Latest Posts

新著『日本発酵紀行』の事前予約をお願いします!

これは記憶の方舟。そして未来に進むための船だ。

とても嬉しいお知らせです。
『発酵文化人類学』からまる二年。皆さまに新しい本をお届けできることになりました。知られざる発酵文化を訪ねて47都道府県を旅した旅行記です。

新著もまたスモール流通でスタートするので、僕の活動を見ていてくれる皆さまに予約予約をお願いしたいと思います。どうぞよろしく!

そもそもどんな本になるの?

▶発酵から再発見する日本の旅
今回のテーマは旅。専門書の体裁だった前作とは違う、時系列で読み進めていく読み物になります。北は北海道東の標津から、南は沖縄まで全国の様々な土地を訪ねて出会った不思議な文化や景色、その土地で生きる人々の暮らしを記録がこの『日本発酵紀行』です。

編集を手がけてくれたRe:Sチームの藤本智士さんが今作の素敵なコピーを書いてくれました。


微生物の気配にシンクロすれば、道が見えてきた。
酒、醤油、味噌はもちろん 知られざる発酵食品の現場まで。
47都道府県の 山、海、島、街を巡って、 日本の歴史と未来を見出した
前代未聞の発酵文化論。



▶日本とは、日本人とは何か?

外界から隔絶された離島で生き延び、杉と竹を組み合わせて巨大な産業をつくりあげ、宗教で肉食を禁じられながら、目に見えない自然の力を活かして多様な文化を編んできた日本列島に住む人々の姿。そこから浮かび上がってくるのは、日本とは、日本人とは何か?という根源的な問いです。僕は旅の期間中ずっとこの重たい問いに押しつぶされそうになりながら、自分なりの答えを出そうともがいてきました。

▶海・山・島・街の暮らしの歴史
発酵文化は、その土地に生きる人の記憶そのもの。船に乗ってアジアを股にかける海洋民族がいたと思えば、そこでしかとれない作物を工夫しながら食べつないできた山の民、微生物の力を使って付加価値を生み出し莫大な富をなした街の商人たち、絶海の孤島で人知れず驚きの食文化を編み出した離島の民族など、この本を読むと日本に生きた様々な民族の暮らしがイメージできる驚きのエピソードがいっぱい!

▶日本各地の知られざるローカル発酵食品が次々登場!
『日本発酵紀行』には、酒や醤油にとどまらないユニークなローカル発酵食品が多数登場!宮崎県の日南海岸沿いに生える海藻を使ったムカデノリ、アイヌと和人が出会って生まれたサケの山漬け、火山島の野生菌で醸す謎の焼酎、あおちゅうなど前代未聞のレシピを多数解説しています。

▶旅の臨場感を伝える写真を多数収録!
今回の最大の目玉はコレかも。僕が各地で撮影してきた仕込みの現場やその土地ならではの景色の写真が多数収録されています。こればっかりは言葉では説明できないので、どんな雰囲気なのか見てください。

食文化、生物学、経済史、人類学など様々なアプローチから日本の発酵文化の起源を探っていきます。野宿したり寒空のなか何時間も山道を登ってたどり着いた貴重な記録がこれでもか!と収録された読み応えのある一冊になりました。

皆さまにお願い:事前予約をお願いします!

ということで。
読み応えたっぷりの出来になった『日本発酵紀行』。ぜひ事前予約してくれると嬉しいです。もちろん事前予約してくれた人だけの特典もあるよ。

▶書籍には収録できなかったアナザーストーリー
訪れた47都道府県全部の話を収録すると本のボリュームが現実離れしてしまうので、泣く泣くカットしたローカル発酵のアナザーストーリーをフリーペーパー形式で同封します!青森の『ごど』と沖縄の『豆腐よう』を収録する予定です。ぜひ本編とあわせて読んで下さい。

▶イラスト付きサイン
通常のサインに加えて、僕のアニメに登場するキャラクターや僕の似顔絵のイラストを入れて本をお届けします。前作では800冊の事前予約があってまる二日間サインをし続けて軽く腱鞘炎になったのですが、今回はまる三日間くらいサインし続ける気合でのぞむぜ…!

今回の本もまた取次の配本を通さずに、直接個人や本屋さんから注文をもらうDIY流通スタイルでお届けします。最初のスタートダッシュを切るためにも、ぜひ事前予約してもらえると嬉しい。

もいっかい繰り返します。
下のフォームから書籍『文化人類学』の事前予約をしてくれたらめちゃ嬉しいです。
事前予約してくれた人には、本が一般の書店に並ぶ5/24よりも二週間はやく特典つきで本を郵送します!


☆☆締め切りました!☆☆

☆何冊注文しても送料無料!価格は1,800円+税。
※本はポスト投函のメール便で送ります。その際に振り込み先(銀行振込)の手紙を同封します。お手数ですが振込手数料はご負担ください。
※メールは僕と版元のディアンドデパートメント株式会社に届きます。個人情報は本の発送以外には使いません。


 

発酵デザイナーの新著『日本発酵紀行』は5月初旬に発送予定でーす。

↓↓今回も起こすぞミラクル!↓↓
【発酵文化人類学】一週間で重版出来!の舞台裏。マーケットではなくコミュニティに届ける。

※最初の3日で100冊注文きたら、まえがきをこのブログで公開したいと思います。
※4月中旬頃から本屋さん向けの予約の呼びかけをする予定です。ただいま命を削ってスペシャル特典を用意しているよ…!

展覧会もどうぞよろしく!

今回の本は、渋谷ヒカリエ8階のd47 MUSEUMで4月末から始まる展示会の公式書籍でもあります。展示とあわせて読むとさらにディープに日本のローカル発酵文化を知ることができます。書籍『日本発酵紀行』の世界をどうぞ実際に体感してみてください。
※クラウドファンディング時の公式書籍のリターンはこの本のことです。

☆☆イベント詳細はこちら☆☆

▶今回タッグを組むのは、D&DEPARTMENT!
出版元は、展覧会をご一緒するD&DEPARTMENT。腕利きプロデューサーの田邉直子さん、編集に藤本智士&竹内厚のRe:Sチーム、デザインに堀口勉さんを迎え、最高のチームで大ヒット飛ばすぞ!エイエイオー!!

最後に、ヒラクより今回の本について

実はこの本、当初は出版するはずじゃなかったんです。ヒカリエ展覧会の公式書籍として全国の発酵食品のカタログをつくる予定でした。

ところが!展覧会用の旅をはじめてしばらくして、進捗報告も兼ねて事務局にレポートと写真を送ったら「これはカタログじゃもったいない!」という話に。展覧会のデザインと編集のディレクターを担当してくれたRe:Sの藤本さんの、


「オレ、ヒラクの旅行記読みたいんだけどな〜」

の鶴の一声で、急遽本を一冊書き下ろすことに。この時点ですでに年明け。そこから2月から3月にかけて旅をしながらリアルタイムで旅行記を書いていくというライブすぎる執筆がスタートしました。

僕の10年間の活動の集大成である前作『発酵文化人類学』の後に、いったい何かまだ書くべきことがあるのだろうか?と不安だったのですが、いざ書きはじめてみると、堰を切ったように言葉が溢れ出てきました。しかも出てきたのは前作とはまた違ったもの。

発酵ってこんなに楽しい!というPOPな内容が前作だったとすれば、今回は暗くてディープな話がいくつも出てきます。書いた本人ですら「僕のなかにこんなにドロドロした黒いものがあるんだ…!」と驚きでした。

きっと、今回の旅では「明るい未来」ではなく「消えゆく過去」をたくさん見てきたからなのだと思います。半分見捨てられたような場所で、それでも淡々とその土地の暮らしを続ける人々に出会うことで、自分のなかの無意識のうちに閉ざしていた扉が開いたような感覚がありました。

そういう意味で、この本は「忘れられた日本人」を訪ねる旅であり、同時に「忘れていた自分」を探しにいく旅です。その道のりは時に寂しく、心細いものでした。今校了を間近のタイミングでもこの本が何なのか、うまく言葉にできない自分がいます。

でも。この「言葉にできないくらい深く遠い場所」に行くことこそが、僕のずっと求めてきた旅なのかもしれません。僕が旅で出会ったものの価値が何だったのか。その判断は読者の皆さまに委ねたいと思います。最後に、本文をちょっとだけ引用したいと思います。


旅して旅して旅した末の究極の風景は、雄大な自然でも壮麗な神殿でもなく、自分の心象風景なのかもしれない。膨大な景色を通過した後の心象風景は底の見えないほど深く、無数の記憶の泡が渦巻いている。言葉の通じぬアジアの街の雑踏にはじめて足を踏み入れたときの興奮。ヨーロッパの美術館の地下で古代世界の収蔵品を飽きずに眺めた不思議さ。旅で感じた心の動きはやがて子供の頃に皮膚で感じた記憶を呼び覚ます。川辺に照りつけるジリジリとした日差し、家でひとり熱にうなされたときに窓から見える雲のかたち。小さな頃に泳いだ海の冷たいきらめき。そしてそのきらめきの向こうから、もう会えなくなった祖父や友人が僕に呼びかける声がきこえる。

さあ、もう行かなくちゃ。

 

いいトコいっぱいのヒラノくんの彼女を募集します

元アシスタントで今noteのディレクターとして働いているヒラノくんが彼女できない…と悩んでいるそうなので僕のブログで募集することにしました。

https://twitter.com/yriica/status/1102943910689562624

ヒラノくんは歴代の僕のアシスタントのなかでも仕事デキるし、素直だし、同年代でも年上のコミュニティでもすぐに仲良くなるナイスなヤツでした。

で、僕が「ナイスなヤツだよ!」と言っても説得力ないので、ツイッター上で #ヒラノくんのいいトコ を募集してみました。その結果がこちら。

https://twitter.com/8kotty8/status/1103097253227425792

https://twitter.com/qzqrnl/status/1103153345437491200

https://twitter.com/rurika109/status/1103233829467123712

https://twitter.com/kyukirrs/status/1103244200282210306

五人くらい他薦があればいいかな…と思ってたら、愛されてるね、ヒラノくん!
そして今の職場、ずいぶん馴染んでるみたいでよかった。仕事楽しんでね〜。

https://twitter.com/yukotyu/status/1103207200074301440

https://twitter.com/hiilagram/status/1103292394412302336

https://twitter.com/kotaro53/status/1103308158028591106

おおお、ヒラノくん本人から独り歩きしている…。
気になる人は、このハッシュタグで色々妄想して下記フォームに申し込んでみよう!

ヒラノくんの彼女受付フォーム

※予想を上回る多数の応募につき、3/7の23:59で締切りました。

☆本人に直接メールが届きます。ヒラノくん一応全員に一言お返事はしてね。後はお任せ!
☆システムの仕様上僕にもメール届くんだけど見てみぬふりします。問題あった時のみ何か対処します。みんな問題起こさないでね!
☆もちろんプライバシー情報は漏らさないよ。

ちなみに僕のブログでは、たまにこんな感じで友人のよろず募集企画をやっています。
過去の募集記事は以下のとおり。

【3/2は甲府に集まれ!】こうふはっこうマルシェ今年もやります!

日本全国から愉快な発酵仲間が山梨県甲府に大集結!の大イベントが帰ってきた!

去年15,000人の来場者で賑わった発酵祭り、今年も開催予定。去年出てくれたメンバーに加え、ニューカマーも登場。

今のところ決まっている感じでいうと、

☆DJみそしるとMCごはんがメインステージでライブ!
☆発酵兄妹のCOZY TALK公開収録もDJみそしるとMCごはん!
☆秋田からのんびりチーム参戦!
☆長野からやってこチームも参戦!
☆栃木からChusチームも参戦!
☆トークイベント用のスペシャル会場設置。しゃべりまくり!
☆熱燗DJつけたろう&澤田酒造の熱燗コラボ!
☆能登の谷川醤油も登場!
☆ミコト屋も屋台出すぞー!
☆今年もカリ〜番長がスペシャル発酵カレーで出店!
☆山梨のヤバいワインが利き酒できすぎる!

…と情報濃すぎる〜!!!。去年登場した、

角谷文治郎商店
KAMO’S KITCHEN
BOOK BUS By VALUEBOOKS
ミツル醤油
戸塚醸造店
寺田本家
みつか坊主
ウシオチョコラトル
青果ミコト屋
はっこうの里こうざき

も出店しています。年に一度の発酵同窓会 in 山梨、どうぞお越しください。発酵兄妹三人で待ってるよ!

こうふはっこうマルシェ 2019
【場所】甲府駅前よっちゃばれ広場
【時間】2019年 3/2 10:00〜16:00

☆☆公式HPはこちら。これから詳細がアップされていきます☆☆

【発酵ツーリズム富山】黒づくり:イカスミで真っ黒なエキゾチック塩辛

富山の発酵ツーリズム:
黒づくり(富山県射水)| 京吉

妖しく黒光りする謎の塩辛

富山の魚介の食文化のレベルの高さは尋常じゃない。街場の回転寿司や居酒屋さんで出てくるものでもめちゃくちゃ美味い。超絶リッチな富山の魚介料理のなかで僕が気になっていたのは、イカの塩辛にイカスミを加えてつくる『黒づくり』だ。こいつで富山のイケてる日本酒を一杯やってみたい…!

と思って山梨から飛騨高山を通って車を飛ばしやってきた富山湾。
江戸時代から黒づくりを製造する京吉さんへやってきた(黒づくりは富山湾一帯の色んなところで食べれるが製造しているメーカーは意外に少ない)。

製造はごくごくシンプルで、イカの塩辛(塩蔵)にイカスミをたっぷり混ぜて数日間発酵させるだけ。しかし発酵中の妖しく黒光りする塩辛のテクスチャーはただごとじゃないオーラを発している。

現場を見た夜に地元の居酒屋さんで黒づくりを食べてみたら、普通の塩辛よりも味にまろみと深みがあり、塩辛さよりも旨味やふくらみが先にくる。つまりめちゃ美味い!こんなにも美味いものが富山ローカルにとどまっているのが不思議でならない。

この黒づくりだけで日本酒をエンドレスに飲める。適度な旨味でアッサリとした富山の酒に黒づくり。この組み合わせは至高のブラック・ヘブン…!

どうやってつくる/食べる?


スルメイカでつくるのがメインだが、富山湾名物ホタルイカでもつくられる

▶How to 仕込み
A:イカの目の部分、硬い皮の部分を外して身を刻み、塩漬けにする
B:半日〜一日ほどしたら塩を洗い、内蔵とイカスミを加えて混ぜる
C:数日〜一週間ほど発酵・熟成させる

☆途中で酒やみりんなどを加えた調味液に漬けることも

▶食べかた
・ご飯のおとも
・酒肴に

▶食べられている地域
富山県

▶微生物の種類
乳酸菌、酵母など

旅のメモ

黒づくりの起源は江戸中期。加賀藩の特産品推進施策の一環として作られるようになったとされる。歴史好きの京吉の旦那さんの語るところによると、当時日本で唯一海外の文化を受け入れていた長崎の魚介加工技術を加賀藩から人を送って研修して、それまで日本ではやられていなかったイカスミを使った塩辛を考案したという。

それってつまり、地中海のイカスミ料理文化なんかとつながっている可能性があるのだろうか?加賀藩の商売上手さとともに海を越えたロマンを感じさせる話ではないかしら?


47都道府県の発酵が一堂に会する大展覧会『Fermentation Tourism NIPPON』、今年春4/26〜7/8に開催予定です。47都道府県のうち、36都道府県まで到達。いよいよラストスパート!


Fermentation Tourism NIPPON  supported by


【発酵ツーリズム広島】酢:西の海運を制した尾道の産業基盤

広島の発酵ツーリズム:
酢(広島県尾道)| 尾道の造酢文化

豆味噌の桶から滲み出る濃厚液体調味料

『時をかける少女』や『君の名は』の舞台として知られる風光明媚な広島の入江の街、尾道は実は西日本屈指のお酢の街だった。今はその面影はほとんど残っていないが、明治後期から大正初期にかけて尾道だけで30,000石以上(一升瓶300万本)の生産量を誇る、愛知県知多半島の半田(ミツカンの本拠地)に次ぐ造酢の要所であったらしい。

尾道駅から続く長いアーケード街をずっと歩いていくと、創業約440年の日本屈指の老舗メーカー尾道造酢がある。ここは尾道の酢の歴史、もっと言えば街の発展の歴史の貴重な生き証人なのだね。

江戸時代までの伝統的なお酢づくりは、日本酒をベースにつくられる。
日本酒に酸素を送り込み、酢酸菌という微生物を増殖させてアルコールを酢に変える。魚などの保存食をつくるために日本全国で重用され、酢の生産の普及とともに和食の代表格である寿司が発展したと言っても過言ではない。

北前船の停泊地であり、海の商人の土地だった尾道では、海路で秋田あたりから安い米を運んできて尾道でお酢に加工して付加価値をつけ、西廻りの航路で日本海側に酢を出荷し、遠くは北海道にまで運んで利益を得てきた。

芸備銀行(現広島銀行)や尾道鉄道の代表を努めた橋本龍一を輩出した豪商・橋本一族が興した尾道の重要な産業のひとつが付加価値の高い造酢であり、お酢をつくりまくることによって尾道は土地に富を蓄積してきた。海の商人町・尾道の商魂はお酢に宿っている。

どうやってつくる/食べる?


酢の発酵に伴ってあらわれる酢酸膜

▶How to 仕込み(伝統的な米酢の場合)
A:日本酒を仕込む(一段仕込みから三段仕込みまで蔵によって仕込みが違う)
B:酒を割り水して、酢酸菌のスターターを入れて40℃前後に温める
C:瓶やタンクなどで2〜3ヶ月で発酵(静置発酵)させそこからさらに数ヶ月熟成させる

☆酒から仕込んで静置発酵させる伝統的な醸造法は現代では希少になっている
☆工業的に精製されたアルコール液を撹拌して酸素を送り込みながら高速発酵させる醸造法が現代の主流

▶食べかた
・酢の物に
・調味料として

▶食べられている地域
全国

▶微生物の種類
酢酸菌

旅のメモ

今回訪れたのは老舗の尾道造酢と、明治時代創業の杉田与次兵衛商店の2軒。
尾道造酢には資料館でしか見たことのないような巨大な瓶や醸造装置が今でも現役で使われており、造酢文化の生きたミュージアムのよう。かつては本格的な米酢もつくっていたが、昭和に入ってからはマヨネーズなどの原料となる洋酢や果実酢の製造がメインとなっている。

一方、杉田与次兵衛商店では伝統的な米酢を製造していて、この2軒をあわせてまわると尾道の酢の文化をうかがい知ることができるよ。

 


47都道府県の発酵が一堂に会する大展覧会『Fermentation Tourism NIPPON』、今年春4/26〜7/8に開催予定です。47都道府県のうち、36都道府県まで到達。いよいよラストスパート!


Fermentation Tourism NIPPON  supported by


【発酵ツーリズム佐賀】松浦漬け:捕鯨一族の執念が生んだ港の珍味

佐賀の発酵ツーリズム:
松浦漬け(佐賀県唐津市呼子港)| 松浦漬け本舗

プリプリ・こりこりの高級珍味

僕の母方の実家は佐賀県唐津の玄界灘の漁村。虚弱児だった僕は中学生くらいまでよく唐津の実家に預けられて漁師のおじいちゃんに身体を鍛えてもらっていました。

その時たまに食べていた不思議な食べ物があったな…と思い出したのが『松浦漬け』。
これなんと!クジラの上顎の軟骨部分を酒粕漬けにして食べるという空前絶後の発酵珍味なのですよ。

佐賀県唐津の呼子港の一角に明治時代から店を構える松浦漬け本舗がこの珍味の唯一の製造元。クジラの上顎部分の油抜きしてスカスカになった軟骨を糖分や唐辛子などで調味した酒粕の床で発酵・熟成させていきます(詳細は門外不出のためシークレット)。

できあがるのはクラゲのような不思議なテクスチャーの食べ物。
食べてみるとプリプリ・コリコリで酒粕の発酵フレーバーが染み込んで味わい深い。
子供の頃は「何このヘンな味?」としか思ってなかったのですが、日本酒とあわせると地獄のように美味い。

今や唐津を代表する高級珍味として地元民に珍重されているようです。
パッケージもレトロで最高。カッパ型の有田焼の器とあわせてゲットしたいところです。

どうやってつくる/食べる?

▶How to 仕込み
A:クジラの上顎の軟骨を油抜き処理して刻む
B:糖分・香辛料などで調味した酒粕にAを漬け込む
C:数ヶ月以上発酵・熟成させて完成

☆詳しい醸造法は門外不出のため不明

▶食べかた
・酒肴として
・地元の人はご飯のおともにも

▶食べられている地域
佐賀県唐津一帯

▶微生物の種類
酵母、乳酸菌類

旅のメモ

松浦漬を考案した山下一族は唐津港で活躍した捕鯨組合の有力スポンサー。
つまり捕鯨一族の名主。クジラのことを知り尽くしているがゆえに考案された発酵食品であると言える。ちなみに江戸〜明治に獲れていたシロナガスクジラは超巨大で、時には30m級の大物が穫れたこともあったらしい。写真のような巨大クジラでは上顎の部分だけでも数十キロあったらしく、油を取った後の使いみちのない軟骨をなんとかしたい…!という執念から生まれたのが松浦漬けなんだね。

当初のレシピでは、山下家の本家のすぐとなりにあった酒蔵(ここもおそらく山下家)の酒粕で漬け込んでいたそう。ちなみにうちの母はその酒蔵(松浦誉)のことを覚えていた。ていうか、どうやら母方の家系(山下家)もどうやら漁師一族の血筋を引いているそうです。僕のおじいちゃんが漁師だったのも系譜があるわけだ。びっくり。

 


47都道府県の発酵が一堂に会する大展覧会『Fermentation Tourism NIPPON』、今年春4/26〜7/8に開催予定です。47都道府県のうち、36都道府県まで到達。いよいよラストスパート!


Fermentation Tourism NIPPON  supported by


【発酵ツーリズム岡山】ママカリ:大漁を告げる魚島の幸

岡山の発酵ツーリズム:
ママカリの酢漬け(岡山県日生)| 活魚 天坊

無限にご飯が進む!ママ(飯)カリ(借り)

岡山に行ってぜひ食べたかったのがママカリの酢漬け。
ママカリ(さっぱ)という小さな魚の頭と内臓を抜き、まず塩漬けに。そして翌日に塩を洗って今度は酢漬けにする二段漬けで保存性を高め、旨味をマッシブにする。

このママカリの酢漬け、酸味と甘味と程よい脂身の三位一体が猛烈にクセになり、エンドレスに食べ続けてしまう逸品なんだよ。
夏〜秋にかけての漁期に大量にとれるママカリ。保存食としては酢漬けがポピュラーだが地元にいくとにぎり寿司スタイルのママカリ寿司や刺し身、煮付けなど様々なスタイルで楽しめる。
ママカリは魚の生臭さが少なく、油っぽくも淡泊すぎもしない絶妙の脂身、そしてペロっと食べれるサイズ感もあいまってご飯のおともにピッタリ。
あまりにもご飯が進むので、お隣にママ(飯)カリ(借り)に行ってしまう…!というのがその名前の起源なんだとか。

どうやってつくる/食べる?

▶How to 仕込み
A:ママカリ(さっぱ)の頭と内臓を取って切り身に
B:切り身を塩漬けにし、一日ほど置く
C:Bを洗い、1〜2ヶ月ほど酢漬けにする

☆酢には糖分などを調味したものを使用

▶食べかた
・ご飯のお供
・刺し身的に食べる

酢漬け以外にも様々な食べ方が。写真は煮付け。
はじめて食べたのが刺し身。めちゃプリプリで美味しかった…!

▶食べられている地域
岡山県全域

▶微生物の種類
酢酸菌、乳酸菌など

旅のメモ

日生(ひなせ)は古くから栄えた由緒正しいローカル漁港。
ここの栄養豊かな入江めがけて、春になると魚群(主にサワラ)が押し寄せてくる。この魚群があまりにも大量で、島のように見えることからこの春の大漁期のスタートを『魚島』と呼ぶようになったという。『魚島』は物理的現象にとどまらず、大漁の海の幸をこれでもか!と食卓に並べる大宴会のことも指す。

取材に伺った割烹料理、天坊の座敷でぜひ『魚島大パーティ』をやりたいものだぜ(展覧会が無事スタートしたら)。

見て下さい、天坊の大将のこの最高の顔。発酵好きの腕利き料理人のつくるママカリは最高でしたぞ。

 


47都道府県の発酵が一堂に会する大展覧会『Fermentation Tourism NIPPON』、今年春4/26〜7/8に開催予定です。47都道府県のうち、36都道府県まで到達。いよいよラストスパート!


Fermentation Tourism NIPPON  supported by



【発酵ツーリズム福島】三五八:麹大国のフェーバリット漬け床

福島の発酵ツーリズム:
三五八(福島県会津若松)| 石橋糀屋

塩3:麹5:米8の麹漬け床

福島県の内陸寄り、会津若松は麹文化の集積地。
日本酒の銘酒も醤油・味噌蔵も多く、東北の麹文化を代表する土地のひとつ。

会津若松に住む人々のフェーバリット手作り品に『三五八漬け』という漬け物がある。これは塩3:麹5:飯米8の割合で混ぜて漬け床をつくり、そこに主に野菜を漬けていく「麹漬け」の代表格だ。

ぬか漬けや塩麹漬けより甘味や旨味の強い三五八漬けは、この会津の人々のスタンダード発酵食品。日常的に手作りされお茶請けやご飯のおともに重宝されている。

ぬか漬けほど手入れが難しくなく、塩麹漬けよりも玄人っぽい。僕も麹のワークショップをする時に三五八漬けのレシピをオススメしている。

米の生産地でかつ土地に財力があり、日光などを通して関東にも交易路がある会津ならではの贅沢な漬け物。野菜はもちろん魚や肉を漬けても最高の酒の肴になるよ。

どうやってつくる/食べる?

▶How to 仕込み
A:塩3:麹5:飯米8の割合で漬け床をつくる
B:食材をAの床に漬け、1〜3日ほど漬け込む

☆床をつくると麹の酵素により水を入れないのに床がドロドロに溶ける
☆食材を漬けると水分が出てビショビショになるので床を変える
☆つまりぬか床と違って小分けにして常にリフレッシュしながら漬ける

▶食べかた
・香の物に
・酒の肴に

ぬか床より味があっさり、塩麹漬けよりも甘味の強いバランスの良い味が◎

▶食べられている地域
福島県はじめ東北北陸

▶微生物の種類
コウジカビ、乳酸菌など

旅のメモ

今回訪ねた石橋糀屋さんは全国に数多くある麹屋(味噌や甘酒などを手作りする人向けの麹を製造販売するメーカー)のお手本のようなところで、商品の全量を麹蓋(底の浅い箱)で麹をつくっている。この麹蓋で小分けにつくると品質のムラのない麹が出来上がる。

石橋さんのお店には地元の人がひっきりなしに訪れ、お味噌や甘酒の手作りの話に花が咲く。麹の文化は職人文化であると同時に土地に根付いた手作り文化。会津の町は麹の民主主義が今なお残っている。萌え…!

取材のあとに石橋さんオススメの飲み屋に行って会津の酒を堪能したんですが、今回の発酵ツーリズム屈指の趣ありまくりの飲み体験でした。また会津に飲み行きたい…!

二日酔い気味で迎えた会津若松の朝焼け。情緒しかない…!

 


47都道府県の発酵が一堂に会する大展覧会『Fermentation Tourism NIPPON』、今年春4/26〜7/8に開催予定です。47都道府県のうち、36都道府県まで到達。いよいよラストスパート!


Fermentation Tourism NIPPON  supported by


 

【発酵ツーリズム京都】しば漬け:山間に吹く風が育てた京の漬けもの

京都の発酵ツーリズム:
しば漬け(京都府大原)| 辻しば漬け本舗

風の吹き抜ける大原の名物漬け物

京都の発酵といえば漬け物。千枚漬けやすぐきも心惹かれるけれど、僕にとっての京つけものといえばやっぱりしば漬け。スーパーで普通に売っている比較的メジャーなものではあるけれど、実は京都のローカリティに根ざした土着な発酵食品なんだね。

しば漬けの起源をたどると、京都市内を北部に登っていった大原地区で伝統的につくられている、赤紫蘇の葉と大原で取れる夏野菜のナス(きゅうりや茗荷を加えることも)と少量の塩で作られる乳酸発酵食品であるとことがわかる。

スーパーで全国流通しているしば漬けは、このシンプルなオリジナルしば漬けに追加で調味料や食材を追加したアレンジレシピで、実は僕はここ大原ではじめて「オリジナルしば漬け」を体験したのだった。

オリジナルしば漬けのポイントをあげるとだな。

・塩分が少なく、主に乳酸発酵によって防腐機能を持たしている
・熟成期間が長い(半年〜一年ほど)
・風通しが良い大原の気候を活かした発酵食品

この結果、比較的味がアッサリして上品、かつ赤紫蘇のピンク色が鮮やかな京らしい雅な漬け物ができあがるんだね。特筆すべきはその香り。フレッシュでフローラルな匂いが赤紫蘇から立ち上ってくる。激しく食欲をそそりつつエレガントなのが京都らしいですなあ。僕のこれまで食べていたしば漬けは何だったのか…

どうやってつくる/食べる?

▶How to 仕込み
A:夏に収穫した赤紫蘇と刻んだナスと塩を混ぜ、樽に漬け込む
B:樽に重しをかぶせ、数ヶ月〜一年ほど熟成させる

☆基本のレシピは赤紫蘇とナスと塩のみ。現在はそこにキュウリや茗荷などを加える
☆基本のレシピでは塩分は10%以下。乳酸発酵によって味をつけていく。

▶食べかた
・お茶請けにポリポリかじる
・お茶漬けにのせる

▶食べられている地域
京都府内(90年代以降より全国)

▶微生物の種類
複数の乳酸菌

旅のメモ

今回お邪魔した辻しば漬け本舗は家族経営のローカルメーカー。
地元でとれた赤紫蘇とナスのみでつくるオリジナルしば漬けの品の良さに感動。

しば漬けのオリジンは、平安時代後期、つまり1000年近く平家の末裔や皇族との関係を持つ由緒正しいもの。中世には大原の山を下って京都市内にしば漬け売りが行商に出かけていたそうです。

実はこの夏の終わりの近畿の旅、京都で体調を激しく崩し、何も喉を通らない状態になってヘロヘロな僕を救ってくれたのがしば漬けのお茶漬けでした。
これから大原には足を向けて寝られない…!

 

赤紫蘇が風に揺れる大原の旅。めちゃ気持ちよかったなあ…


47都道府県の発酵が一堂に会する大展覧会『Fermentation Tourism NIPPON』、今年春4/26〜7/8に開催予定です。47都道府県のうち、36都道府県まで到達。いよいよラストスパート!

Fermentation Tourism NIPPON  supported by



クラウドファンディング大成功!47都道府県の発酵ツーリズムの現在地。

こんにちは。ヒラクです。
渋谷ヒカリエ47都道府県の発酵ツーリズム展覧会のクラウドファンディングが終わったのが1/15。

その後「あれ?クラファン締切直前はやたらSNSに書き込んでたヒラク君はどこ行ったの?」と不審がっていた人も多いと思いますが、クラファンが無事終了したのを見届けた直後からまた旅を再開していたのでした。

小豆島のヤマロク醤油で木桶の研修。全国から集まった醸造家たちと木桶づくりに挑戦(ほとんど役に立たなかったけど)。
木桶野郎どものテンションはつねにMAX。めちゃくちゃ働いてめちゃくちゃ飲んでめちゃくちゃ盛り上がるサイコーの場でした。小豆島で起こっている木桶レボリューションはもちろんヒカリエの展覧会にも登場、ていうか展示会場に木桶が登場します( ー`дー´)キリッ

淡路島の都美人の蔵にも入って麹仕事を体験させてもらいました。
日本酒蔵の繊細な麹造りの現場、めっっっっっっちゃ楽しかった〜!兵庫県代表、都美人の日本酒は会期中の角打ちイベントに登場予定。お楽しみに!

静岡県代表は、西伊豆田子の浦のカネサ鰹節。
鹿児島と双璧の静岡の鰹節文化。今回は延喜式の時代から伝わる幻のカツオ発酵食品が登場します。こうご期待…!

この写真!!!!めっちゃ良くないですか??????

新潟県代表は妙高のかんずり。全国的に見ても超レアな唐辛子の発酵食品。
大寒の日の特別な雪晒し(唐辛子を雪原にまく)に立ち会うことができました。こちらも展覧会場で試食できるよ。めちゃうまいよ…!

47都道府県代表以外にも「カテゴライズ不能枠」もいくつか設けます。徳島県から登場するのは発酵技術を活かした染色技術、阿波藍。

運がいいことに、すくも(染の原料)の発酵の最盛期に立ち会うことができました。タデアイの葉を堆肥状に発酵させてインディゴ色素の定着率を高めていきます。食品の発酵とは全く違う原理の藍染。この様子も展覧会を通じて皆様にお伝えするぜ。

すくもを石灰液に浸した二次発酵の様子。ぎゃ、ギャラクシー…!

蔵仕事の筋肉痛が一日遅れできて動けなくなったりしていますが、僕は元気です。

【御礼】CAMPFIREのページでも報告しましたが、展覧会開催のためのクラウドファンディング、目標の500万円を大きく上回る約580万円の支援をもらって無事サクセス!しました。皆様本当にどうもありがとう。皆様の期待を裏切らない最高の企画にするよ…!

目標金額を大きく超えた585万円達成!クラウドファンディング終了しました。 | CAMPFIRE

47都道府県の発酵が一堂に会する大展覧会『Fermentation Tourism NIPPON』、今年春4/26〜7/8に開催予定です。47都道府県のうち、36都道府県まで到達。いよいよラストスパート!


Fermentation Tourism NIPPON  supported by


謎のロングセラーを続ける発酵文化人類学。ネット通販在庫切れにつきサイン本企画やります。

2017年(つまり一昨年)に出版し、3万部を突破した『発酵文化人類学』。
なんともうすぐ二年経とうというのに相変わらずロングセラーを続けています。

その証拠を見ておくれよブラザー!

名だたる本屋さんで続くロングセラー現象

なんと累計約400冊!!を売ってくれている本屋界の良心、青山ブックセンターの思想書部門で2017年1位、そして2018年2位というミラクル…!

店長の山下さん、ありがとう…!涙
ちなみに山下さんと青山ブックセンターのポリシーも素晴らしいのでぜひご一読を。


・青山ブックセンター書店員 山下優さんに聞く、本が売れる店作り

そして。京都一乗寺の恵文社でも二年越しのロングセラーを続けている模様。
書店のサイトでもコメントをもらいました(ちなみに一位は年末に山梨で一緒にトークした独立研究者の森田くん。彼の本に関連してのコメントもらって嬉しいぜ)。以下引用:

“昨年の刊行ながら、10位に入った『発酵文化人類学』の著者、小倉ヒラクさんも似た立場に身を置かれている書き手です。
「発酵」という現象そのものを対象にするヒラクさん曰く、発酵の分野を研究しようと思うと多くの場合が納豆や酒など、特定の食品にフォーカスをしないと研究機関では予算が出ないそうです。『発酵文化人類学』が面白いのは、発酵というテーマを下地に哲学やその他さまざまなことを学べるからでしょう。この数年は森田さんやヒラクさんのように分野をまたいで活躍する書き手の本が活躍しています”

恵文社さん、どうもありがとうございます。また京都に行った際に寄りますね。


・難解な微生物学を「役に立つ」ようにデザインしたい。『発酵文化人類学』小倉ヒラクインタビュー

去年の夏には、本の雑誌ダ・ヴィンチで新刊じゃないのに異例の『ひとめ惚れ大賞』に選ばれました。ベストセラーの王道から外れまくった本を推薦してくれた佐渡島さんはじめ選者の皆さまに感謝しかない…!

サイン本企画やります!

NHK『ごごナマ』の出演の影響もあって、年末年始にはネット通販でもとんでもない売れ行きに。総合12位ってマジですか…。
※2018年1月5日現在

で。年始早々Amazonの在庫が尽きたそうです。おお、なんということだ…。
そしたらよりダイレクトに本をゲットするしかない!

ということで!突然ですが!!
新年めでたい!サイン本企画をやりまーす!

僕のゆるイラスト入りサイン本を書店&出版社からゲットできるようにします。

▶関東&関西でサイン本企画行脚します
僕の本を置いてくれている本屋さんへサイン行脚をしにいきます。各店10〜20冊くらいなので、欲しい方はおはやめに。ちなみに1〜2時間くらい滞在する予定なので発酵関係のご相談がある方はお気軽にどぞ。

あと僕の過去に出した『てまえみそのうた』とかミシマ社の雑誌『ちゃぶ台』の発酵特集とかにも現地でサインします(在庫があれば)。あるいはすでに本を持っていて「サインだけ欲しい!」という人もカモン!(そのかわり僕のじゃない他の本をお買い物していってね)

【大阪】心斎橋スタンダードブックストア: 1月7日 夕方17:00〜19:00
【東京】青山ブックセンター:1月11日 夕方17:00〜19:00

の二箇所にサインしに行きまーす。山下さん、中川さんお世話になります。

出版社からサイン本直送します
いつもの「サイン本欲しいよ!フォーム」を設置しておくので、上記の本屋さんに行くのが難しい人はフォームから問い合わせどうぞ。締切は1月11日の午前中まで。で午後にサインして順次発送しまーす。
※個人情報はこの企画の目的には使用しません。念のため。

<発酵文化人類学 サイン本申込フォーム>
※1/11の午前中まで受け付けます

お名前 (必須)

メールアドレス (必須)

冊数 (必須)
  

住所(必須)
  

ご自由にコメントどうぞ

それでは引き続き『発酵文化人類学』をどうぞよろしくお願いします。

【追記】amazonのレビューにとても丁寧で励まされる投稿がありました。詳しくはこのリンクから読んでほしいのですが、そうそうそう!そうなんです!ライトに見えるかもしれないけどそれなりに系譜的に書いているんです。書いてくれた人、どうもありがとう…涙

2019年は、万能感と焦燥感のあいだで深呼吸する年だ。

毎年新年になると「今年はどんな年になるのだろうか?」と考えるのが習慣なのだが、今年はどうもまったくイメージが見えない。

・2018年は、前に進む自分を信じる年だ。
・2017年は、自分のイカダで未知の海に漕ぎ出す年だ。

なぜなのか?ということを掘り下げてみるに

①最近周りに体系的に未来の社会を考えている才人が多いので適当なこと言えない
②年々謎を深めていく自分の人生のことを考えるだけで精一杯
③社会の変化が激しすぎてもはや予測できない

この3つの合わせ技によって「いやもうよくわからん」ということになっているんだよ。
なんだけどギブアップしないでこの「よくわからん」感に付き合ってみたいと思う。

崩壊していく秩序のなかでどのようにあるべきか?

ここ数年「今まで当たり前だった常識や社会の基盤が崩壊していく」ということを言っているけれど、今年はこれまでの「気づく人はもう気づいている」段階を超えて、この社会に生きる大半の人が日々の生活のなかで「あれ、おかしいな。これまずくない?」というレベルで秩序の崩壊に立ち会うことになる。

つまりこの年はこの社会の構成員のほぼ全員が「危機感」を持つことになる。
カッコに括ってもっかい強調したい。社会に「危機感」が蔓延する。気づく人だけ、ではなく空気に微量に混入したガスのように「危機感」が薄く広がっていく。

空気の変化をなんとなく感じている人は、どこからともなく聞こえてくる、

「お前たち、危機感を持て!そのままでいいのか?今すぐ行動を起こせ!」

という煽りに不安を抱くことになる。今の場所に安住していてはいけない。動かなければいけない。でもどこを目指して?

これがさらなる危機感を募らせる。そして危機感の混入濃度がさらに増加する「危機感スパイラル」が社会を覆っていく…

という重苦しい霧に邪魔されて「いやもうよくわからん」という感じに自分がなってしまったことを今このブログを書いている途中に気づいたぜ。

万能感と焦燥感のあいだに立つ

危機感煽られまくりの社会において発生するのが「少数の万能者と多数の焦燥者」だ。それは言い換えると「危機を煽るヤツ」と「煽られてそいつについていくヤツ」の依存関係が社会の流れを作り出していく。万能感に駆動される少数の者が「私は危機を回避する方法を知っている」と宣言し、漠然とした危機への焦燥感を覚える多数の者への道を指し示す…という場面にあちこちで出くわすかもしれない。

「このままではいけない」
「今いる場を離れて動かなければいけない」

それは正論ではある。誰しも人生に変化が必要な時はある。

なんだけど。えーと、なんて言えばいいんだろうか。
「誰かから煽られた変化」と「自分のなかから必然的に出てきた変化」の欲求を峻別することをなんとなく気にかけるといいと僕は思うんだよね。

自分のなかに変化の必然性を感じなかったら、別に無理して動かなくていい。環境の大きな変化があって、みんながその場所から動いていった時に、なぜかそこを動かなかったごく少数の生き物が結果的に生き延びることもある。

ちょっとヘンな理屈なのだけれど、変化する時期にこそ「いますぐに何かをしなければいけないという焦燥感」あるいは「自分が世の中を何とかしなければいけない万能感」にとらわれない努力が必要かもしれない、と僕は年始に長い散歩をしながら考えた。

極端さに引きずられない感覚、感情が揺り動かされた時にまず深呼吸するような感覚を大事にする。万能感と焦燥感のあいだに立つ。強い極端と弱い極端のあいだでバランスを取る。

極端に陥らない人の母数が増えると急激な変化がもたらすダメージを少なくできるのではないだろうか?

今年はどんな事が僕を待ち受けているのか、さっぱりわからない。
そのわからなさを無理やり解消しようとしないで、まず深呼吸してみる。

わからないことに焦らない。
自分の中から生まれる変化の声に耳を傾けてみる。

そういう1年にしようと僕は思ったよ。あなたはどうだろう?

2018年のブログ&メディア掲載&イベント振り返り

写真はNEUT MAGAZINEの銭湯対談の一コマ。

2019年を迎えました。

大掃除に夢中で年末恒例だったブログエントリーの振り返りを書く時間がなかった…!
ので、新年最初のエントリーにまとめることとします。2018年は例年にもまして寄稿やインタビュー記事も多かったので外部メディアのものもあわせて振り返るぜ。

2018年に書いた読み物系エントリー

今年は旅しすぎ&研究開発とかアニメ制作に時間を割いていたので読み物系エントリーの数は少なめ、といいつつまとめてみるとわりと書いてました。

・2018年は、前に進む自分を信じる年だ。
→これも毎年恒例。年始のエントリー。みんな自分を信じられたかい?

・感性の記憶。
→女子から「わかる〜!」と共感コメントが多数寄せられました。男女問わずこういうのってあるよね?

・ユニークであること、しなやかであること。生物のサバイバル条件について。
→2018年は生物学の基本を学び直した年でした。僕の専門の発酵も大きく括ると生物学のいちカテゴリーなので。

・マイクロバイオームとは何か。身体のなかの生物多様性
→毎年行っているハンガリーの学会でのホットトピックスについて概略まとめ。身体のなかの微生物世界は摩訶不思議すぎる…!

・独学者の不気味の谷。
→去年はかつてなく「素人でも本職の研究者でもない自分の立ち位置の謎さ」に悩んだ年でした。谷を抜けられるかどうかは、自分の研鑽にかかっているぜ。

・「いつもやる気」はありえない。価値の創造と運用のマネージメント。
→メディアアーティストの市原えつこさんからの相談のアンサーをブログにまとめました。まあ、いつもやる気100%の人生は疲れるよね。

・ラブという薬。功利的にならないことの功利性
→友人の精神科医、星野概念さんとその患者であるいとうせいこうさんの対談本がとても面白かったのでその書評。

・「そういう話もある」と「確かにそうなっている」のあいだ。
→インタビューで科学的な話すると記事確認の時の労力が大変すぎる問題について。これ書いて以降WEB媒体のインタビュー依頼は何かご縁がない限り断ることに。だって大変なんだもん。

・「まだやってたのかおじさん」になりたい。
→おじさんシリーズです。

・抽象性のサーカス。
→2018年の衝撃的な出会い、ALL YOURSの木村くんの紹介と、過剰すぎるヤツが集まったコミュニティについて。

・ハスラー・ギーク・ヒップスター。
→自分の職能の見限りと分業の大事さについて。このエントリーは秋のTWDW(働きかたの祭典)のイベント『プロデュースおじさん』に発展しました(いや、別にしてないな)。

・過去の自分は今の自分の地層を成している。おべんとう展がはじまったよ!
→発酵の専門家になったらなぜか美術展に出展することになった不思議さについて。絵描きを目指していた20歳の自分に読んでほしい。

・デザインとデザイノイド
→リチャード・ドーキンスの大好きな概念を自分なりに解釈しなおしてみた。

・僕は立ち向かう人ではなく、逃げてきた人だったのだ。
→夏に心が疲労骨折した時のエントリー。自分のルーツ忘れると心が死ぬ…!

・親戚のおじさんバイブス。
→他人の応援はエンターテイメントである!というお話。

・逃避としての読書。
現実に適応できないヤツのユートピアが読書である、というわかる人にはわかる読書観。地味に色んな人から感想コメントもらいました。

2018年にあったニュース

大きなプロジェクトがたくさんあった1年だったので、告知やレポート系のエントリーが充実していました。いやあ、よく働いたなあ…

・HAPPY&COZY!1万人が醸された『こうふはっこうマルシェ』レポート。

・『発酵文化人類学』一周年記念!3万部重版&フランス語版&続編ができるよ!

・35歳は、垣根を越えてチャレンジする年だ!

・おべんとうの国を旅しよう!アニメ『おべんとうDAYS』ができるまで

・微生物のはたらきを可視化するALIFE 2018ワークショップ

・【ヒカリエ47発酵】発酵から日本を再発見する旅、いよいよスタート!

2018年のメディア掲載ピックアップ!

今年も色んなメディアに取材してもらったり、寄稿の依頼をもらいました。
去年からの流れで今年も紙媒体や新聞、テレビやラジオなどいわゆるマスメディアに掲載される方向性に。

雑誌・紙媒体など


デザイナー時代から愛読している憧れの花椿の特集に登場しました。めちゃ光栄…!


・『発酵文化人類学』が雑誌ダ・ヴィンチ「ひとめ惚れ大賞」を受賞しました。


・ミシマ社の雑誌『ちゃぶ台』発酵×経済号に全力で寄稿しました。


年始のdancyuの日本酒特集で、神楽坂の蒼穹で日本酒のペアリングについて寄稿しました。今年は日本酒関係の仕事けっこう多かったなあ…


これはDiscover Japanの京都特集。比叡山の星野リゾートで発酵ガストロノミーを食べる記事で登場しています。今年はDiscover Japanの皆様とご一緒する機会がたくさん。こないだ出た『風土を醸す酒』でも麹のコーナーで広島の酒類総合研究所の岩下先生と一緒に登場しています。


去年に引き続きBRUTUSにも。春の特集『おいしい魚が食べたくて。』ではくさややシュールストレミングスやホンオフェなどハードコア発酵魚を食べまくるページで登場。編集チーム一同くさやを焼く僕を遠巻きに冷たい目で見ていたよ…!ちなみに年末の『危険な読書』にもちょっとだけ登場。年末に山梨に来てくれた独立研究者の森田真生くんのインタビューの隣で発酵ブックガイドしてます。


自炊の参考に愛読していた料理通信の発酵特集でも大きく取り上げてもらいました。座談会やった青山のAn Diの料理は絶品。はよディナーしにいかねば…!編集部のみなさま、一緒に行きません?


中国の女性誌『健康 与 美容』にて中国メディアデビューしたようです。
「旅行家 兼 発酵設計士」が僕だそうですよ…!ちなみに来年『発酵文化人類学』の中国語版が出ます!


年末には女性誌のミセスにも寄稿しました。発酵目線で旅してみませんか?という魅惑の提案してみたよ。


週刊文春で高野秀行さんの驚愕本『辺境メシ』の出版記念対談をしたのも光栄の限り。
WEBでも読めますよ:なんでも食べちゃう2人が語る「ほんとうにスゴい辺境メシ」


あと地味に嬉しかったのが日本海新聞の『読書絵てがみ感想文コンクール』の課題図書に僕のはじめての本(&アニメ)『てまえみそのうた』が選ばれた記事。実は僕が過去に出した三冊の絵本は子供たちの夏休みの自由研究や感想文の推薦図書として役に立っているようなんです。『発酵文化人類学』から僕の活動を知った人は知らないかもしれませんが、僕の活動の出発点は親子向けの食育なんですね。

(最後に大きな声じゃ言えないんですが育児雑誌の老舗『母の友』で短期連載が始まってまってるんですよ…めちゃ恥ずかしい〜!)

文学・アート系が多かった2017年と比べると、2018年は自分の専門である発酵・食のことについての記事がメインでした。やっぱこっちが本分!な安心感があるぜ。

  ▶WEBマガジン


・紆余曲折な経歴を繋げる。発酵デザイナー小倉ヒラクの生きる知恵
『おべんとう展』の仕事でカルチャーマガジンのCINRAに取り上げてもらいました。『発酵文化人類学』でのブリコラージュ理論がさらに発展したデザイノイド的方法論をお話しました。僕のこれまでの経歴が総決算されたような素敵な記事に編集してもらいました。


・「人生の意味は考えなくていい」。現代のヒッピーが語る無計画な生き方のススメ|ALL YOURS木村のよりみち見聞録×小倉ヒラク
→2018年いちばんお気に入り記事はこのNEUT MAGAZINEでのALL YOURS木村くんとの対談。対談場所が銭湯、しかも今までメディア上では話してない「発酵デザイナーになる前の馬の骨時代」をしました。いやあ、あの時代はほんとにめちゃくちゃで楽しかったなあ…


・「現代人って実は暇?」山梨県で微生物と暮らす発酵デザイナー・小倉ヒラクさん
朝日新聞のWEBメディア&Wでのインタビュー。山の中で暮らすようになってからの価値観の変化について話しています。山梨に引っ越してから年々深まる「人間しかいない世界で生きるのはヒマ」という確信…!


・「人も菌も温度の波に適応して進化してきた」発酵から考える、身体の合理性
静岡のパッシブ住宅システムメーカー、OMソーラーの特設サイトで温度と生物の関係性について話しました。ディレクター平藤さん、編集チーム横石さん&だんごくんという超知り合いチームと和気あいあいと取材しました。ちなみに話終わったあとにみんなで草刈りしたよ。


・SOUQ ZINE INTERVIEW 小倉ヒラク
大阪のgraf服部さんに「大阪で遊ぼうよ!」と誘ってもらって、発酵デザイナーと縁の深い梅田の『みつか坊主』で大阪チームでワイワイ話したことが阪急百貨店のECサイトのインタビュー記事に。ほとんど飲み会だったんですけど、めちゃ濃い内容の記事になってる!全4回あるよ。

・第1回 発酵デザイナーと呼ばれて。
第2回 47の残していくべき文化
第3回 ニッポンの発酵、世界の発酵
第4回 カルチャーとしての発酵

▶テレビ・ラジオなど

今年はマスメディアにもよく出ました。春にはJ-WAVE日曜レイチェルさんのラジオ番組、秋にはJFNの篠原ともえさんのラジオ番組、年末にはJ-WAVE日曜V6の岡田准一さんのラジオ番組の収録がありました(この番組の公開は年明け)。


・リンクから放送聞けます:日本カワイイ計画。 with みんなの経済新聞

とりわけ反響が大きかったのが、12月のNHKの生放送『ごごナマ』。NHKの敏腕ディレクター中山さんによってめちゃ濃い内容の番組になりました。放送前からメールやメッセンジャーでの連絡が止まらず、甲子園出た高校球児ってこんな感じなの〜!?とビックリ。

取材に来てくれたメディアの皆さま、どうもありがとうございました〜!

2018年のイベント色々

だ…だんだん疲れてきた。2018年も色々あったぜ(しかもここに載せてない記事とか媒体もいっぱいある。全部アーカイブできなくてすまない)

2018年は『発酵文化人類学』の出版ツアーやってた2017年ほどでないにしろ、まあまあ色んなイベントがありました。以下ざっくり時系列で、


2月の岩手県、西和賀の発酵ツーリズム。納豆を雪に埋めてワイワイしました。冬の発酵の醍醐味は西和賀にあり…!

・小倉ヒラクさんと発酵のミラクルをめぐる旅へ | colocal


3月は過酷すぎて参加者が次々とお漏らししてしまった道東誘致大作戦で魂抜けた…!
(幸運なことに漏らしはしなかった)

同じく3月はホーム山梨で『こうふはっこうマルシェ』。全国から発酵仲間が集いました。


4月には京都の恵文社でミシマ社企画のイベントで藤本さんと三島さんと。このイベントがきっかけでみんなで秋田の発酵ツーリズムへ。その模様が雑誌『ちゃぶ台』の特集に。


5月には愛知の澤田酒造の170周年記念イベントでの講演会。盛り上がった…!


6月は毎年恒例ハンガリーの国際プロバイオティクス学会。三年目、ついにちゃんとした研究者として扱ってもらえるようになりました。嬉
写真はオーガナイザーのペーターさん(右)とブダペストでアイス食べるの図。


7月は長野県諏訪の銘酒、真澄に講演会に呼んでもらいました。蔵見学のあと杜氏とのトークセッションは最高に楽しかった…!


夏は上野都美術展『おべんとう展』でダンスワークショップ。盟友flep funce!と親子でダンスワークショップを何セットやったんだっけ…?踊りすぎでちょっと筋肉痛に。


夏のもうひとつの大仕事。お台場未来科学館でのALIFEのキッズワークショップ。学会もめちゃくちゃ楽しかった〜!!!


9月からいよいよ47都道府県の発酵ツーリズムがスタート。愛知県岡崎の八丁味噌イベントは会場が異様な興奮に包まれた時間に。ここでの話が、後日GI制度の問題点を問う記事としてBAMPで公開されました。

・「八丁味噌」は誰のもの? 老舗味噌メーカーを翻弄する政策のひずみ


ALIFEからのスピンアウト企画、イギリスの複雑系研究者のAlexandraさんとのフィールドワーク。デザイン&ビジネスのキュレーターの安西さんとのご縁でイタリアミラノチームも合流。渋谷の街を歩いて微生物を捕獲してきました。


10月には国際交流基金アジアセンター企画の『Innovation City Forum』のアジアセッション。アジアの色んな分野の専門家たちと話が尽きなかった…!事務局の皆さま、続きをまたタイとかインドネシアとかでやりません?
(映画監督のトラン・アン・ユンさんに会えたのが嬉しかったぜ)

・国際フォーラム「Innovative City Forum 2018 アジアセンターセッション」開催レポート


同じく10月は馴染みの醸造家の旦那たち(新政の古関さん、寺田本家の優さん、ヤマロク醤油の山本さん、五味醤油の若旦那)と神戸とトークイベント。飛び入りゲストの譽國光の元気くんの話が最高だったな…!


今年は何かとイタリアと縁のある年。ローマの微生物学者Vincenzoさんのお誘いで共同技術開発をスタート。合間に日本酒のテイスティングイベントをやって大盛況でした。うれしー!


『おべんとう展』で一緒だったマライエ・フォーゲルさんから声かけてもらって、オランダ・アイントホーフェンのDutch Design Weekでプレゼンしてきました。今年はスケジュール的に無理だったけど、来年はちゃんと展示するぞー!


11月。今年で三年目となった『プロデュースおじさん』@Tokyo Work Design Week。例によって何もハックできない与太話をクラシコム青木おじさん、greenzおのっちおじさんと繰り広げました(また来年ログミーの書き起こし出るよ)。


2018年最後のイベントは、渋谷ヒカリエでの『47都道府県の発酵ツーリズム出発進行式!』。来年の展覧会に向けて100名で「出発進行〜!」と気合を入れました。


・47都道府県の知られざる発酵食品が大集合!発酵から日本を再発見する展覧会を開催!

ということで、来年は絶対このイベントを成功させるぞ!クラウドファンディングもどうぞよろしくおねがいします。

レギュラー仕事&連載

最後にレギュラー仕事振り返り。


ひたすらマイペースに更新し続けるアマノ食堂の連載、ついに4年目を迎えました(ただいま55回目)。ソトコトの『発酵文化人類学』の連載と並んで全然終わる気配のないご長寿コンテンツになりつつある…!で今年いちばんのお気に入り記事はこれ!

・全国の日本酒ファンに告ぐ! 夏こそ熱燗が最高な理由。| アマノ食堂

今年はミシマ社の連載も。発酵を軸にこれからのサバイバルライフを考える内容なのですが、毎回七転八倒して書いてました。なかでも一番悩み抜いて書いたのがこの回。

・全体性を信じて世界をつくる。発酵が生み出すローカルの可能性 | みんなのミシマガジン

2017年に出版ツアーをやるためにお休みしていた『発酵デザイナーのこうじづくり講座』を復活。場所を東京から甲府の五味醤油に移しました。毎回全国から発酵好きが山梨に来てくれてほんとに嬉しいぜ…!

こちらも四年目を迎えたYBS山梨のラジオ番組『発酵兄妹のCOZY TALK』。2018年も愉快なゲストがたくさん登場してくれました。写真は年内最後の収録。ゲストは左から情報学者のドミニク・チェンさん、独立研究者の森田真生さん、ミシマ社の三島さん。こちらも目指せ長寿番組〜!!

2019年はブログ更新がんばるぞ!

ということで。一年中大忙しだった2018年。
心残りだったのは、家でゆっくり考え事する時間が全然なくてブログあんまり更新できなかったこと(特に後半)。

いつも言ってることですけど、僕にとってブログは「考えの整理整頓」あるいは「思考の素振り」。普段見たり感じたりすることをそのままにしておくとどんどんアタマが散らかっていくので、ブログという引き出しに整理してしまって「はいこれでスッキリ!」という状態にしないと精神衛生がバッドになっていくんだよ…!

なので来年はなるべく寄稿とかインタビューとかイベント出演減らして自分自身に言いたいことを自分自身の場所で言うことにします。

今年も思考の素振りしていくぜ!

挑戦して凹んで限界への旅に励んだ2018年の振り返り。

奈良の正暦寺の庭で放心する図。腰が抜けるほど旅したよ…!

2018年は、移動の年。
日本海外問わずとにかく移動しまくっていました。もはや人生でこれ以上移動しまくりの1年はあるのだろうか(←反語。いや無い)。

ということで。毎年恒例の1年の振り返りブログをどうぞ。

【2017年】一球入魂!旅と学びと出会いに満ちた2017年の振り返り。

【2016年】価値を育てる、縁を続ける。2016年の振り返り

今年の活動の振り返り

まず今年、僕はいったい何をやっていたのか?時系列で振り返ってみるとだな。

前半】発酵文化人類学出版の余波が続く
去年出版した『発酵文化人類学』が新刊の時期を過ぎてもヒットし続け、年を越しても書評の掲載や取材、講演がオファーが続きました。1年かけての3万部到達、そして海外版の翻訳が決まるなど、ありがたすぎる流れが続いたぜ…!

・『発酵文化人類学』一周年記念!3万部重版&フランス語版&続編ができるよ!

3月にホーム山梨で開催された『甲府はっこうマルシェ』は、ラジオ番組のご縁で五味醤油の若旦那と一緒に企画プロデュースに加わり、初年度にも関わらず来場者15,000人超え!の大ヒットイベントになりました。

【中盤】都美術館とALIFE国際学会に出展
上野の東京都美術館『おべんとう展』に招待され、新作アニメと絵を制作。なんと、学生の時に志していた美術作家(いちおう)としてデビューしてしまった…!

・おべんとうの国を旅しよう!アニメ『おべんとうDAYS』ができるまで

音楽にGOING UNDER GROUNDの松本素生さん、ダンスに盟友flep funce!という素晴らしいチームで制作できて光栄でした。熊谷香寿美さんはじめ都美術館キュレーターチームとのディスカッションや、オランダのアーティストマライエ・フォーゲルサングさんや写真家の阿部了さんはじめ出展作家の皆様とのご縁をもらったのも嬉しかったなあ…。


・紆余曲折な経歴を繋げる。発酵デザイナー小倉ヒラクの生きる知恵 | CINRA

で。ちょうどおべんとう展スタートと同時期の7月に開催された、未来科学館での国際学会ALIFE 2018に、複雑系研究の第一人者の池上高志さんはじめALIFE lab.オーガナイザーの岡瑞起さん、青木竜太さんからお誘いしてもらってキッズプログラムを企画。
微生物の働きを複雑なままデジタルデータ化するという実験的なワークショップに挑戦しました。


・微生物のはたらきを可視化するALIFE 2018ワークショップ

このALIFE(人工生命)学会は、「知能=AI」ではなく「生命そのもの」のアルゴリズムを研究する先端分野。コンピューティングや物理学、社会学者や生物学者まで様々なジャンルの研究者が集まるめちゃエキサイティングな領域です。とうぜん僕も刺激を受けまくり、しばらく自分の研究のライフワークにできたら…と思っています。

夏】心が折れて凹む
都美術館での作品制作とALIFEのプログラムが終わり、『発酵文化人類学』出版の余波が落ち着いてきたタイミングで、気分が激しく凹みました

デザイナーへの道をドロップアウトし、山の中で微生物に囲まれて隠遁生活おくるつもりがいつの間にか世間からそれなりに期待され、その期待に応えねば…!という無理がたたって心が疲労骨折。

「もう誰にも会いたくない…」
「何もしたくない…」
「全体的に放っておいてほしい〜!!」

とやさぐれていました。ここ数年間のやたらポジティブモードだったツケが…!汗

・僕は立ち向かう人ではなく、逃げてきた人だったのだ。

後半】渋谷ヒカリエ47都道府県の発酵ツーリズム企画スタート!
ということで。夏にひとしきり凹んだ後、秋から次なる大プロジェクト、D&Departmentと手を込んでの渋谷ヒカリエの展覧会『Fermentation Tourism NIPPON』のチャレンジが始まりました。来年春まで47都道府県の知られざる発酵文化の現場をくまなく歩いてまわり、その旅の模様が展覧会になる!という「コンセプトは面白いけど絶対に実行してはならない類の企画」に手を出してしまった…!


・【ヒカリエ47発酵】発酵から日本を再発見する旅、いよいよスタート!

この無駄に壮大なプロジェクトを達成するには、凹んでいるヒマはない。去年の全国55ヵ所出版ツアーでボロボロになった記憶を完全抹消し、新たな(そして前回よりも絶対ツラい)旅に出るために気合入れるぞ!えいえいおー!


・47都道府県の知られざる発酵食品が大集合!発酵から日本を再発見する展覧会を開催!

11月からはクラウドファンディング企画もスタート。4年前の『こうじのうた』のクラウドファンディングの時に死にそうになりながら集めた100万円を数日で達成し、今回は目指せ500万円!みんな応援おねがい!!と支援を呼びかけた年末のヒカリエのイベントにはおよそ100名の発酵ラバー&メディアが駆けつけてくれました。


・活動報告 \出発進行式を開催しました!/ | CAMPFIRE

夏にあんなに凹みまくっていたのに、いつの間にか去年よりもさらにやる気になっている自分の現金さよ…!

今年は全体的に「規模の大きいこと」にチャレンジする1年だったなと。
僕のやってることは、他の人からニッチに見えるかもしれませんが実は産業的にも文化的にもものすごくスケールの大きい領域と接続されている。

よって目指すはオーバーグラウンド…!
来年もメジャーへの道を歩んでいくぞ!

2018年のトピックス

今年は働きかたが大きく変わっていくタイミングで、色んなことを考えました。

出版オファーがいっぱい来て悩む
大手から専門系まで色んな出版社から「ウチで本出しませんか?」とオファーがありました。ありがたいことなんですけど、このまま「やったー!どんどんいくぞー!!」と量産すると

運が悪いケース→速攻でオワコン化する
運が良いケース→そのうち本を出すのが仕事=作家になる

のどちらかになりそう。前者は絶対イヤで、後者もなんかピンとこない。まだ当面、実践者でありたいし、深く潜って研究したいこともある…!

ということで。2018年は新しい本のことを考えるのを止め、具体的に何かをつくること、行動することを重視することに決めたんですね。僕はまだまだ現場 or DIE!

海外での活動が活発化する


オランダ、アイントホーフェンのDUTCH DESIGN WEEKで出会ったキプロス島のデザインガールズ

今年はこれまでになく海外に行きました。年始にベトナム、2月にフィンランドとエストニア、リトアニア。5月にフランスとイタリア。6月にハンガリー。10月にまたイタリアとオランダ、12月に台湾とあちこち旅したなあ。

とりわけヨーロッパでの仕事がだんだん増えてきて、日本でも国際会議への登壇(7月のALIFE、10月のInnovative City Forum)、イギリスの複雑系の研究者Aleandraさんとのフィールドワークなど国内にいても海外の研究者やクリエイターの人たちとご一緒することが多くなってきました。この流れは来年さらに加速する予定です。

ディープルーツに心動かされる


和歌山県湯浅で金山寺味噌の伝統を守る太田久助吟製

去年も『発酵文化人類学』の出版ツアーで全国行脚していたのですが、呼んでくれた人たちの多くはローカルで新しい動きを起こしている「今時のイケてるヤツ」だったので、土地は違えどグルーヴ感は一緒。なので気持ち的にはわりとラクな旅でした。

しかし今回の47 都道府県の発酵ツーリズム企画。訪ねるのは山のなかに住む80歳のおばあとか、断崖絶壁の離島にある蔵とか、どうやってたどり着くのそこ?的な場所ばっかり。ネットに載ってる情報はアテにならず、全国の友人のツテを頼って訪ねていくか、あるいはアポ無しでとにかく現地に行ってから考える!スタイルで旅して、しかも出会うのは現代人の僕とはぜんぜん違う世界観で生きている人たち(メールも使わない場合が多いので、連絡はFAXとか手紙の場合も)。

肉体的にも精神的にも試されすぎる…!マジでツラい…!!

途中なんども体調を崩して倒れながらもなんとか旅を続けてこれたのは、苦しい道中のなかで出会う人と景色が素晴らしすぎたから。今年の旅は、かつてないほど日本のディープルーツに迫っている確信がある。

つまり「真の旅」をしている確信がある…!

心動かされた旅

それでは今年ご縁のあったナイスな土地のなかでも、とりわけ強く心を動かされた土地は以下。

【北海道】道東誘致大作戦に巻き込まれすぎる…!

盟友、徳谷柿次郎さんから「道東の元気な若いヤツに呼ばれてるから一緒に行かない?」と誘われて、Re:Sの藤本さん、かもめ柳下さん、鶴と亀の小林くん、ALL YOURSのきむ兄とともに旅した北海道の東(オホーツクや北見、網走や釧路、十勝や阿寒湖など色々)。

どこまでも続く平野、近代の歪みのなかでたくましく生き抜いてきた北の地の偉大な先輩たち、そして謎にアタマのネジにすっ飛んでる若きローカルプレイヤーたち。

・「怒られないローカル」の先へ。道東を発信する88年生まれの覚悟 | BAMP

色んな意味で「人は辺境で逞しくなる」という実例を見ました。おい厚顔無恥のテトリス野郎ども、来年もお世話になるからな!ヒカリエ企画にも来いよ〜!!

【秋田】革命の狼煙はいつも辺境から

Re:Sの藤本さんからご縁をもらって、新政の古関さんや羽場糀店との出会いを経て大好きになった秋田。夏には藤本さんとともにミシマ社の社長三島さんも連れて五城目の福禄寿(一白水成)へ。そして冬にはチームのんびりのヤブちゃんと八森のハタハタフィーバーの現場へ。

五城目のうっしーこと丑田くん、ANDONのトラ男や福禄寿の康衛さんたち、秋田のみんなは本当にタフで根気強くてリスペクトするしかない…!

少子高齢化が極まった秋田で起きている「辺境から生まれるイノベーション」の行方は、秋にミシマ社の雑誌『ちゃぶ台』の発酵特集につながりました。来年も秋田を深掘るぞ〜!


・トージ!・コージ!福禄寿酒造編 | なんも大学

【近畿】己の関西気質に気づく2018年…!

いやあ今年は関西でよく遊んだ!毎月のように大阪・京都・神戸・奈良を訪ねてイベントやったり取材受けたりフィールドワークしたり散歩したり飲み会したり…と満喫しました。

特に思い出深いのは、NHKでも放映された守口・富田の発酵ぶらり旅。おじさん達がアポ無しで謎の漬物を探して奔走する最高に意味不明でエキサイティングな一日でした。上の写真はその旅の日の夜に開催された心斎橋スタンダードブックストアのイベントにて。

夏に春日大社、冬に正暦寺の森歩きをした奈良も最高!菩提酛の起源や奈良漬の現場を訪ねるツアーが最高に盛り上がりました。奈良の「しっかり弥生のステップを踏んできた感」が僕のホームである、縄文オンリーの山梨とは違いすぎて新鮮でした。

そういや年始に柿次郎さんと柳下さんと一緒に、神戸の藤本さん参りにいったな。
よく考えたら今年のやってこ!旅地獄はこの時から始まったのかもしれない…!汗

【北欧・バルト三国】国とは何かを再認識

2月に訪れたフィンランドとエストニア、リトアニア。とりわけエストニア、リトアニアは人口100万人ぐらいの超小国。ロシアやポーランド、EUの大国との関係のバランスを取りながら未来への舵取りをしていくそのフットワークの軽さとしたたかさに「国とは何か?」を考え込んでしまいました。

翻って僕の住む日本は、21世紀のタイミングにおいて大きすぎるのかもしれない。拡大再生産モデルが崩れて情報と人の移動のハードルが低くなったこの時代「サイズが大きい」というのは国家にとってデメリットの方が大きくなったのでは?

行く先々で地元の人たちと話し込みながら、そんなことを考えていました(ちなみに上の写真はクラフトコンブチャメーカーのKUMAの二人。発酵好きに国境は関係なし)

【青ヶ島】日本人はどのようにサバイブしてきたのか?

今年最大の衝撃は、青ヶ島への旅。伊豆諸島と小笠原諸島のあいだにある人口150人の孤島に、日本のルーツの最深部が残っています。50年前まで年に2〜3回しか定期船が来なかった辺境中の辺境に摩訶不思議な発酵文化や信仰が発達。

麦と芋と牛の農業サイクル、神官と巫女が織りなす独自の神事。限られたものでなんでもつくるブリコラージュ精神。青ヶ島に滞在したことで、来年のヒカリエの企画の背骨が定まってきた感があります。

青ヶ島のみなさま、本当にありがとう…!

2019年は何をする?

それでは最後に来年の活動について。
来年はこんなことするぞ!

渋谷ヒカリエで展覧会やります
今年〜来年にかけてのメインプロジェクトはこれ!4/16〜7/8の二ヶ月半、渋谷ヒカリエ8階のd47 MUSEUMで、現在死にそうになりながらまわっている47都道府県の発酵ツーリズムの模様が展覧会になります。

2月までに47都道府県をまわりきって、3〜4月に展示準備。そして会期中はたぶん20回以上の関連イベントを開催している予定。つまり来年の前半はひたすらこのプロジェクトに打ち込むことになります。死なずにやり遂げるぞ〜!!

『発酵文化人類学』のヨーロッパツアーに出ます
無事展覧会がスタートしたら、今度は『発酵文化人類学』のヨーロッパツアーに出ます。フランス・パリを皮切りにイギリス、ハンガリーやチェコをはじめとした東欧をまわります。それまでに翻訳をなんとかせなばならない…!

ちなみに中国語(本土)も出るので、アジアでもツアーできるといいなあ…。

ミシマ社から本出します(たぶん)
去年から今年にかけて連載していたミシマ社のWEBマガジンの連載が本になる予定、なんですけど『発酵文化人類学』を世に出してしまったことで上がりまくったクオリティのハードルを越えることができるのだろうか…めちゃ不安だぜ!ちなみに秋頃に刊行予定なんだけど、大丈夫かしら?汗

山に籠もって菌になります
展覧会とツアー終わったら、ここ数年の旅三昧の生活を見直して、基本ホームの山梨から動かないライフスタイルに移行します。移行するよ。移行するってば!

・【新規案件停止のお知らせ2017】僕は山に籠もって菌になります。

そもそも僕そんなに社交的じゃないし、自己顕示欲もないし。愛する微生物の世界に没頭して研究三昧の日々を送りたい。どんどん高くなる積読の山を解消したいし、発酵食品の仕込みとか大好きな料理もしたい。毎日違う部屋で起きて「あれ、ここどこだっけ?」「てかなんでここにいるんだっけ?」「だいたい僕なにやってんの?」「そもそも僕ってだれ?」と頭がバグり続ける日々に一区切りつけたい。

落ち着いて暮らしたい〜!!

来年からラボが稼働します

「そんなこと言ったって、どうせまた仕事しまくりの旅しまくりなんでしょ?」

と薄ら笑いを浮かべながら僕に用事を言いつけようとしているそこの諸兄姉!
僕は本気だ。その証拠に来年からいよいよセルフビルドの発酵ラボが稼働するのだよ。

ちなみにラボの敷地には、今年の開高健ノンフィクション賞を受賞して時の人となっている川内有緒さんも小屋を建てています。

発酵ラボと川内さんのDIY小屋が並んでイケてるランドスケープが出現予定。

来年もさらに発酵デザイナーとして高みを目指し、深く潜るぞ…!

大陸ルーツの面影を残すおかず味噌。湯浅の金山寺味噌

和歌山の発酵ツーリズム:
金山寺味噌(和歌山県湯浅)| 太田久助吟製

大陸ルーツの面影を残すおかず味噌


麹づくりの様子

味噌といえばお湯で溶いて味噌汁にする調味料を思い浮かべるが、ご飯のおともにして食べる「おかず味噌」というカテゴリーもある。和歌山をはじめ近畿・東海で食べられる金山寺味噌もおかず味噌のバリエーションの一つ。

醤油の銘醸地でもある和歌山県湯浅の旧市街に、150年近く金山寺味噌の製造を続ける太田久助の風情のある蔵を訪ねてみた。
何度か食べたことはあったものの、具体的な製法は知らなかった。「せっかくなら麹づくりを身においで」と声をかけてもらって現場に入ってみるとびっくり仰天!金山寺味噌は、米・麦・大豆の3つの穀物を混ぜてそこにコウジカビの種菌をつけて「三種混合麹」をつくっていく。


三種混合麹

普通、味噌は米か麦か大豆のどれか一種を原料に麹をつくる。ブレンドすることがあるとしても二種類まで(ちなみに醤油は大豆と麦の二種混合)。三種全部混ぜる麹ははじめて見たぜ。

さてこの金山寺味噌。
三種混合麹を漬け床にして、塩漬けしておいたナスやきゅうり、ウリ、ショウガ(つまり夏野菜)などを樽に仕込み、さらに山椒やシソなどを薬味として加え3〜4ヶ月発酵させて味噌にしていく。と書いてみたけど、これよく考えると「味噌と漬物の中間」のようなもの。より正確に言えば「漬け床ごと食べる麹の野菜漬」と言えばいいだろうか。


塩漬けにした野菜を麹にあわせる

「味噌」と名がついているものの、既存のカテゴリーでは分類不可能な金山寺味噌。ルーツは何ですか?と旦那さんに聞いてみると、

「もとは800年前に中国で修行したお坊さん(法燈国師)が日本に持ち込んだ発酵食品と言われている。中国の醤(ひしお)の一種、醤菜(ジャンサイ)と呼ばれるものの名残なんでしょうなあ」

と、小さな蔵の一角で突然大陸スケールのエピソードが出てきてそれにも仰天。

なるほど、これは味噌というよりは大陸的な醤(ひしお)の系譜なのであるよ。調味料 or おかずという二項対立に分岐する前の「発酵の旨味が溜まった食べ物」として、ここ湯浅の地でご飯のおともに重宝されてきたんだね。

金山寺味噌は、ご飯にかけて「味噌丼」にするととっても美味しい。お茶漬けにしても美味しいし、お酒のアテにしても絶品。
中世の大陸とのつながりを妄想しながら食べる金山寺味噌、ロマンある…!

どうやってつくる/食べる?

▶How to 仕込み
A:蒸した大豆・米と炒った麦を混ぜ、麹にする
B:麹と塩漬けにした夏野菜(ナス、ウリ等)を混ぜ、山椒やシソを薬味に樽に仕込む
C:数ヶ月樽のなかで発酵・熟成させる

☆夏野菜が出揃ったタイミングで仕込み、その年の晩秋〜春まで発酵させて食べる
☆入れる野菜や味付けは仕込む蔵や家によってバリエーションがある
☆熟成期間は数週間〜半年と仕込む蔵や家によってバリエーションがある

▶食べかた
・ご飯のおともに
・味噌汁には使わない

▶食べられている地域
和歌山はじめ近畿・東海地方

▶微生物の種類
麹菌、酵母、乳酸菌など

旅のメモ

湯浅は日本における醤油醸造の先駆けとして有名。
前回取り上げた小豆島の醤油の文化ともつながりが深く、湯浅の醤油職人たちが小豆島に製造の指導をするために、2つの土地を人が行き来したとの記録が残っている。

熊野古道の一部を成す太田久助吟製周辺の旧市街は、まるでタイムスリップしたかのような不思議な風情を残している。発酵ツーリズムの醍醐味は、こういう素敵な場所でアジアのルーツと深くつながった醸造家たちと出会えること。

太田夫妻のこのポートレート、めちゃ素敵じゃない?


☆CAMPFIREにてクラウドファンディング開催中!☆

Fermentation Tourism NIPPON  supported by


【11/25】森田真生×ドミニク・チェン×小倉ヒラク 〜風と菌のシンポジウム〜

こんにちは。小倉ヒラクです。
僕がリスペクトしてやまない二人の研究者、森田真生さんとドミニク・チェンさんを山梨にお呼びできることになりました。

きっかけは森田さんの「ぼくは風になりたいんです」という一言。ジャンルも場所も飛び越える独立研究者のその言葉を聞いて、菌になりたい僕としては「それでは醸造蔵に良い風を吹かせに来てください」とオファーするしかなかったね。

ということで話はトントン拍子で進み、山梨県甲府市の老舗、五味醤油の蔵でお話会をする運びに。

さらに!ご縁が重なって、これまたジャンル横断の新世代の思想家、ドミニク・チェンさんも仲間に加わってくれることになったんだよ。

森田さん、ドミニクさん、僕の三人でお互い興味のある話題を持ち寄って、完全即興の愉快なトークをしたいと思います。数学やITや生物学が一緒に発酵する饗宴(シンポジウム)、どうぞご期待ください。

そして!実はまだあるサプライズ。
ニュースを聞きつけたミシマ社の社長三島さんが「僕も山梨行きます!」と参加表明。森田さんと僕の記事が掲載されている雑誌『ちゃぶ台』最新号を持って会場に駆けつけてくれる模様。

五味醤油の五味仁・洋子兄妹とともに全力で「風のフィロソファー」を迎える菌になるぞー!

人数限定のアットホームな会になります。気になる人は速攻で予約することをオススメします。それでは山梨で会いましょう。

イベント詳細はこんな感じ!

森田真生×ドミニク・チェン×小倉ヒラク
〜風と菌のシンポジウム〜

【日時】2018年11月25日 17:00〜19:00予定
※新宿から特急で1時間半。東京から余裕で日帰り可能です

【場所】五味醤油ワークショップスペース KANENTE
→会場へのアクセスはこちらから
→新宿駅からのバスも便利です ※中央三丁目で下車徒歩2分

【参加費】3,000円(1drink付)
【定員】30名

【予約方法】
info(あっと)yamagomiso.com まで「風と菌のシンポジウム参加希望」の件名で、

・お名前/参加人数/電話番号

を記載してメールを送ってください。

ミシマ社の雑誌『ちゃぶ台』発酵×経済号に全力で寄稿しました。

個性的すぎる本づくりで各地のブックラバーに愛されているミシマ社さんが年に一度刊行している雑誌『ちゃぶ台』最新号、発酵×経済特集の号に寄稿しました。

…と書くと、ちょっとしたコラムのように思えますが、なんと二段組20ページ超え約15,000字の超ロング寄稿です。今年春に開催されて雑誌制作のキックオフとなった京都恵文社のイベントで、代表の三島さんと仲良しのRe:S藤本さんの三人でトークをし、さらに初夏に三島さん藤本さんと秋田を訪ね…と、まるで三島さんと一緒に雑誌をつくっているかのようなディープコミットでできあがった労作です。

「今号の『ちゃぶ台』はヒラク号といっても過言ではありません!」

見本誌に同封されていた一筆箋にはミシマさんからのアツいコメントが…!
お世辞だとしても嬉しいデス。わーい!
(しかも巻末の著者紹介では、僕の『発酵文化人類学』が「この号の支柱的一冊」とまで褒められている。光栄…!)

さてその内容はというと。
秋田五城目にある老舗酒蔵、福禄寿酒造(一白水成)の再生の物語。昭和の大量量産システムをやめ、五城目でしかできない「土と水と菌に向かいあった醸造」に挑んだ結果、これまでのものづくりのセオリーを覆すようなミラクルが起きる…!

…という「発酵文化人類学のその後」のストーリーになっています。
紙の雑誌では普通ありえない長尺の記事なので、じっくり読んでもらえたら嬉しいデス。ていうかめちゃ七転八倒しながら書いたので読んでね!

そして。
ある意味今回の雑誌制作の裏のフィクサーであるRe:Sの藤本さんや、タルマーリーの渡邉夫妻、今度山梨にも遊びに来てくれる独立研究者の森田真生さん、一緒に関西森歩きの会をやっている三浦豊さんなどなど、僕のリスペクトしてやまない人たちも登場しまくっています。

どの記事も熱量が高く、しかも内容が一貫しているようでけっこうカオスなのもミシマ社さんらしい痛快さ。本の最後を飾る平川克美さんのインタビューがとっても味わい深いです。

ちなみに帯の『黄金の10年がやってくる!』というキャッチコピーは、なんと新政の杜氏の古関さん。三島さんと一緒に訪ねた鵜養の田んぼで放たれた名言が、今回の発酵×経済を象徴する言葉になっています。

・トージ・コージ! | なんも大学

本に登場する新政の古関さん、福禄寿の康衛さん、タルマーリーの格さんはじめ、全国各地の僕の大好きな醸造家たちは、いつでも前を向いて未来を信じている。

社会の流れが反民主主義的に傾き、テクノロジーの急激に発展に起きざりにされ、人口がどんどん減っていく。たくさんの不安に取り囲まれて「どうやって生きていこう?」と不安になった時に、なぜか田舎の片隅の小さな蔵のなかに揺るがぬ未来が見える。

ありとあらゆる苦難を乗り越えて、何百年も続いてきた発酵文化には不思議な安心感とポジティブなエネルギーの渦があります。微生物と人間がともに作り出すその発光に僕の人生は導かれてきました。

前を向いて未来を信じる。黄金の10年間を自分の手で育てていく。
そんなメッセージがビシバシ伝わるミシマ社の雑誌『ちゃぶ台』。速攻でゲットしてね。あと面白かったら僕にコメント下さい。

ミシマ社の皆様、Re:Sの藤本さん、秋田の醸造家の皆様、お世話になりました!

余談ですけど、日本の発酵のシンボルであり僕の研究している麹菌(ニホンコウジカビ・Aspergillus Oryzae)は、顕微鏡で見るとアフロヘアをしています。

お米からピヨーンと胞子が伸びていって…

先っぽはこんな感じのアフロボンバーヘアになっています(二枚ともヒラク撮影)。発酵するとアフロになるのは当然!ということを補足しておきますね。

みんな最寄りの本屋さんにダッシュだ!

恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。

音楽好きの大学の先輩に連れて行ってもらって好きになった渋谷宇田川町のBar Bossa。

いつも心地良い音楽がレコードでかかっている、お酒のセレクトも雰囲気も素敵なお店だなあと思っていて。で、こないだデザインの目利きの安西洋之さんと渋谷で会った時に「ちょっとワインでも」ということでBar Bossaに一緒に行った。

そしたら安西さんが「ここのマスターって、WEBマガジンで人気のコラムニストだよ!」と教えてくれた。帰り際、レジの横に置いてあったマスターの林さんの本を買って帰りの特急あずさで読み始めたら、そのまま夢中で読み終わってしまった。

その本のタイトルは、『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』

バーカウンターにやってくる妙齢の男女の恋愛エピソードのオムニバスだ。主人公はバーのマスター。そこにワケありの男女がやってきて、マスターおすすめのお酒のグラスを傾けながら、恋の話をし始める。報われない恋もあれば、既婚女性がはるか年下の男の子に片思いする恋もある。各エピソードの前後には、ジャズやボサボノヴァの名曲の歌詞が引用され、十人十色の恋のエピソードと重ね合わされる。

「へえ〜。やっぱりバーテンダーやってるとこんなに他人の色恋の話を聞くもんなんだねえ」

と思って読み進めると、やがてこの本が「恋愛小説」であること、虚構の物語であることに気づく。

それはなぜか。
話ができすぎているからだ。死んだお母さんから譲り受けた口紅をつけてデートに行ったら、どんな素敵な男の子もその子に夢中になる。新人女優の同級生を勇気を出してデートに誘ったら成功して、家に芸能事務所のスタッフが土下座して誤りにくる。バラバラだったエピソードが、ワインのラベルの絵を通してつながったりする。

いくらなんでも、できすぎている。

そしてもうひとつ。

カウンターの座る登場人物たちの声音。彼女/彼たちの声音は「対話の声」ではない。「マスター聞いてよ」と始まったとしても、その声は返事を求めることなく、グラスの中の泡のように消えていく。問わず語りよりもさらに儚い、まるで夢の中で響くような声音だ。

この儚さは、虚構の儚さで片付けていいものなのだろうか?

僕はこの小説の登場人物のように、一人でバーカウンターでお酒を飲むのが好きだ(残念ながら気の利いた恋バナはできないけど)。
で、カウンター座って何をしているかというとだな。グラスを傾けながら物思いに耽る。日常のコミュニケーション過多を切断して、黙って静かにお酒を飲む。

この瞬間がたまらなく幸せだったりする。
なぜ幸せなのかというとだな。日々のリアリティから離れた自分の姿を好き勝手に想像できたりするからなんだよね。一ヶ月どこか外国行ってバカンスするのでもいいし、自分の趣味にひたすら没頭する生き方を想像してもいい。

あるいは。
かつて好きだった誰か、まだ見ぬ誰か、手の届かない誰かとの身を焦がすような恋を想像したっていい。

バーカウンターに座っている間だけ、人は自分の望む人生を夢見ることができる。
薄暗い照明のなかで「語られるはずだったストーリー」に耳を傾けることができる。

この本の最後に、著者であるバーテンダーが「これは小説だ」と種明かしをするのだけど、僕はこのできすぎたエピソードたちが著者のアタマの中だけで生まれたフィクションであるとは思えない。

もしかしたら、彼女/彼たちは実際にBar Bossaにやってきたのかもしれない。
でもね。たぶん

「マスター、私の恋の話を聞いてくれますか?」

とは言わなかったんじゃないか。バーカウンターでお酒を飲みながら、夢見るような目で沈黙しながら、ありえたかもしれない幻の恋の映画を見ていた。そしてバーテンダーも一緒にその映画を見ていたのかもしれない。

この本に描かれたエピソードは「実際に語られた話」ではなく「語られるはずだった沈黙」から生まれたのではないだろうか。

素敵なバーには素敵なストーリーがある。
そしてそのストーリーは、沈黙の声によって語られる。

バーテンダーのかける古いレコードは「ありえたかもしれない恋」のサイレント映画のサウンドトラックだ。この本で語られる恋のエピソードは、Bar Bossaのカウンターで過ごす一晩だけカラフルに輝き、バーを出た瞬間に色あせて消えてしまう。

甘い感情は長続きしない。ひとときの夢を再生しておしまいのレコードや映画のように。日常の瑣事のなかですぐに見失ってしまう甘い気持ち、ひとときの夢を取り戻しに僕たちはバーカウンターに座るのかもしれない。

木桶の伝統が未来の多様性を生む。小豆島の醤油文化

鳥取の発酵ツーリズム:
醤油(香川県小豆島)| 小豆島の木桶仕込み

木桶だらけ!の醤油の島


小豆島の醤油文化の顔のひとつ、マルキン醤油の果てしなく続く木桶の景色。圧巻…!

香川県高松沖、瀬戸内海に位置する小豆島は、島の主産業の筆頭が醤油醸造という「醤の郷(ひしおのさと)」として知られている。「知られている」というと、行政やメディアが無理やり話題づくりして「そういうのもないことはない」ぐらいのレベルかと思ってしまうが、実際に行ってみると、予想の斜め上を行く「醤の郷」っぷりで衝撃を受ける。

一つの島のなかに、なんと22もの醤油蔵がある。瀬戸内海では淡路島に次ぐ大きな島とはいえ、驚異的な密集っぷりだ。明治の最盛期にはなんと400以上の醤油蔵があったらしく、醤油とともに歩んできた島なんだね。

なぜこんなにも醤油醸造が盛んになったかというとだな。
中世から小豆島は製塩業が盛んだった。ところが江戸時代に塩田技術が確立すると他の土地でも次々とライバルが現れてレッドオーシャンに。そこで大豆や麦などを本土から運んで塩とまぜて醤油に加工し、付加価値の高いビジネスモデルをつくりあげた。

接する土地が多いので、原料を運び込むのも容易、そして高い値段で買ってくれる都市部(岡山や姫路、神戸など)にも近いという地の利を活かした作戦勝ちだ。江戸時代から明治にかけて関西一円に醤油を卸していたのだろう。
ちなみに山の上に登って島を一望してみると、入江が港になっている。水害の影響を受けにくい地形も加工食品貿易のモデルに向いていたんだね。

さて。
醤油とはそもそも何だろうか?
大豆と麦に麹菌(コウジカビ)をつけて麹とし、それを塩水に漬けて発酵させてもろみとし、それを搾って使う液体調味料。個体調味料の味噌、液体調味料の醤油が日本の発酵調味料の2トップだ(発酵の原理もかなり似ている)。

味噌と比べると、塩分が若干高く甘味が弱く旨味が強い。刺し身から煮物まで、和食になら何でも使える汎用性があり出汁やみりんや酢など、他の調味料との相性も良い。

九州では糖類などを加えた甘い醤油、東海では小麦主体でつくる白醤油などいくつかのバリエーションがあるが、全国各地で多く使われるのが、大豆と小麦を混ぜた醤油麹を黒褐色になるまで熟成させてつくる『濃口(こいくち)醤油』だ。

小豆島でつくられる醤油の多くもこの濃口醤油。そして小豆島の醤油醸造で特徴的なのが醤油を杉でできた『木桶』で仕込む文化だ。メンテナンスに手間がかかり、コンディションによって味が変わりやすい木桶は現代では金属や強化プラスチック製のタンクに取って代わられつつある。のだけど、小豆島は島をあげて木桶仕込みの伝統を継承しようとしているんだね。


ヤマロク醤油の木桶の表面。100年以上使い込まれて表面も菌でビッシリ!

衰退しつつある木桶の文化に新たな流れをもたらしている代表格がヤマロク醤油。何トンもの酒や醤油を仕込める大型の木桶を作れるメーカーが絶滅しつつある中で、醤油蔵自らが木桶をつくるために技術を学び、その試みに共感する県内外の醸造蔵がヤマロク醤油に桶づくりの研修に行くという「木桶づくりのトレーニングセンター」になりつつある。

普通の人よりもだいぶ木桶を見慣れた僕ですら、小豆島の木桶の数と使い込まれた貫禄には圧倒される。間違いなく日本で最も大量の木桶が集まっている集積地がこの小豆島だ。

前述のヤマロク醤油では、醤油を木桶に仕込んで製品として出荷するまでに三年という長い熟成期間を経る。木桶に棲み着いた野生の微生物を使い、じっくりと発酵させた醤油は香りが特徴的だ。奥深いのにフルーティ、官能的なフレーバーが生まれるんだね。

そしてもちろん蔵ごと、桶ごとにコンディションが違うので生まれる風味も個性が生まれる。手間がかかる、コントロールしにくい部分が多いという要素を、デメリットではなく多様性を生み出すメリットと捉える。

醤油文化の未来、ローカル発酵文化の未来が、ここ小豆島から生まれている。

どうやってつくる/食べる?

▶How to 仕込み
A:蒸煮した大豆、炒った小麦を混ぜてコウジカビをつけ醤油麹にする
B:醤油麹と塩水を混ぜて桶に仕込み、半年〜3年発酵・熟成させる
C:熟成したもろみを搾り、熱加工(火入れ)して発酵作用を止め出荷する

☆菌の元気な暑い時期に発酵を促し、菌の動きが鈍る寒い時期に味を落ち着かせる、という季節のサイクルを利用して味を整えていく
☆醤油麹は味噌や酒の麹と違って旨味を強く引き出したもの。素人が見ると同じ麹とは思えない。
☆木桶や蔵の室内は基本的に洗わない。微生物の生態系が変わってしまうリスクを避ける。

▶食べかた
・刺し身醤油として
・煮物、焼き物の味付けに

▶食べられている地域
全国津々浦々
(沖縄周辺の諸島部では伝統的には醤油は使われなかった)

▶微生物の種類
醤油醸造に特化した麹菌、耐塩性の乳酸菌、酵母など

旅のメモ


高松や岡山、姫路や神戸など都市部に接する地の利を活かして加工食品産業が発展した

小豆島を取材した一番の理由は、発酵友達で醤油ソムリエのケリーちゃんこと黒島慶子さんの存在。醤油蔵がひしめくエリアで生まれ育ち、親も醤油蔵に勤務。幼い頃から醤油とともに育ってきたケリーちゃんが醤油文化の素晴らしさを伝える生業を選んだのはごく自然なことだった。彼女の精力的な活動によって、手間をかけてつくる自家醸造の醤油の魅力が若い世代にも改めて認知されている。情熱もセンスも知識もある、醤油界の伝道師なんだね。

そんなケリーちゃんと小豆島の醤油蔵を訪ねると、どこに行っても「慶子ちゃん、元気か?」と声をかけられ、世間話が始まる。ケリーちゃんにとって小豆島の醸造家たちみんなが親戚のようなもの。こういう「土地そのものと結びついた存在」が文化の守護神になるんだね。

醤油とともに歩んできた小豆島の歴史。その歴史は抽象的に受け継がれるのではなく、生身の人間にパスされる。伝統は資料のなかにではなく、人の身体のなかに宿るのだな。

ケリーちゃん、小豆島は最高だったよ!また遊びに行きます〜。


Fermentation Tourism NIPPON  supported by


ただいま展覧会&ツアーのスポンサー絶賛募集中!
・【スポンサー募集】発酵から日本を再発見する旅、いよいよスタート!

 

逃避としての読書。

何かを得るために、ではなく何かから逃げるために本を読む。

僕の本やブログ読んでくれたり、トークイベント遊び来てくれた人から「なんでそんなに色んなジャンルの本読んでるんですか?」と言われることがたまにあります(しかし知り合いの博覧強記の傑物たちに比べたら僕は小僧っ子レベルなので結構恥ずかしい)。

ただ確かに小さい頃から手当たり次第にやたらめったら色んな本を読んできたのは事実。でもそれは「知識をゲットしたい!」というアクティブな好奇心とはちょっと違っていたように思います。

逃げるために本を読む

思うに。
多感な時期にする読書は「何かを得るため」だけではなく、実は「何かから逃げるため」という側面も大きい。僕は身体弱くて協調性ゼロの性格だったので現実から逃げるために本を読みまくった。本を読んでるあいだは熱がツラい!とか友達いない!という現実から逃避することができるからね。

つまりだな。僕が「これだけの本を読んできた」というのは「これだけの現実から逃避してきた」ということに等しい。たくさん勉強して賢い人間になるぞ!という気持ちは一ミリもなくて、本を読んでいる間だけは自分の将来とかいう面倒くさそうなことを考える必要がなかったので没頭していたに過ぎない。

そう。読書は逃避。本を読んでいる時だけは空想のアルカディア(理想郷)で憩うことができるんだよ。

逃げるは恥だが役に立つ

しかし。社会人になってからの読書は、残念ながら「何かを得るための読書」になってしまいがちなんだよね。仕事に必要だから、とか教養が必要だから、という理由でする読書にはロマンがない。

最強に没頭できる読書は功利から離れた「非現実の孤島」で一人きりでするもの。でもいまや社会に出て現実と悪戦苦闘するおじさんになった僕にはその島に渡る船がない。涙

とはいえ。「どれだけ色んな世界に逃避したか」という経験は、意外にも社会に出てから役に立つ。社会の不条理に直面した時、例えば上司や顧客からパワハラ受けた時に、話を聞いたフリして「半分あっちの世界」に行くことができる。愚直に壁にぶつかって粉々になるより、逃げてしまったほうがいいこともある。

人の言葉や起こった出来事を真面目に受け取りすぎると生きづらい。
どんなエラい人が言った説得力ある言葉も、身に降りかかった苦境も「話はんぶん」で受け取るのがいい。

本で色んな物語、色んな思考のパターン、色んな領域の知識を得ることで世界を相対化するスキルをゲットすることできる。心の持ちようは簡単に変えられないので本を読んで「言葉とストーリーのサンプル数」を増やせば、不条理な現実からスススっと華麗な逃避をキメることができる。

この世界で成功した経験、勝ち取った経験だけじゃなく、別の世界に逃げおおせた経験もまた役に立つ。読書は逃避。そして逃避はロマン。人生にはロマンが必要だ…!

神さまと人をつなぐ山の寿司。柿の葉寿司

鳥取の発酵ツーリズム:
柿の葉寿司(鳥取県智頭町)| 國政勝子さん

お盆の精進落しに食べる華やかな郷土寿司


日本昔話に出てくるような牧歌的な景色。智頭は古くからの林業地だ

日本各地の発酵文化には、それがあまりにもローカルに流通しているゆえ醸造メーカーすらなく、地元のお母さんたちが手づくりで継承しているものも少なくない。今回紹介する鳥取県智頭町の『柿の葉寿司』もその一例だ。

鳥取県南部にある智頭町は、人口6000人強の山間の町。川沿いの集落の小高い丘の上に住む料理名人、國政勝子さんが智頭の柿の葉寿司の伝統を守っている。


桶のなかにギッシリとお寿司を詰めていく

関西でメジャーの柿の葉寿司は、ちまきのように柿の葉でご飯を包んでつくる押し寿司スタイルなのだが、智頭町のスタイルは柿の葉に握り飯を乗せ、さらにそのうえに具を乗せる江戸前寿司スタイル。葉の緑、飯の白、具のピンクが目に鮮やかで可愛らしい。

初夏から秋口までにちぎった柿の葉に、酢で〆た白米と鱒(ます)で握った寿司を載せ、その上に山椒の実や穂など季節の香草をアクセントにする。それを桶に仕込んで何段も重ね、1〜5日間ほど発酵させる。柿の葉と酢によって腐敗を防ぎ、お盆の暑い時期の防腐対策としたのだろう。

写真の通り一度に何十個と仕込むので、柿の葉寿司は親族や村の共同体で集まって食べるパーティ食なのだ。

「いつからこのお寿司があるのかは知りません。私は祖母から教わって、その祖母もまた彼女の祖母から習ったの。そうやってずっとおばあちゃんの味が続いてきたのよ。私も気づいたら50年以上柿の葉寿司を作り続けているみたい」

と勝子おばあちゃん。超絶シャイで可愛いぜ…!

今でこそ一年を通してお祝いの場で食べられる柿の葉寿司だが、元はお盆の終わりをつげる『精進落し』として食べらていた。
(ちなみに現代の精進落しは死者の火葬が済んだ夜に食べる食事のことを指すけれど、元は神事や巡礼、重大な災害などが落ち着いた後に「おつかれ!」という気持ちを込めて食べる食事のことだった)

山深く、肉食を禁じられた土地で、貴重な魚肉と白米をいっぺんに食べられる柿の葉寿司はお盆という夏の一大事を終えた共同体の労をねぎらう「ありがたい山のお寿司」だったのだろう。年に一度のことだから、見た目も美しく、味も酸味と甘味が効いている。智頭のおばあちゃんの優しさが泣けるほど伝わってくる郷土寿司の真髄だコレ!

どうやってつくる/食べる?

▶How to 仕込み
A:柿の葉の上に、酢で〆た白米と鱒で握った寿司を載せる
B:寿司の上に山椒の実や穂など季節の香草を乗せアクセントとする
C:それを桶に仕込んで何段も重ね、1〜5日間ほど発酵させる。

☆発酵しないうちに食べると甘酸っぱいフレッシュな味、発酵が進むと酸味とコクが効いた旨味の強い味に。どちらを選ぶかは人の好みだそう。
☆鱒ではなく紅鮭を使う場合もあるが、味が淡白すぎて鱒のほうが上等とされるらしい。

▶食べかた
・家族や村の寄り合いでみんなでガシガシ食べる

▶食べられている地域
握り飯スタイル:智頭町はじめ鳥取・石川
押し寿司スタイル:和歌山・奈良

▶微生物の種類
主に柿の葉に棲み着いている野生乳酸菌

旅のメモ


柿の葉を集める様子。勝子おばあちゃんは家の近所のものをたくさん集めて料理に使う

郷土寿司はスピリチュアリティと深い関係を持っているらしい。
勝子おばあちゃんによると、智頭には2つの郷土寿司の文化がある。

一つはお盆の精進落しに食べる柿の葉寿司。
もう一つは、正月に歳神さまにお供えするサバのなれずし。

前者はご先祖様が帰った後の「おつかれ!」で、後者は新年を迎える「ようこそ!」だ。

勝子おばあちゃんの話を聞いている時に、僕の母方の実家の佐賀の漁村の文化を思い出した。漁師だったおじいちゃんは、お盆が始まると漁に出なくなる。この時期に海に行くと「ご先祖様に連れて行かれてしまう」ということなのだそう。

お盆の最後の日に海に紙や木でつくったミニチュアの船にお供え物を入れて流し、その儀式が終わったら漁に出て、魚が食べられるようになる。海や川など、水と深くつながった土地において、お盆の終わりに魚を食べることは彼岸と此岸の境界線を引く特別な食事であることがわかる。

かつての地域文化において、お寿司は神様と人の間をつなぐ重要な食べ物だったのだ。


もはや時空を超えた存在といえる勝子おばあちゃん。尊い…!

ちなみに今回の旅は、野生菌でパンとビールを醸すタルマーリーの女将、渡邉麻里子さんにコーディネートしてもらいました。古くからの発酵と新世代の発酵が同居する町、智頭は景色も人もサイコー!また遊び行きますね。


Fermentation Tourism NIPPON  supported by


ただいま展覧会&ツアーのスポンサー絶賛募集中!
・【スポンサー募集】発酵から日本を再発見する旅、いよいよスタート!

 

旨味の首都の味覚を支える、縁の下の力持ち。たまり

三重の発酵ツーリズム:
たまり(三重県鈴鹿市)| 東海醸造

豆味噌の桶から滲み出る濃厚液体調味料


味噌から染み出してくるたまり。美味しそう…!

たまりは豆味噌(大豆に麹をつけて仕込んだ味噌のいちバリエーション)の桶から滲み出てくる液体分を取り出した液体調味料。スーパー等で流通しているたまり醤油とは別物で、こちらは窒素分(旨味成分)が普通の濃口醤油よりも濃厚になるように仕込まれた醤油のこと。東海地方以外でたまり(notたまり醤油)が流通しているところはほぼ皆無。

濃いめの醤油として仕込まれるたまり醤油よりもさらに旨味濃厚で野性的なフレーバーのする、この地域ならではのパンチある調味料だ。

このたまり、単体で使われることは稀で、出汁や他の調味料とセットの「隠し味」として使われる。流通も単体パッケージではなく、他の調味料と混合することを前提に飲食店や加工食品メーカーに卸される。

つまりだな。
たまりは『東海の旨味を支える縁の下の力持ち』。この土地に工夫上手の料理人の文化が根付いている証なんだ。

三重県鈴鹿で約300年に渡って豆味噌とたまりの製造を続けている東海醸造では、江戸時代の面影を残しまくっためちゃ味わいのある醸造法を継承している。
木桶に仕込んだ味噌を豆味噌にする途中、2年の熟成期間を超えた桶からたまりを放出する。

すげーーーいっぱい出るゥ!!!!
と見るだけでもアドレナリンが放出される瞬間だぜ。

こうやって取り出したたまりは、そのまま瓶詰めして出荷されることはほとんどなく、工場内で醤油やみりん等と混合して飲食店や他メーカーに納品される。直接販売される場合は、使い手が直接好みの調味料と混合する補助調味料として使うことが多い。

どうやってつくる/食べる?

▶How to 仕込み
A:豆味噌を仕込み、熟成させる
B:熟成の後半(二年以上)、木桶からたまりを放出する
C:ろ過・火入れ(発酵を止める作業)などをして完成

豆味噌の仕込み方については、愛知県の八丁味噌を参照。
・味噌汁の味は、その土地のプライド。八丁味噌

▶食べかた
・出汁や他の醤油、みりん等と混合して補助調味料にする
・刺し身などの醤油とする

写真は穴子のだし巻き卵。
卵の部分は白醤油(東海独特の小麦を主体とした醤油)、穴子の部分にたまりを使った「旨味の首都東海」ならではの旨味レイヤー複雑過ぎな一品でした。

▶食べられている地域
東海地方一帯

▶微生物の種類
コウジカビ(Oryzae系ではなくSojae系)、蔵に棲み着く野生の耐塩性乳酸菌、酵母類

旅のメモ

東海醸造の豆味噌は、同じ原料を使いながらお隣愛知県の八丁味噌とは個性も製法も違う。写真は、東海醸造の木桶の表面を覆い尽くすカビ・酵母類のコロニー(ちょっとナウシカっぽくてロマンチック)。東海醸造では八丁味噌と違って石をピラミッド状につみあげるのではなく、まばらに重しをするスタイルで熟成を進める。空気に触れる面積多すぎて雑菌が混入しやすいのでは?と思ってしまうが、表面に菌のコロニーでバリアをつくることで味や香りを悪くする汚染を防いでいる。

こっちが八丁味噌の石積み。表面に空気が触れないように隙間なく石を詰む。

こっちが東海醸造の豆味噌。石と石の隙間に菌のコロニーがびっしり。

この石積みの方法論で何が変わるかというと、香りが変わるんだね。
八丁味噌はコクのあるディープな香りだが、東海醸造の豆味噌はよりイースティ(酵母っぽい)、もっというとフルーティな香りになる。桶の表面の酸素の量の違いが微生物の働きを変えているのだろう。こんな感じで、豆味噌のなかでも、蔵や地域ごとに多様性があるんだね。めちゃ面白い。

ちなみに東海醸造からすぐ近くの海岸沿いを歩くと、伊勢湾を挟んで愛知の知多半島を臨むことができる。今よりもずっと海運が盛んだった江戸時代以前には、この鈴鹿の地と愛知の三河地方は同じような文化を共有した東海の発酵中心地として醸造業が栄えていったんだろうね。

この取材では、東海醸造の本地猛さんにすっかりお世話になりました。
伊勢をルーツとしながら、三河や紀州、近江や奈良ともつながっているミックスカルチャー三重。次回はさらにディープに掘ってみたいと思います。


Fermentation Tourism NIPPON  supported by


ただいま展覧会&ツアーのスポンサー絶賛募集中!
・【スポンサー募集】発酵から日本を再発見する旅、いよいよスタート!

 

文化の古層への冥界巡り。大風邪引きながら関西の発酵を訪ねました。

こんにちは。小倉ヒラクです。
9月終わり、関西に旅に出た直後から大風邪を引いてほとんど外界と音信不通になっていました(山梨に帰ってきた今現在もまだ発熱と咳がひどくて家で静養中)。
何度も熱や胃痛や喘息症状でぶっ倒れながら、

鳥取県智頭町:柿の葉寿司
香川県小豆島:醤油
和歌山県湯浅:金山寺味噌
京都市大原:しば漬け

と西のローカル発酵の現場をまわってきました。その合間にイベントに出演したり、仕事の打ち合わせしたりもあって。普通だったらベッドから起き上がれない状態で長距離移動&業務フル回転。

ここ数年で最もハードな旅(体調的に)となりました。
これから47都道府県ぶん延々と続く発酵の旅ですが、序盤にこれだけツラい体験したので、あとは「何でもバッチこーい!」と笑顔で乗り切れる自信がある…!

日本の超ディープルーツの再発見


醤伝来の地、和歌山県湯浅で江戸時代から続く金山寺味噌の工場

今回の旅は、前回の出版ツアーのようにその土地の文化の拠点になっているようなイケてる場所に行くのではなく、アクセスも不便で地元の人すら知らないような地域へ行って、何百年も静かに受け継がれてきた郷土食の担い手にえっちらおっちら会いにいっています。

多くのケースは、70過ぎのおばあやおじい達。
仕込みの現場に一緒にいて、その土地のこと、家族のこと、醸造方法のことなどを聞き出していくわけです。ポイントは単純な聞き書きではなく「仕込みの現場に一緒にいること」。現場で工程を見ていくと、聞き書きでは説明するのをうっかり飛ばしてしまいがちな重要ポイントを見逃さずにすむ。話を聞くことよりも、僕も醸造家の立場になって現場を共有するのが大事なんですね。

ということで、連日小さな蔵や畑に入っていくわけなんですが。
そこで目の当たりにする景色がディープにファンタスティックすぎて

「あれ…?ここって現代日本だっけ?」

と感覚が狂いまくる瞬間ばかり。現代日本の無意識下に何百年も伏流してきた超ディープルーツにやられて、さらに発熱が…涙

体調不良のピークは和歌山湯浅。肌寒い夜、咳で倒れそうになりながら熊野古道を歩いていると自分が幽霊になったような錯覚に陥りました。

文化の古層への冥界巡り


小豆島。見渡す限りの木桶の海。マジで感覚がおかしくなる…!

どうやら今回の旅はただのフィールドワークじゃないらしい。
これは日本の文化の古層への冥界巡り。ふだん僕たちが意識しない百年、千年という時間スパンで流れている「文化の無意識」を僕は辿っているようだ。

つまり僕のこの謎の発熱は冥界巡りをスタートするためのイニシエーション…!
この先に、何かとんでもない世界が待っている…!!

いったいこの先どんな「文化の古層」の景色が待っているのでしょうか。
これから定期的にレポートしていくので、どうぞお楽しみに。

しばらく現世から離れます


人間をやめて微生物になり、さらに現世から冥界に降りるというディープトリップ…!

そんでもって。友人の皆様へ業務連絡。
今回の旅で僕は人間界というか現世から離脱することになるので、しばらく社交の場にもカジュアルな飲み会にも顔出せないと思われます(精神的にも体力的にも)。

僕は友だちという時間が大好きなので、とても心苦しいのですがおそらくこんなにディープな体験は一生に何度もできないと思うので、徹底的に彼岸の世界へ行ってきたいと思います。

来年の春以降に現世に戻ってきますので、桃の花の咲く頃に会いましょう。
それでは最後に和歌山で出会った醸造家夫婦のポートレートをご覧ください。


Fermentation Tourism NIPPON  supported by


ただいま展覧会&ツアーのスポンサー絶賛募集中!
・【スポンサー募集】発酵から日本を再発見する旅、いよいよスタート!

 

【47発酵ツーリズム】味噌汁の味は、その土地のプライド。八丁味噌

愛知の発酵ツーリズム:
八丁味噌(愛知県岡崎市八帖地区)| まるや&カクキュー

大陸とつながる味噌の原風景


発酵途中の八丁味噌。めちゃ濃厚な匂いがする…!

八丁味噌は東海地方で食べられている豆味噌のいちバリエーション。愛知県岡崎市の八帖地区で400年以上に渡ってつくられてきたユニークなローカル味噌だ。

日本全国で食べられている米味噌では、蒸した大豆に別の場所でつくった米麹を混ぜて仕込む(なお、麹の原料を麦に変えると九州〜瀬戸内で食べられる麦味噌になる)。しかし八丁味噌は蒸した大豆にそのままカビつけして豆麹にし、そこに塩水を加えてペーストにして味噌に醸していく。つまり日本の味噌のスタンダードになっている「別工程で麹をつくって大豆と合わせる」というプロセスがない。大豆が成り行きで味噌になるという特異なスタイルなのだね。

この「成り行きで大豆が麹になり、そこに塩を加えて味噌にする」というスタイルは実は大陸系の味噌の系譜。韓国のテンジャンなどと共通する部分が多い。
中国や韓国を始めとする東アジアの発酵カビは、酸などを出して外敵から身を守る力が強く、野外環境でも麹のようなスターターをつくることができる。ところが日本のコウジカビは雑菌の汚染を受けやすいため、麹室(こうじむろ)という隔離した空間で麹をつくるようになった。その結果生まれたのが、原料の豆と麹を分離する日本式の味噌だ。

しかし八丁味噌はなぜか成り行きで発酵する、大陸から渡ってきたであろう味噌のルーツを残している。甘い米や麦の麹を入れないので、超濃厚な旨味が凝縮されたディープなコクが出て、はじめてリアル八丁味噌でつくった味噌汁を飲んだ時に

「おお、南インドのスープカレーみたいだ…!」

と叫んだのを覚えている。つまり他の味噌とは一線どころか八線くらい画した独自すぎる風味なのだね。

そんな独自すぎる八丁味噌は、岡崎をはじめ愛知・東海一帯でこよなく愛されている。単に「美味しい」を超えて、土地の人のアイデンティティを形成するソウルフード。

そう。味噌汁の味は、その土地のプライドなのだ。

どうやってつくる/食べる?

▶How to 仕込み
A:煮た大豆を潰して玉にし、そこにコウジカビを生やして豆麹とする
B:豆麹を塩水を混ぜてペーストにして木桶に仕込み、上から石を詰んで酸素を抜く
C:最低2年以上熟成させて完成とする

ポイントはBの「石積み」とCの「二年以上の熟成」。
【B】ピラミッドのように石の重しをすることで、桶のなかから酸素を抜き、イヤな匂いを発生させる菌の働きを抑える(専門的に言うと嫌気発酵を促す)。それでも残る、桶表面のはじっこの空気に触れる部分はある程度除去して出荷するそう。
【C】二年以上じゅうぶんに熟成させると、出荷してからも味が変質しにくい。つまり発酵がほぼ完成しているので、保存食としての機能性が高くなる。冷蔵庫がない時代から続く味噌ならではの知恵だ。

▶食べかた
・味噌汁にする
・うどんを始め、煮込み料理の調味料とする
・野菜や豆腐などに塗って田楽にする

僕のフェーバリットは、二日酔いの翌日にしじみやアサリなど貝類とあわせて味噌汁をつくって一息に飲み干すスタイル。体内のアルコールが一気に抜けていく!(錯覚だけど)

▶食べられている地域
東海地方一帯

☆他の味噌などと合わせて食べやすくした赤だしスタイルは関西でも好まれている
☆九州の甘い麦味噌で育った人と八丁味噌文化圏の人が結婚すると、味噌汁の味をめぐって家庭内紛争が起こることもある。汗

▶微生物の種類
コウジカビ(Oryzae系ではなくSojae系)、蔵に棲み着く野生の耐塩性乳酸菌、酵母類

旅のメモ

八丁味噌の名前の由来は、徳川家康の出生地である岡崎城下の八帖地区で400年にわたって製造してきた歴史から。徳川の武家好みの濃厚な味を代々守ってきたのが、まるやとカクキューの2つの蔵だ。この二社は旧東海道を挟んで隣り合っている。上の写真でいえば、東海道の右側がカクキュー、左側がまるや。道の幅は約4メートル程だが、この4mで微生物の生態系がガラッと変わる。共通した原料、製法で醸すのにまるやとカクキューの味噌の味は明確に個性が違う。

この微生物の個性の違いによって、二社は長い間マーケットの奪い合いをすることなく共存することができた。まるやの名物社長の浅井さんいわく、

「2つの蔵はライバルですが、同時に一緒に伝統を守ってきた者同士として尊敬しあっています」

とのこと。スピッツとミスチルみたいでカッコいい…!

大豆だけでつくる豆味噌というカテゴリー自体が東海に限定されているのに、さらにこの岡崎という地域の制限を受けながら独自性を磨き続けた老舗の2蔵は、日本の文化において発酵文化が果たす役割の大事さを理屈無用で教えてくれる。

長い長い時間の流れが、桶の上に積まれた石のように組み上げられて、その土地の味覚、そして精神性を醸し出している。つまり、尊い…!尊すぎる…!!

ちなみに今回の取材には、めちゃ好奇心いっぱいの岡崎ガールズチームと、岡崎に引っ越した山梨生まれの飯田圭くんはじめ地元の人たちにお世話になりました。また岡崎で会いましょう。


Fermentation Tourism NIPPON  supported by


ただいま展覧会&ツアーのスポンサー絶賛募集中!
・【スポンサー募集】発酵から日本を再発見する旅、いよいよスタート!

 

【47発酵ツーリズム】川の味を醸す。鮎のなれずし

岐阜の発酵ツーリズム:
鮎のなれずし(長良川流域)| 川原町泉屋

長良川流域の川の味を醸す

岐阜の南半分、岐阜市を中心とする長良川周辺の食のアイデンティは鮎。
鮎は岐阜の河川文化のシンボルであり、その鮎をなれずしにして保存食とした。

泉屋さんがつくる鮎のなれずしは子持ち鮎のなれずし。子持ちということは、「内蔵を取らないまま漬ける」ということだ。隣の滋賀県で広く食べられるフナのなれずしでは、硬い鱗と腐敗を招く内蔵を取って漬けるのだが、泉善七では鮎を魚まるごと内蔵ごと漬け込み、塩漬けで約半年、米を入れて4〜5ヶ月ほど発酵させて完成。

出来上がったなれずしには内蔵由来の臭みが全く無く、フナのなれずしよりも酸味が少なく澄んだ旨味が特徴。これは鮎は昆虫などの小動物を食べず、川の岩苔などを食べるベジタリアンの魚であることが大きな理由だ。苔の質は川によって違い、上質の鮎は森の奥から湧く清水で取れるという。

つまり鮎は「川の味」そのもの。そして鮎のなれずしは「川を味を醸したもの」だ。

どうやってつくる/食べる?

▶How to 仕込み
A:新鮮な鮎を生のまま高塩度の塩漬けにし、耐塩性乳酸菌により発酵。
B:塩漬けになった鮎の塩を洗い、今度は飯米の漬け床で漬ける。

この時に塩分が下がるので、多様な乳酸菌や酵母による二次発酵が起こり、チーズのほうな熟成香や旨味が生まれる。発酵の酵素作用によりドロドロに溶けた米も酒肴や調味料として珍重される。

▶食べかた
・スライスしたものを酒の肴にする
・酵素で溶けたお米を調味料やパテとして使う

▶食べられている地域
岐阜市を中心に長良川流域

▶微生物の種類
初期:耐塩性乳酸菌 後期:様々な乳酸菌や酵母類の複合発酵

旅のメモ

長良川を筆頭に、岐阜市周辺のアイデンティティは川(北部の飛騨地方は山)。
岐阜は鵜を使って鮎を捕る「鵜飼い」をシンボルに、川沿いに情緒あるお屋敷や長屋が連なる「川の街」。そのアイデンティティを発酵に当てはめた時に真っ先に思い浮かんだのが鮎のなれずしだった。

なれずしと言えば滋賀のフナのなれずしが、文化としては広範囲に普及しているのだけれども、鮎のなれずしも泉善七の努力によって確かな個性を確立した。特筆すべきは、メスの鮎を内蔵ごと漬け込むイノベーションだ。それまではオスの鮎をフナのように内蔵を除去して漬け込んでいたものを、内蔵まるごと漬けることによってエレガントな旨味を獲得した。

泉屋の五代目当主、泉善七さんいわく「川によって味が全然違う。ワインのように鮎のなれずしは川のテロワールなんだ」。め…名言!

鮎のエサとなる岩苔は、緑色よりも赤色が美味しいと言う。光学的に考えてみると、赤色の光合成をするということは、太陽光が豊富に降り注ぐ川よりも、森の奥にある源流に近い川ということになるのかもしれない。

ちなみに岐阜市に行った理由は、僕がデザイナーとして独立した直後からお世話になっているNPOオルガンの蒲さん。かつて岐阜で花開いた旦那文化を継承する粋なアニキ。蔵の取材の後は、泉さんと蒲さんの三人で飲みに行って、山梨の甲州ワインとブルゴーニュの白ワインを飲み比べました。旦那文化サイコー!!


Fermentation Tourism NIPPON  supported by


ただいま展覧会&ツアーのスポンサー絶賛募集中です!

・【スポンサー募集】発酵から日本を再発見する旅、いよいよスタート!