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クラフトジンはスゴい!香りとハーブの美学。

クラフトジンの世界は奥が深い…!

ジンといえば、ジントニックやマティーニの材料で同じみのハーブっぽい味がするスピリッツ。ゴードンズやタンカレー、ボンベイサファイアあたりが定番ですね。

でね。このジンの世界にもビールみたいに「クラフト」の文化があるんですね。原料にも製法にもこだわりまくった大量生産のスタンダードとは違うアナザーワールドがあるんだYO!

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前にアマノ食堂でも書いたようによくジンは飲んでたんです。ただそれもどちらかというとカクテルのつくりかたであって、ジンという酒そのものに対する解像度はたいしたことなかった。

・ジントニックを飲めば、バーの哲学がわかる?奥深きシンプルカクテルの真髄 | アマノ食堂

ところが例えばクラフトジンの火付け役であるイギリスのシップスミスみたいなジンをテイスティングして衝撃を受けるわけです。

「ななな、何だこれ〜!僕の知ってるジンと全然違うぞ!!!???」

と。今まで味わったことのない味の重厚感。「いいモノ嗜んでる感」が半端ない〜!

そして最近Kovalというアメリカのクラフトジンを飲んでみたらさらなる衝撃でしばし声を失いました。スタンダードジンのゴードンズとくらべてみたんですが、香りのキレと味のふくらみが全然違う。同じ種類の酒とは思えない!

ゴードンズも悪い酒じゃないんですが、Kovalと比べた時に香りにも味にも油っぽさがある。油分がまだ風味に変わりきれてない感じがあるんですね。Kovalは油分が官能的な風味に転化していて、鼻にも喉にも清涼感とコクが同時に通り抜けていくかなり高度なデザインが施されています。共感覚の人だったら120%確実に極彩色とか荘厳なハーモニーが聴こえてくるレベル。

こりゃスゴいわ…!

もちろんシップスミスも美味しいんだけどKovalはさらに斜め上の驚きがある。トニックで割るのすら惜しいので、一杯目はストレート、二杯目は強炭酸と1:1で割ってライム足して飲みました。至福…!

ジンは甘いリキュール(漬け込み酒)とは違って、ドライな蒸留酒でありながらスパイスやハーブの香りを楽しめるオトナの香道なんです。だから甘めのジントニックもいいけど、ドライなまま香りを楽しむのもなかなか乙なものデス。

【追記】他に飲んだので美味しかったのはスコットランドアイラ島のThe Botanist。シングルモルト的なオトナなフレーバーをまとったいい酒でした。ジンはジュニパーベリー(ねずの木)を香り付けにする基本レシピを守れば酒母の種類(シードルとかモルトとか)や漬け込むハーブやスパイスの自由度が高いので、蒸留酒のなかでも味や香りの多様性が高い酒です。
とりわけ香りが素晴らしいので、同じスパイス食であるインド料理とペアリングすると激しく美味しいのでは…と推測しています。今度試してみよっと。

独学者の不気味の谷。

独学者の「不気味の谷」というものがあります。

素人がある専門分野に興味を持ってあれこれ好き勝手なこと始めると専門家の先輩たちから可愛がられます。素人に留まるうちは。

ところが素人が本格的に学びはじめて、ただの素人でなくなってくると専門外のフツーの人からも専門家からも「不気味な存在」として見なされるようになる。

これが独学者の直面する苦難であり、よじのぼる覚悟が試される不気味の谷です。

※不気味の谷はよくロボットの例で使われます。ドラえもんみたいに明らかに人間と違うマスコットならば可愛がられ、そこから人間に中途半端に近づいていくと気持ち悪い存在になる。そこを越えて限りなくリアル人間になると違和感がなくなるというセオリー。

ビギナーズラックジプシーにとどまるか否か?

例えば編集や広告、デザイナーみたいにクリエイティブ領域で活動する人は「クレバーな素人」として様々な専門領域で重宝されることになります。専門外の素人だからこそできることを天真爛漫にやってみた結果「新しい風を吹かせてくれてありがとう!」となる。これが双方にとって気持ちいいので、不気味の谷の手前で引き返し、また違う専門領域に行ってビギナーズラックの恩恵に預かる。

クリエイターは「ビギナーズラック・ジプシー」になりやすい。

僕もデザイナー時代に色んな領域で仕事していたので、このビギナーズラックを味わった。でもそのうちに「いつまでもビギナーをはしごしてていいのか?」と疑問を持って自分なりの専門分野を持つことになりました。

ある領域から次の領域へ。「飽きずに自分を変えていくこと」に飽きた
だから一生をかけられそうな自分の好きなこと=微生物に全部をかけてみることにしました。それでめでたしめでたし!かと思ったら今度は「独学者の不気味の谷」に直面することになったんですね。

考えてみればここ4〜5年くらいずっとこの谷を這い上がることをやっている気がします。
素人の時は何いってもウケたのにこの谷に入ると突如相手にされなくなる。難しい専門知識をいくらインプットしても全然アウトプットの結果がついてこない(理解するだけで精一杯だからね)。この暗い砂漠が延々続くのが「独学の不気味の谷」。

なんだけど、意外なことにこの砂漠の谷を地道に歩いていくことは僕にとってはそんなにツラくなかった。自分にしかわからないぐらいちょっとずつ前に進んでいくんだけど、ただただ好きでやっていることだから自分にだけわかればそれで満足なんですね。

谷底の暗い砂漠を歩くうちに「おお、自分は本当に微生物が好きなんだ…」と実感したわけです。不気味の谷を越えるには自分の実感以外拠り所になるものがない。その時に自分の「好き」が試される。

まだまだ谷を登りきるところまで行っていないけど、光が差す時を楽しみに地道に歩くぜ。

 
【追記1】発酵文化人類学を出版して谷抜けるかと思ったらまだ全然でした。精進せねば…!

【追記2】デザインや編集という専門性を突き詰めるという道もありますが、僕は残念ながらその器じゃなかったようです(周りに天才がいっぱいいるし)。

microbiome

マイクロバイオームとは何か。身体のなかの生物多様性

あなたの身体のなかには、星の数ほどの微生物が棲んでいる。
こいつらはただ身体をすみかに借りているだけではなく、あなたが生きていくために食べ物の消化吸収を手伝い、免疫力のバランスを調整し。肌荒れや病原菌の侵入を防ぎ、さらには僕たちの感情や思考に何かしらの影響を与えていることがわかってきた。

つまりあなたは微生物と一緒に生きている。
もし身体のなかの微生物たちに見放されたら、あなたは栄養失調か感染症で長くは生きられない。

この身体のなかの微生物の生態系を「マイクロバイオーム(微生物叢)」という。21世紀に入ってからの微生物学の進歩によってヒトのマイクロバイオームの驚くべき世界が明らかになってきたのだな。

マイクロバイオームの分布

『発酵文化人類学』でも書いているように、地球上のありとあらゆる場所に目に見えない微生物たちが膨大に存在している。そのなかでもとりわけ微生物の人口密度が高いのが生き物の体内で、僕たち人間の体内にもめちゃいっぱいの菌がいるわけなんだね。

体内のなかで微生物密度が高いのは腸で、一人あたり数十〜数百兆にのぼる多種多様な微生物が棲んでいる。他にも口の中やワキの下や性器の中にも微生物がウヨウヨしている。

ヒトのマイクロバイオームには2つの大きな多様性がある。それは、

・身体の場所によって微生物の分布が全然違う
・人によって微生物の分布が全然違う

の2つ。口のなかと腸のなかでは微生物の種類が全然違う。インドネシアのバリ島とニューヨークぐらい違う生態系なんだね。そして同じ人間でも違う場所に住んでいるAさんとBさんのマイクロバイオームは違うし、なんなら同じ場所に住んでいるCさんとDさんも性別や年齢、生活習慣が違えばやっぱり微生物の種類や分布が変わってくる。

見方を変えれば「マイクロバイオームを見ればその人のことがわかる」と言えるんだね。
指紋や虹彩のように、ウンチに含まれる微生物の種類を見れば個人の特定ができるのかもしれない。ていうか、各国の研究機関ではマイクロバイオームによる個人のプロフィールのデータベースを構築するプロジェクトが進んでいる。

ちなみにウンチの主成分は①水分で、②は微生物の死骸(一部生きてるヤツもいる)だ。

マイクロバイオームの機能

身体内の各器官にいる微生物たちは人間の生理機能に影響を与える働きをしている。
例えばある種の乳酸菌は、口の中にいる雑菌を押さえ込む人間に役立つ働きをするが、別の種類の乳酸菌は強い酸を出して虫歯を誘発したりする。

肌の上のマイクロバイオームはスキンケアにも深く関係している。ある種のブドウ球菌は肌の潤いを保って悪い菌の体内への侵入を防いでいるが、生活習慣が荒れたりストレスがたまると脂っぽい汗が出て、それをエサに増える別のブドウ球菌が繁殖して毛穴が化膿してニキビの原因になる。

腸内のマイクロバイオームはめちゃくちゃ複雑な「微生物のるつぼ」であり、そこで何が起こっているのかはまだ一部しか解明されていない。なんだけど代表的な働きとしては、人間が持つ消化酵素では分解しきれなかった食べ物の残りカスを分解して人間に栄養を供給してくれたりしている。だから何かを食べるということは、自分+腸内の微生物に栄養を与えているということになる。

他にも人間の免疫システムに深く関与している。体外からやってきた異物を押し出す免疫細胞に働きかけたり、免疫システムの暴走を抑え込む役割も一部担っていることがわかってきているんだね。ちなみにヒト腸内環境と免疫システムの解説については以下↓

・【発酵デザイン入門】お腹のなかの驚異の生態系。 腸内細菌と免疫のひみつに迫る

ポイントは「微生物が良く働ければ健康になり、悪く働ければトラブルを引き起こす」ということ。その鍵を握るのが食習慣やメンタルヘルスで、良い微生物をちやほやする料理を食べ、いつもお気楽に生きているとマイクロバイオームがいい感じになる、はず!

お母さんから子どもへ

免疫力や消化吸収機能はお母さんから子どもに受け継がれる。
(残念ながらお父さんは蚊帳の外)

子宮のなかは血液と同じく無菌状態の体液で満たされている。
出産のタイミングで赤ちゃんはお母さんの産道を通るのんだけど、その時にお母さんの膣内マイクバイオームの一部が赤ちゃんに感染するんだね。この時に感染した善玉菌が免疫システムの発達していない赤ちゃんを病原菌から守る働きをする。お母さんの母乳は赤ちゃんの栄養であると同時に善玉菌のエサでもあるんですね。

でね。もう一個スゴい話があるんだよ。
実は膣内の善玉菌だけでは赤ちゃんの身体を守るには足りない。お母さんが出産時に長時間いきむ間にウンチが漏れることがままあるのだけど、この時にお母さんの腸内マイクロバイオームが赤ちゃんに感染するんだね。これが赤ちゃんの腸内環境のスターターになる。だから出産時の排便には生物学的な意味があるんだね。びっくり!

子どもの体質はお母さんのマイクロバイオームの状態が握っている。それを証明するように、女性が妊娠するとマイクロバイオームが「子どもに引き継ぐぞモード」に変わる。前述した善玉菌の数が増える傾向があるんです。子どもが生まれることを、お母さんだけでなく微生物たちも察知するんだね。本当に不思議なメカニズムだぜ。

苦しい思いして産道から子どもを出産したり、母乳で子どもを育てるには微生物目線で見てみるとそれなりの理由があるんですなあ。

ちなみに僕は出産時にお母さんからの免疫機能の引き継ぎがうまくいかなかったようで、生まれて即感染症にかかり、それから今までずっと免疫不全の症状を持っている。なので後天的な対処法=発酵食品食べまくり&ストレスフリーを意識的にやらないと身体がボロボロになる…!

微生物を介してのコミュニケーション

こんな感じで、人間の体内には微生物たちの驚くべき営みが満ちている。
僕たちの身体は僕だけでは維持できない。あるいは。僕個人の意志だと思っているものの一部は、身体のなかの微生物たちのメッセージであるかもしれない。

「リンゴ食いてえなあ…」

というつぶやきは、自分のつぶやきであると同時に腸内のリンゴを栄養分にする微生物たちの要望かもしれない。突飛な発想に思えるが、しかし腸内の微生物のはたらきが人間の感情に作用する物質(セロトニンとか)の分泌に関わっているという研究レポートが登場していきている。僕が学会で聞いてびっくりしたのが、子どもの夜泣きにも体内の微生物が関わっているらしいというレポートだった。

こういうレポートがもし真実だとするなら、人間は微生物と一緒にものを感じ、行動を選択しているということになる。だから「人馬一体」ならぬ「人菌一体」で僕たちの身体は機能しているということだ。

微生物を介して僕たちは自分の身体を成り立たせ、同時に外の世界とコミュニケーションを取っている。マイクロバイオームの概念は人間の個体もまた無数の小さな生命の生態系であることを教えてくれるんだね。

【追記】ちなみにマイクロバイオームの世界に入ったきっかけは、ブダペストで開催されている国際プロバイオティクス学会への参加でした。招待してくれたオーガナイザーのPeter Kurtiさん、Alojz Bombaさん、どうもありがとうございます。

ユニークであること、しなやかであること。生物のサバイバル条件について。

ここ最近は微生物の世界をより包括的に理解すべく、生物の進化や地球環境の歴史を勉強していました。そこで色々を考えたことをメモ。

ユニーク&しなやかであること

生物の歴史を見ていくと「強くあること」「多数を占めること」を目指すとわりとすぐ滅ぶようです。自分が強すぎると種の多様性が減って、それが環境の激変を招いてしまうから。

ではサバイブするためには何が大事かというとこれはもう「ユニークであること」「しなやかであること」の2つに尽きます。

安定期は「強いもの」の天下ですが変化期には「しなやかなもの」が生き延びやすい。
環境が激変するときはエサの供給が不安定になります。いっぱい食べることで強さを保っていた生物は環境の変化のなかで飢え死にしやすい。代わりに他の誰も食べないものをエサにしていた小さくてすばしっこいヤツが変化に耐えることができます。

「強い多数派は絶滅する」というセオリーの理由は①生態系自体を生物がつくっている ②ある生物のウンチを他の生物がエサとして食べる、の2つ。他の生物がいなくなると生態系が成り立たなくなり、かつエサがなくなる。だから他の生物を制圧しすぎる種は自分の強さで滅ぶ。
その典型が恐竜のような「強い個体」だったんですね(絶滅の引き金は隕石でしたが)。

ただ詳細に見ていくと「新環境に適応する」というイノベーションだけがサバイブする道ではないのも面白いところ。

あえて時代の波に乗らず古風なライフスタイルを貫くことで時代の荒波を超えるというやり手もいます。僕たちに身近なパン酵母はその一派だったりします。のるかそるか、中途半端だと淘汰される。恐竜が消えた白亜紀の大絶滅では、意外なことにヘビやワニなどの爬虫類はしっかりサバイブしていたようです。恐竜は爬虫類よりも進化した恒温動物(自分の体内で熱を発する)でしたが、それゆえにエサが大量に必要で進化が逆にアダになった。ワニやヘビは自分の体温をコントロールできないかわりに省エネだったので生き延びた。

イノベーションの最先端を走るのと、あえてその波を無視してわがみちを行くのとどちらも「ユニークであること」は変わらない。サバイバルには強さはあんまり関係ない。他の存在との差異と、環境の変化に対して「選択する」というしなやかさを持っているかどうかが明暗を分ける。生物界スゴい…!

「レバレッジをかけない」というサバイバル戦略

進化した種ほど他の生物に依存して生きているのですが、生物がほとんどいない超太古の環境で生存していた種は生物の多様性がなくてもサバイブできます。

その代表例が藻の祖先であるシアノバクテリアで、太陽光と二酸化炭素があればゼロから有機物をつくれる。こいつは20億年以上前から一貫して生態系における多数派です(人間の常在菌でもある)。

鉄とか硫黄を食べて生きる細菌類や、太陽光で生きる藻類は他の生物を食べて栄養を摂取する「有機物パラダイム」で生きている現在のマジョリティ種よりもしぶとい。
ビジネスモデルでいうと「昔から愛される街場の大衆食堂」みたいにレバレッジゼロだけど盤石!という強み。有機物食べて呼吸する種はレバレッジかけまくりのIT業に似てると言えそうです。
人間のような進化を辿った種は、複雑な食物連鎖による有機物の循環が前提になって生きています。これは複雑なロジスティクスやエネルギーインフラが前提になったITビジネスの仕組みのようなもの。古細菌や藻は自給自足の農家の直売所みたいな複雑な前提がいらないモデルで生きている。

「他の存在がつくってくれるインフラ」をレバレッジにして生まれる強さは、その成り立ち自体に脆弱性をはらんでいます。あまりにレバレッジをかけすぎると、他の存在が滅んでしまうので強さを担保する前提条件が崩れてしまう。

つまり「強さ」とは強い個体の「内側」ではなく個体を取り巻く環境という「外側」に存在している。進化している/していない、強い/弱いのどちらかが大事なのではなくて、進化しているのとしていないのがなるべくたくさんのレイヤーで棲み分けしている状態が「生命がサバイブするための多様性」で、これを保証するのが「ユニークさ」と「しなやかさ」であるということなんですね。

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花椿最新号“hello my future”に掲載されました。

資生堂が発行しているフリーペーパー花椿の特集にに発酵デザイナーの活動が掲載されています。”Future”をテーマに、様々なジャンルの7名の「未来をつくる人」として取材してもらいました(1pまるまる素敵な写真とともに取り上げられています)。

BRUTUSと同じくとっても素敵な編集チームが山梨にやってきてくれて、一緒にお味噌を仕込みながら文化の未来についてお話ししました。

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左から引き出しの多さが只者じゃないライターの上條さん、キュートなロシアの写真家エレナさん、資生堂の担当渡部さん。エレナさんは僕と味噌屋の五味兄妹がやっているラジオ番組にも出演してもらいました。

・ロシアからやって来たアーティストの話 | YBSラジオ 発酵兄妹のCOZY TALK

花椿といえば。スキンケア業界のデザイナー出身の僕としてはずっと憧れの雑誌でした。僕が20代の頃は、まだ仲條正義さんがアートディレクターとして健在で、めちゃ尖ったデザインと記事にいつも心ときめかしていたものでした。
それから10年以上経った今でも、ページをめくるごとに驚きのある紙面づくりが炸裂のハイクオリティすぎる内容です。これでフリーかよ…!

そんな花椿に、微生物研究者として載る日が来るとは。人生は実に不思議な縁に満ちているものです。編集チームの皆さま、どうもありがとうございました。ちなみに、

とのことなので、山梨近辺のみんなは五味醤油で花椿をゲットだ!

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感性の記憶。

ベトナムを旅してきました。用事のない、久しぶりにリラックスした旅らしい旅でした。
そんななかで、とても印象的なことがありました。

中部ののんびりした街、フエを散歩している時に5ドルで泊まれるバックパッカー宿の軒先のカフェでお茶している旅人がいて、「わっ、いいなあ。僕も2〜3ヶ月何くらい仕事も金も心配しないでアテのない旅したい!」と一瞬うらやましくなったんですね。ただそれは過去の僕からの声で、今の僕は「もうやらないかな」と言っている。この「相反する声」から気づいたことがあったんですね。

知識の記憶とは別に「感性の記憶」があります。

自分がむかし感じたこと、その肌触りや香りが今の自分の身体のなかに流れ込んでくるような体験、誰しも感じたことがあるんじゃないでしょうか?
かつての自分に、エピソードで思い出すよりも鮮烈に、同時にノスタルジックな感情といっしょに再会する。これを「感性の記憶」と定義したいと思います。

知識と違って、感性の記憶は好きな時に呼び出せるものではなくて、特別な体験をした時にふと蘇ってくるものです。自分がこれまで感じてきたこの「感性の記憶」を喪失してしまうと、人生が薄っぺらいものになってしまうのかもしれません。
10歳の時の自分、20歳の時の自分、40歳の時の自分にはその時にしかない「感性の体験」があって人生の厚みをかたちづくっていく。ただその記憶は定期的に思い出してあげないといけない。例えば旅をしたり、何か表現してみたり、誰かと特別なシチュエーションで一緒にいたりすると「感性の記憶」が蘇る。

感性の記憶の蘇りは「違和感」となってあらわれます(だって、自分のなかに異質なものが流れ込んでくるわけだからね)。バッカパッカーを見て「いいなあ」と言ったのは20歳の僕で「今はやらないかな」と言ったのは今の僕。20歳の僕と今の僕は反発しあっているわけではなくて。

「兄ちゃんいい人生送ってんなあ」
「おっさんもな!」

と笑顔でVサイン交わしてるんですね。

歳を重ねるほどに思考が柔軟に、他者に寛容になる人は「感性の記憶」を豊かに持っている人です。いつでも「自分のなかにいる違う感性の過去の自分」と対話しているから、他者に対しての好奇心を失うことがない。旅や芸術に触れるのは教養のためではなく自分のなかの他者を忘れないためですね、きっと。

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『発酵文化人類学』まえがき

2017年に出版した『発酵文化人類学』。
口コミでだんだんと広がっているようなので「気になるけど、どんな本なのだろうか?」という人のためにまえがきを公開することにしました。
今年もたくさんの人に読まれますように。

発酵をめぐる冒険に、いざ出発!

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みなさまはじめまして。発酵デザイナーの小倉ヒラクです。

「発酵デザイナー?いったいナニモノ?」

まあそうなりますよね。
僕は、目に見えない微生物の世界のナビゲーター。普段意識しないけれど、実は僕たちの暮らしを支えている発酵菌たちのエヴァンジェリスト(伝道師)として、日本はもちろん世界の東西南北あちこちを巡りながら、世界中で育まれた不思議な発酵文化を皆さまに伝える仕事をしているのです。

「伝えるだって?どんな風に?」

そのためにこの本があるのだ!
CMや雑誌の特集で見かける「発酵」というキーワード。一般的には「美味しい」とか「健康にいい」とか実利的な側面で語られることが多いけれど、実は文化的に紐解いてみるともっと奥深い魅力を発見することができる。
世間では「発酵ラブコミュニティ」のメンバーが密かに増加の一途を辿っているのだが、これは「おいしい」「健康にいい」のその奥に隠された「ひみつの扉」を開けてしまった人たちのこと。

「発酵のひみつ」をひとたび知れば、見えないはずの微生物たちと友だちになれる。
「微生物の視点」を借りれば、この社会のカタチが今までと違って見える。

この本を読めば、発酵の仕組みがなんとなくわかるのはもちろん、微生物と人間の関わり、僕たちが長年培ってきた暮らしの文化の奥深さ、日本人がどのように「見えない自然と向かい合ってきたのか」というスタンス、そして美味しさや美しさを感じる美意識のカラクリなど、いろんな「ひみつ」が見えてくる。

文化の本質は隠されている。
目に見えない自然のシンボルである微生物たちは、隠されたもの「ひみつ」をこっそり教えてくれるメッセンジャー。
微生物の目線で社会を見てみよう。そこには「ホモ・ファーメンタム(発酵する人類)」が愉快に食卓を囲んでいる姿が見えるはずだ。

発酵文化人類学とは何か?

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それでは本編を始める前に、本書のタイトルにもなっている「発酵文化人類学」の定義をしたいと思います(なぜなら僕が勝手につくった造語だからね!)。

僕は大学時代に文学部で文化人類学を学んでいました。
十代の終わりからバックパックかついで世界中あちこち旅して、色んな文化を見て回るのが好きでして。文化人類学という学問は「なぜ世界にはこんなにもたくさんの文化があるのか」という疑問に視点を与えてくれたんですね。
僻地にせっせと足を運んで宝飾品や器を集めたり、祭りや入れ墨や建築の細かい特徴を写し取ってコレクションにしたりする。旅が終わったら書斎に戻ってきて、素材を分類して分析し、具体的なオブジェやモチーフの裏に潜む「文化のひみつ」をあぶり出す…

という文化人類学者の姿は、バックパッカーやってモラトリアムを満喫していた自分を勇気づけてくれる憧れの存在でした。

そして時は流れ、僕はデザイナー兼発酵研究家という不思議な仕事をするようになり、僻地にせっせと足を運び、お味噌だのお酒だの、醸造用の道具だの、蔵の土壁のカケラだのをせっせと収集し、自宅に持ち帰った素材を顕微鏡で覗き込みながらああだこうだと研究するようになりました。

あれっ…なんかこれって大学時代に夢中だった文化人類学の研究に似ているぞ?
と気づいた瞬間に「発酵+文化人類学」という発想が浮かんだのだな。

発酵の道は「生命工学と社会学の交差点」。
お酒が発酵する現象は、化学式に変換できる=生命工学。けれども、どうして人それぞれ好きなお酒が違うのかは、化学式にはできない=社会学。
文化人類学も同じような構造になっている。
様々なオブジェや民話をデータとして分解して共通項を再構築して体系化する=情報工学。けれども、どうして人類がこんなにも多様な文化を生み出したのかは、想像力の発露がいる=社会学。

具体的なモノからスタートし、抽象的なメソッドとして体系化する。そしてその先に歴史の奥に隠された「世界のひみつ」の扉が開く。そのドアを開けるにはクリエイティブな感性と広い視野でものを見る思考力が試される。
これはまさに、文化人類学からスタートし、デザイナーを通過し、発酵に行き着いた僕にしかできない試みではないか…?と勝手に思い込んでしまったが最後、各地で面白い発酵食品や微生物を見るたびに「僕は今、発酵文化人類学者なのだ…!」とがぜん研究モードになっているわけなのでした、

さてでは「発酵文化人類学」を暫定ですが定義してみましょう。
発酵文化人類学とは、

・ 発酵文化を通して、人類の暮らしの文化や技術の謎を紐解く学問

のこと。生命工学=バイオテクノロジーの応用研究のように、新しい技術や商品を開発するのではなく、すでにあるものを集めて編集しなおし、文化や技術の歴史に新しい視点を持ち込む。つまり、発明するものは「技術」ではなく「視点」。
「発酵」や「微生物」というキーワードによって、今まで関係ないと思われたものの関連性が明らかになったり、当たり前すぎて見落としていた文化の重要性が思いもかけないスケールで浮上してくる…そんなことを目指していきたいと思っています。押忍!

 僕が発酵デザイナーになるまで

「どうして発酵デザイナーと名乗ろうと思ったんですか?」

はじめましての人にほぼ確実に聞かれるこの質問。いつも「いやあ、微生物が好きでね〜」と照れ笑いしてごまかしているのですが、これを機に紆余曲折をちゃんと説明してみることにしようではないか。

大学時代の終わり、僕は旅の総決算として一年大学を休学してパリで美術の勉強をすることにしました(外国にしばらくの間住んでみたかったのが本音)。僕がいたのは、パリの東端ベルヴィルという移民街。フランス人よりもアフリカやアジア、東欧からの移民のほうが多いカオスな環境で楽しく過ごして帰国してみると、就職活動の時期はとっくに終わり、就職口が決まらないまま卒業。そのままブラブラしているうちに「絵を描けるんだったら、イラストやデザインの仕事もできるだろ」と細々とした仕事が来るようになり、そのうちスキンケアの会社のデザイン部門にひろわれ、そこから独立して自分で事務所を構え…
と、気づいたらいっぱしのデザイナーになってバリバリ仕事していたのが二十代半ばの頃。
(就活せずにパリで美術の勉強したのが転機になった。人生に無駄はないぜ)

無職でやることなくてブラブラしていた状況から、「どれだけやっても終わらないほど仕事がある」というのが嬉しくて、夜遅くまで働いて、その後朝方まで友だちと遊んで…というのを繰り返していたら、ある朝「あれっ?カラダが動かないぞ」というゾンビ状態になっていました。
歩いていると目眩がして倒れるし、雨が降ったり風が強いと耳鳴りがヒドい。全身に血が回っている感じがしないし、何を食べても美味しくないし、アタマも全然回らない。そのうち小さな頃の持病だった喘息やアトピーがぶり返して、咳のしすぎで夜眠れないし、首や関節の皮膚が乾いてボロボロ。
そんな頃に出会ったのが、山梨の老舗味噌屋、五味醤油の末娘(スキンケア会社の同僚)と、彼女の大学の恩師である発酵学者の小泉武夫センセイ。味噌屋の娘と小泉センセイの研究室を訪ねると、小泉センセイは僕の顔を見るなり、

「お前ッ…さては免疫不全だな。味噌汁飲め!納豆と漬物食え!」

と猛烈プッシュ。
で、それを実行してみたところ、あら不思議、だんだんと朝の低体温&低血圧がなくなり、それとともに喘息もアトピーをおさまっていったのでした。
それから小泉センセイの著作を読んで「発酵って面白いなあ」と興味を持ち始めた頃、味噌屋の末娘から「ヒラクさん、独立したんだったらウチの味噌屋のデザインやってくださいよ」と頼まれ、山梨の蔵を訪ねることに。
大きな木樽がたくさん並ぶ味噌蔵の、ひんやりと心地いい空間にしばらく佇んでいたところ、突如、

「ヒラク君…聞こえてますか…僕たち、発酵菌です…。キミの力で…僕たちのことを、人間界に伝えてほしいんだけど…今からこっちの世界に来られますか…?」

と、微生物が自分を呼ぶ声が聞こえたような気がしたんですね(たぶん錯覚だけど、思い込みが人生を変えるということもままある)。
そのお味噌屋さんの仕事を皮切りに、酒蔵や醤油蔵、ビールメーカーなど、全国各地の醸造家たちからデザインの仕事を頼まれるようになり、いつしか「やたら発酵に詳しいデザイナーがいるぞ」という噂が広まり、発酵に関わるデザインの専門家のようになっていきました。
「これはもう、普通に『デザイナー』と名乗っている場合ではないのでは?ていうかもはや本格的に微生物界に参入するしかないのでは?」
と覚悟を決め、

「自分は発酵デザイナーである。これからは発酵と微生物に関わる仕事しかやらないのでよろしく」

と宣言したのが2014年のこと。
今までの仕事に区切りをつけてヒマをつくり、三十歳を過ぎて東京農業大学の醸造科に研究生として入りなおし、改めて微生物の世界を本格的に学ぶことに。
この瞬間、世界で唯一の「デザイナー兼微生物研究家」という不思議な肩書が生まれたのでした。

「発酵をめぐる冒険」にいざ出発!

「そんなニッチすぎる肩書で仕事あるのかよ?」

と周りは思ったかもしれないけれど、僕には勝算があった。
本編のなかで詳しく説明するが、発酵産業は巨大な産業であり、日本の市場だけに限定しても、食品だけで二兆円、医療や環境技術などを含めると10兆円を楽に超える。
建設業界に匹敵する巨大なマーケットであり、その広大なブルーオーシャンにいるデザイナーは僕ひとり。
微生物の世界は、目に見えないが巨大な金鉱なのであるよ。
「発酵デザイナーです。以後よろしく」と宣言してから、予想もつかないような不思議な依頼が次々と舞い込んできた。

発酵文化を旗印にしてまちおこしをしたい自治体から。
新しい技術を開発したものの、普通の人にそれをどう伝えていいか困っている企業から。
バイオ学科の理系学生と、デザイン学科の美術系学生をコラボさせたい大学から。
パッケージやパンフレット、WEBをデザインする「いわゆるデザイナー」の枠を超えて、半分研究者、半分コミュニケーターとして、技術や文化を橋渡しするのが、発酵デザイナーの役割だった。世の中には色んなニーズがあるもんだね。

そして。
発酵文化は地方の文化でもある。依頼の大半は、東京以外の地方の小都市や農漁村から。山にも平野にも海にも川にもそれぞれの風土に育まれた発酵文化がある。
そういう場所でデザインのプロジェクトをやるためには、その土地の歴史や風俗、地質をリサーチをしっかりしないと、説得力あるデザインはつくれない。

賢明な読者の皆さまはお気づきであろう。
ここで大学時代に学んだ「文化人類学」の方法論が活躍しまくったのであるよ。郷土資料館を訪ねて歴史を掘り起こしたり、村の長老から昔の暮らしぶりの聞き取りをしたり、農業や醸造の現場を訪ねて生産過程を詳しく調査したり、文化人類学者のフィールドワーク(現地調査)のノウハウが学問ではなくデザインの現場でめちゃくちゃ有効だった。
そういう意味では、僕は発酵デザイナーになったのと同時に、文化人類学者になる憧れもいくぶんかは叶えたのかもしれない。

で。僕の身の上話はもうちょっとで終わるよ。

色んな土地に行って見聞きしたことを、自分のブログでまとめていったところ、それを読んだ雑誌やWEBメディアの編集者からコラム執筆の依頼が来るようになり、全国各地の発酵食品や郷土文化のことを文章で伝える仕事も増えていった。
すると、それを読んだ自治体の職員や食関係の仕事をしている人から「ウチの発酵食品食べに来ませんか?」という、もはやデザインとは全然関係ないオファーが来るようになった。

気づけば、民俗学者の宮本常一のように(というと大げさだけど)、各地を歩いて発酵文化と微生物を見て回ることが仕事のようになっていた。
文化人類学、美術、デザイン、発酵…といっけん回り道ばかりしているように見えた僕の人生のパーツは、味噌蔵で出会った微生物たちの導きによりひとつのパズルに組み上げられた。

本書「発酵文化人類学」は、僕がデザイナーの手で全国津々浦々歩いて拾ったものを、発酵のスペシャリストの目で観察し、文化人類学のアタマを借りて掘り下げたフィールドノートだ。人生回り道するあいだに拾った雑多な知恵と技術を「ブリコラージュ」してこしらえた登山道具で、自分を導いてくれた農大の大先輩たちの登った山のその先を超えていきたい。

何千年も人類を魅了してやまない、発酵という険しくも優しさに満ちた高い山の頂(いただき)を目指して、いざ出発!


 

この続きが気になるひとは、街の本屋さんへGO!
本屋さんに行く時間すら惜しい!という方はネットでどうぞ

 

2018年は、前に進む自分を信じる年だ。

新年を迎えました。みなさま今年もどうぞよろしくお願いします。

2018年はどのような年になるのであろか。
毎年恒例のブログ書き初め、お暇な時にご一読ください。

・2017年は、自分のイカダで未知の海に漕ぎ出す年だ。

・2016年は「たましいの愛」に溢れた一年となりますように

変化する自分を信じるのは難しい

2017年の年始のエントリーにこんなことを書いた。


“これから数年間かけて、僕たちは自分たちの住む社会のあちこちが「腐ってダメになっていく」という状況を目にすることになる。「ある日突然カタストロフィが起こる」というドラスティックな流れではなく、ある日周りを見まわしてみると、あっちもこっちもダメになっていた、というかたちで僕たちは危機を迎えることになる。

だから2017年は、後から振り返ったときの「地味だけど大事な分岐点」になる。

大きくなっていく陰の流れに呑み込まれていくのか、自分が小さな陽になるのか。
濁流に負けずに、自分の船を手づくりする。そんな人がこれから10年か20年くらいの新しい世界を切り拓いていく人になるのだと思う”


 

一年経って振り返ってみると、けっこう的を得たこと言っているぜ、自分。

さて。「変化に向かっての船出」のその次が問題だ。
何かを始めることも難しいが、それを継続させるのもまた難しい。

2018年は「前に進む自分を信じる」ことを問われる年になる。という予感がある。

もう言うまでもないけど、今年はさらに急速にこれまでの社会の規範が崩れ落ちていく年になる。だからこのブログを読んでいるみんなのような人たちは、それぞれの領域で「崩壊した後の世界」を先取りして生きる準備をしている。

崩壊する社会とは「一つの規範で動くシリアルな現実」であり、その先に僕たちを待っているのは「複数の現実が並行するパラレルな現実」だ。

その前提のうえで。
今年はあまりにも社会の規範の崩壊と変化が激しいために「本当にこれでいいのか、自分?」とハードに問われる年になるのでなかろうか。

たいして変化しない社会においての「自分のモノサシの選択」はある種のファッションとして機能する。しかし不可逆の変化が露呈した社会において「自分のモノサシでの選択」を貫きとおすのは覚悟がいる。

崩壊から逃れられない状況を目前にすると、不思議なことに「やっぱり昔のままが正解だ。昔に戻ろう」という揺り戻しが世論として湧き起こるだろう。しかしそれは幻想であって「崩壊の予兆」でしかない。巨視的に見れば。

しかしだ、変化の現場に身をおいて「巨視的に見る」のはたいへんに難しい。「変化なんて必要ないんだ!今までの通りにやらないから上手くいかないんだ!」という幻想の世論のなかで「いや、それは違うんだ。自分は先に進まなければいけないんだ」と信じ続けること。このハードルを超えることが今年最大のチャレンジになる人が多いと思う(その筆頭は僕自身)。

徒党を組まず、でも絆はともに

「自分を信じる」ためには、逆説的だけど仲間が必要だ。
同じく変化に向かっていく人とお互いを励まし合っていくことが大事になる。

のだが。ポイントは価値観が同じ者同士で「党派をつくらない」ということだ。徒党は組まずに、ゆるやかに絆を共有していくことが大事になるんでなかろうかと僕は思っている。

それはなぜかというとだな。党派をつくると「孤独のなかで自分を信じる」というサバイバル力自体が減退していくし、次の変化の加速が起こった時の足かせになる。

境遇や領域は離れているけれど、離れた場所からお互い応援してるし、いざ何かあったら助けに駆けつけるぞ!という「徒党は組まず、でも絆はともに」という関係性が自分の支えになってくれる、はず。

変化の時代に「前に進む自分」を信じるのは難しい。しかしその困難さが、新しい時代の絆をつくってくれるのだと思う。

それでは良い一年を。

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一球入魂!旅と学びと出会いに満ちた2017年の振り返り。

『発酵文化人類学』を書いて全国に売りに行く。
2017年にやったことはそれだけ。一つのことに全力投球!の一年でした。

・色んなことに手を出さない
・全力でつくったものを価値化する
・ローカルを第一に考える
・真っ当かつ愉快に問題を解決する

ここ数年間に考えてきたことの総決算が今年だったかなと思います。
ということで毎年の恒例の一年の振り返り!

発酵文化人類学の執筆&出版ツアーで旅しまくり!

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のんびり×ジモコロ×ソトコトで回った秋田の旅

年明けから春先までは『発酵文化人類学』を書き上げるために各地をフィールドワークして周り、本が出てからは出版ツアーで全国55ヶ所を行商して回りました。

・発酵文化人類学ができるまで。ヒトと自然のつながりを探る旅

・全国縦断55ヶ所、2000人に本を届けた出版ツアーの成果発表!

つまり今年は旅三昧!
たぶん一年の半分も家もいなかったし、総移動距離は地球1.5周(6万kmくらい)に達するのではなかろうか…。

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本を書き上げた奄美大島のカフェテラス

ここまで家にいない&移動が多いと、もはや平常運転の仕事は不可能!ということで、今年はデザインやリサーチ、執筆の仕事のほとんどをストップし、『発酵文化人類学』に全てを賭ける年となりました。しかも旅費は当然自腹なので、本が売れる or DIE!

かくも極端な状況に自分を追い込んでみると、結果を出すための執着がハンパない感じになります(さもなきゃ一文無しだからね)。

・一週間で重版出来!の舞台裏。マーケットではなくコミュニティに届ける。

これまでのデザイナー的な働き方では、いくつものプロジェクトを並行するのが当たり前なので、あるプロジェクトがダメでも他で補える。でもそれは裏を返せば一つのプロジェクトをブレイクスルーさせる熱意が薄まるということでもあるんだよ。

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本の校了作業で息絶える寸前のハシモト編集担当。ハードな一年おつかれ!

一本の映画に全てを賭けてロードショー営業に飛び回る映画監督、一枚のアルバムに全てを賭けてツアーに飛び回るミュージシャンのようなワークスタイルに挑戦してみることで、

結果を出す!さもなきゃ死ぬ!

という真剣勝負の醍醐味を味わうことができました。無事一年を越せそうでよかったぜ…。

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ちなみに今年も海外での活動の機会をもらいました(写真はブダペストのプロパイオティクス学会)。かつて住んでいたフランスからもご縁をもらって、来年はさらに活動の舞台が海外に広がっていくことになります。やっほー!

 

脳みそがオーバーヒートするほど勉強しまくり!

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本を書き上げて燃え尽き状態でひたすらサインするの図。アタマ真っ白でした

本を書くために古今東西の専門書や論文を読みまくり、出版ツアーの果てしない移動時間に本を読みまくり、たまに家に帰っても仕事ストップしているのでまた何か読んで…ととにかく読書しまくり、勉強しまくりの一年でした(通読したかどうかを問わなければ1000冊以上読んでると思われます)。

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『発酵文化人類学』の参考図書が充実しぎて色んな書店のブックフェアになりました

子どもの頃からたくさん読書して訓練してきたはずですが、今年は情報をインプットしすぎて後半から脳みそが「もうムリです!お腹いっぱいです!」と悲鳴を上げる異常事態に。自分のチ的キャパシティの限界を思い知る一年となりました。

来年はさすがにちょっとペースを落として、またデザインやものづくりに注力することにします(少なくとも本はもう出さないよ)。

・2017年の読書まとめ。旅とこれからの未来と人類学。

専門誌以外のメディアに露出しまくり!

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食はもちろん、デザインやアートや文芸など活動の幅がやたら広がりました

これまでも色んなメディアに発酵デザイナーとしての活動を取り上げてもらってきましたが、今年は本の出版とあわせてとんでもないメディアの露出量でした。特に、

・マスメディア(新聞や週刊誌、テレビやラジオ等)
・カルチャー誌、文芸誌

への掲載が飛躍的に増えました(そのかわりWEBメディアが減った)。

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美術手帖『新しい食』の表紙はなんとこうじづくり!

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ブルータス『危険な読書』ではなんと特集巻頭に掲載!

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文芸誌『Kotoba』でも大きく取り上げてもらいました。

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新聞にもたくさんの書評が掲載されて…

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各地のラジオやテレビにも出演しました。おかげで実家の両親の「うちの息子、大丈夫なのかしら…?」という不安がかなり解消されたようです。

取材してくれた皆さま、書評してくれた皆さまどうもありがとう!

各界のスゴい人たちと対談しまくり!

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観客100人超えのスタンダードブックストアイベント。柿次郎さんと藤本さんと中川おじさんと

出版イベントとメディアの企画でめっっっっっちゃたくさんの人と対談&鼎談した一年でもありました。醸造家はもちろん、クリエイターや研究者など多種多様な取り合わせで、いま発酵界において最も異種格闘技戦をしている自信があるぜ。

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学生時代から大ファンの探検家、高野秀行さんと母校早稲田の広報メディアで対談。馬場でごひいきのミャンマー料理店ノングインレイにて。光栄の極みだったぜ…

・謎の未確認”発酵”物体を追え〜高野秀行×小倉ヒラク

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気鋭のミニマルバンド『東京塩麹』とのびっくりコラボは音楽メディアOTOTOY企画。「塩麹とはつまりミニマルミュージックのようなもの」とテキトーすぎる解説していまいました。東京塩麹とはまた来年ご一緒する予定。良いご縁になりました。

・“発酵”ってなに?──東京塩麹が塩麹作りを体験! 発酵業界参入に名乗りをあげる

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松岡正剛さんとの対談本を出した情報学者ドミニクさんとの合同出版イベント。数少ない東京での出版イベントのハイライトとなりました。びっくり仰天!の高速トークについてはwiredでノーカット版が読めるよ。

・微生物は、ヒトに“機能”をプレゼントする!? | 醸され「発酵メディア」研究

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日本酒界の生きるレジェンド、竹鶴酒造の石川杜氏との対談@広島T-SITE。日本酒の起源がディープに紐解かれる貴重な機会に、観客一堂大興奮(いちばん興奮してたのは僕かも)。打ち上げも盛り上がりまくって石川さんと朝3時まで酒の話を語り続けました。

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出版ツアー屈指の盛り上がりを見せた沖縄。沖縄らしいユニークなパンをつくる宗像堂、泡盛古酒のルーツを継承する崎山酒造廠、そして流大の醸造博士外山さんと沖縄の発酵文化の面白さを語り尽くしました。最高のコーディネートと場づくりをしてくれたアイデアにんべん黒川さん&カフェユニゾンの三枝さん、沖縄サイコーだよ!

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ツアー序盤のサプライズは愛知の大盛況っぷり。仲良しの三河みりん、知多の澤田酒造、岡崎の種麹屋ビオックのセンス最高の旦那たち、そしてりんねしゃの大島姐さんの「愛知発酵チーム」と発酵談義に花が咲きました。沖縄と愛知は来年以降も色々ご縁が発展しそうです。みんな、どうぞよろしく!

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春に福岡、年末に渋谷で二回 対談した起業家家入一真さん。「なめらかなお金」の革命を起こす過程を間近に感じられて本当に良かった。福岡チームのみんな、来年もまたご一緒しましょう〜!

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大阪の大好きなスタンダードブックストアでの文化人類学者、小川さやかさんとの対談。愛と爆笑に包まれたサイコーの夜でした。今年はスタンダードブックストアの中川さん、阪急百貨店の吉田さん、みつか坊主の斉藤兄さん、Re:Sチーム などなど、関西の仲間たちと縁を深めた一年でした。

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異次元すぎる能楽師、安田登さんとの対談@京都丸善本店。二人でひたすらホワイトボードに古代漢字を書きながら古代アジアの身体感覚と発酵文化を掘り下げまくる前代未聞のトークとなりました。参加者から「興奮しすぎて最後半分彼岸に足を踏み入れました!」とのコメントが。年末には安田さん主催の寺子屋にも呼ばれて延長戦をやりました。

他にも載せきれないほど全国各地でたくさんの素敵なクリエイターたちとのご縁をもらいました。去年あんまり人前に出なかったぶん、2017年はひたすら人と会いまくって刺激をたくさんもらいました。いやあ、まだまだ精進せねば…!

2018年の展望は?

ということで。一冊の本から色んなことが発展していった2017年。
今年ここまでやりきったことによって、ついに「発酵デザイナーとしてのキャリア」の扉が開いたような感触がありました。
来年2018年はさらに自分の興味を突き詰めて発酵デザイナーならではの仕事を生んでいきたいと思います。

で。
来年やることをちょっとだけ予告しておきます。プロジェクト自体の数は少ないんだけど、どれもなかなか愉快でやりがいのあるものばかりになりそうです。

▶セルフビルドの発酵ラボをつくるよ!

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ジブリの会報誌『熱風』の読者はすでにご存知だと思うんですけど、微生物研究をさらに本格的にするために発酵ラボを建設中です。

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現状キッチンの一角でやってるんですけど、これだとちゃんと分離培養ができないのでちゃんと無菌状態を保てるラボを新設しているのさ。

・国際バイオセーフティレベル(たぶん2)を確保しつつ
・コンテナをベースにセルフビルドで
・限りなくオフグリッドな

発酵微生物ラボになる予定。敷地は我が家から徒歩30秒の見晴らし最高の野っ原。年内はひたすら土地の開墾に精を出していました。汗
ちなみにラボ建設予定の敷地には、作家の川内有緒&イオ夫妻もセルフビルドで小屋を建てる予定。その模様はジブリの会報誌の連載に掲載されていくようです。けっこう大きな敷地なので、ラボや小屋だけでなく敷地全体をイケてるランドスケープにするよ!

今回はクラウドファンディングやメディア提携などはせず、自力かつ自腹かつ地道にスタートしています。特に〆切やゴールを決めないで、やりながら考えていきたいんだよね。
このラボでやる研究内容が見えたらまたブログでお知らせしまーす。

▶3月に山梨で発酵のお祭りをやるよ!

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三年目を迎えた地元山梨のYBSラジオ『発酵兄妹のCOZY TALK』がご縁になって、発酵兄(五味仁)がYBSと甲府市と一緒に駅前広場で大きな発酵のお祭りをプロデュースします。

五味兄妹や発酵デザイナーゆかりの愉快な発酵仲間たちが全国から集まるスゴいイベントになりそうです。発酵弟(ヒラク)と発酵妹(五味洋子)も頑張って兄をサポートするぞー!登場予定のゲストをちょっとチラ見せするとだな…

・寺田本家 from 千葉県神崎
・三河みりん from 愛知県碧南
・ミツル醤油 from 福岡県糸島
・USHIO CHOCOLATL from  広島県尾道
・東京カリ〜番長 from 東京
・ワインツーリズム&新田商店 from 山梨

をはじめ、超豪華な発酵オールスターズが山梨に集まります。兄の人徳スゴい!
当日は出店だけでなく音楽のライブやワークショップ、トークイベントもあるよ。みんないまから3/3の予定空けておいてね〜!

手前みそですが今年は本当に頑張りました。来年もさらに醸してくぞ〜!
みなさま良いお年を。

今年最後の嬉しいニュース。青山ブックセンター本店の2017年年間ランキング思想部門で『発酵文化人類学』がなんと1位!応援してくれたみなさま、ほんとにありがとう〜涙

出版の未来・こじらせサバイバル・信じ合う社会。2017年を代表するエントリーまとめ

2017年度によく読まれたエントリーのまとめ。

今年はとにかく『発酵文化人類学』関連のエントリーが多かったのですが、それ以外の読み物記事もよく読まれました。特に今年は公開後すぐに10000PVを超える記事がいっぱいあってビックリしました。だだだ、誰が読んでいるの…?

ということで、2017年を代表するエントリーはコレだ!

2017年を代表するエントリー3つ

ヒット記事が連発したなかでも最も読まれかつ2017年を代表するエントリーはこちら。どれもtwitterやfacebookのタイムラインで見かけた人も多いんじゃないかしら。

・一週間で重版出来!の舞台裏。マーケットではなくコミュニティに届ける。<2017 6/5>
『発酵文化人類学』をベストセラーにすべく編集チームで練りに練りまくった販促作戦の舞台裏を公開したエントリー。出版業界の人たちにたくさん読んでもらったようで「ウチでもこういう売り方したいです!」と相談がけっこう来ました。来年は出版における流通革命が起きそうですね。出版業界って、なかなか夢のある世界だと思うんだけどなあ…

・元才女おばさん。アラサークリエイティブ女子が直面する危機のその先。<2017 11/17>
才能あふれる妙齢女子が迷い込むラビリンスについての考察エントリー。書いた本人すら「いたたたた…」と胃がキリキリしたので二ヶ月寝かせて満を持して公開したら、各方面から「痛すぎる…!」という阿鼻叫喚、「別に女性に限らないだろ!女の敵!」という糾弾、「これで安らかに成仏できます…」という少年マンガで主人公が妖怪を倒した時の捨て台詞みたいなのが多数寄せられました。ちなみに一番多かったコメントは「ワタシ元才女おばさんじゃないけど、すっごくわかる〜!」でした。お、おう…。

・性善説と性悪説、社会を動かすのはどっちだ?「信じ合う社会」へのいばらの道。<2017 9/15>
今年台頭したpolcaやvaluのようなフィンテックサービスと市民としての成熟を関連させながら「性善説で動く社会」の困難さを考察しました。記事のもとになったtwitterのつぶやきもたくさんリツイートされてコメントが寄せられました。さて、デジタルネイティブ世代の僕たちは過去成し遂げられなかった「信じ合う世界」を実現することができるのでしょうか?

各トピックスごとの人気エントリーまとめ

▶『発酵文化人類学』関連企画
2月に出版プロジェクトがスタート。そこからソトコトの過去エントリーやスペシャル企画などを公開してお祭りになりました。2ヶ月間の事前予約数はなんと約800冊!みんなありがとう。

・ソトコト連載『発酵文化人類学』事前予約のお願い&お祭りやります!<2017 2/1>

・おうちでかんたん!こうじづくりの動画レシピを公開するよ<2017 2/13>

・微生物染色の極北、藍染(あいぞめ)の秘密に迫る!<2017 3/11>

▶こじらせサバイバル
問題作「元才女おばさん」をはじめ、新手の珍妙なアイドルとしてSNSを席巻した「おじさん界」のデビュー、一部の超アグレッシブなタレントと大多数の保守派に別れる20歳の現在地、ヒカリエでのトークで物議をかもした「暮らしかた病」など、単純にアクセスが多かっただけでなくリアルの場での議論やスピンアウト企画が生まれました。
(今年僕がよく使ったキーワード「発酵」の次は「おじさん」かもしれねえな…)

・話聞いてもらえるおじさん。<2017 10/5>

・『おじさん界』の創設。<2017 2/5>

・二極化する20歳の世界観。早稲田大学で三年間講演をしてわかったこと。<2017 8/30>

・暮らしかたという病。シアーズカタログに見る、暮らしをカタログ化する欲望<2017 9/11>

▶ソーシャル&デザイン
年始の「自分のイカダで漕ぎ出す年だ」と書いたように、激動の時代だからこそ「マイペース」でいる大事さが問われた年だったのではないかしら。つい最先端なもの、トレンドのものに目が向いて焦ってしまうけど、そんな時こそ「自分を信じること」が必要だと僕は思う。

・2017年は、自分のイカダで未知の海に漕ぎ出す年だ。<2017 1/1>

・お気楽に生きるという処世術。<2017 4/5>

・新しいデザインの美意識の話をしよう。リビセンの本を読んで考えたこと<2017 10/2>

▶その他お楽しみ企画
出版ツアーで燃え尽きて書いた「もう仕事しないぞ!エントリー」がやたら読まれたり、仲良しのかもめ柳下おじさんの求人が大フィーバーしたり、パック酒が美味いぞ!という僕の主張に「よくぞ言ってくれた!」と賛同の声が集まったり、業務連絡やニッチな趣味がコンテンツになる楽しさはインターネットならでは。

・【新規案件停止のお知らせ2017】僕は山に籠もって菌になります。<2017 10/12>

・パック酒は美味い!純米大吟醸だけが日本酒の快楽じゃない。<2017 10/13>

・【求むナイスな人材】かもめ柳下おじさんが右腕を募集している件<2017 12/15>

 「読まれていること」を実感した1年でした

ということで。今年の前半は発酵文化人類学フィーバー、後半は読み物エントリーがかつてなく読まれた一年でした。去年よりもさらにアクセス数が伸びましたが、数字以上にコメントやメッセージが多かった印象があります。8年間ひたすらマイペースに続けてきたこのブログですが、今年はじめて

「おおお、ずいぶんたくさんの人が読んでいるんだなあ…」

という実感がありました(月5万人近くが読んでくれたりしてるからね)。
しかもかなりの人がリピーターで、イベントの時に「いつもブログの更新楽しみにしてます!」と声をかけてもらえることも。

ほんと、みんなありがとうね。来年もよろしくどうぞ。

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「読モ」理論。三角形の幸せなコミュニケーション。

文化とは、誰かがつくって与えてくれるものではなくて、自分でつくるもの。

モノだけではなく、モノの楽しみかたもまた文化です。価値観のモノサシをつくることができる「読モ」の層がどれだけ分厚いか、というのが文化の質。最近あちこちで話している「読モ理論」についてソトコトの連載をもとに改めてブログでまとめておきます。

不信感から生まれる悪循環

発酵食品をつくるメーカー(作り手)と、それを味わうユーザー(受け手)。この信頼関係がマーケットおよび文化を形作る。なんだけど、しばしば両者は信頼ではなく疑いの線でつながってしまう。

典型的なケースでいえば、作り手は商品を広告して「ウチはこんなに素晴らしいものをつくっています」とアピールする。ところが受け手は「そうやってメーカーは不当にモノを高く売りつけようとする」と不信感を持つ。その反応を見た作り手は「消費者は文化の質を知らない」とガッカリしてしまう。

文化が生まれるためには、作り手と受け手の幸せな関係が必要。いくら醸造家が良い酒を つくったとしても、それを愛で、評価する受け手がいなければ成立しない。
不信から生まれる悪循環を繰り返すうちに「あれ?この業界なんか行き詰まってない?」という状況が生まれることになる。

直線関係から三角関係へ

悪循環を脱出するには、作り手↔受け手の直線関係の上にもう一つ点を置いて幸せな三角関係をつくることが大事。この三角関係の象徴を、僕は「読モ(読者モデル)」と呼んでいる(ファッション誌とかに出てくる「読者と業界のあいだにいるひと」のことね)。

この「読モ」こそが文化が盛り上がる時のキーになるのだな。

日本酒を例にとってみよう。
作り手の酒蔵と日本酒を飲む受け手がいる。そしてこのあいだに、お酒の嗜(たしな)みかたをよく知っていて、作り手の背景も知っていれば飲み手の素朴なギモンにも応えられる読モ的存在を置いてみる。すると滞っていたコミュニケーションが循環し始める。
酒蔵は読モを唸らせるお酒を頑張ってつくり、読モはそのお酒をいちばん美味しく飲む方法を発明し、飲み手に「このお酒は、こんな人がつくっていて、こんな飲み方したら美味しいよ!」と楽しく伝える。すると飲み手は「日本酒ってこんなに美味しいんだ!ワタシももっと嗜み上手になりたい!」と開眼する。

読モを通して作り手は自分のお酒の新たな可能性を知り、飲み手は作り手へのリスペクトを深める。するとほら!みんなが幸せなコミュニケーションの循環が始まるではないか。

起こせ読モレボリューション!

発酵業界における読モは、料理研究家やソムリエだけではなくて。各地域の小売店と飲食店が重要な役割を担っています。

日本酒でいえば、酒屋さんと居酒屋さん。
ここが各地の蔵を訪ねて理解を深め、自分の店オリジナルのラインナップと飲みかたを提案しお客さんと一緒に遊びまくると、停滞していた業界が盛り上がりはじめる。

2017年現在、発酵業界における作り手の質はかつてないほど高まっている。一生懸命ものづくりに取り組む作り手に「もっと伝え方を考えないと」なんて言わせてはいけない!

醸造家レボリューションの後は、読モ」レボリューション。ナイスなコミュニケーションをつくるポイントは「みんな幸せになる遊びかた」の発明なのだぜ。
アート作品をつくる気概でものづくりに挑む醸造家の美意識を理解し、自分なりのやり方でその酒を愛でること。受け手のその「愛でかた」もまたアート作品だ。

つまり僕が何を言いたいかというとだな。
作り手だけでなく、受け手もアーティストなんだってこと。ほんとはね。

 

【追記1】ちなみに読モ理論は、岡山県西粟倉村で酒屋「日本酒うらら」を営む道前理緒さんと深夜まで盃を酌み交わしながら語った席で生まれました。道前さんありがとう〜!

【追記2】読モ理論についてさらに詳しく読みたい人は『発酵文化人類学』を読んでね。

2017年の読書まとめ。旅とこれからの未来と人類学。

今年は良い本にたくさん出会えた一年でした。
とりわけ知り合いの本に名著が多かったのも嬉しい。というわけで2017年にとりわけ印象深かったものをブログでまとめておくことにしました。
※リテラシーが特殊すぎるのでふだん読んでる微生物の専門書は除外

2017年に印象深かった本はこれだ!

▶アタマ発酵本

・謎床〜思考を発酵させる編集術:松岡正剛&ドミニク・チェン
・魔法をかける編集:藤本智士
・あわいの時代の『論語』:安田登

全く別ジャンルなのに著者と出版イベントで対談したことをきっかけにamazozn上でセット扱いになったサイコーの三冊。

『謎床』は古代文明からITの最先端まで膨大なトピックスが高速移動しながら最後は発酵の世界に辿り着くという前代未聞の対談本。ドミニクさんと僕はお互いの本が出るちょっと前から夜な夜なチャットで情報交換していたので『謎床』と『発酵文化人類学』は個人的には姉妹本のような位置付けです。ちなみに青山ブックセンター企画の『100人がこの夏おすすめする一冊』フェアでは僕もドミニクさんも選者に選ばれてお互いの著書をオススメし合うという相思相愛っぷりでした。笑

藤本さんの『魔法をかける編集』は全国60ヶ所以上を回る出版ツアーの時期が僕とかぶっていたこともあり、各地でトークを共演しました。編集という定義を拡張し、日本全国のローカルに生きるニュージェネレーションを金八先生のごとく励ます魂のこもったマスターピースです。

安田さんとの出会いは今年のハイライトの一つ。発酵と能の世界が代アジア的世界のなかで共鳴するというスゴい発見がありました。『あわいの時代の「論語」』は安田さんの古代文字に対する博覧強記があますところなく炸裂、そこから人類のシンギュラリティまで見通すという古典の入門書のフリしたリーサルウェポンのような本。余談ですが僕が安田さんと対談したのを知ったヒラク母が「私昔からのファンなのよ〜」とウキウキでした。

リスペクトすぎる著者のお三方とは2018年も色んな企画でご一緒することになりそうです。

・アタマ発酵本。発酵文化人類学から生まれた関連本セット販売企画やるよ!


 

▶知的好奇心ドライブ本

・21世紀の民俗学:畑中章宏
・数学する身体:森田真生

・臨床の知とは何か:中村雄二郎
・建築という対話:光嶋裕介

数学や民俗学、建築など様々な専門領域から世界の捉えかたを深める素晴らしい本に出会えた一年でした。

フジテレビの収録でもご一緒した畑中さんの本はポケモンや宇宙葬など21世紀の現象を民俗学的に解釈する楽しい一冊。

『数学する身体』はチューリングと岡潔という二人の大数学者の思考から数学を哲学的に考察する森田さんの新鮮な視点がとても気持ちよかった。

哲学の大家、中村雄二郎さんが30年近く前に書いた『臨床の知とは何か』は、ガリレオ以降の近代科学のパラダイムの虚構性を暴くハードコアな本。「臨床の知」の方法論の延長線上にあるのが僕の『発酵文化人類学』であることに事後的に気づいてビックリ。

光嶋さんの本は、従来の建築家のエッセイとは違う「建築することで人は何を感じ、学ぶのか?」というパーソナルな視点がこれまた新鮮(前の世代の建築家って壮大な方法論の話が多いからね)。光嶋さんとは近々会う約束をして今から楽しみデス。


 

▶旅する人類学

・「その日暮らし」の人類学:小川さやか
・謎のアジア納豆:高野秀行
・幻の黒船カレーを追え:水野仁輔

・バウルの歌を探しに:川内有緒
・旅する音楽:仲野麻紀

世界各地に赴いて奇想天外な世界を見せてくれるニューウェーブ人類学に熱狂したぜ!

スタンダードブックストアで対談した小川さやかさんの本は「マチンガ」というアフリカのストリート商人の研究から進歩主義のカウンター的世界観を提示した衝撃的すぎる一冊(本人のキャラも衝撃的)。刮目すべきはケニアのスマホ小額決済サービス「エムペサ」の考察。21世紀における野生の思考を活写した楽しい人類学本です。

母校早稲田の企画で対談した高野秀行さんは大学生からの大ファン。大学の先生では絶対にできないやり方でアジアの納豆文化を描く『謎のアジア納豆』は発酵本における金字塔になること間違いなし!

年末山梨のイベントでご一緒した東京カリ〜番長(カレースター)の水野さんの新著は、日本のカレーの起源を文化人類学的に探る痛快すぎる内容。近々本格的にカレー文化人類学に挑戦するぞ!と山梨で盛り上がりました。楽しみだぜ〜!

来年我が家の敷地で小屋づくりプロジェクトをスタートする気鋭のノンフィクション作家の川内さんの『バウルの歌を探しに』は、バングラディシュに放浪の旅芸人を探しにいくルポ、なんだけどまるで旅行文学のように読めるアーティスティックな本です。川内さんのこの文学的才能のほとばしり、何なの?

河口湖で出会ったフランスを拠点に活動する仲野マキさんの本は自身の「旅する音楽家」っぷりが詰まった楽しい一冊。アフリカや中東など、ふだんなかなか知る機会のないリアルローカルな音楽の世界にどっぷり憑かれます。

どの本も知らない世界を紹介してくれるだけでなく、著者の世界の見方やものの考え方が濃厚に詰まっていて読み応えありますぜ。


 

▶愉快&深すぎマンガ&小説

・盆の国:スケラッコ
・あさひなぐ:こざき亜衣
・ハルシオン・ランチ:沙村広明
・猫のゆりかご:カート・ヴォネガット
・キッズファイヤー・ドットコム:海猫沢めろん

今年は例年になくフィクションもたくさん読みました。
2017年に最も耽溺したマンガは『盆の国』。8/15が無限ループする世界のなかでご先祖さまが見える特殊能力を持った女の子が彼岸へ旅するぶっ飛びな世界観と夢幻能的なあわいの世界と切ない青春恋愛が共存する稀有なストーリーにドハマリして4回くらい読み返しました。

薙刀に青春をかける女子高生たちの物語『あさひなぐ』はバトル系少女マンガの最高峰とも言えそう(連載は青年誌なので厳密には少女マンガじゃないけど)。特に15巻以降からストーリーが深くなっていき、主人公の旭ちゃんとライバル一堂寧々ちゃんの対決は哲学すら感じます。

『ハルシオン・ランチ』は宇宙からやってきた何でも食べる美少女がひたすら嘔吐してワケわからない物質を生成し続けるというシュールすぎるマンガ。本来なら本筋に関係ない小ネタからストーリーが展開してしまう初期ブニュエルのシュルレアリスム映画みたいでクセになります。

大学生の頃に好きだったヴォネガットを十年以上ぶりに再読してみたらた思いがけず自分がヴォネガットの世界観と思考方法に影響を受けていることにビックリした一年でもありました。

『キッズファイヤー・ドットコム』は今年読んだ小説のなかでぶっちぎりに面白かった!「ホストが捨て子を育てるクラウドファンディングサービスをつくる」という奇想天外なストーリーに新世代の倫理観と人類愛が込められた傑作です。

ちなみにヴォネガットの『猫のゆりかご』と続けて読んだんですが「奇想天外のなかに正論を隠す」という方法論と「笑いのなか見え隠れするほろ苦さ」という読後感が共通でした。マジの話です…。


 

▶これからの未来を照らすソーシャル本

・壊れた世界で”グッドライフ”を探して:マーク・サンディーン
・僕らは地方で幸せを見つける:指出一正
・「小商い」で自由にくらす: 磯木淳
・恐れるなかれ:ビノーバ・バーベ&サティシュ・クマール
・なめらかなお金が流れる社会:家入一真
・ReBuild New Culture:Rebuilding Center Japan

僕のキャリアの原点であるソーシャルデザイン関連では、新機軸の価値観が提示された一年でした。

greenz.jp編集長のナオさんから「ヒラク君は絶対読んだほうがいいよ!」と大プッシュされた『壊れた世界で”グッドライフ”を探して』は、正義を目指して生きる苦しさと人間らしい暮らしとは何か?という大問題に著者が等身大でもがき苦しむ切実さが胸に迫ります。

ソトコト編集長の指出さんの著書も出色でした。長年ローカルの世界を見続けてきたからこそ言葉にできる明快なキーワードとポジティブさが本当に素晴らしい。

東京時代によくいすみから我が家に泊まりにきていた磯木さんの初の著書は、磯木さんらしい丁寧な洞察力でユニークないすみのコミュニティに迫った編集力高い一冊です。

イギリス・トットネスで薫陶を受けたサティシュさんとその師匠ビノーバさんの本はBRUTUSの「危険な読書」でも紹介した印象深い一冊。ガンディーから連綿と続くインドの「メタメッセージとしての思考を込めたアクション」の真髄が詰まっているぜ。

春に福岡、年末に渋谷で対談した家入さんの本もサイコーでした。家入さんは思想ベースのWEBサービスをつくれる日本でも稀有な事業家ではないでしょうか。

会社案内をつくるはずがボリュームありすぎて本になってしまったリビセン本。新しい時代の美意識とデザインセンスが詰まったインスピレーションありすぎの内容です。詳しくはこのブログでどうぞ。

・新しいデザインの美意識の話をしよう。リビセンの本を読んで考えたこと


 

▶食と微生物を深める教養本

・酒の科学:アダム・ロジャース
・食の人類史:佐藤洋一郎
・パンの文化史:舟田 詠子
・マイクロバイオームの世界:ロブ・デサール、 スーザン・L. パーキンズ

このへんは僕の専門。もうコメントする力を使い果たしたので興味がある方はとりあえず手にとってみてください。読みやすい本ではないんだけど、全部めちゃ面白いよ。

【追記】このエントリーで取り上げたもの以外にも面白かった本がたくさん!全部紹介しきれない〜。そして今年はかつてないほど大量に献本が届いた1年でした。時間はかかりますが拝読しているので時期を見てまたコメントをアップする予定です。

旨安ワインに見る、自分ごとの味とは何か問題。

気づいたら年の瀬。風邪とかひいてませんか?
こないだ行きつけのワインバーで、旨安ワインについてマスターと話し込みんできました。
旨安ワインって確かに美味しいんですけど、その美味しさって最大公約数のマスマーケティング的な美味しさで「自分ごと」にできない。自分ごとの味にならないと「もう一回!」にならないんですよね。

発酵食品の味を測定するときに五角形の味覚チャート(甘・塩・酸・苦・旨or辛)を使います。大量に流通する調味料やお酒は、定量的に「不特定多数の人に対応できるバランスのとれた五角形」を割り出してそこに商品の味を当てはめるセオリーで生産されることが多いんです。つまり平均化された味覚です。
でね。大手食品メーカーには、定量化した味覚を色んな物質をかけあわせて合成する専門部署があったりするんですね。ウニとか熟成した高級酒の味を分解して別の成分で再構成するかを研究していたりするわけです。

感性の領域とされる味覚も、いっぽうでは分解・再構築できる物理現象としてデザインされているんです。

味覚の定量化によって「外れなく美味しいもの」が簡単に手に入る状況には功罪があります。「バランスの取れた五角形」ばっかり食べると食べることに飽きてくるんだよね。なぜなら味覚の五角形は人それぞれいびつだからね。

100万人に届く美味しさは自分のいびつな五角形に当てはまらない。自分ごとじゃない味。

クラフトビールや手前みそ食べて「美味しい!」と感動するのは、そのいびつな五角形が自分のいびつな味覚にシンクロした時。

「えっ、ブライアン・イーノ好きなの?オレも好き!」

みたいに。自分にシンクロした味はもう圧倒的に習慣化する。この現象がコミュニティ単位で蓄積されると味の地域性になる。

旨安ワインでよく「◯万円の高級銘柄もビックリ!」みたいな売り文句がありますが、僕の感覚でいうとそれは「五角形のどこか一点が高級銘柄に類似している」という感じです。五角形全体でのユニークさがない。基本平均点の味に、どこか一個だけキャッチになる要素を乗っけている。広告代理店のやっつけ仕事みたいな味が天井になる残念さよ…!

じゃあバランスの崩れた良さって何なのよ?てな話ですが。
今年の春に阪神百貨店のポートランドフェアのゲストに呼ばれて現地のクラフトビールを飲み比べしましたが、信じがたいほど極端な味覚チャートが林立してました。
個性的になること、尖り切ることが結果的に大手のビールメーカーとの棲み分けになることをよくわかっている。

カタチのいびつな美味しさには、口にする自分をインスパイアする何かがある。
もっと言えば煽ってくる

「オマエは…自分が思っているよりもヤバい味覚センサーを持っている…オレを信じて…解放しろそのセンサーを…!」

という中二病的煽りを入れてくる。
これが「自分ごとの味」との出会いの瞬間です。

自分ごとの味、すなわち「いびつで多様な楽しさ」をどうやって文化として根付かせるか?という課題の解決法は「とにかく裾野を広く」なのですが、カタチの整ったマスプロダクトが広く普及して出てきた課題なので理屈として矛盾している。この矛盾を解決するためにクリエイティビティ大事。合理性や正しさ以外の価値をつくる。
平均点プラスαの旨安ワインも「わっ、ワインって美味しい飲み物なんだ!」とワインを知らない人の入り口になる意味で役割があります。問題はその次の「自分のワイン」にどう出会うかで、これはもうメーカーや商社というよりは飲食店やメディアになれる「読モ」のクリエイティブ力にかかってきそうです。

僕が閉塞した業界において「読モが大事!」と主張するのは、「ワタシにとっての価値」をクリエイティブに伝えられる個人や小さなお店の母数がその文化の多様性を担保するからだと信じているから。「ワタシが好き!」の裾野の広さが文化の質やで。

【追記】読モって何のこと?という人は『発酵文化人類学』の第五章を読んでね。

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【発酵文化人類学】目指せロングセラー!時間をかけて価値を発酵させよう

魂込めてつくった本だから、ロングセラーにしたい!
今年春に出版された『発酵文化人類学』、10月に5刷20000部を達成し、年明けに6刷目を迎える予定。つまり!次は!30000部の大台…。どひゃー!

応援メッセージがオビになりました

長く読み継がれるロングセラーを目指し、このたび満を持してオビをつくりました。
(デザインはもちろんBAUMチーム)

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表にはSNSやラジオ番組で推薦してくれた三名の作家の皆さまのコメントを掲載。

・高野秀行さん(探検家)「今年のマイベスト本!」
・小田嶋隆さん(コラムニスト)「魅力的な文体!」
・佐々木俊尚さん(ジャーナリスト)「夢中であっという間に読破!」

皆さま『発酵文化人類学』を見出してくれて本当にありがとうございます。涙

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裏面には本屋さんからの推薦コメントを掲載。改めてたくさんの本屋さんから応援してもらっているんだなあ。感謝!

表も裏もこれでもか!と推薦コメントが乗っていますが、これすべてSNS上と出版ツアーで寄せられた応援メッセージ(つまりこちらからの依頼じゃないってこと)。
出版当初はオビなしでスタートしたんですが、たくさんメッセージもらって嬉しくなってしまったので、20000部以降はオビ付きで書店に本が並びます。やっほー!

引き続き応援をお願いします!

心機一転、ロングセラーを目指して頑張るぞ!
…というタイミングでこのブログをご覧の皆さまにお願いがあります。

『発酵文化人類学』がロングセラー本になるよう応援してほしい〜!!!

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BRUTUS新号『危険な読書』特集巻頭でも紹介してもらったり…

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たくさん新聞や雑誌の書評で取り上げてもらったり…

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往来堂書店さんや探検家の高野秀行さんから「2017年度ベスト!」と推薦してもらったり。

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100人以上動員して最高の盛り上がりを見せた大阪スタンダードブックストア

たくさんの人に応援してもらって、『発酵文化人類学』はニッチ領域のとしては異例のベストセラーになりつつあります(正確な分類で言えば「生物学」の本なんだぜ)。

・一週間で重版出来!の舞台裏。マーケットではなくコミュニティに届ける。

このご時世、いっしょうけんめい本をつくっても最初の1〜2ヶ月がピークで、ほとんどが3ヶ月以内に店頭に並ばなくなってフェードアウトしてしまいます。そのなかで時間が経てば経つほどじわじわ広がっていくこの売れ方は本当にありがたいことだし、なにより

すごく発酵っぽくないですか?

さらにナイスにこの本が発酵していくように、


☆友達や家族に「これ読んでみてね」とオススメする
☆amazonにレビューをあげる
☆SNSやブログに写真や感想コメントをアップする
☆神社にお参りするときに「本が売れますように」と祈願する


などのアクションをしていただいたら、編集チーム一同とても喜びます。

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ハシモト編集担当「みなさん…!私たち、50000部売るつもりですから!」

というハシモト編集の言にならって、次の目標は50000部です( ー`дー´)キリッ

魂こめてつくった本だから、長く売りたい!

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燃え尽き状態でひたすらサインを書く2017年春。はるか昔のようだぜ…!

ということで告知と応援のお願いはおしまい。ここから半年強経ってみての著者ヒラクの所感をお話したいと思います。まず最初に思ったのは、

本を書くのって、めちゃ大変!

僕の十数年に及ぶ活動を余さずまとめた20万字強のボリュームで、かつ学術的な裏付けも取らなきゃいけないとあって、書き終わった後に放心状態になって何も書けなくなるほど燃え尽きました(自分のキャパシティの小ささよ…)。

・物書きの筋肉痛。

僕としてはそれだけ魂込めて書いたので、出版された時点で「はい次!」とはなれず、できるだけ色んな人に届いてほしいなと思っているんですね。
まあそれは著者の都合なんですけど。実は読者の立場になってみても、三ヶ月スパンで本が入れ替わっていくような事態は好ましいとは思えない。

だって考えてみてよ。
書評や本屋さんの店頭で知って「この本面白そうだな」と思ってから実際に買って読んで友だちにクチコミして…というサイクルは半年とか一年くらいかかります。なんだけど三ヶ月で消えちゃったとしら、読者の体感よりも流通の速度がファストすぎてぜんぜんヘルシーじゃないでしょ。

「つくる」だけでは「価値」にはならない。だからつくったものを「価値化」しないと、せっかく手間ひまかけた意味がないわけです。今の本の流通サイクルにそのまま乗せると、価値を発酵させる時間がない。奥さん!浅漬けですよ〜!

ということで。僕はしばらく新しい本を出さないことにしました。
実はオファーもいくつかあるんですけど『発酵文化人類学』がきちんと価値化されるまで粘着に営業活動をすることにします。それがファストすぎる今の本の流通に対して僕個人ができるアクションだし、何より出版ビジネスの醍醐味は増刷によってめちゃ利益が出るところだからね。業界への問題提起としてもビジネスモデルとしても合理的なのだぜ!

加速しすぎたものをスローダウンする。過剰な状況を健全にする。
価値、発酵させてこうぜー!

いっぱい感想&レビューもらってます

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本がきっかけになって県外からの人が訪ねてくるようになったマルサン葡萄酒若尾くん

最後に今までに皆さまにもらった『発酵文化人類学』のコメントを一部ご紹介します(一部と言いつつめちゃ長い…!)。こんな感じでコメントをアップしてもらえると嬉しいデス。

まずはtwitterから。数え切れないくらいのコメントがツイートされました。

   
つぶやいてくれた皆さま、どうもありがとうございます。

インスタグラムでもセンスの良いたくさんの写真が感想とともにアップされました。 写真集みたいでスゴい!装丁デザイン頑張ってよかったなあ。

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facebookでも友人たちから気合の入った感想コメントをもらいました。公開コンテンツのみちょっとだけ抜粋すると…

 

 

それではみなさま…

応援どうぞよろしくおねがいします。

【追記】10000部達成の時に約束した『発酵文化人類学・海外編』ちょっとずつ準備を始めています。2〜3年後、満を持してスゴい本つくるぞ。エイエイオー!

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BRUTUS『危険な読書』特集に掲載されました(しかも巻頭で!)

BRUTUSの最新刊『危険な読書』で僕のインタビューと選書3冊が掲載されています。
なんと、特集巻頭の最初の記事で。マジですか!?

思想を込めたアクションは可能なのか?

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ニートブロガーのphaさんや家を背負って歩く現代美術家の村上慧さん、謎のファッションブランド「途中でやめる」の山下陽光さんとならんで「ポリティカルな読書のススメ。」というコーナーに登場しました。お題にあわせてハードコアな三冊を選書したぜ。

詳しくは本誌を読んでほしいのですが、僕の言いたかった事を要約するとだな。
民主主義的な啓蒙によって政治が動く国家とそういう前提を持たない国家の両方があり、後者においては思想(言論)そのものでは政治を動かすことができない。ではどうするかというと、生活感に根ざした具体的な実践に「メタメッセージとして」思想を込めるという方法論になるのでは…という見立てです。そのためにドラッカーによるファシズムの分析と、人間中心の思想が生まれた気候風土と食糧供給の問題、そしてインドの独立運動の3つをあわせて論じました。

・ドラッカーに見る全体主義の効用と、自由な社会の意味

僕個人の所感でいえば、日本の現状は全体主義に染まった戦中のヨーロッパよりも同時代に傀儡政権の矛盾に苦しんだインドに近いのではと思っています。僕たちの世代がローカルで挑戦している生き方は「思想を込めたアクション」になりうるのでしょうか?

改めてBRUTUSスゲぇ!と思いました

内容が濃すぎて全部を読み込めてはいないのですが、特集全編に渡って濃すぎる企画がてんこ盛り(個人的には春日武彦さんの記事がツボでした)。そもそも僕のようなイロモノのインタビューが巻頭にくるあたり「おおお、めちゃ攻めてる…!」と感銘を受けました。

いまどきカルチャー誌なんて何の意味があるのかしら?とシニカルになっていたヒラクですが、今回のBRUTUSの特集には脱帽するしかねえ。みんなお正月にこたつ入って熟読しよう。

あとね。取材にあたって編集チームが山梨の我が家に来てくれたのですが、編集の伊藤さん、カメラマンの田付さん、ライターの井手さんそれぞれ素晴らしい仕事ぶりで感動したぜ。とりわけライターの井手幸亮さんのライティングは、取材後に僕の選書3冊をきちんと読み込まないと書けない構成で、プロの心意気を感じました。

いい雑誌を読むと、アタマに気持ちのいい風が吹いてきます。BRUTUS編集チームの皆さまどうもありがとうございました。

【追記】ちなみにCASA BRUTUSの新号『生きた方を変える本』にもレビューが掲載されているようです。おおお…!

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【求むナイスな人材】かもめ柳下おじさんが右腕を募集している件

山梨で仲良しの柿次郎さんとともに満開の桃にご満悦の柳下おじさん

こんにちは。小倉ヒラクです。
今日は皆さまにお知らせがあります。僕の本を出版する時にいっぱいアドバイスをもらった、かもめブックスの柳下おじさんがビジネスの右腕を募集しているそうです。

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柳下おじさん「そうなんだよ!みんな、ちょっと僕の悩みを聞いてもらっていいかな?」

事業多角化を発展させるマネージャー募集!

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山梨の定食屋さんでご飯を食べる柳下おじさん

もともと柳下おじさんは鴎来堂という校閲の会社を経営していました。本の文化を下支えしていたおじさんは「もっと本の文化を面白くしたい!」と神楽坂の閉店した街場の本屋さんの跡地にかもめブックスという素敵な本屋さんの経営を始めました。そこからさらに他業種とコラボしたポップアップ本屋さんや自分たちで本を出版する事業もスタート。それぞれの事業が順調に発展し、気づけば複数のビジネスモデルが並行していたわけです。

・誰でもどこでも本屋になれるようにする 本を愛する男の小さな声 | BAMP

・「かもめブックス」陽気なオーナー柳下恭平さんに聞く、校閲のおもしろさと人生を変える3つの方法 | MISFIT LIFE

・池袋の注目ブックカフェ「本と珈琲梟書茶房」とは? | icotto

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柳下おじさん「いやあ本当にありがたいことなんだけど、社長の僕がもういっぱいいっぱいで大変なんだ!だから複数の事業を横断的に見れるマネージャーが必要なんだよ!いわゆる普通の専門職じゃないからどうやって探していいかわからないんだ!困った困った!」

だそうなので、僕のブログで声かけをしてみることにしたよ(柳下おじさんにはいつもお世話になってるし)。概要をざっくりまとめると、

・校閲や書店経営、出版など本にまつわる複数の事業の経営を横断的にマネージする
・いわゆる社員雇用というよりは取締役的な役割で
・複数のビジネス間のシナジーやチームビルディングの仕組みを考える

仕事のようです。つまりけっこうな大役ってことですね。ちなみに、

・年齢不問・経歴不問
・必ずしも本が大好き!である必要ナシ
・成果フォーカスなので子どもや家族の都合で働く時間が限られる人でもOK

だそうです。気になる契約条件に関していうと、

・年俸600万円〜1000万円
・鴎来堂やかもめブックスのスタッフからの応募大歓迎

なので、これからのキャリアを考えている人には挑戦しがいがありそうです。詳しくはジモコロ柿次郎おじさん、柳下おじさんと僕の三人と撮った動画で詳細どうぞ。

「それは面白そう!どうしたらいいですか?」

という人のために問い合わせフォームを開設しました。以下からどぞ。

※おかげさまで応募多数のため〆切に達しました!

お名前

メールアドレス

好きな鳥の種類は?

座右の書は?

今までの経歴アピールや質問をご自由にどうぞ

※柳下おじさんに直接メールが届きます
※個人情報は他の用途には使いません

それでは良きご縁がありますよう。

【追記1】僕は求人エージェントじゃないので詳しいこと聞かれてもよくわからない!ので何かあったらメールフォームから詳細聞いてね。

【追記2】「友だちの求人用フォームは喜んでつくるくせに、自分の仕事の問い合わせフォームがないのはどういうことだ?」というツッコミはしないでね。

発酵は科学と哲学の交差点。

発酵は「科学と哲学の交差点」。
『発酵文化人類学』の重要なキーワードで。イベントでも話していることを改めてブログでまとめておきます。

例えばブドウ果汁がなぜワインになるのか。その基本原理は化学式にあらわすことができます。ブドウ果汁に含まれる糖分を、酵母が分解してアルコールに変えることで酒ができる。この原理は世界のどの国のワインでも普遍です。パンでもビールでもその基本原理はいっしょ。

そういう意味で、発酵は自然界で起こる普遍的現象であり、サイエンス(化学)の対象ということができます。

・そもそも発酵とはなにか。簡単にメモしておくぜ

なんだけどさ。そのワインを「美味しいかどうか」という視点で見てみるとちょっと考えかたのモードが変わってくる。ブルゴーニュの高級ワインは、普段チューハイ飲んでる人にとっては「酸っぱい、渋い!」となって美味しくないかもしれない。そこには飲む人の経験や美意識が大きく関わってくる。

酒の発酵という現象自体は再現性があるものだけど、個々人の感性には再現性がない。
この矛盾があるこそ、発酵はとても面白い。

「世界一美味しい酒」は存在せず、「自分にとってサイコーの酒」だけが存在する。日本でいちばん流通している大手メーカーの味噌でつくった味噌汁よりも、お母さんの手前みそ汁が嬉しい。こういう「自分が感じる美味しさ・幸せ」を考えはじめると科学の領域だけでは手に負えません。そこには歴史の変遷や人間の感性を踏まえた社会的な考察が必要になる。

物理学や化学などのは常に「普遍的な現象」を取り扱うもの。「オレは重力から自由だ!」と主張しても空を飛ぶことはできない。たいして哲学や社会学は「個別特異的な現象」を取り扱う。ある特定の瞬間の、他ならぬ個人やコミュニティにとっての意味を掘り下げていく。

発酵はその現象自体は普遍的なのだけど、それを美味いとするかどうかは受け取る側の個別の事情による。ボルドーの高級ヴィンテージワインを最高とする価値観もあれば、うちのおっかあのどぶろくが最高!とする価値観もある。

だから発酵は「科学と哲学の交差点」。普遍的なくせに答えがない。発酵の道を極めるためには、一方ではケミストリーや分子生物学、遺伝学を学び、他方では社会学や文化人類学、哲学や芸術を学ばなければいけない。

様々な視点を統合しないと日々当たり前に食べている味噌汁や酒のことを理解することができないんですね。科学の領域だけ取って見ても、発酵の謎は果てしない。最新の微生物学の知見を総動員してもお味噌の複雑な風味や健康機能をすべて解き明かすところまでいっていない。キムチにしたって発酵に関わる微生物の数が多すぎてその発酵プロセスの詳細はいまだ解き明かされていません。

そこにさらに社会的な謎が加わってきます。発酵は民族や宗教のルーツに深く関与しています。東アジアの発酵を司る「醸」という漢字を紐解いていくと「酉(とり)」という文字に行き着く。これは土中に埋める「酒壺」を意味し、同時に土に死者を葬る「棺」であり、さらに彼岸から故郷に戻ってくる死者の魂の象徴である「鳥」を意味していた。このように古代世界において、発酵させることは「生命の蘇り」を意味しています。

・発酵古代漢字の世界へようこそ。

なぜ異なる民族間に共通してそのような不思議なコスモロジーが発生したのかは謎に包まれています(ていうか僕の知っている限りちゃんと研究している人がいない)。

今年に僕が書いた『発酵文化人類学』は、微生物と人間の謎を巡る果てしない旅のはじまりなんじゃないか、と思っています。科学と哲学が交わるその場所に、生命の起源に関わるひみつがあるんじゃないか、そんなことを考えるといつでもワクワクしてくるのだぜ。

【追記】ちなみに「科学と哲学の交差点」のもととなるアイデアは農大の穂坂教授から授かりました。製麹や利き酒のメソッドだけでなく、思想も授けてくれた偉大な先生です。

編集は、面白いを「つくる」仕事。

週末に大学生向けイベント『Q学のススメ』で家入一真さんと対談で話したことのメモ。
学生のみんなからの質問のなかで、

「私はローカルメディアの編集を仕事にしていきたいんですが、どうやったら面白い人とつながれますか?」

というものがありました。ここには編集とは、面白いとは何か?という問いを立てるのに良いサンプルなのでちょっと掘り下げてみよう。

そもそも。「面白い」は誰がつくるのか?という問題。「面白い」は「水が冷たい」とか「海が青い」とか物理的にプロパティが決まっているわけではなく、人の判断によってバーチャルにつくられているわけです。つまり「面白い」は人によってつくられる。

では「面白い」をつくる人は誰かというと、それがまさに編集者なんだね。
才能を持った個人や、ユニークな場所やものごとの魅力を発見し、可視化し、みんなに紹介する。編集者は面白いを「つくる」仕事。

だからさ。編集を志す人が「どうやって面白い人とつながれますか?」と口にするのはパン屋さんになりたい人が「どこから美味しいパン仕入れてきたらいいですか?」というのに近い。
すでにメディアがつくった面白さを仕入れる発想をしているうちは良い編集者にはなれない。まずはパン種育てるところから始めねば。

僕の知人でいうと、ジモコロ編集長の柿次郎さんやのんびり編集長の藤本さん、スペクテイターの青野さんたちはほれぼれするほどの「面白さの目利き」なんですね。

「面白い人とつながるためには自分が面白い人であらねば」という話もあるけど、良い編集者を見ていると必ずしも面白く振る舞える芸人のような人である必要はない。「面白くあること」よりも「面白さを深く理解していること」が大事だったりする。もっと言えば人や場所やものごとの面白さを見出して誰かに紹介できる言語化能力やコーディネート力が「編集者的タレント」なんだね。

面白さを見出し、可視化し、つくりだす。面白さのパン焼くためには、まずは種を育てるところから。

・世の中には二通りの人間がいる。「一流」を見つける者と待ち続ける者だ

発酵古代漢字の世界へようこそ。

今年7月に丸善京都本店での安田登さんとの対談で着想を得て、先日の広尾の東江寺での「寺子屋」でなんとなく体系化してみた「発酵古代漢字」の世界。
古代アジアの漢字・象形文字から発酵文化に関係するものをピックアップし、そこから古代の人々の世界観を掘り下げるというニッチ極まる研究ですがたくさんの人から「面白いです!」と感想をもらいました(どうもありがとう!)。

【酉】の字から始まり、中国の殷・周の古代文化、日本の古事記などの神話に接続されるこの不思議な世界観、さわりのさわりだけなんとなくブログにまとめて、もっと掘り下げたら何らかの形式でまとめたいと思います。

発酵古代漢字を紐解いてみる

ではイベントで紐解いて文字をいくつか紹介します。

【酉】古代東アジアの発酵を象徴する「醸」の文字のルーツ。土中に埋める「酒壺」を意味し、同時に土に死者を葬る「棺」、さらに彼岸から故郷に戻ってくる死者の魂の象徴である「鳥」を意味している。古代世界において、発酵させることは「生命の蘇り」を意味しているのではないか?

【醸】前述の「酉」の酒壺に穀物を詰めて酒や調味料などを発酵させる。右側は①手に穀物の穂を持ってお祓いする意 ②死者の白装束の袂に神具と呪具を入れて胸が膨らんだ様から「発酵して酵母が湧き上がる」の意の2つの説があります(もしかしたらもっとあるかも)。どちらにせよ発酵が神事と深く関わっていたことを意味する漢字。

【風】風を受ける帆をあらわす「凡」のなかに入るのは、もとは虫ではなく鳥でした。異界から風に乗ってやってくる鳥たちは、故郷を懐かしむ死者たちの象徴。やがて鳥は爬虫類の要素が加わり、龍となる。空を飛ぶ爬虫類のイメージが「帆」のなかの「虫」。

【申】もとはカミナリの象形。これが転じて「神」という文字になっていきます。カミナリは「神鳴り」。別名は「稲妻」。カミナリが田に落ちると、窒素固定によって稲の豊作がもたらされます。そして米から酒を醸し、神に奉納する。田を介して人と神が対話する。僕の徳利コレクションのなかに、カミナリのモチーフが入ったたものがあります。

【田】自然のなかにグリッド(直線)を引いて秩序あるエリアをつくる。曲線で流れる川を水蛇と見立て、その力を理知的な直線の力で抑えて水の持つ破壊の力を防ぎ、恵みの力を引き寄せるためのランドスケープの設計技術。それを都市計画に応用したのが京都。水蛇は鴨川。神社で蛇の頭を抑える。

【龍】「龍」のつく日本酒の銘柄が多いのは、神から特別な力を与えられた蛇が龍であるように、発酵の力によって特別な力を与えられた水が酒であるからなのではないか…と僕は考えています。ちなみに龍は日本酒の仕込みに使う清水を生み出す森の守り神ともされてきました。

味噌の「噌」の文字の謎

【噌】「味噌」以外に使われることがない不思議な漢字で「にぎやかにする」ことを意味します。つまり味噌とは「味をにぎやかにするもの」。ただ語源まで辿ると実は政治的な意味を持つ文字でした。右側は「鍋にかけた蒸し器から水蒸気が上がっている」ことを意味します。そして左は蒸した穀物を食べる口…ではなくなんと「議論する」です。

これを字義通り取ると「キッチンで食べ物蒸しているあいだに人が集まってあれこれ議論するさま」ということになります。謎すぎる文脈ですが、実はこれも古代の殷まで遡るとヒントが見えてきます。古代殷では、政治家は料理家を兼ねていました。

【宰】政治を司るこの文字は「家のなかで包丁を振るうさま」を意味します。殷の伝説的宰相である伊尹(いいん)は優れた料理家であったようです。「包丁で食べ物を切り分ける=適切に資源を分配する=政治をとりおこなう」という発想であったようです。なお、包丁という単語のルーツは庖丁(ほうてい)という宰相の名前から。

「宰」の文字を踏まえると「噌」の文字の語源が見えてきます。古代アジアにおいて、政治はキッチンで行わていた、ということなのかもしれません。政治をすることと料理をすることはイコールだったのですから。

現在中国では「噌」の文字はほとんど使われていないようです。なぜその文字が日本の「味噌」に残っているのかはまだ謎。これから解き明かしたい…!

万物は発酵から生まれた…?

【壹】発酵古代漢字を調べていて衝撃的だったのが、数字の「一(壱)」の古いカタチである「壹」が「発酵して気が充実している壺」を意味していることを知った時でした。

老子の有名な「道は一を生じ…」というのは「道(タオ)は発酵である」ということ…なんですか?マジで!?
「壹」の文字を眺めていると「味噌仕込んだりどぶろく仕込んだりしながらほっこりしている老子」のイメージが湧き上がってきます。酒母がプクプクしているのを見ながら「道は一を生じ、一は二を生じ、三は万物を生じる…」とつぶやき「ヤバい、めっちゃいいこと考えついちゃった…」とご満悦の老子。

「道は一を生じ…」の一説に続く「万物は陰を負いて陽を抱き、沖気を以て和を為す」も大変に発酵的です。陰は「腐敗」で陽は「発酵」、その2つの弁証法的止揚によって「めちゃヤバい食べ物」が生まれる、という風に発酵デザイナーは読み解きます。

まだまだいっぱい紹介したい漢字があるのですが、その続きはまたの機会に。

アイデアの捨て漬けと、次世代の「発酵読モ」の登場

最近考えてることと、後半に大事な業務連絡。
ただいまヒラクはキャパオーバーで呆然としております。

「アイデアの捨て漬け」期間をとる

『発酵文化人類学』のプロジェクトが一段落して、来年以降の仕事のことを考えはじめているわけなんですが。最近の仕事はクライアントの要望ありきのいわゆるデザイナー仕事は皆無で、ゼロから自分のイメージを具現化するようなものばかり。

そして僕はめっちゃ優柔不断でどんどん発想が湧いてくるアイデアマンでもないので、ひたすらうだうだと悩みまくる。イメージが固まらずスケッチ描いたりメモ書いたりするものの、全然先に進まない。

もどかしいと思いつつ、でも僕にとってはこの「うだうだしている時間」がすごく大事だったりします。

考えてみれば、僕が発酵や微生物に関わることしかやらない!と振り切るのに三年くらい悩み続けたし『発酵文化人類学』も拙速になるのがイヤで、ずいぶん長い間寝かしてイメージを膨らませ続けたんですぜ。

脳みそだけで「これだ!」と閃いたアイデアはたいしたことない。なんとなくお題だけ出して、思いついたアイデアやキーワードを放り込んで数日寝かせる。そのアイデアの大半は発酵することなくしぼんでいく。そしてまた違うアイデアを…と何度も重ねていくとやがてイケそうなイメージが発酵してきます。

糠床を育てる時、最初いろんな野菜の切れっ端を捨て漬けするじゃないですか。ああいう感じで「アイデアの捨て漬け」をしないと美味しいものはできない。それなりにインスタントに美味しいっぽいものはできるかもしれないんだけど「それってただの塩漬けだよね?」程度のクオリティのものしかできない。

今欲しいのは時間。ゆっくり発酵させる時間だ〜!!!!

潜る時間の大切さ

「超浅漬け」みたいなアウトプットを納品してもそれなりに評価されたりするんですが、でもつくる側の魂は確実に蝕まれる。「発酵を待てないファストすぎ野郎」として。

・『孤独のグルメ』に見るベストタイミングの見極めと、こじらせ女子の呼吸と見切りがファストすぎる件について。

「でもでも!納品〆切あるし、まあまあのクオリティでいい仕事も多いですよね?」

昨今メディアが爆増しまくり、しかしユニークなコンテンツをつくる人的リソースは枯渇気味なので結果「とにかくサクッと手頃な値段でそれなりに納得感あるコンテンツ欲しいでござるよ!」というニーズが溢れ「発酵待てない問題」が発生し、糠漬けっぽい塩漬けが世に出回ります。

そして。そのニーズが発酵界に向かうと「とりあえずヒラク君に頼んどくか」という流れになりがち!最近なりがち〜!!しかも「山に篭ります宣言」をみんな読んでるので「◯◯さんの紹介で〜」みたいな建て付けを上手につくってきて、僕もそれなりに情に厚い人間なので「よござんすよ」とか応えがち!情にほだされがち〜!!

この流れを容認していると、近い未来ヒラク君は「話聞いてもらえるおじさん」に成り果てるであろうよ。

・話聞いてもらえるおじさん。

次世代の「発酵読モ」が登場してるよ

実はもうすでに発酵界の次世代ホープが登場しはじめている。

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例えば。写真左の熱燗DJつけたろうこと鈴木吉田研三くん、右の日本酒娘こと真野遥ちゃんははまごうことなき「発酵界の読モ」だ(詳しくは発酵文化人類学の第五章参照)。発酵への知識も愛も深く、表現力も素晴らしい。ただ現状二人ともまだキャリアの100%を発酵界にコミットできていないらしいので、コンテンツ発注主の皆さまにはどんどん案件をまわしてほしい(と僕がおせっかいしなくてもこの二人の才能なら問題なさそうだが)。

仕事の依頼があることはたいへんにありがたいこと!なの!!だが!!!
僕には次にチャレンジしてみたいことがあり、そのチャレンジのためにはまた学ばなければいけないこと、時間をかけて熟考しなければいけないこと、手や身体を動かして試行錯誤しなければいけないことがあるので「潜る時間」が必要。人前出て社交して「前から本読んでてファンだったあの人と対談できるなんて!ルンルン♫」みたい嬉しさがあるのは事実だが、涙を飲んで宣言する。

「去れマーラよ!」

つきましては、断腸の思いで問い合わせフォームを廃止しました。残る新規問い合わせの方法はテレパシーのみです。新規の依頼は来年の夏くらいまで受け付けません。あと、取材の依頼もご遠慮ください。ヒラクのことをそっとしておいてください。

人間界のみんな、すまない。僕は菌になります(今度こそ本気で)。

【追記1】そのわりにはやたらtwitterやってるじゃねーか!という突っ込みが聞こえてきますが、これは某グローバルIT企業が極秘開発した人工知能のアルゴリズムによって生成されているコンテンツです。このブログももちろんAIが自動生成しています。ということは、仕事の依頼もAIが対応すれば万事解決かもしれねぇな…!

【追記2】そんなこと言って、ぜんぜん仕事なくなってお金なくなったらどうするの?という突っ込みも聞こえてくるが、お金は人間界の価値観なので気にしない。

【追記3】つけたろうとはるちゃんにはマジで期待してる。はやく発酵界に本格参入してね。

【追記4】ここで言うマーラとは「中途半端に社交的な自分」のことで、他人のことではない。

元才女おばさん。アラサークリエイティブ女子が直面する危機のその先。

あなたは「元才女おばさん」をご存知だろうか?
言うまでもなくあなたは「元才女おばさん」のことを知らないだろう。なぜなら僕の造語だからね!

「はじめて聞いたワードですが、なぜか心がザワつきます…」
「ていうか、それ、私のこと…!?」

うん。詳細は知らないが、きっとそうなのだろう。
元才女おばさんは、貴女の身の回りにけっこういる。そして今僕のブログを読んでいる他ならぬ貴女のなかにも……

なぜかとっ散らかるキャリア

去年から今年にかけて、立て続けに「若い時に華々しいキャリアを送り、その後迷走した三十代後半〜四十代の女性」に会う機会があった。

「海外に留学したあとジュエリーデザイナーになって…」

おお。めちゃスゴいですね!それで?

「通訳になって…」

ふむふむ!海外の経験が役に立ちましたね。それで?

「外資系の秘書になりました」

めっちゃエグゼクティブじゃないですか!めちゃすごい!

…しかしなぜか今は特に大企業でもない会社の一般事務の仕事をしていたりする。もちろん人生において仕事のプライオリティは様々なので、本人がそれで納得していればいいのだが、話を聞く感じだとそうではない。危機感を感じて資格取得に走ったりするのだが、アロマの資格を取ったと思いきや、その次に経理の資格を取ったりして妙にとっ散らかっていたりする。

そう。その女性たちのキャリアを一言で表現するならば

「とっ散らかっている」

なのであるよ。知的だし、雰囲気も明るいし、見た目も若々しくなんならめちゃ美人で知識の引き出しも多い。しかし話しているとなぜかとっ散らかってくる。

「ワタシ…もう続きを聞きたくないです!」

わかっているよ。この話がある種の女子にとってハードコアな内容だということを。かくいう僕もずっとこのブログの下書きを公開することなく二ヶ月近く寝かしておいたんだ。だから無理せずこのへんで僕のブログを読むのをやめてブックマークに登録しているしいたけ占いのリンクをクリックしてくれたまえ。

そして二度と僕のことは思い出さないでくれたまえ。アデュー。

アラサークリエティブ女子の危機

さて。
華々しいキャリア変遷を経て、なぜかとっ散らかってしまった30代後半〜40代女性。これが元才女おばさんの定義。

元才女おばさんは現代日本における「女子の袋小路」の典型例のひとつだ。
その袋小路への分岐点は30歳前後。
そして異界へのドアを開けてしまうのは才能あふれるクリエイティブ女子なんだね。

チャーミングで、お洒落で、話も文章書くのもうまくて、なんならカメラマン級の写真も撮れて、全国各地にイケてる人脈を持ち。息しているだけで人が寄ってくるようなセンスフルなクリエイティブ女子。

大変羨ましい才能だが、しかし!アラサーを境に、その才能が真綿で首を絞めるように女子のキャリアを殺すことがある。凡人には想像もつかないことだが、才能は人を殺すのであるよ

それはどのような事態だろうか。
「なんでもできてしまう」が「とっ散らかる」にクラスチェンジするという危機だ。

選ばれしクリエイティブ女子は色んなことが「できてしまう」。そしてできてしまうゆえに、捨てること、絞ることができない。自分がやるべきことのプライオリティをつけることができない。

20代半ばすぎくらいまでは「マルチな才能の子猫ちゃん」という期間限定カテゴリーがあるが、いい年したオトナになってくると何か目指すべき道を見つける必要が出てくる。

そしてその猫さまは獏とした悩みを抱える。

「いったいワタシって、何者…?」

これが世にいうアラサークリエイティブ女子・アイデンティティクライシス問題だ(言っているのは僕しかいないが)。

アラサークリエイティブ女子が迷走すると元才女おばさんになる

アラサークリエイティブ女子が迷走する理由は、高確率で「自己承認欲求と自分の幸せが切り分けられない」という、自我のとっ散らかりだ。

「人から必要とされる、評価される」という事にあれこれ手を出し続けていると「マルチタレント」が劣化して「迷走している人」になる。なぜなら二十代の時に地道に下積みしてきた同年代が各領域のエキスパートとして頭角を現しはじめるからだ。

この時に苦難のアラサークリエイティブ女子が取る道は、

A:自分がこれだ!と思う分野を突き詰める
B:仕事以外のことに自分のアイデンティティを見出す
C:さらに色んなことに手を出してはやめるリピートにハマる

の3つで、残念ながらAの可能性が一番低く、Cの可能性が一番高い
(Cをさらにこじらせるとアヤしい自己啓発やスピリチュアル系のアクティビティにハマったりする)

「捨てる」「絞る」ということをしないままものの十年ほど経つとクリエイティブ女子は元才女おばさんにジョブチェンジすることになる。

「ヤバい…!ワタシ、元才女おばさんになりかけてる…てかもうなってる…?」

そうかもしれない。そして僕にはもうどうすることもできない。
「人に承認されること」を原動力に生きてきた人が、いい歳になって「自分で自分を承認する」人生にギアチェンジをするのはめちゃ難しい。
たとえば出産・育児と仕事をいい感じに両立するならば、説得力のあるキャリアを積み上げて労働時間に縛られず結果を出せるポジションをゲットするのが望ましい(あともちろんパートナーの協力も)。有能なクリエイティブ女子なら楽勝でいけそうな感じもするが、しかし「積み上げ」に必要な「捨てる」「絞る」スキルをおざなりにすると仕事を変えるたび「積み上げ」ではなく「迷走」になる。

二十代の時にサクッとジュエリーデザイナーになったり外資系の秘書になったりしたのは「みんなに認められる自分」になりたかったからであり、その道を極めなかったのは「もう目的を果たしてしまったから」だ。そのまま自己承認ジプシーで彷徨っているうちに、仕事では「認めてもらえる自分」になれなくなってくるので、性急な恋愛や結婚に走ってしまうかもしれない。

しかしその愛も仕事と同じで「自分を認めてもらうため」のものだから、やがて自分自身が飽きるか、あるいは相手がツラくなってギブアップしてしまうかもしれない。だって、相手もまた「僕のことも認めてほしい」と思っているのだもの。人間だもの。

・なぜKEYくんは「隣り合って」座るのか?『東京タラレバ娘』の倫子さんが不憫すぎる件

愛や仕事をジプシーとして彷徨ううちに、深い疲れがやってくる。かつて自分が簡単に手に入れられたものがいくら望んでも手に入らなくなり、ようやく何かつかめたと思ったらかつてのようにキラキラで形の整ったものではなく、どこかいびつで若干腐ったようなものだったりする。かつての記憶があるぶんだけ、自分がいま掴んでいるそれを直視するのはツラいかもしれない(しかしそのいびつさや若干腐った感じは己の写し鏡でもある)。

けれども。深く考えず手を出したその愛やキャリアがいったんおじゃんになった時、あらためて貴女が向かい合う人間関係、向かい合う仕事のありかたこそが、ほんとうの意味での「自分自身の人生のスタート地点」なのかもしれない。どうか資格取得とかに走ってその大事な「スタート地点」を見過ごさないでほしい。どうかあなた自身の幸せの道を歩いていってほしい。

…と後半はなかばトランス状態で書いてしまったが、これは僕小倉ヒラクが書いたものではない。天から使わされたメッセージがたまたま僕に憑依した or 通りがかりの柴犬がそうやってワンワン吠えていただけだと思って一笑に付してくれたまえ。

コスモスの花が咲く頃にまた会おう。アデュー。

 

【追記1】なおこのエントリーの完成にあたっては上勝のまちづくりプロデューサーの大西正泰さんにたくさんの助言をもらいました。元才女おばさんの心情を知り尽くした大西おじさんのいる徳島県上勝では絶賛有能な移住者を募集中だそうです。

【追記2】仲良しのクラシコム青木耕平おじさんが「元才女おばさんもアラサークリエイティブ女子も社会の宝!迷走するのは社会の仕組みのせいだ。ウチならその女子たちの能力を腐らせはしない!」と切々と訴えておりました。興味のあるスキルフルな貴女はぜひ青木さんの会社に注目してみるのはいかがでしょうか?

【追記3】とあるイベントで元才女おばさんの話をしたら、参加者の男子から「これは女性に限りません!オトコにもこの罠ある〜!」とコメントもらいました。うん、多分これは現代日本における典型例なのかもしれませんね。ちなみに「元才女おばさん」と対になるエントリーはこちら。「話聞いてもらえるおじさん」の講演会の最前列で熱心にメモを取る。それが元才女おばさん…!

・話聞いてもらえるおじさん。

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さいきんの発酵デザイナーの活動ふりかえり

ここ最近の備忘録。

「山に篭もる宣言」をした時点で時既に遅し!年内はあれこれ用事があってドタバタが続いているのでした。11月前半は2017年最後の大移動と各地で人に会いまくりの慌ただしいツアーでした。

・徳島県上勝でお世話になったソシオデザインの大西さんが山梨へ。ラジオ出演と夜の飲み会をアテンド。まちづくりと巷の女子を震撼させている都市伝説、元・才女おばさんの話題に花が咲きました。今や数多いる「地域プロデューサー」のなかでも大西さんの活動は地に足ついて素晴らしく、地域のシチズンシップを育てる教育者としても稀有なおじさんだと思います。

・五味家の「発酵してない姉」ことごみふみちゃんに招集されて、発酵兄妹三人で山梨県河口湖のMizno Hotelへ。フランス在住のJAZZミュージシャン兼国際交流プログラムのプランナーである仲野麻紀さんがお出迎えしてくれて「フランスでワークショップ&講演ツアーやりませんか?」とのオファーをもらいました。『発酵文化人類学』のフランス語版の出版企画も立ち上がり、来年以降が楽しみ。20歳からのフランスとのご縁がまた活発になりそうで嬉しい。
(ちなみにホテルのオーナー夫妻の長女は僕の早稲田の同じ専攻の同級生でした)

・河口湖から長野県の下諏訪へ。五味のアニキと山中湖の宿ホトリニテのオーナー高村ナオくんと年に一度の「男子三人やまなし会」。リビルディングセンターを訪ねたあと、ローカルな温泉を堪能しました。最近オープンした「マスヤゲストハウス」で地元の子たちと飲んで、最近の下諏訪界隈の盛り上がりを感じました。街並みといい文化といい、諏訪は異界感あって面白いね。
・新しいデザインの美意識の話をしよう。リビセンの本を読んで考えたこと

・下諏訪から川崎へ。味の素のラボを見学しにいきました。味の素というと僕の周りの人たちはあんまり感心しないのですが、実はれっきとした発酵調味料です。しかも日本独特のダシや発酵調味料の系譜から生まれたローカルプロダクト。実は名物広報の二宮くみ子さんが『発酵文化人類学』に感銘を受けてくれたらしく、VIP待遇でラボのあれこれを案内してもらいました。所長の児島さんも誠実な人柄で、僕のプライベートラボの相談にも乗ってもらってしまった!ランチはハンガリーで仲良くなったマイさんと真澄の若旦那の宮坂さんと合流。昨日まで真澄の本拠地、下諏訪にいたのになぜ都心で会うのでしょうか…?宮坂さんは僕と同年代のTHEニューウェーブな発酵界のホープ。12/2に松本でイベントご一緒するので長野の皆さまお楽しみに!

・川崎からいったん都内へ移動。ソトコト編集部へ行って出版ツアーの行商。55回におよぶツアーで1,000冊以上は余裕で行商していたようです。驚き!
実は出版ツアー終了前後から各地の本屋さんや大手取次店の力を借りて全国の本屋さんで『発酵文化人類学』が買えるようになってきました。あわせてまたもやマス媒体で本の紹介が相次いで、出版ツアーやっている時より売れるペースが上がってきている感じがあります。ふつう出版直後がピークでその後勢いが落ち着いてくはずなんですけど、この本はまだもう一段メジャーなところに行きたがっているようです。担当編集のハシモト選手いわく「5万部売ります!」、版元ボスの小黒一三さんいわく「10万部売るぞ!」だそうな(ほんとかよ)。

・都内を経由して島根県石見銀山へ。大好きな群言堂に、イギリスでお世話になったシューマッハカレッジの校長、サティシュ・クマールさんが来日するということで、講演会の前日入りしてサティシュさん御一行と他郷阿部家で晩餐を囲みました。『発酵文化人類学』がこういうカタチで本になったのは、実はサティシュさんからもらった言葉が原動力になっていて。「サティシュさんのおかげで本ができました!ありがとう〜!」と一冊本を贈答したら、サティシュさんの通訳兼アテンドで同行していた文化人類学者の辻信一さんが「あっ、この本僕も今読んでるよ!注目してました」とビックリ。僕も辻さんの本を読んできたのでビックリしたぜ。この夜もサティシュさんから滋味深い言葉をたくさんもらったよ。登美さん大吉さんはじめ、群言堂のみんなもサティシュさんたちとご縁ができてとっても嬉しい気持ちになりました。山梨の五味家、千葉神崎の寺田家のように、群言堂の松場家も僕の親戚のように感じています。来年は松場家の若旦那と一緒にシューマッハカレッジを再訪するぜ!
エレガントに、シンプルに。シューマッハカレッジの、学び合うコミュニティのつくりかた

・出雲空港から一路名古屋へ。出版ツアーがご縁で始まった「なごや朝大学」の発酵クラスのラストでした。夕方について受講生のみんなと利き酒講習兼懇親会で盛り上がり、翌朝7時から手前みそワークショップという楽しくもハードなスケジュール…!
(ちなみに二日酔いの受講者多数でしたが欠席者はいなかった。スゴい!)
「なごや朝大学」のコミュニティの雰囲気はとてもいい感じで、みんな好奇心いっぱいで地域の活動も頑張っていて、ハートウォーミングで風通しがいい。企画のオファーをしてくれた建築家の間宮さんはじめ、事務局の皆さまのナイスな人柄がこういうコミュニティをつくったんですね。ほんと最&高!名古屋のみんな、たった二ヶ月間でしたがお世話になりました。
朝イチで講座終了後、りんねしゃの大島サチエ姐さんのアテンドで中京テレビへ。こないだブログで書いた中京・東海地域の発酵食のルーツを探る企画の打診。中京テレビのディレクター陣と大いに盛り上がったので、何かしらスペシャル企画がスタートする!かもしれないよ。
・京都は貴族の味、名古屋は武士の味、東京は商人の味。

ほぼ一週間移動し続けてようやく山梨へ帰宅。色んな事がありすぎて頭がパンクした〜!
お目にかかった皆さま、どうもありがとう。また会いましょう。

備忘録なのでオチも教訓もないよ。ごきげんよう!

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ミシマ社のWEBマガジンで連載『10年後を考える』が始まりました。

久しぶりに新しい連載を始めることになりました。
本好きにおなじみミシマ社の『みんなのミシマガジン』で月一連載です。
しかも!!テーマは発酵ではなーい!!!

・第1回 時代はローカル!未来は明るい!ってホント?  <10年後を考える> | みんなのミシマガジン

10年後の未来はどうなる?つくりながら考える

10年後の未来、いったい僕たちはどうやって生きていくのであろうか…?
そんな問いかけからスタートし、この先どうなるかわからない感じで更新されていく予定。以前greenzのに掲載されて話題になった「豪族2.0」のその続きのような話になっていくのではないでしょうか。

・キーワードは”豪族2.0″! これからは一旗あげるために地方へ行く。発酵デザイナー・小倉ヒラクさんが考える、今とこれからの日本のカタチ | greenz.jp

実はこの企画1年くらい前、『発酵文化人類学』が出版する前まで遡ります。「これからの経済や働きかた」というソーシャルなテーマで本を書きませんか?というオファーだったのですが、考えれば考えるほど僕には太刀打ちできる気がしなくて「無理〜!」と一回あきらめかけたんです。

ミシマ社ホシノさんの「じゃあ連載やってみて、面白かったら本にしましょう」という衝撃的にユルい提案によって企画が再起動。一年越しにようやく最初のカタチに辿り着きました(ホシノさんすいません)。

「10年後を考える」というわりとそっけないタイトルもミシマ社さんからの提案。僕はわりとビジネスマインドなので、テーマもタイトルもちゃんとフォーカスしてキャッチーなものにして…とついつい考えちゃうんですけど、ミシマ社さんの編集方針はけっこう変わっていて、あえて物事を特定の方向に誘導しない、あえてのふんわり&そっけない編集を信条としているようです。

でも考えてみればだよ。ほんとに未知の面白いものって「やりながら考える」もの。最初にあんまり作り込みすぎると思いついたことを試したり方向転換しにくくなる。
「どうなるかわからない」という状態からスタートできる、というのはある意味最高にエキサイティングなわけです。考えてみれば僕の名刺変わりになっている「てまえみそのうた」とか「発酵文化人類学」とかもタイトルもキャッチーとは程遠いし、まさに作りながら考えて、それがだんだん発展していったプロジェクトでした。

なのでこれも焦らず時間をかけて、何か意義のあるプロジェクトに育てていきたいと思います。ミシマ社のみなさま、どうぞよろしくー!

【追記】このプロジェクトのなかで改めて話を聞いてみたい人はこんな感じ。近々ゆっくりお話させてもらえたら嬉しいデス。

鈴木ナオ(greenz編集長) / 竹内昌義(みかんぐみ)/ 青木耕平(クラシコム)/ 伊藤 菜衣子 (Saiko Ito) / 群言堂のみんな / 江副直樹(Bunbo)& COOPチーム / シューマッハカレッジ&ダーティンホールトラストのみんな /

京都は貴族の味、名古屋は武士の味、東京は商人の味。

出版ツアーで全国行脚をしまくった結果、だんだん日本列島における「味覚の地域性」を言語化できるようになってきました。
東北、北陸、甲信越、首都圏、東海、関西、中国山陰、九州、沖縄とそれぞれ「味の美意識」に多様性があり、僕の専門の発酵文化から見るとそれがよくわかる。

で。ちょっとわかりやすいモデル分けをしてみるとだな。
京都・名古屋・東京の三都は明確に味覚の基準値が違う。その違いは「誰がつくった味覚なのか」で説明できそうです。

京都は「貴族」が、名古屋は「武士」が、東京は「商人」が味覚の基準をつくった。
貴族の味は澄んでいて、武士の味は濃厚で、商人の味は軽くて粋。暮らしの違いが味に反映されるわけです。

さいきん通っている名古屋をはじめとする東海圏(愛知、岐阜、三重、静岡)は知られざる「濃厚旨味大国」。たまり醤油や八丁味噌、みりんなど旨味調味料のバリエーションがやたらいっぱいあり、ローカルの個性的な蔵が元気にものづくりをしています。
さらに日本酒も侮れない!(特に最近僕が気になるのは愛知県知多の澤田酒造)。関東でも関西でもない不思議な美意識と歴史が息づいているんですね。

なんなら東海エリアを「旨味の首都」と呼びたい…!
これからちょっと時間をかけて東海エリアを深掘りしたいと思います。

【追記】東海エリアと並んで気になっているのが沖縄本島をはじめとする南洋琉球エリア。泡盛や豆腐よう以外にも不思議な発酵食品がたくさんあります。こっちも深掘りしてえ…!

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発酵文化をモダンに楽しむ!山梨発酵ツアーに遊びにおいで〜

週末は、OZマガジン企画の女子旅ツアー。山梨の発酵スポットのアテンドをしてきました。どこも自分にとってはなじみの場所ですが、改めてツアーで回ってみると山梨ってほんとに郷土食と発酵文化が豊かだなあと再認識。

各地を巡り歩いてきましたが、山梨の郷土食は他のどこにも似ていないユニークなものがたくさん。とりわけ発酵文化はすごく洗練されていて、現代の若い人の口に合うものがたくさんあります。昨日のコースを体験したらほとんどの人は山梨のモダンな郷土食にハマってしまうこと間違い無し!美味しいもの&発酵好きは山梨に引っ越してくるといいよ!

山梨のおいしい発酵ツアーの様子

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完熟の甲州ぶどう。ラブリーな紫色…!

今回のツアーで回ったのは『発酵文化人類学』でも取り上げた、山梨の発酵文化の魅力がよくわかるワイン・お味噌・甲州スタイルのお寿司の3つ。

お昼は本にも登場するマルサン葡萄酒でワインテイスティングしながらぶどう畑の下でピクニック。
午後はこれまたおなじみの五味醤油のワークショップスペースで麦麹の仕込み体験。
夜は甲府中心地にある福寿しで僕の大好きなワインとお寿司のペアリングを堪能しました。

▶マルサン葡萄酒でワインピクニック
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ぶどう畑からツアースタート。左がOZプロデューサーの沢田さん。今回色々お世話になりました。

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マルサン葡萄酒の若尾くん。スカミュージシャン兼ワイン醸造家。ブドウ栽培のエキスパートでもあるナイスガイ。

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ちょうど仕込み中のシーズンなので蔵のなかも見学。発酵中のワインに大興奮の図。

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ワインを発酵させる前段階。ブドウ汁と果皮を一緒につけこんで赤ワインになる色素やタンニンを抽出していきます。

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なんとも言えない不思議なニオイが醸し出されていきます。

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ブドウの樹の下でワインテイスティング。

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新橋の立ち飲み屋もビックリの盛り上がりっぷり。

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ランチは山梨の食材でつくった和風お弁当と、もぎたてのブドウ。かぼちゃやおにぎりと赤ワインがよく合うんだよ。

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ランチをつくってくれたのは勝沼のブドウ畑のなかにあるサンキング・カフェ。ここのご飯めっちゃ美味しんです。オーナーのタクさんは元ハリウッドランチマーケットでいちいちナイスセンス。

▶五味醤油で麹ワークショップ

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場所を勝沼から甲府に移して、おなじみ五味醤油へ。

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ワークショップスペースKANENTEで醤油麹をつくりました。あわせて和食の発酵文化や麹について発酵弟(僕)と発酵妹(五味洋子ちゃん)でレクチャー。

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ちなみにOZ tripでもこのKANENTEとワークショップについて取材してもらいました。

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味噌蔵見学。ほとんど全員醸造蔵の見学は初体験。

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できたての米麹。ほんのり甘い香りがします。

▶福寿しでお寿司とワインのペアリング

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『発酵文化人類学』でも書いたように、僕が山梨に来てビックリしたのは「お寿司と地元のワインのペアリング」というカルチャー。山梨以外ではまず味わえない、ユニークすぎる楽しみかたなんですね。

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山梨のお寿司屋さんはオードブルが充実していて、なかなかお寿司本体にたどり着かないところが多い。笑
写真は小淵沢のオーガニック野菜たち。ケールの葉っぱがおいしかったぜ。

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この福寿しでは、お寿司は手渡しで食べるスタイル。直接渡すとお米がふんわり潰れず美味しいかららしいのですが、ナイスキャラすぎる大将とアイコンタクトできるのが単純に楽しい…!

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常にハイテンションでフォトジェニックな大将。カウンターで食べれば各メニューの説明をお笑い芸人のような話芸で説明してくれます。

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あまりにも楽しい&美味しすぎて大盛り上がりのツアーでした。
みんなどうもありがとう〜!

山梨の郷土食は、とってもモダンでハイセンス。
ハイセンスなガールズ&ボーイズたち、遊びにおいで〜!