱり、知っていることとやってみることの差は大きい。今回、このような素晴らしい機会をいただいて本当に感謝です。

ヒラクさん、今年は、こうじ作りをもっと身近にする活動により力をいれていくようで、WSもこれからたくさん開催されることだと思います。とても楽しみで、これからも応援したいです。

そして、次は、それぞれ仕込んだ麹を(仕込みも実況中継しながら)出来上がりを自慢しあう。まさにてまえこうじのWSなんかもやりたいなぁと妄想はモコモコと発酵するばかりであります。

糀に振り回された(いい意味で)3日間。
ヒラクさん、参加者の皆様本当にありがとうございました。

てしごとぶ

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みんなでレッツ「手前こうじ」!

35歳は、垣根を越えてチャレンジする年だ!

2018年2月に開催された道東誘致大作戦の一コマ。冬のオホーツクを満喫してきたぜ。

35歳になりました。
去年のテーマは「見えないものを見る年」でしたが、微生物の世界を求めて各地を巡りまくるディープな一年になりました。

・34歳は、見えないものを見る年だ!

・一球入魂!旅と学びと出会いに満ちた2017年の振り返り

・『発酵文化人類学』一周年記念!3万部重版&フランス語版&続編ができるよ!

『発酵文化人類学』の出版と、出版ツアーで日本全国をフィールドワークしまくったことにより、微生物と文化人類学とデザイン・アートの融合という、僕にしかできないユニークな仕事が見えてきたような実感があります。

そのうえで次にどこを目指すのか。
目指すは発酵文化人類学の方法論を携えて、垣根を越えてチャレンジすること。

「垣根」の定義は2つあって。
一つは「ジャンルの垣根」を超えること。もう一つは「国境の垣根」を超えること。

1つめのクロスオーバーはここ一年でカタチが見えたので、それを継続する。
そして今年新しく挑戦するのは、国境を越えて発酵デザイナーの活動を広げていくこと。

国外の情報を国内に紹介するのではなく、僕が各地を歩いて見知ったことを異なる文化圏に伝えていくこと。それが今年以降のチャレンジになります。

まずは今年6月のハンガリー・ブダペスト。
そして夏の科学未来館で開催されるALIFEの国際学会、来年春のフランス・パリでの出版イベントツアーと、活動の領域を広げていく予定。

…いや、正直言うとめちゃ不安です。
言葉や文化の壁もあるし、その先に何が待っているかどうかも確かじゃない。

なんだけど、今このタイミングでやるべきことだと思うし、きっと愉快な出会いが待っている。その直感を頼りに、先へと進んでいこうと思います。

ローカルかつボーダーレス。これが2018年以降に目指すことだ…!

応援してくれているみんな、いつも本当にありがとう。
今年も朗らかに愉快に、前へと進むんだ!

プロデュースおじさん、イタリアへゆく。

業務連絡です。
明日5/4から一週間、クラシコムの青木耕平さんと一緒にヨーロッパへ行ってきます。
前半はフランス・パリ、後半はイタリア・ミラノ。

プロデュースおじさん二人の今回の本丸は、イタリア滞在。
デザインとビジネスをかけ合わせた敏腕キュレーターの安西洋之さんのコーディネートで、現地の注目スタートアップや老舗企業の経営者たちに会いまくってきます。
(ちなみに前半のパリ滞在は僕の『発酵文化人類学』仏訳プロジェクトを現地のディレクターたちと作戦会議&のんびりお散歩)

海外のビジネスやクリエイティブというとアメリカや中国の情報ばかりが目立ちますが、実はマイペースのプロデュースおじさんが参考にすべきモデルはイタリアにあるのでは…という仮説を現地に行って確かめてくることにします。

・プロデュースおじさんの組織論。 | logmi

この旅の模様は、何かしらのかたちでコンテンツになる予定(たぶん)。
パリとミラノの皆様、一週間お世話になりまーす!

【追記1】プロデュースおじさん三人組のおのっちさんは今回残念ながら欠席。次回は一緒に行こうね。

【追記2】醸造現場にももちろん行くよ。

暮らしのなかのゆったり感。『青葉家のテーブル』を見て感じたこと

僕の住む家は山の中すぎてテレビの地上波が入らない。
で、たまに東京の実家に戻って家族と地上波のテレビを見ていると「なんか情報量多すぎじゃない?」と感じてしまう。バラエティ番組やニュース番組を筆頭に、世界観が大事なドラマ番組すらせわしなくて疲れてしまう。

毎日色んな用事で疲れてるんだから、夜テレビ見る時くらいリラックスさせてよ!と思うんだけど、テレビ画面のなかは現実よりも忙しい。

「ゆったりできる動画コンテンツ」はもはや地上波のテレビには期待できないのかしら?

……というのは前置きの話。

本題は、仲良しの青木耕平おじさんが営む『北欧、暮らしの道具店』が最近リリースしたドラマ『青葉家のテーブル』のトピックスなのであるよ。

ECサイト発のドラマの「ゆったり感」

センスが良くて使いやすい雑貨ECサイトの草分け北欧、暮らしの道具店がオリジナルのドラマをつくった。しかもちゃんと予算と手間をかけて(主演は西田尚美さんだし、主題歌はサニーデイ・サービス)。

仲良しの友人のつくったものだけに若干見るのに躊躇があったよね。本業じゃない動画制作で、もし微妙な出来だったらどうしよう…。コメントしづらい〜!!
あるいは。そこらの映画顔負けの超スゴい仕上がりだったらそれはそれで僕は何も言えないのではないか…

と危惧していたのだけど、いざ見てみた感想はどちらでもなかった。

『青葉家のテーブル』は、昨今見ない「ゆったり感」に溢れている。
ストーリーも空気もテンポも「ゆったり」している。このフィーリングがとても好ましいと思ったよ。

制約がないことの贅沢さ

ストーリーや制作の背景の詳細はこちらを読んでもらうとして。
ビジネスサイドから「ECサイトがドラマをつくる意義は〜」みたいなことを語る人はたくさんいそうなので、僕なりの『青葉家のテーブル』の感想を言うとだな。

このドラマは「映画の空気感でつくったテレビドラマ」で、その結果「長尺のプロモーションビデオ」のような仕上がりになった動画コンテンツだと僕は感じた。

スポンサーの制約があるテレビドラマは、1話のなかにはもちろんCM前のタイミングで盛り上がる山場をつくらなければいけない、視聴率を取るためにトレンドのキーワードをたくさん盛り込まなければいけない…という事情でストーリーのアップダウンがやたら激しいものになる。

でもね。
『青葉家のテーブル』は一企業が純粋に作りたくて制作したドラマなので、そういう業界的な裏事情は関係ない。青木おじさんと店長の佐藤さんはじめ、スタッフの「こういう世界を見たい!」という美意識がノンフィルターでダイレクトに具現化されている。

その結果、ノイズの少ない、必要なだけの時間カメラを回して登場人物の感情の機微や、暮らしのディティールをすくいあげる映像になっている(僕が好きなのは、意味不明な言葉で短歌をつくってそれの感想を言い合うシーン)。
人の目をひく派手なキーワードやストーリー展開は、時として空気感のディティールを殺してしまうことがある。だけど『青葉家のテーブル』では、そういうキャッチーな要素が排除されたぶんだけ、この家族の一挙一投足に共感することができる。なんなら映像を見終わった後に自分の家族や、あるいはこれからできるかもしれないコミュニティに思いを馳せることができる。

こういうのがつまり「映像作品としての余白」であり、「ゆったり感」なのだね。

僕はこの短編ドラマを見て「テレビでもこういうドラマがあったらいいなあ…」と思った。それはこの映像が、今のせわしなくてどこかケチくさいドラマの「ほんとはありえた空気感」を体現しているではないか…と思ったよ。

そしてその空気感は同時に『北欧、暮らしの道具店』が醸し出すものでもある。
僕は別に「ブランドCMとしてよくできている」と言いたいわけじゃない。

そうじゃなくて、青木さんたちにとってECをやるのもドラマをつくるのも「世知辛くない、ゆったりした暮らし」を体現するためのアクティビティとして等価だ、ということなんだよね。モノを売って利益を出すのももちろん大事だけど、さらにその先に「自分はどのように暮らしていきたいのか」という問いかけがある。

なんだか社会がケチくさい、みんな自分のことばかり気にかけて殺伐としている。そういう世知辛さは人生におけるけっこうなストレスだ。このドラマにしてもECサイトの記事にしても『北欧、暮らしの道具店』にはそういうストレスを和らげてくれるゆったりとした空気が流れている。この空気感の突出具合が、逆説的に今の社会への問いかけになっている。

青木さんにとってのビジネスとは「問い続けること」。
だから「問いの可視化」としての映像制作はけっこう必然性があることだったんだと僕は思うよ。

…と、ビジネスと切り離して純粋に映像作品としての話をするぞ!と意気込んだものの、やっぱり無理だったぜ。ビジネスとしてのエモさがこのドラマを必然的に生んだ、と考えるのが自然なのかもしれませんね。

青木おじさん、第二話はよ!

「今できること」の延長線上に未来がある。

先日、新卒で大手企業に就職した知り合いの女の子からメールが来ました。
仕事はどう?と聞いたら、

「もうちょっと力つけたらやりたい職種の会社に転職したい」

とのこと。
そうかい。じゃあちょっと発酵おじさんの意見を聞いておくれ。

もしやりたい仕事があるなら、力つく前に転職したほうがいいし、やる気出ない仕事をいくらしてもそもそも力つかないよ。今に一生懸命になれなければ望む未来は来ないからさ!

雲の上から自分を見ている神さまがいて「イヤな仕事を三年間も我慢してエラい!ご褒美に希望の職種に転職させてあげよう」と都合よく他人に引っ張り上げてもらえることなんてありえない。実際は「三年間それなりにやりがい感じて頑張った結果」を足がかりにして、自分の力で一歩一歩登っていくんだよ。

今やっている仕事がやる気でなかったら「やる気でない仕事をやってきた自分」に対して社会から評価が下され、それをベースに次の仕事が割り当てられることになる。
今やっている仕事に意義を感じていたら、同じ原理でそこに評価と次のキャリアが期待される。やる気なくても充実していても、とにかく「それをやっている」ということが既成事実として外部から認識され、評価される。

「やる気ない自分」はカウントされず「やる気ある自分」だけカウントされる、というのは都合のいい解釈でやる気ないと「コイツは惰性でやる気ないこと続けてるな」というカウントになるんだね。

ということで。
さいきん10代の中高生や20歳くらいの就職で悩んでいる子たちがよく僕に会いに来てくれるんですけど、何か言えるとしたら「今を大事にしたらいいよ」ということ。

今自分が好きなこととか、大事にしている感覚を優先してリスペクトできないオトナの言うこと聞く必要ないと思います。ほんとに(例えば僕とか)。

「今の我慢」を担保にしたら未来がもらえる。こういう謎の価値観がこの時代を生きる子どもたちにも刷り込まれているのがほんとに驚きです。「今できること」の延長線上に未来がある。今を生きるアナタは、大事な「今」を取り上げようとするマインドセットから全力で逃げたほうがいいと僕は切実に思うよ。

未来はわからない。
それでも明るい未来を望むなら、集中すべきは「今」だ。力いっぱいの「今」の先に望む未来が待っている。

 

【追記】余談ですが、この話はよくあるダメな恋愛話に似ています。。「好きな人がいるんですけど、好きすぎて振られるのが怖いのでなんとなく告白された好きじゃない人と付き合おうかと思ってます」というこじらせた人が散見されますが、この場合好きな人も告白してきた人もどっちも逃すことになります。今を生きろ…!

『発酵文化人類学』一周年記念!3万部重版&フランス語版&続編ができるよ!

あまりにも刹那の出版界で、一年間サバイバルできたよ。生き延びたよ〜!!!

去年出版した『発酵文化人類学』が一周年を迎えました。
ありがたいことに、売り上げが落ちていません。取り扱ってもらえている本屋さんもだんだんと増え続け、SNSやクチコミでじわりじわりと拡がり続けているようです。

つまりだな。
出版から2〜3ヶ月で大半の本が淘汰されて絶版になってしまう諸行無常すぎる書籍の世界において『発酵文化人類学』は淘汰を生き延びることができたということなのであるよ。

「なんと!本の内容が素晴らしいからですね」

いや、僕はそうは思わない。昨今、内容が素晴らしくても不遇な行く末をたどる本がたくさんある。仮に僕の本の内容がイケていたとしても、それだけがサバイブの理由じゃないんだ。

この本を応援してくれたコミュニティの力。
これこそが『発酵文化人類学』が生き延びた最大の理由。つまり僕はみんなに生かされている…!!

コミュニティが発酵する

ご存知の方も多いと思うけど、この本は一般的な本とはだいぶ違う方法論でつくられ、流通している。

・事前に本を読みたい人からの意見(800人超!)が反映され
・取次を通した流通を使わず、自前のメディアで注文をとり
・著者が自力で全国55ヶ所を行商してまわり
・志ある読者や本屋のみんながクチコミで拡散してくれた

という、業界の慣習でレバレッジをかけることをせずひたすら顔の見える関係性を積み上げ続けることで、発売直後から重版出来を重ね、去年末の段階でなんと!2万部まで到達することができたんですね。

一週間で重版出来!の舞台裏。マーケットではなくコミュニティに届ける。

これすべて、コミュニティの力が起こした奇跡。嬉しい…嬉しすぎる…!!

最初は「いかに本を広めていくか?」という作戦だったはずが、みんなの声を聞き、みんなに会いにいって話をするうちに、大事なことに気づいたんだよ。

もしかして、一冊の本がつくりだすこの「つながり」こそが、『発酵文化人類学』の本体なのではないのではないだろうか?

一冊の本というプロダクトを介して起きる「コミュニケーションの環」こそが本質。
もはや著者と読者という立場を超えて、相互にインスピレーションと実践の贈与がグルグルまわる。この本がきっかけになって生まれたことが、本と等価の表現になっているのではないのだろうか?

「何をヒラクくんは大げさに!」

と思うじゃないですが、でも現実にここ一年で起こったことを見てみると僕の実感はブラフではない…!

全国55ヶ所を行脚した出版ツアー。写真はそのなかでも最高のハイライト「沖縄の発酵文化人類学」@宜野湾カフェユニゾン。100名を余裕で超える参加者で盛り上がりまくり、なんとこれがきっかけでテレビ番組が企画されたようです。すごい…!

僕が今までやってきた発酵のフィールドワークが地域を巻き込むプロジェクトに。
秋田での発酵文化人類学ツアーはイベント『トージ・コージ』WEBマガジン『なんも大学』にスピンアウト!秋田の発酵のルーツが紐解かれる貴重な機会になりました。

・トージ・コージ! | なんも大学

本がきっかけで、なんと寺田本家の旦那と新政の杜氏が出会ってしまった!
異なるジャンルの醸造家同同士のつながりも生まれて嬉しい限り。

本に登場する醸造蔵や地域を訪ねる『発酵文化人類学巡礼ツアー』に出る人がたくさんいるそうです(自分でもホントかな?と疑いたくなるけどホントだよ)。

同世代で最もスケールの大きな視野の情報学者、哲学者のドミニク・チェンさんとの対談。二人で発酵的な世界の可能性に気づき、ITテクノロジーと微生物をかけあわせたプロダクト開発のプロジェクトがスタートすることに。前からファンだったドミニクさんと最高のかたちで縁ができて嬉しすぎる…!

・明晰夢とアブダクション  ドミニク・チェンの醸され「発酵メディア」研究 | wired

大学時代から本を愛読していた探検家高野秀行さんとも『発酵文化人類学』がきっかけになってお話することに。東南アジアやアフリカの知られざるディープ発酵(納豆)文化を介して、日本の発酵のルーツが前世代の農大の先生たちとは違うカタチで見えてきた…!
お互い珍食好きなので、憧れの大先輩と発酵仲間になることができました。嬉しいぜ。

・謎の未確認発酵物体を追え | 早稲田WEEKLY

『美術手帖』の表紙&特集巻頭インタビューに登場。他にも文芸雑誌やデザイン誌、カルチャー誌などに記事や寄稿が掲載されまくり、発酵がアートや哲学の世界にインスピレーションを与えるというスゴい時代が到来してしまった…!

『発酵文化人類学』の舞台となる、日本全国のローカルで活躍する第一人者たちともたくさんコラボしました。とくにRe:Sやのんびりを立ち上げたローカルメディアのレジェンド藤本智士さんの合同出版企画や発酵文化を訪ねるツアーが光栄すぎた…!
さらにビックリしたのが藤本さん自身が僕にインスピレーションを受けて著書『魔法をかける編集』の全国出版ツアーを始めてしまったこと。

・出版記念イベントツアー日程一覧! 藤本智士 | note

「55ヶ所行脚はしばらく破られない記録になるだろ」と思ってたら藤本さんに速攻で抜かれた(59ヶ所)。センパイすごいっす…!

WEBで連載中のミシマ社の三島さんも『発酵文化人類学』を面白がってくれて、なんとミシマ社の雑誌『ちゃぶ台』の次号の特集(経済と発酵)に藤本さんとともに登場予定!

転がってる…話が転がりすぎてる〜!!!

そしてついにビジネス界にも発酵の魅力が波及。2017年秋の働き方の祭典TWDWや敏腕編集者佐渡島庸平さんが主催するコルクラボのイベント企画に波及していきました。

・プロデュースおじさんの脱力系ビジネス論がログミーで読めるよ!

食やライフスタイルから始まり、アートや思想界をインスパイアし、さらに働きかたやコミュニティの理論にも波及する。

発酵の力、恐るべし…!

さらにさらに。発酵デザイナーが勝手に思いついた学問がリアル講義になってしまったー!大好きな青山ブックセンターで連続講義になっちゃうんだよ。
昨今アカデミアで叫ばれている「文系と理系の垣根を超える学際的なオルタナ学問」って、つまり発酵文化人類学のことじゃん!みんな遊びに来てね〜

これまでの10年間の活動の集大成がこの『こうふはっこうマルシェ』。
微生物界への扉を開いてくれた発酵兄妹とともにホーム山梨で盛大なイベント企画。発酵文化人類学でおなじみの醸造家たちが全国から集まるハイセンスすぎる祭りに、全国から1万人以上のお客さんが遊びに来てくれました。

・HAPPY&COZY!1万人が醸された『こうふはっこうマルシェ』レポート。

ちなみに「こうふはっこうマルシェ」の象徴となるジャズバンドで演奏しているのは、なんと!発酵文化人類学の編集チームのハシモトさん(トランペット)とハヤノさん(ベース)。

今回ここまでの拡がりを生んだのは、ひとえに二人の頑張りがあったからこそ。
本をつくって売るのはチームプレイだ!ありがとう〜!

3万部重版&フランス語版&続編出版決定!

ということで一周年記念を祝うニュースです。以下時系列でお届けします。

2018:ネクスト重版出来。ついに3万部突破!

まだまだ売るぞ!ということで、6刷目の重版出来です。ついに、ついに3万部突破〜!ハシモト担当編集いわく「ぜったい5万部いきます!」、そのボスのソトコトのファウンダー小黒さんいわく「10万部売る!」とのことです。ま…マジですか?

2019:フランス語版出版&フランスツアー!

色んなご縁が重なり、2019年の春に『発酵文化人類学』にフランス語版の出版とフランスツアーのプロジェクトがスタートしました。発酵ワールドの魅力を僕の第二の祖国、フランスにプレゼンしまくってきたいと思います。もちろんパリだけじゃなく地方にも行くよ!

2020:『発酵文化人類学』第二弾は世界編!

そしてそして、第二弾も出版するぞ〜!『発酵文化人類学』のあとがきで予告したように、次の舞台は世界!アジアやヨーロッパなど世界各地の発酵文化をたどりながら「人間にとって食べるとは何か?」「微生物は世界の未来に何をもたらすのか?」というより深い問いを皆様にぶつけたいと思います。

今から編集チーム&版元(木楽舎)に予告しておくよ。
初版は最低2万部!目指せ出版ドリーム〜!!!!

ということで。
『発酵文化人類学』を応援してくれたみんなに御礼です。

目次すらできてないのに事前注文してくれた発酵ラバーのみんな

ニッチすぎる内容&無名な著者にも関わらず本を注文してくれた本屋さん

自分のブログやSNSでオススメしてくれた読者のみんな

出版イベントを誘致してくれた全国55のオーガナイザー

イベントに一緒に登壇してくれた60名超の醸造家&クリエイター

イベントで一緒に盛り上がってくれた各地の参加者のみんな

謎すぎる内容の本を取り上げてくれたメディア関係者

日本全国の土地に根ざしたものづくりを続ける醸造家たち

ほんとうにありがとう。
『発酵文化人類学』はみんなでつくりあげる「贈与の環」です。

一周年記念をこんな素敵なカタチでお伝えできることに無上の喜びを感じています。

…とブログ更新しようとしたら、

ちょ、ちょっと待って!
僕の知らないところでもう企画が始まってる〜!!

著者が先こされてる〜!!!

https://twitter.com/kakijiro/status/989525079074652162

なんだよみんな…

「リアル贈与の環」しれっとやらないでよ…

僕はもう何も言えないし、涙で何も見えない…

ほんとに発酵に出会ってよかった。
微生物がこんなにも素敵な出会いをプレゼントしてくれた。

最後に『発酵文化人類学』のなかでいちばん気に入っているフレーズを引用してエントリーの締めくくりとします。


北から南、西から東。
日本の土地の隅々に人の営みと自然の恵みが結び合わされた多様な文化が息づいている。

「発酵文化人類学」の舞台になるのは、ヒトと自然がおりなす暮らしの芸術の世界。
そしてその舞台の主役は、他ならぬアナタだ。

アナタが手前みそを仕込むたび、また家族と友人と食卓を囲むたび、何千年も受け継がれてきたバトンが次の世代にパスされる。

美しい酒を醸すように、美しい社会を醸していこうぜ。


2018年4月27日 小倉ヒラク記す

 

【追記1】記念企画してくれた灯台下暮らしチーム&くいしん、そしてお祝いのコメントしてくれたみんなありがとう〜!泣けるぜ

【追記2】これから夏くらいまでまた関連イベントやフェアが始まります。全国のオーガナイザーや本屋のみなさま、お世話になります。

発酵デザイナーのイベント予定【2018春〜夏】

こんにちは。ヒラクです。暖かくなってきてイベントシーズンがやってきました。
春〜夏にかけてのイベントスケジュールをまとめておきます。4ヶ月で全国55ヶ所周った去年と比べると今年はのんびりペース。これぐらいがちょうどいいですね。

ご予定合うかたはどうぞ遊びにきてね。

春〜夏にかけてのイベント一覧はこちら!

▶5/11〜13 森、道、市場 @ 愛知県蒲郡

全国のイケてるメーカーやアーティストが集まるモンスターイベント、森道に今年も参加!
発酵居酒屋ブースで利き酒やったり、ライブ番組のパーソナリティやりまーす。

▶5/26 澤田酒造170周年記念イベント @愛知県知多


知多の老舗の酒蔵、仲良しの澤田酒造の170周年記念イベントで、なんとメインゲストで出演します!ちなみに160周年記念のメインゲストは小泉武夫センセイだったそうな。緊張するぜ…
イベント詳細はこちら

▶5/27 星野概念さんと対談 @渋谷パブリッシングブックセラー


精神科医兼ミュージシャンで最近いとうせいこうさんと共著『ラブという薬』を出した星野概念さん(大の発酵好き!)と対談します。会場は僕の『発酵文化人類学』を出版直後からイチオシしてくれていた渋谷パブリッシングブックセラーさん。絶対に面白いイベントになるのが確定している…!詳細は近日。

▶6/2 DML Seminar @立命館大学東京キャンパス


イタリアを拠点にデザインとビジネスの研究を行う安西洋之さんのお誘いで、立命館のセミナーでお話します。微生物をキーワードにビジネス、アート、デザイン、サイエンスを横断するプロジェクトのお話をする予定です。ふだんの話とは違ってかなりビジネスや戦略論寄りの話しになると思います。
イベント詳細はこちら

▶6/3&10 発酵文化人類学 連続講義 @青山ブックセンター本店

大好きな青山ブックセンターさんからお誘いしてもらって、発酵文化人類学のリアル講義をすることになりました。わーい!二週連続の講義で、前半は人類学をベースにした文化論、後半は発酵をベースにしたサイエンスの二本立てです(一回だけでも参加OK)。文系理系の垣根を超えて、微生物の不思議な世界をご案内します。気合入れて臨むので楽しみにしててね。
ちなみにこの講義に関連して、対談イベントを予定しています。そちらも豪華ゲストが登場予定…!
講義の詳細はこちら

 ▶6/9 復活!発酵デザイナーのこうじづくり講座 @甲府KANENTE

『発酵文化人類学』出版ツアーでお休みしていたこうじづくり講座を再開しまーす。開催場所は僕のホームの山梨へ。甲府の老舗五味醤油のワークショップスペースで月イチ開催の予定です。せっかく山梨に来てもらうので、発酵をテーマにした観光ができるように連動企画を仕込んでいます。みんな、こうじをつくりに山梨にカモン!
詳細は4月中にお知らせします。どうぞよろしくー

▶6/15 早稲田大学文学部キャンパスで講演

毎年恒例のキャリア教育の講演会を今年もやります(なんと4年目!)。
僕の母校で「自分勝手に生きるといいことあるよ」という話をします。今まではキャリアデザインの話が多かったのですが、今年はデザインとサイエンスをテーマにちょっとディープな話を学生たちにする予定です。激動の時代、身につけるべきはサバイバル力…!
お昼すぎに38AV教室でやってます。早稲田の学生以外でもご自由にどうぞ。

▶8/4 菱六の助野彰彦さんと対談 @ 東京都立川アイムホール

友人のナイスな商店かわしま屋さん企画のスペシャルイベント。早稲田〜東京農大のダブル先輩である京都のもやし屋助野センパイと対談します。この日はもうひたすら麹のマニアックな話を微に入り細に入り話しまくる予定。今から楽しみで寝られねえ…(嘘だけど)。
詳細はこちら

 

また追加イベントがあったら随時このページに更新していきます。
「ウチのイベント忘れてない?」「ダブルブッキングしてるで!」という方はご一報くださいね。速攻で平謝りします。

「いつもやる気」はありえない。価値の創造と運用のマネージメント。

こないだ大学の後輩でもあるメディアアーティストの市原えつこさんから「独立して二年間経って、独立当初のようなやる気がなくなってきました」という相談がありました。

https://twitter.com/etsuko_ichihara/status/982610076899786753

で、僕がその時思ったのは「そもそも常時やる気なんておきない」ということ。「100%内発的なやる気」はレアメタルのような希少資源なので、ゆっくり採掘するのが吉です。

僕の話をするとだな。
僕は自分でもビックリするぐらい「やる気あるタイム」が少ない。たぶん創造的なことをできる時間はよくて15%くらいで、あとはやるべきタスクを消化したり調べものしたり整理整頓したりお昼寝したり。

「なんだその怠け者っぷりは!もっと気合入れて仕事したらどうなんだ?」

という突っ込みも聞こえてきそうですが、僕はやる気タイムの割合を増やす気もなく、考えているのは限られた15%の価値をいかに引き出すか

思うに、「やる気」ってのはそんなに出ないからこそ価値があるんですよね。

だから「常に100%創造的な自分」を目指すライフハックって「三食全部サーロインステーキ食べる」みたいで胃もたれしそう。「たまに出るやる気」にレバレッジをかけて日々をのらりくらりと暮らすのが結局は長く続くと僕は思います。

やる気を「希少なもの」とカウントするのか「常時あるもの」とカウントするので仕事に対する取り組みが変わってくる。

「希少なもの」としてカウントすると、やる気ないタイムは「希少資源のマネージメント」として割り振られることになります。常に資源を採掘しまくるより、適切な量を採掘してその価値をマネージしたほうが生産性が良い、と言えるのではないかしら?

表現やプロダクトが生まれるのは「やる気ある(創造的)タイム」ですが、その表現やプロダクトの「価値」が生まれるのは「やる気ない(運用)タイム」だったりする。

だからやる気ないタイムはやる気あるタイムと同じく大事なんです。
やる気ない自分は、やる気ある自分のマネージャーの役割。

やる気あるハイテンションな時に「こんなことやりたい!」と用事を仕込んでおいて、やる気がフェードアウトしたタイミングで「やれやれ」と用事を片付けていくバランスで僕の仕事は回っています。ずっとやる気あると片付かない用事がどんどん増えるので、やる気はぼちぼちくらいじゃないと破綻する…!

「いつもやる気100%」って思うほど良いものじゃないと思う次第です。

自分のなかに「良い読者」を育てる。

最近はずいぶん文章を書く仕事が増えました。
で、その時にいつも気をつけていることがあります。

「書く自分」の前に「読む自分」を育めているか。

何か文章を書いた時に一番最初にそれを読むのは自分自身。自分という最初の読書のレベルが自分の書くもののレベルを決める。だから上等なものを書くためには、自分のなかに「上等な読者」がいる必要があります。

でもさ、書く訓練より、読む訓練のが難しいんだよね…!
その理由としては、書くことには仕事として対価が発生する可能性があるのに対して、読むことには対価が発生しないから。

「読む」というのは「120%の好き」からしか発生しない。

でもほら、誰にも求められない「好き」って現代における希少資源だもんね。
見返りを求めない「好き」からしか表現のセンスを育てることはできない。

良いものをつくりたい!と思ったら、良いものにたくさん触れる時間を持つことが大事。日本はありがたいことに文章でも食でもデザインでも知恵を絞ればお金ない若者でもアクセスできる回路があります。数百円あれば、叡智が詰まった古典の本が買えるし、美術館や博物館のアーカイブにたっぷり触れることができるし、こだわりの飲食店の定食を味わえる。

 

【求むエースな人材】リビセンでポスト東野唯史な敏腕デザイナーを大募集している件

こんにちは、ヒラクです。またもやこのブログで求人企画やるよ!。
諏訪にある仲良しのReBuilding Center JAPAN(通商リビセン)が、

時期エース候補のデザイナー!

を絶賛募集中だよ!とのこと。こないだのかもめブックス/鴎来堂の柳下おじさんの時と負けず劣らずのハイスペック求人きたぞー!

・【求むナイスな人材】かもめ柳下おじさんが右腕を募集している件

(僕のブログにハイスペック求人の話がくるのは、読者の皆様に才人が多いということなのかしら…?)

DIYカルチャーを刷新するリビセンのコンセプト

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リビセンの店内の様子。各地からレスキューした古道具や古材でいっぱい!

さてさて。
リビセンを知らない人に軽く説明しておくと、解体される建物から回収した建材を売るリサイクルショップで、そこにデザインコンサルや施工サービスが付随している。
自分でDIYできるお客さんは建材だけ買って自分でアレンジすればいいし、工務店のように施工サービスを頼むことができる。だけどサービスを頼むとしても完全お任せではなく、施主自身もDIYすることが前提になる。詳しくは僕のブログのこの記事をどうぞ↓

・新しいデザインの美意識の話をしよう。リビセンの本を読んで考えたこと

で、今回オーナーの東野夫妻に頼まれたのはデザイン部門の次期チーフ候補。
現状メインのデザイナーとして稼働しているのはファウンダーの東野唯史くん。なんだけど事業をより発展させていくために現場を任せられるデザイナーを絶賛募集中だそうな。

うん。なんかわかるよ。
個人事業が事業化していくステップで、デザイナーはより全体を俯瞰できるクリエイディレクターにならなきゃいけないタイミングがあるからね。一個一個の現場も大事だけど、リビセンというコンセプトを守らなきゃいけない時期にきてるんだね〜!!

・古材で文化を作るリビルディングセンタージャパンの挑戦 | BAMP

リサイクルとモダンデザインを融合する新鋭よ来たれ!

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山梨の我が家から一時間ちょいのリビセン。キッチンの建具をゲットしました。

激しくリスペクト&共感するリビセン。
古材を使った空間やインテリアのデザイン設計の才能よ来たれ!
ということで、オーナー夫妻の東野華南子ちゃんに「どんな人がいいのかしら?」と聞いたところ、以下のような返答が。

kanako

今回の採用で求めている職能は、ズバリデザイナー。もっと未来を切り開いていくことに力を使っていくために、デザインプロジェクトを自走させることができるデザイナーを採用したいなと思ってます。 夫の東野唯史のデザインが必ずしも好きである必要はないけれど、古材が好きで古材の可能性を信じることができることが求められます。
古材の新たな可能性を探りつつデザインできれば大丈夫!古材をツールに、世の中たのしくしていけたらいいね、と思ってます。 』

だそうな。そして募集したい人材は具体的には、


 

▶実務経験があり実際に店舗設計や住宅設計をメイン担当で複数経験したことがある

▶クライアントや業者とのやりとりを最初から最後まで担当できる

▶クライアントの事業計画書・収支計画書を元にその店舗(ビジネス)が成功へと向かうデザイン的な提案から、リノベーションによるデザインを行うため、リノベーション独特の様々な状況に対して柔軟に対応し、デザイン的な変更や改善を素早く対応していける

▶自社で制作できないプロダクトや施工技術に関して新たに作家さんやアーティストさん、・職人さんと共同してデザインや制作活動を行うことで空間の価値を高めることを楽しんで取り組める

▶古材いっぱい運ぶのでできれば力持ち!


 

というスキルを持っている人だそうな。むむむ、こりゃ挑戦しがいあるぞ…!
雇用条件としては、

・正社員(試用期間中は契約社員)
・月給要相談(諏訪でちゃんと生きていける金額、最低20〜25万円は保証)
・賞与・社宅・有給制度あり
・設計以外にも色々仕事あるよ

だそうです。
で、リビセンがこれからこんなこと取り組むよ!というメッセージとしては、

☆現在は遠方のプロジェクトも多いけど、ここから少しずつ諏訪近郊のプロジェクトに絞っていって、もっともっと諏訪という地域を掘り下げてリビセンらしい楽しいコミュニティをつくっていきたい!

☆今回の募集はポスト東野唯史&私のパートナーの募集でもあって。 これまで東野さんとペアで空間をつくってきたことしかないので、どんなひととどんな哲学持って一緒に空間をつくっていけるのか、とても楽しみ…!

だそうです。

「むむむ!これは気になる!ぜひ名乗りあげたい〜!」

という人のために問い合わせフォームを開設しました。以下からどぞ。

※4/21で締切りました!応募してくれた皆様ありがとう!

お名前

メールアドレス

リビセンが気になる理由は?

座右の銘をどうぞ

今までの経歴アピールや質問をご自由にどうぞ

※リビセンの窓口に直接メールが届きます
※個人情報は他の用途には使いません

それでは良きご縁がありますよう。

【追記1】僕は求人エージェントじゃなくて。友だちの縁で勝手に求人しているので詳しいこと聞かれてもよくわからない!ので何かあったらメールフォームから詳細聞いてね。

【追記2】なおちょっと前に仲良しの仕事百貨でも求人がありました。僕のこのエントリーはこの求人を受けてさらにエース候補!という内容です。求む才気煥発なデザイナー!

【追記3】年末の柳下おじさんの求人企画は大成功。近々「その後どうですか?記事」を寄稿してもらう予定です。お楽しみに!

発酵とファッションはよく似ている。逃れられぬトレンドという宿命。

『発酵文化人類学』の出版記念企画として、雑誌ソトコトの連載バックナンバーを無料公開!  なぜそんなことをするかというと、書籍版は過去の連載記事を全部無視した「完全書きおろしREMIX」だからなのだ!
発酵とファッションはよく似ている。逃れられぬトレンドという宿命。
 ソトコト2016年4月号掲載
「発酵」は日本に脈々と受け継がれてきた伝統文化。そしてこの伝統というシロモノ、昔から変わらないというものではなく、実は時代の流れにあわせて変わり続けているのです。
今回は、発酵文化から日本人の好みの変遷を考察してみたいと思います。

日本人の死因と、食生活の変化

昔と今でがんの種類を比べてみると面白いことがわかります。日本では高度経済成長期を境として、それまで最もポピュラーだった胃がんが減り、かわりに腸のがんの患者がどんどん増えていきました。これは何を意味しているのかというとだな。塩をたくさん摂ると胃がんにかかり、動物性の脂質やタンパク質をたくさん摂ると腸のがんにかかるということなのね。
つまり、昔のひとはしょっぱいものを食べ過ぎて死に、今のひとは動物性の食品を食べ過ぎて死ぬ、という傾向なわけだ。動物性のものを食べるようになったのは食生活が欧米型に移行したからなのは理解できる。ではしょっぱいものを食べ過ぎていたのなぜか?
それは「冷蔵庫がなかった」という理由が大きい。低温設備がない状態で食品を保存するには、塩をたくさん入れて発酵させる必要があったのですね。

塩味と酸味

ほら、よく古民家の縁側とかで漬物かじりながらお茶飲んでるおばあちゃん、みたいな光景があるじゃないですか。このしょっぱいもの好きなおばあちゃんは、酸っぱいものがニガテなんだね。日本酒も酸っぱいものが「火落ち酒」として嫌われるように、昔の日本人は酸っぱいもの=ダメになった食べ物と思っていたフシがある。
翻って現代に生きる僕たちはどうよ。朝起きたらヨーグルト食べるし、夜はバルでワイン飲んだり、酸っぱいものが大好き。反対に塩味のキツいお漬物がニガテ。このように、同じ日本人といっても、時代とともに味覚や好みは変わってくものなのです。

日本酒とファッション

例えば日本酒を例にとってみよう。昔の日本酒って、甘いか辛いかどちらかの味が好まれた。昔は砂糖が簡単に手に入らないから、甘いもの=美味いものだった。そして同時に、水のようにキリッと澄んだ辛口の日本酒も高級な味として嗜まれた。
しかし、そんなトレンドも最近は変わりつつある。僕と同世代、30〜40歳の若い醸造家がつくる酒に、ワインのような酸味と濃厚な旨味があるものが出てきた。これは紛れもなく、「新しい味覚の持ち主による新しい感性」なわけです。
えーと、この感覚何と言ったらいいのかなあ。80年代のTVドラマの登場人物がさ、肩パッド入ったDCブランドのジャケットとか着てるの見てもお洒落だなあって思わないでしょ。当時はこれが最先端で高級だったんだな、とは思うけどピンと来ない。かわりに、マーガレット・ハウエルのプレーンな白シャツをラフに着ているアイツお洒落だなあ、なんて思うわけです。
伝統文化である発酵食の世界にも、このような変化が起こっているのです。若い人は、自分と同世代の醸造家がつくる調味料やお酒を飲むといいですぞ。その時に、醸造家のファッションがイケてたらなおいいね!

【追記】僕の個人的な見解ですが、「最近若い人が食べてくれないんです」と嘆かれている発酵食品は、しょっぱすぎるものが多い。その代表格が、滋賀の熟れ寿司。これは「昔のひとの味覚によって作られた食べ物」の典型。熟れ寿司の未来は、伝統を貫き通すことではなく新しい感性でイノベーションを起こす必要があると思う。


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みりんで考える「甘み」の哲学


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みりんで考える「甘み」の哲学
 ソトコト16.1月号掲載

どの家庭の台所にも置いてある調味料の定番、みりん。実は人間の味覚と生理作用を考えるときに大変示唆に富んだ存在なのです。今回はみりんを例にとりながら、人間にとっての「甘み」とは何かを考察していきましょう。

そもそもみりんとは何か?

新橋のSL広場でサラリーマン100人に聞いてみてもおそらく一人も答えられないであろう、みりんの製造過程。すごーくざっくり言うと「水のかわりに焼酎で仕込む甘酒」です(と書くとみりん業界からの突っ込みを受けそうですが)。

麹(こうじ)を焼酎で加水し、そこにもち米を投入。麹菌がもち米を糖化し、焼酎のアルコール分が腐敗をブロックします。そのまま数ヶ月かけて発酵させ、日本酒のようにもろみを絞ってボトルに詰めてできあがり。これが伝統的なみりんの製造方法。江戸時代頃にレシピが確立され、大正時代にほぼ完成されたようです。
スーパー等で売られている「みりん風調味料」というのは、この伝統的なみりんの味を糖類やアルコールを添加することでシミュレートした調味料のことで、発酵食品であるみりんとは別物なのです。

ブドウ糖とショ糖の違い

さて、そんな米と水と菌だけで作られたみりん。その糖度はめちゃ甘いメロンの軽く二倍以上。麹菌による、デンプン糖化酵素の力を極限まで引き出すことでこんなにも甘い食品を作り出すことができるのか…と先人の発酵技術の洗練っぷりに感心しきりです。
それでは次に、みりんに含まれている糖の種類の話をしましょう。みりんの糖の主体はグルコース、別名ブドウ糖です。対して、コーヒーに入れるスティックシュガーはスクロース、ショ糖といいます。同じ糖といっても種類が違うのですね。多くの食品に添加され、僕たちが普段親しんでいるのはショ糖。甘みの特徴としては、ガツン!と甘みが来て、スッと引いていきます。それに対して、みりんに含まれるブドウ糖はもうちょっと穏やかな波を描くんですね。じわっと甘みが来て、余韻を残しながら去っていく。

試しに本格みりんをストレートで舐めてみてください。すごく甘いんだけど、そこに丸みと余韻があるのに気付くはず(みりんはアルコール度数がけっこうあるので、おいしいからといって飲み過ぎはダメですよ)。

ナイスなみりんは、和食に魔法をかける!

和食に砂糖を入れるのは今や定番ですが、かつてはこんな便利な粉はなかったわけなので、みりんをおおいに活用していたはずです。砂糖とみりん、その違いを考えると、ショ糖とブドウ糖の味の違いに行き着きます。和食の持ち味は、丸みとあと引く余韻と、麹やダシの作りだす旨味です。この特性にみりんの甘みはピッタリ合う(というか、そういう食材によって日本人の舌が作られてきた)。

ふだん砂糖を入れているところを本格みりんを贅沢に使ってみると、いきなり料理がやたら上手くなったように錯覚します。食材の味の奥行きが出て、口にした時に味がスッと舌に吸い込まれていくようなテクスチャーが出てくるんですね。
それはなぜかというと「発酵によって形づくられた日本人の味のDNA」が覚醒するからなのですね。

料理上手の近道は、調味料の特性を知るところから。
手始めはみりん!普段みりん風調味料を選んでいる人は、ぜひ米と麹だけでつくった本格派を手にとって見てくださいね。

【追記】余談ですが、みりんはアーバンな知的労働者にオススメしたい。知的労働は脳を酷使しますが、その脳のエネルギー源となるにはブドウ糖のみ。アタマを目いっぱい使った日の食卓は、みりんをたっぷり使ったブリの照り焼きなんていいんじゃないですかね。

 


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発酵でつながるローカルのコミュニティ

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▶発酵でつながるローカルのコミュニティ ソトコト17年11月掲載

「この土地ならではの発酵文化の話を市に来てほしい」と日本各地からお誘いを受けます。現地の醸造蔵を見学したりローカル発酵食を食べて、その後に地域のコミュニティのみんなと対話する。そんな仕事をやっていると、発酵を通して地域にある様々なコミュニティがつながっていくことに気づきます。

発酵に紐づく様々なキーワード

一口に「発酵」と言っても、そこには様々なキーワードが紐付いてきます。郷土食、健康、農業、歴史、ローカルビジネス、DIY、子どもの食育、おばあの知恵、etc… 人によって発酵に期待することは様々。となると「発酵について話すよ!」と呼びかけると、そこには色んな人種が集まるんですね。醸造家はもちろん、農家や漁師、エステやセラピーをやっているキラキラ女子に工芸作家や郷土史家、食育サークルのママさんや行政職員、若い起業家やアンテナ張ってる大学生、給食センターのおばちゃんまで、多様性ありまくりでカオス!な場ができあがります。何度もこういう場面に遭遇しているうちに「実は地域コミュニティでこんなにも多様な人が集まって対話する機会って珍しいんじゃないの?」という気づきがあったわけなんだな。

異なるコミュニティに横串を刺す

札幌でトークイベントをした時のこと。これぐらい大きな街になると、そこにはジャンルごとに地域コミュニティがあります。カルチャー好きコミュニティと農業コミュニティは普段ほとんど接点がないんだけど、両コミュニティとも僕の発酵イベントに興味を持ってくれる層だったりする。こういう場ができると、イベント後の懇親会が盛り上がるんだね。「ずっと前から名前は知ってました!」「なかなか会う機会がなかった!」と、異なるコミュニティが出会うきっかけになる。

発酵は「良い関係性の発見」であると僕は定義しています。この原理は、微生物の世界にとどまらない。今まで接点のなかった異なる存在が結びつき、ケミストリーが生み出される。微生物の世界で麹菌や酵母、乳酸菌が出会うと美味しいお味噌やお酒ができ、人間の世界ではHIP HOPなお兄ちゃんと地元の農家のお母さん、アツい志を持った市役所員が出会うと素敵なコミュニティやプロジェクトが生まれていくわけなんですね。

異なる領域にいても、地域のために何かをしたい!という気持ちは一緒。そこからジャンルを超えたプロジェクトが始まることもしばしば。

いつの間にか発酵は「バラバラになった関係性」をつなぎあわせる接着剤のような役割を社会のなかで期待されるようになってきたのかもしれません。実際に酒蔵や醤油蔵の醸造家が地域コミュニティのまとめ役を担っていることも。

今回、この連載をまとめた本を全国のみんなに届けて回るなかで「発酵を起点に始まる地域のコミュニティ」そして「文化の多様性」の可能性に気づきました。

あ、あと懇親会が盛り上がってくるといつのまにか僕、隅っこでひとりポツンと取り残されがちなことにも気づいたよ。地元コミュニティが盛り上がるのは嬉しいけど、ちょっと切ないぜ


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人間にとって味覚とは何か? 発酵から見る味のクロニクル

『発酵文化人類学』の出版記念企画として、雑誌ソトコトの連載バックナンバーを無料公開!  なぜそんなことをするかというと、書籍版は過去の連載記事を全部無視した「完全書きおろしREMIX」だからなのだ!

▶人間にとって味覚とは何か?発酵から見る味のクロニクルソトコト17年9月掲載

発酵食品と言えば「美味しい」もの。なんだけど、そもそも美味しいって何なの?発酵のことを研究していると、僕たちがふだん当たり前のように口にするおい美味しさの概念が実はとても曖昧であることに気づきます。今回は人間にとって味覚とは何か?を考えてみようではないか。

舌だけで味わっているわけじゃない

超スピードで解明が進む人間の脳の認知システムにおいて、難関とされるのが音楽と味覚。どちらも異なる脳の部位をいくつも連動させながら複雑な感覚を発生させているようです。例えばジュースを飲んだ時で考えてみよう。①まず舌で「甘い」という刺激を受け取る。②そして夏場の炎天下のなかだと触覚で「冷たい」と快感を受け取る。ここまでは生理的な欲求なのだが、脳の複雑な認知システムではこの生理的欲求のうえにバーチャルな情報が乗っかってくる。③子どもの頃から慣れ親しんできた味だとより美味しく感じる(やっぱりジュースはコーラがいい!)。④誰かにオススメされたり、パッケージがカワイイとより美味しく感じる(好きなあの子もそういえばコーラが好きって言ってた!)。

この①~④の要素が脳のなかで統合されて「やっぱ夏場は冷たいコーラが最高!」という感覚ができあがることになるわけですね。

絶対の味覚はありえるのか?

地方の農家民宿に泊まると、宿主のお母さんが「お客さん、私のどぶろく飲んでみるかね?」なんて勧めてくれて、いざ飲んでみると「こ、これはお世辞にも美味しいとは言えねえ!」みたいな味だったりします。それで愛想笑いしながら横を見るとお父さんが「そうだ!母さんがつくるどぶろくが世界一美味い!」と上機嫌でどぶろくをぐいぐい飲んでいる。そこで「お父さんは美味い酒を知らない!」と詰め寄るのは間違いで、お父さんの脳内においては本当に「母さんのどぶろくは世界一!」なのです。母さんへの愛=バーチャルな情報がそのどぶろくをお父さんにとっての特別なものなものにしているわけだからね。

発酵食品を例にあげてみると「普遍的に美味しい味」というものが幻想でしかないことがわかります。日本酒でもワインでも水のように澄んだ味が最上だとされていたのが、一人の天才醸造家がその価値観を覆し、原料の味わいを活かした濃厚な味をトレンドにしてしまう。あるいは田舎で細々と食べられてきたものすごく臭いチーズが、インフルエンサーが「この臭さがイイ!」と評価した途端に高い値段で売れるご当地グルメになってしまう。これはつまり味覚というは人気投票のようなものだと言えるのです。ちょっとしたきっかけでオセロが黒から白に引っくり返るように「美味しい」の定義が変わってしまう。

発酵食とは、いわば時代の価値観とともに変わっていく「人間の感性を写す鏡」なのです。去年までみんな着ていた服が今年では途端にダサく見える。青春時代に聴いていたヒット曲がどの時代の音楽より最高に思える。そんなトレンドの変遷の波間にふとした瞬間にエバーグリーンな普遍性がチラッと垣間見える。

トレンドに100%乗っかるのも楽しいし、セントジェームスのボーダーシャツやビートルズの名曲のようなスタンダードを変わらず愛し続けるのもまた楽しい。

自分が何を美味しいと思うと感じるのか。そこには実は自分の人生の履歴が残っているのですね。

「えっ、それってつまり自分が美味しいと思うものからその人の価値観が見えちゃうってこと?」

ご名答!

【追記】味覚は物理的な刺激とバーチャルな情報の複数のレイヤーが重ね合わされてできる認知。同じものを食べても同じような味覚を感じているとは限らないのです。


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思想としての発酵。不確かさを醸すよろこび

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▶思想としての発酵。不確かさを醸すよろこび  ソトコト17年9月掲載

春にこの連載の書籍版が発売されてから三ヶ月。発酵好きの人からはもちろん、もっと広く文化やテクノロジー一般に興味のある人たちからたくさんの感想をもらいました。そこで気づいたのが「思想としての発酵」という可能性。単に「美味くて身体に良い食文化」ではなく、世界の見方、自分の生き方のヒントを発酵という現象に求めている人が多いことに驚きました。そう。発酵はもはやライフスタイルを超えてカルチャーになりつつあるのです。

不確かさを愛でる

考えてみるに現代はあまりにもモノの見方が方程式化してしまっているかもしれません。「この仕事をしたら、こういう風にお金が儲かって、モテます」とまるでボタンを押したらポップコーンがポン!と出てくるかのような思考が強くなっていくなかで、発酵には「ボタンを押したら何が出てくるかわからない」という面白さがあります。

醸造家たちの仕事は、複雑さや不確かさのなかから生み出す創造性の象徴。食材の質はもちろん、醸す場所の気候や微生物の種類や働きなどの複雑な要素によって出来上がりが左右されます。発酵において、醸造家(人間)は本質的に「つくる」ことはできません。できるのは「仕込む」ということなんだね。

食材や微生物や気候の相互作用によって何か未知の、でもイケてるサムシングが生成されてくる「環境」をしつらえる。「味わうたびに微妙に味が揺らぐ」ことが美味しくて楽しいわけです。

サムシング・スペシャルへの飛躍

自分で仕込む手前みそ。そこには「サムシング・ニュー」から「サムシング・スペシャル」への思考の飛躍があります。

「社会一般にとって新しいこと」を追い求めるのではなく「自分にとって特別なこと」を味わう。「結果」ではなく「過程」に軸足を置いてみる。

これだけ世界中がインターネットで接続されるようになると自分が思いついたナイスアイデアが、実は地球の裏側の誰かがすでに実践していたことだったことがわかってしまう。そんな状況のなかで「世間の誰もが成し遂げなかったNEW」を追いかけることは苦しい。「他人と比べて進んでいる/遅れている」という価値観とは違うモノサシが必要なのではないかしら?

例えば手前みそを仕込むことは何百年も前から続けられているフツーのことなんだけど、やってみるとその人だけのスペシャルな体験を味わえます。みんなで共有できるのに、一人ひとりが特別感を味わえて、しかも出来上がりもそれぞれ違う。誰がいちばん美味しいかという正解もない。そこには「プロセスを味わう喜び」と「喜びを共有する楽しみ」がある。これが「サムシング・スペシャル」的な世界観。

発酵文化において奥深いのが、長く続く価値をもったプロダクトのほとんどが「競争」ではなく「共創」によって生み出されていくこと。「それぞれの人が自分の感性で試したこと」が共有知になって技術が洗練され、同時に味の多様性が生まれていく。「これはオレだけのNEWだ」と囲い込むことではなく「オレとオマエの味噌を交換しようぜ」と共有していくことで個性が生まれ文化が生まれていく。「サムシング・スペシャル」は自分だけの世界に閉じこもることではなくて、それぞれのスペシャルを分かち合うこと。

新しさを追い求めすぎると、世界は貧しくなっていく。新しさを追い求めるのではなくて豊かさ、楽しさを醸し出していく。不確かなもの、自分のカラダで感じられる特別さを感じとること。そしてそのプロセスをじっくり時間をかけて味わっていく。急がず、楽しく、自分らしく。そのための世界の捉えかたこそが「思想としての発酵」。均質化とスピードを追い求める世界と対峙するための方法論なのであるよ。


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三角形の幸せなコミュニケーション。発酵界には「読モ」が必要だ!

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▶三角形の幸せなコミュニケーション。発酵界には「読モ」が必要だ! ソトコト17年6月掲載

僕、微生物の研究に入る前は全国の地場産業に関わるデザイナーだったので、今でもたまに醸造業界から商品開発やブランドづくりの相談を持ちかけられることがあります。よくあるパターンのお悩みとしては「なかなか一般の人に知ってもらえなくて…」「広告やPRをどうしたらいいかわからない」のような「関係性のつくりかた」があるようです。

今回は僕なりに考える「幸せな関係のつくりかた」をお伝えしたいと思います。押忍!

不信感を生む関係性

発酵食品をつくるメーカー(作り手)と、それを味わうユーザー(受け手)。この信頼関係がマーケットおよび文化を形作る。なんだけど、しばしば両者は信頼ではなく疑いの線でつながってしまう。典型的なやり方でいえば、作り手は商品を広告して「ウチはこんなに素晴らしいものをつくっています」とアピールする。ところが受け手は「そうやってメーカーは不当にモノを高く売りつけようとする」と不信感を持つ。その反応を見た作り手は「消費者は文化の質を知らない」とガッカリしてしまう。

この悪循環を繰り返すうちに「あれ?この業界なんか行き詰まってない?」という状況が生まれることになる。

「わかる!ウチもそうです!」と心当たりのある読者の方も多いのではないかしら?

直線関係から三角関係へ

悪循環を脱出するには、作り手↔受け手の直線関係の上にもう一つ点を置いて、「幸せな三角関係」をつくることが大事だとヒラクは思うのですね。この三角関係の象徴を、僕は「読モ(読者モデル)」と呼んでいます。ほら、ファッション誌とかに出てくる「読者と業界のあいだにいるひと」のことね。この読モが文化が盛り上がる時のキーになるのだな。

日本酒を例にとってみよう。作り手の酒蔵と、たまに日本酒を飲む受け手がいる。そしてこのあいだに、お酒の嗜(たしな)みかたをよく知っていて、作り手の背景も知っていれば飲み手の素朴なギモンにも応えられる読モ的存在を置いてみる。すると滞っていたコミュニケーションが循環し始める。酒蔵は読モを唸らせるお酒を頑張ってつくり、読モはそのお酒をいちばん美味しく飲む方法を発明し、飲み手に「このお酒は、こんな人がつくっていて、こんな飲み方したら美味しいよ!」と楽しく伝える。すると飲み手は「日本酒ってこんなに美味しいんだ!ワタシももっと嗜み上手になりたい!」と開眼する。読モを通して作り手は自分のお酒の新たな可能性を知り、飲み手は作り手へのリスペクトを深める。

するとほら!みんなが幸せなコミュニケーションの循環が始まるではないか。

読モ=小売店&飲食店!

発酵業界における読モは、料理研究家やソムリエだけではなくて。重要なのは小売店と飲食店なのですぜ。日本酒でいえば、酒屋さんと居酒屋さん。ここが各地の蔵を訪ねて理解を深め、自分の店オリジナルのラインナップと飲みかたを提案し、お客さんと一緒に遊びまくると、停滞していた業界が盛り上がりはじめる。

実はだな。2017年現在、発酵業界における作り手の質はかつてないほど高まっている。一生懸命ものづくりに取り組む作り手に「もっと伝え方を考えないと」なんて言わせてはいけない!醸造家レボリューションの後は、読モレボリューション。ナイスなコミュニケーションをつくるポイントは「みんな幸せになる遊びかた」の発明なのですね。

人口5000人にも満たない岡山県西粟倉村で酒屋「日本酒うらら」を営む道前理緒さん(イラスト右)と深夜まで盃を酌み交わしながら語った席で、今回の「読モ理論」が生まれました。道前さんの実践こそ発酵文化の未来の種なのです。


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黒糖焼酎をめぐる、アジア的蒸留酒のミステリー

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▶黒糖焼酎をめぐる、アジア的蒸留酒のミステリー ソトコト17年6月掲載

こないだ奄美大島を訪ねてきました。目的は黒糖焼酎の醸造現場を見に行くこと。奄美諸島で育まれたこの不思議な発酵文化を紐解くことで、アジアにおけるお酒のルーツが見えてくるのではないか…?と期待して足を運んでみたら大当たり。黒糖焼酎を通して、東アジアへの「発酵の海道」が見えてくるのでした。

そもそも黒糖焼酎とは何だろうか

それではまず黒糖焼酎の説明をしよう。米でつくった麹を水に漬けて発酵させ、もろみ(酒母)をつくる。次にそのもろみにサトウキビを精製してつくった黒糖と水を足し、チョコレートのようなどぶろくをつくる。そのどぶろくを蒸留器で何度も蒸留(液体を蒸発させ、アルコール分を取り出す)、アルコール度数25~40度の酒を取り出したものが黒糖焼酎。もろみに米を足すと米焼酎、芋を足すと芋焼酎、黒糖を足すと黒糖焼酎になるんですね。

そしてだな。麹をつくる時の麹菌の種類も特徴的。日本酒をつくる黄麹菌でも、焼酎をつくる白麹菌でもなく、泡盛をつくる黒麹菌でつくる蔵がけっこうあります。全国に流通している大手のメーカーは焼酎用の白麹菌で飲みやすく仕上げているが、地元の小さな蔵には泡盛のような方法論で黒糖焼酎をつくるところがある。これらのローカル黒糖焼酎は、九州の焼酎文化とは一線を画す、僕なりに表現すれば「ものすごくオリエンタルなパンチのある風味」を持つ蒸留酒なんだね。

黒糖焼酎のルーツは琉球由来?

これは地理的に見れば納得の話で、奄美諸島は鹿児島県なのだけど文化的には琉球のルーツが色濃い。

黒麹菌で仕込んだ黒糖焼酎の発酵中のもろみを舐めさせてもらったのだけれど、コクと苦味と濃厚な甘みと酸味をあわせもった複雑精緻な旨味が醸し出されていた。淡麗な日本酒やスッキリとした焼酎をつくるときに複雑な風味は雑味として嫌われることが多いのだけど、南国のノラカビとしてサバイブしてきた黒麹菌(ルーツとされる菌は学名でアスペルギルス・リュウキュウエンシスという)独特の酸味と苦味が、黒糖の力強い甘味とバッチリはまるのだな。

焼酎×泡盛×ラム?

黒糖焼酎の原料になるサトウキビは、実はラム酒の原料でもある。なぜ一度麹でもろみを作ってからわざわざ黒糖を発酵させる必要があるのだろうか?最初から黒糖のみで酒をつくることも可能なのに。…と現地に行くまで不思議で仕方なかったのだけど、答えはシンプルでした。奄美には元々琉球から伝わった焼酎文化があり、離島では穀物や芋などの主食を原料とするよりも黒糖のほうが作物として合理的だったんだね。醸造工程はややめんどくさいのだが、その変わり焼酎と泡盛とラムのいいとこ取りをしたような個性的な酒ができあがった。僕のお邪魔した小さな蔵では、ラムのように樽で長期熟成させる琥珀色の黒糖焼酎の実験をしていた(色が透明じゃなくなると厳密には焼酎と呼べなくなってしまうのだけど)。これは奄美諸島以外に類を見ない、ものすごいキャパシティを持つ酒文化なんですよ。小さな島々に異なる文化の醸造技術が流れ込み、この地域独特の気候と作物とケミストリーを起こすことで、他の何物にも似ていない官能性を育て上げた。

黒糖焼酎のルーツを西へと辿っていくと、琉球王朝、台湾、そして東アジアの大陸へと行き着く。そう。奄美諸島はアジアにおける「蒸留酒の海の道」の東端なのであるよ。

【追記】黒糖焼酎のお供に欠かせないのが、奄美の島唄。みんなで歌い踊りながら黒糖焼酎を楽しむのが、奄美の最高のエンターテイメントなのです。


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発酵的ブリコラージュ。気候風土が生みだす野生の思考

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▶発酵的ブリコラージュ。気候風土が生みだす野生の思考ソトコト17年6月掲載

大好きなフランスの文化人類学者、レヴィ=ストロースの有名なコンセプトに「ブリコーラジュ」というものがある。

これはフランス語でいうところのDIY、日曜大工のこと。レヴィ=ストロースは世界中の神話を分析するなかで「こんなにも多様な神話が生まれた背景には、DIY的な方法論があるからにちがいない」と確信した。その気づきは、実は発酵文化にも当てはまるのだね。ということで今回は文化人類学の話でGO!

限られた材料から発想する

ブリコラージュの方法論とはなにか。僕なりにざっくり要約すると「目の前にあるものを集めて、それを並べる。そこから何をつくれるかを発想して組み立てる」ということ。日曜大工でも、道具箱から工具や余った木材やペンキを引っ張り出して「うーん、この材料だったら犬小屋がつくれるなあ」と発想したりする。それと同じようなことを、世界中の民族が神話をつくるときにやっていたのだね。

例えばエスキモーの文化だったら、そこには海があり、氷河があり、アザラシや犬がいて…という「材料」がある。それを組み立てると「お父さんに裏切られた娘が、海のなかで、犬やアザラシとともに神さまになる」という摩訶不思議な神話ができることになる。

世界各地で材料は違う。南米だったら熱帯雨林にカラフルな鳥がいて、中東だったら砂漠やオアシスにラクダがいる。その「材料の違い」が人間の文化の多様性

を生みだす。言い換えれば気候風土の違いが人間に文化の多様性を「生み出させる」と表現できやしないだろうか?

発酵はブリコラージュだ!

それでは発酵の話に移ろう。各地を歩いて思うのが「どうして世界中にこんなにも多様な発酵文化があるのか?」ということ。これって、レヴィ=ストロースの問いによく似ている。で、その答えも実はそっくり。世界各地で気候風土とそこに棲む菌の種類が違うからだ。レヴィ=ストロースは主著『野生の思考』のなかでブリコラージュの方法論を「雑多な要素からなり、かつたくさんあるといってもやはり限度のある材料を用いて自分の考えを表現することである」と定義している。これを日本の発酵に当てはめてみるとどうなるのかというとだな。

まず日本の農業の基本って田んぼでしょ。伝統的な田んぼでは、米の裏作で麦を育て、あぜ道で大豆を育てていた。米・麦・大豆が田んぼから導き出される「材料」だ。この材料を、田んぼや家に棲みついているコウジカビや納豆菌、乳酸菌などと掛け合わせる。すると、米から麹ができ、麹と大豆から味噌、大豆と麦から醤油、大豆をワラに包んで納豆ができてしまう。豆腐の味噌汁に、納豆かけご飯という定番のメニューは、田んぼの収穫物を「ブリコラージュ」してできるものだ。限られた材料を、発酵菌の働きと掛け合わせることで、毎日食べても飽きない多様なメニューを生みだすことができ、しかも原料そのものを食べるよりも栄養機能が高まっているというミラクル…!

日本人にとって当たり前すぎるこの定番セットは、エスキモー文化圏や中東の砂漠には存在しない。なぜなら材料自体がないからだ。

神話のブリコラージュにおいて、氷河やアザラシからエスキモーの神話が、山やヘビから日本の神話がつくられる。同様に発酵のブリコラージュにおいては乳を乳酸菌で醸す砂漠の発酵が、米をコウジカビで醸す里山の発酵がつくられる。

「物語のDIY」と「発酵のDIY」は、実は同じ方法論によって多様性が生み出されているのだね。文化人類学って、ホント役に立つ学問だぜ!

【追記】レヴィ=ストロースはブリコラージュの実践者を「器用な素人」と呼ぶ。発酵文化の起源も、無名の器用な食いしん坊が工夫してつくりあげたDIY文化なのだね。


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ヒトと見えない自然の織りなす芸術。「発酵文化人類学」が書籍になります!

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▶ヒトと見えない自然の織りなす芸術。「発酵文化人類学」が書籍になります!ソトコト17年5月掲載

2015年春から連載をはじめて二年。いよいよ「発酵文化人類学」が書籍になります!いったいどんな内容になるのか、この場を借りて皆さまにお知らせ&宣伝させてもらいたいと思います。やっほー!

まさかの100%書きおろし

普通、連載の書籍化って今までの内容に加筆して仕上げるんですけど「発酵文化人類学」は今までの連載内容を破壊し、ゼロから書きおろしています。単なるコラム集にしたくなかったのと、発酵の入門書を超えたディープな本にしたかったのですね。

僕の専門である麹をはじめ、ワインや日本酒、日本各地の変わり種発酵食品の技術的特徴を解説しつつ、微生物にまつわる科学的原理までわかるというお得な内容になっています。しかもソトコトの特集にも登場した、ミツル醤油やマルサン葡萄酒、五味醤油など新世代の醸造家たちも登場。彼らの現場に密着して発酵的ワークスタイルを掘り下げていきます。入門編の教科書に書いてある一般的な内容よりもさらにさらにディープな情報をこれでもか!と詰め込んでいるので、発酵や食にまつわる仕事をしている専門家の皆さまにも楽しんでもらえるんじゃないかしら?

文化人類学の入門書としても読める!

連載と大きく違うのは、文化人類学にまつわるトピックスがたくさん出てくること。文明と宗教の起源、神話的思考、交換儀礼、トーテミズム、贈与経済など、20世紀の文化人類学者たちが挑んだ「人間のルーツの謎解き」のプロセスを発酵文化と結びつけて僕なりに読み解いています。

20世紀初頭、アジアやアフリカ、中南米の部族世界が「未知のフロンティア」として文化人類学のフィールドワークの対象になりました。そして、世界の隅々まで開拓された21世紀において、次なる未知のフロンティアは目に見えない微生物の世界。微生物界に潜む生命原理を、僕たち人間の世界に当てはめてみたらどうなるのか?と仮説を立ててみたらあら不思議、社会にまつわるモヤモヤの答えが見えてくるのですね。

競争原理で社会は幸せになるのか?テクノロジーは人間を豊かにするのか?ヒトと自然の関係はどうなるのか?そんな疑問の答えの一端は、文化人類学と微生物学の交差点にあるのかもしれません。

発酵のことが知りたくて読んだら、文化人類学にも興味が湧いてきてしまった…!となること必至の「発酵カルチャー本」ですぞ。

WEBキャンペーン&出版ツアーやってます

出版にかこつけて、編集部と一緒にお祭りもはじめました。僕のWEB(hirakuogura.com)で「発酵文化人類学」のキャンペーンをやっています。これまでの連載のバックナンバーが読めるのと、本にまつわる様々な記事が楽しめます。さらに!出版にあわせて全国にイベントツアーに出ます。東北から沖縄まで、各地の醸造家&クリエイターたちと愉快なトークイベントやワークショップ、食事会を開催予定。それも僕のWEBページで随時情報をアップしていくので要チェック!全国の個性派書店と一緒に楽しい企画も盛り上げていくので、こちらも乞うご期待。

発酵ブームを発酵ムーブメントに。全国各地の醸造家や食の実践者の皆さまとともに「発酵文化人類学」の楽しい祭りが始まるぜ!みんなよろしくね。

【追記】発酵本とは思えない斬新すぎる装丁デザインは、SNSで呼びかけた投票によって決まりました。本をつくるプロセスもまた祭りなのだぜ…!


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クラフトビールを巡る、つくり手と飲み手の幸せな関係

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▶クラフトビールを巡る、つくり手と飲み手の幸せな関係ソトコト17年4月掲載

ビールの話の続き。ここ数年、スーパーの棚にクラフトビールが並ぶようになりました。大手メーカーの「いわゆるビール」ではない個性派ビールの台頭には、いったいどんな背景があるのでしょうか?今回は「つくり手と飲み手の関係性」を掘り下げまーす。

クラフトビール=個性派ビール

まずクラフトビールの定義。ローカルのビール屋さんが、職人的な技法や、メジャーなビールではできない原料や酵母を使うことによってクラフト(工芸)的な個性を持つビールができあがる。大手メーカーの主要銘柄は、喉越しの良いドイツルーツの「ラガービール」だが、クラフトビールはベルギーやイギリス、チェコやアメリカなどの様々な文化を反映したビールがある。

なかでも最も「ふだんのビールと全然違う!」と実感できるのが、ラガービールと違うタイプの菌(酵母)を使った「エールビール」だ。ラガービールよりも高温で発酵させ、醸造家のセンスや醸す環境の特性が色濃く反映される「味わうビール」なのだね。炭酸味やキレがラガービールより少ないぶん、口に含んだ後の味や香りの奥行き、心地よい余韻を残す苦味や旨味など、好みにはまればめちゃ心地よい陶酔感を味わうことができる。

こういう複雑な風味のクラフトビールが受容されるということは、つまりビールの楽しみかたが「とりあえず」から「じっくり味わう」に変わってきたと言えるのですぞ。

クラフトビール人気の背景

実はバブル期、観光目的の「ご当地クラフトビール」をつくるのが流行ったことがあった。自治体が大金を投じて「オラが町のビール」を開発したのだが、大半が10年ももたずに淘汰された。高価で見知らぬ味のビールを買う人が全然いなかったんだね。これ以降しばらく「日本人は結局大手のラガービールしか受け付けない」という定説が流布することになった。

しかし2000年代以降のクラフトビールムーブメントは違った。お酒好きが熱狂的に支持し、グラス一杯1,000円のビールをガンガンオーダーする。かつてのブームと一体何が違うのだろうか。ヒラクの私見では「飲み手のセンスの向上」がポイントだ。

つくり手と飲み手の幸せな関係

僕は日本各地で様々な年代の人たちと発酵食品の仕込みやテイスティングのワークショップをする。そのなかで、世代が下になればなるほど「味覚のセンス」が鋭くなってくるんだよね。

特にアートやデザインが好きなオシャレ女子の味覚はかなりのレベルで、先入観に囚われずに美味しさを判断できる。しかも、クラフトビールの複雑な味や香りをちゃんと要素分解して、自分の言葉で印象を語ることができる。反対に、上の世代は「情報」や「慣れ」によって好みの味の幅を限定していて、雑誌や本に書いてある味わい方を自分なりに追体験している、という人が多い。

クラフトビール専門のバーに行くと、オシャレな若者でいっぱい。彼らはビールを最先端のアートを楽しむような感じでビールを飲んでいる。

いくら良いものをつくっても、その良さを理解してくれる人がいないと文化は生まれない。革新的なプロダクトが根付くためには、先入観に囚われない柔軟なセンスが飲み手が大事なのだね。

「つくる」だけがアートじゃない。「楽しむこと」もまた文化をかたちづくる創造的な行為なのであるよ。

【追記】メジャーなビールとクラフトビールの典型的な違いはこんな感じ。他にもクラフトビールには様々なタイプがあり、自分なりの好みを見つけるにもハマる要因になるのだ。

 


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ビール黎明期に見る文明開化とモダンデザインの誕生

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▶ビール黎明期に見る文明開化とモダンデザインの誕生ソトコト17年3月掲載

ビールは文明開化の象徴だ!といきなり断言してもいいぐらい、明治時代、ビールが日本にもたらされた頃の歴史を紐解くと面白いエピソードがいっぱい出てくる。西洋文化をいかに日本的に取り込むか?当時の日本人の努力と好みがビールから見えてくるのだぜ。

日本のビール史は横浜から始まる

鎖国を解いて西洋文化を受け入れた明治の日本。そこにはもちろんお酒も含まれていました。ビールはなかでも最も日本人の口にあったらしく、明治初期から輸入が始まり、やがて横浜で国産ビールの醸造も始まります。

でね。当時ビール醸造は新興ベンチャー。一攫千金を目指して小さなブルワリー(醸造所)が2000年前後のIT黎明期よろしく次々と生まれていきます。この時にお手本にされたのが「イギリス式エールビール」。ロンドンのパブとかで出てくる色も味も濃い、コク主体のビール。しかし明治中期になると今度は「ドイツ式ラガービール」が登場。僕たちがよく知っている、黄金色で喉越しのいい、キレ主体のビールです。

日本人の好みにはドイツ式のほうが合っていたらしく、イギリス式ベンチャー醸造所は衰退、そしてドイツ式ビールの先駆者が、今の僕たちの知るキリンやエビス、アサヒ、サッポロといった国民的ブランドに成長していきます。

同時にどんどん値段がビールの値段が下がり、普通の庶民にも普及していきます。これが明治後期〜大正にかけてのこと。ビール黎明期は「海千山千のベンチャー戦国時代」だったのさ。

 モダンな商業デザインの誕生

日本のビール黎明期の歴史は、デザイナーとしても面白い。デザインの王道中の王道である「ポスターデザイン」の元祖は、なんとビールなのだ。明治が始まるとともに、化粧品や薬品などの看板や広告のデザインが隆盛する。しかしそれは新聞に印刷したり、浮世絵のような多色刷りで少部数のチラシを刷るようなものでした。

しかし大正4年、当時業界最大手のサクラビール(アサヒとサッポロの母体)が大規模な「デザインコンペ」を開催。 一等に採用された画家、北野恒富のポスターはなんと7万枚。これはやはりヨーロッパから導入された、大量かつ高速に多色かけ合わせ印刷ができるオフセット印刷機の技術によって可能になったもの。この瞬間、モダンな「商業デザイン」の世界がスタートしたと言っても過言ではないのね。

生き残りをかけた広告合戦

最新技術で印刷された人気画家のポスターは、当時流行のカフェやビアホールにアート作品として飾られ、同時にブランド認知の強力なツールとなった。するともちろん有力メーカーがこぞってデザイン界に参入し、ポスターはもちろん、マッチ箱やコースターなどのノベルティ、果ては漫画広告まで、今の広告デザインの基礎を成すプロトタイプが連発され、ました。

今でも昭和レトロをモチーフにした飲み屋さんや雑貨屋さんに行くと当時のポスターがすぐ見つかるのはそれだけ「大量に印刷された」から。ドイツ式のビールは、イギリス式と比べて味の個性が出しにくく、だからこそ味ではなくイメージにおける「差異化」が必要だったとも言えますね。

ビールをつくっている洋酒メーカーはたいていコンサートホールやミュージアムを持っていたり、人気クリエイターをCMやデザインに器用する文化がありますが、その起源は文明開化期の「ベンチャー戦国合戦」なのでした。

【追記】大正期のビールのポスターは、たいていが色っぽいお姉さんの絵のはじっこにブランド名が入った「美人画」スタイル。殿方はビール飲みながら「こんな素敵なお姉さんとデートしてえなあ…」と遠い目してたんでしょうね。


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微生物染色の極北、藍染の秘密に迫る!

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▶微生物染色の極北、藍染の秘密に迫る!ソトコト17年2月掲載

「発酵」と言って思い浮かべるのは食べ物やお酒ですが、実は食以外にも発酵技術は大いに活用されています。

例えば、日本の植物染色の代表格である藍染。あの独特のインディゴブルーは、微生物の働きによって生まれるのだな。

藍染ってそもそも何?

藍染とは、蓼藍(タデアイ)やインド藍などの「藍の葉」を使って深いブルーの色味に布を染める植物染色。
その起源は古代エジプト文明まで遡り、日本には奈良時代前後にシルクロード経由で入ってきたといいます。インド起源と中国起源が二大ルーツで、日本に入ってきたのは蓼藍を使う中国ルールで、江戸時代に徳島(阿波)で大きく発展しました。他にも北海道や沖縄には独自の藍染カルチャーがあります。
様々なバリエーションのある藍染ですが、基本の方法論としては以下の通り。

藍(アイ)の葉をコンポスト状にして固めたものを、石灰液のなかで発酵させた染色液で布を染める。もっと原理的に言えば「藍の葉に含まれるインディゴ色素を、発酵のちからによって布に移す」ということ。

藍染は、他の草木染めと比べて濃厚で深い風味と、色落ちしにくい特性があります。その秘密はズバリ「発酵のちから」なのだぜ。

インディゴ色素を取り出す

通常の草木染めと違い、なぜ藍染に発酵菌が必要とされるかというと、染色するための「インディゴ色素」が植物の外に出てこない「引きこもり色素」だから。そこで発酵菌がカウンセラーのごとく、色素を植物の外に引っ張り出すのさ。
それでは順を追って説明しよう。
まず、藍の葉をカラカラに乾燥させて丸めます。酸素と植物酵素の力により、インディゴ色素を分離するんですね。この乾燥葉を丸めたものを「すくも」と言います。

次に、このすくもを灰汁やふすま、酒などを入れたプールのなかに入れ、発酵させます。ここにいるのは「インディゴ還元菌」と呼ばれる特殊な菌で、石灰によってつくられるアルカリ性の環境で繁殖します。

この菌の働きによって、藍の葉のなかに引きこもっていたインディゴ色素が、プールのなかに溶け出していきます。

最後に染色。プールのなかに布を浸し、その後、野外で布を干し…というプロセスを何度も繰り返します。野外で干すのは、布を酸素に触れさせて「酸化」させるため。アルカリ性になって動けるようになった色素を、酸化させることでもう一度布のなかに閉じ込めるわけです。例えるならば。「引きこもりをシステムエンジニアに就職させて、今度はオフィスに引きこもらせる」みたいな状態ですね。

藍染はツンデレ発酵である

藍染の特性は「濃厚な色味で、色落ちしにくい」であると定義しました。

これが可能になる理由は「染めにくい色素をあえて使う」という発想にあります。インディゴ色素は、基本葉っぱから出てこない。だから一度他の物質(布)に移ると、強力に定着するわけです。いい年になるまで恋愛経験無しのエンジニアが一度濃厚に恋をすると、もう目移りしない=脱色しない、という原理になるわけなのですね。平匡さん…!

【追記】伝統的な藍染は発酵プロセスを使ってインディゴ色素を取り出しますが、最近は化学作用で直接色素を取り出す方法がメインに。とはいえ日本のあちこちに、発酵藍染の工房が今でも元気に活動しています。


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