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“Fermentation Tourism Nippon”展ができるまで。時系列でフラッシュバック!

4/26から始まる渋谷ヒカリエd47 MUSEUMの展示会”Fermentation Tourism Nippon”。
ものすごくたくさんの人が期待&応援してくれていて、本当に嬉しいかぎりです。

で。
書籍出版!クラウドファンディング!イベント!商品販売!と情報が行き交って「どどど、どういうこと?」と思っている人も多いと思うので、今のこの状況を時系列で整理したいと思います。

こんな感じでプロジェクトが進んでいっているよ!

▶プロジェクトのスタート:2018年1月頃


ヒカリエでの最初の作戦会議の一コマ

前から僕のワークショップに参加してくれていたD&DEPARTMENTの展示会担当、黒江美穂さんとの出会いが全てのきっかけ。たまたまヒカリエに寄って世間話していた時に、当時テレビ局との仕事でたまたま整理していた47都道府県の発酵食品リストの話に。そしたら黒江さんと

「あ、うちで展覧会できるかも…」

という話になり、気がついたらD&D社内の企画会議でも決済がおり、47都道府県のローカル発酵を紹介する展示会という今回の企画の元型が生まれました。

▶企画のエクストリーム化:2018年春頃


プロジェクトスタート時のバナー。僕自身ほんとに47都道府県行くとは思ってなかった…

こうして始まった展覧会企画。当初はふだんD&Dがやっているような、全国から出展者を募り、スポンサー料や商品、情報を集める形式で開催するつもりが、リストにあった発酵食品を作っているところの多くが家族経営、あるいは個人の手づくり。なので普段の形式は到底ムリ。

「もしかしたらコレ、僕が全国まわってモノと情報を集めてくるしかないのでは…?」

ということに気づいたあたりから、企画がエクストリーム化
手間と時間と予算が膨れ上がり、通常の枠組みでは開催できない。つまりお金を集めなければいけない。お金を集めるためには、意義があり、面白く、しかも常人がやらないような突き抜けた企画でないといけない…!

今振り返ってみると、ここで引き返してもよかった。企画をおじゃんにして然るべきだったのだが、僕と黒江さんにはなぜか「やめる」という選択肢がなかった

47都道府県の発酵文化を体系化し、日本文化とは一体何かを問いかける。
謎に壮大なチャレンジがスタートしてしまったんだよ汗

▶プロジェクトチーム結成:2018年春〜秋にかけて


様々な組織や立場のメンバーが集まる愉快なチーム

生半可では絶対にお金も集まらないし、興味も持ってもらえない。
そのためには、何が必要か?まずはイケてるチームが必要だ!

今回キーになる役割は2つ。お金をつくる事業プロデューサーと、圧倒的クオリティをつくるクリエイティブディレクターだ!と考えたついたところで、友人のgreenzのプロデューサーおのっちを下北に呼び出して口説き、尊敬する先輩、Re:Sの藤本智士さんを関西にたずねていって口説いた。半ば無理やりYESと言わせてしまったのだが、この二人がチームに加わって暮れた時点で、プロジェクトの運命の70%くらいは決まった…!とガッツポーズ決めたよ。

・FermentationTourism Nippon 〜発酵から再発見する日本の旅〜 | 藤本智士

そして。greenzおのっちの「まずは企業スポンサーを呼びかけよう!」というアイデアから企画書をつくり、事業体制をつくり、営業資料を揃え、僕のブログで呼びかけたところ、すぐに手を上げてくれた、北海道北見のバイオメーカー、環境ダイゼンの窪之内さんと愛知県豊橋の種麹メーカー、ビオックの村井さん。この二社が「スポンサーやります!」と名乗り出てくれたおかげで、プロジェクトをスタートできる資金の目処がつき、いよいよ本格的に事業がスタート。この二社には本当に、本当に感謝しています。ありがとう…!

・コンテンツメーカーはプロデューサーにはなれない。だから僕は、「つくる or die!」まで振り切る。 | greenz.jp

▶47都道府県を巡る旅がスタート:2018年夏の終わり〜


特別協力のALL YOURSの服を調達していざ旅へ出発!の瞬間


今回の展覧会のテーマは旅!タイトルは”Fermentation Tourism Nippon”で行こう!」

藤本さんの提案で企画の方向性が決定。発酵の視点で日本を再発見する旅の一部始終が展覧会になる。そして旅の途中経過がコンテンツになってそれが広報になる…という道筋が見えたのが2018年の夏。そして発酵食品の仕込みが本格的になる秋の手前に、旅をスタートすることに。

47都道府県の発酵文化を訪ねる旅。ただでさえ大変そうなのに、さらに自分を追い込むルーツを3つ設定してしまった。

特にハードコアなのが①で、これはつまり全国どこにでもあるメジャーな日本酒や醤油、味噌に逃げることができない。つまりその土地ならではの個性派ローカル発酵文化を見つけ出さなければいけない、ということ。

しかもたまたまあるメーカーが作っていた、ではダメで最低三代くらいは歴史が継承されていないといけない。しかも現地に実際入って、それが作られている現場と土地の景色を見てこなければいけないという妥協を許さぬ設定に七転八倒しながら各地の発酵文化を訪ねていきました。

途中で何度も心が折れて挫けそうになったり、病気や過労で倒れたりしながら全国を周りました(しかも大半はたどり着くだけでも大変な辺境とか離島)。

宿がなくて野宿したり、タクシーすら拒否される寒村に向かって延々3時間くらい歩き続けたり、山道をかきわけて、漁師の船をヒッチハイクして、飛騨の雪山で遭難しかけて…と虚弱体質の僕にはなかなかにしんどい思いをしながら、素晴らしい景色の数々に出会うことができました(でも今でもたまに夢でうなされる)。

▶クラウドファンディングで600万円集める:2018年秋〜2019年始

次に挑戦したのが、クラウドファンディング。しかも目標調達額500万円

・47都道府県の知られざる発酵食品が大集合!発酵から日本を再発見する展覧会を開催! | CAMPFIRE


「いやほら、今回俺たち大きいことやるから!って気合い見せたいじゃない?」

というおのっちの広げた大風呂敷に賭けて、CAMPFIREでのクラファン企画がスタート。当初スロースタートで周りから「さすがに500万円はムリでは…」と心配されたものの、おのっちも事務局スタッフも(あと僕自身も)「絶対いける!」と謎の自信。

ラスト一週間で400万近くの支援をもらい、見事サクセス。というか目標額を超える約600万円が集まり、つまり予算をかけて展覧会をつくりこめる目処が立ってきた!と事務局一同気合が入る。

なお、このクラファン企画の盛り上がりで展覧会自体の注目度も大幅アップ。2019年始から取材のオファーがどんどん来るようになりました。まだ開催してないのに。汗

▶100人でキックオフイベント!:2018年末


ヒカリエで行われたイベントの様子。異様な盛り上がり…!

資金の目処がつき、デザイナーの財部裕貴さん、広報の大木聡子さん、事務局のQちゃんこと河野 奈保子さんたちが加わり、ついに展覧会の全容が見えてきた…というタイミングでキックオフイベントをやることに。

「何やるのかよくわからない展覧会の準備イベントにいったい誰が来るのか?」

とドキドキしながら当日を迎えたら、なんと100人の超満員
僕の旅のレポートをお話して、みんなで発酵珍味を食べて盛り上がりました。

ていうか本音を言うとだな。この日のみんなの顔を見て

「きっとこの企画は面白いことになる…!」

という実感が湧いてきたんだな。みんなありがとう…!

▶書籍化プロジェクトがスタート!:2019年1月〜4月

無事キックオフイベントとクラウドファンディングが成功し、旅の大詰めを迎えた頃に、


俺、ヒラクの旅行記が読みたいな〜!

という藤本さんの鶴の一声により、最も体力消耗の激しい時期に本を一冊書き下ろすことに(当初はカタログ制作のつもりだった)。それが1月、お正月が終わってしばらくしてからのこと。編集のRe:S番頭の竹内厚さん、ブックデザイナーに堀口努さんが参加。書籍の制作が本格スタートしました。

そこから2月〜3月の二ヶ月間はこれまでの人生の中でもトップクラスの地獄でした。毎日旅を続けながら、夜なべして原稿を書き続け、そして合間に展覧会の取材を受けたり寄稿したりという余裕あ1ミリもない日々。大変すぎて記憶があんまりない…!

2月後半から3月前半にかけての僕のツイートを見返すと何言ってるのかさっぱりわかりません。アタマがショートしてたんだ、きっと。

▶翻訳プロジェクトがスタート!:2019年2月〜

そしてさらなるチャレンジ。僕の海外の友人たちがこのプロジェクトに興味を持ってくれているらしく、展覧会を日英バイリンガルにすることに。さらに英訳付きの展覧会カタログ制作も決意。柳澤円さんを中心の翻訳チームが結成され、英語化のためのクラファン企画第二弾がスタート。4/25まで絶賛支援募集中なのでどうぞよろしくおねがいします。

・Japan Fermented Food Catalog 日本の発酵を世界へ! | CAMPFIRE

▶書籍の事前予約スタート、まさかの校了前重版!:2019年4月

4月。いよいよ展覧会まであと一ヶ月!というタイミングで書き下ろし書籍『日本発酵紀行』の事前予約をスタート。

前作『発酵文化人類学』の時もやった企画なのですが、今回は個人に加えて本屋さん向けの買い切り注文も呼びかけてみました。

そ!し!た!ら!!
とんでもない奇跡が!ブログフォームのアラームが鳴りっぱなしの予約祭りがスタート。4/18の時点で、個人注文が1200冊超、本屋さん注文が900冊、つまり2000冊以上の本の注文が決まってしまった(ほぼ全部買い切りなので返品もなし。スゴい…!)

しかも予想もしていなかった事態が。

流通的にいうと、もはや書籍というよりはモノとして売れている僕の新著。事務局一同ビックリするような数の注文がきて、なんと…

本が校了する前に実質増刷が決まってしまった…!
ひょえーーー!!!

▶展覧会まであと一週間!イベント告知スタート:2019年4月半ば〜


オリジナル提灯を手にご機嫌の事務局長、黒江さん

で、今ココ。展覧会開催に向けてのラストスパート。
展示ボードをつくったり、展示する民俗資料を全国から集めたり、食堂で幻のレシピを再現したり。

今回はなんと!単に蒐集するだけではなく、自らの手での再現までやっています。

そんな激レアな発酵食品は、もちろん展示するだけでなく実際に食べることができます。
左から、「麹づくし定食」「旨味づくし定食」「珍味づくし定食」。
展示期間の前半、中盤、後半とメニューが切り替わっていきます。特にすさまじいのは展覧会終盤に登場する「珍味づくし定食」。何それ?という食材のオンパレード。

期間中には僕セレクトのお酒も登場します。どうぞお楽しみに!

さらに!ミュージアム併設の『発酵デパートメント』をオープンします!やっほー!
2/3くらいの展示品が実際に買えるのと、僕とD&D事務局がセレクトしたナイスな発酵プロダクトがゲットできます。食品にとどまらず、微生物消臭剤とか、微生物自体(種麹)とか買えるよ!「これ誰得?」と思われようが面白そうなものを集めまくるぞ!というスタンスのこちらも期間限定のポップアップショップです。

全宇宙の発酵クラスタよ…爆買いするしかない…!

まだある…!
展覧会期中、イベントを多数開催します→イベント第一弾リストはこちら。

全国からめちゃくちゃ愉快な発酵仲間たちが大集合!そして目玉は10週連続角打ち。会場を角打ち会場にして飲み会やります(予約不要)。毎週発酵のスペシャリストをゲストに、週替りのお酒メニューで盛り上がります。

まずは、4/26のオープニングイベントと、5/3の『甲州ワイン角打ち』にカモン!

ということで。
開催前にしてビッグウェーブがきている”Fermentation Tourism Nippon”をどうぞよろしくお願いします。黒江さんはじめ、広報の清水さん、シェフの中山さん、出版の田邊さん高木さんたちD&Dの皆さま。これからが祭りの本番だ…!

たくさんの土地の、たくさんの記憶を載せて、いざ船出!

【超速報】新著『日本発酵紀行』なんと校了前に初版部数上乗せ!実質発売前重版…?

みんな聞いてください。大ニュースです。
僕の新著『日本発酵紀行』、発売一ヶ月以上前にしてはやくも増刷の事態となりました。

まだamazonの予約すら始まっていないと状態でなぜ…?
というのもだな。このブログで呼びかけた事前予約の申込数がとんでもないことになったからなんだよ。みんな…ほんとに…ありがとう!

個人の事前予約、1000冊突破!

4/1からスタートした事前予約、初日で250冊、3日で500冊、二週間目の締切4/15の時点で800冊強、さらにクラファン予約ぶんの200冊を足すと1,000冊を超えている…!

前作『発酵文化人類学』は二ヶ月やって800冊弱だったのを考えると、とんでもないことです。すすす…すごいよ…!

お店の事前注文、1500冊突破!

さらに。本屋さん向けに事前予約を呼びかけたところ、こちらもとんでもないことに…。

日本全国のナイスな本屋さんから、太っ腹注文が続々…!
ううう、嬉しい〜!さらに大手書店からも新著の噂を聞きつけての太っ腹注文が続々。さらに!この呼びかけは思いもかけない方向に…

どひゃー!本屋さんじゃないとこからもこんなにも注文が…!

ていうか、全体で言うと本屋さんではなく、セレクトショップや飲食、小売店からの注文のほうが多い。なかには教室やコミュニティなど、もはやお店ですらないところからも…。

嬉しすぎる。

校了直前ですが、増刷します。

気がついたらとんでもない冊数の引き取り手が決まっていた新著『日本発酵紀行』。なんて幸せな子なんだ…!


ヒラク「えーと。個人で1000冊、お店で1500冊、残り500冊は展覧会用。ということは…?」


D&Dの出版担当、田邊さん「ヒラクさん。初版3000冊じゃ足りないですね…」


ヒラク「つまり…?」


田邊「発売前、というか校了前なので初版部数変上乗せしましょう。5000冊に!


ヒラク「なんとー!これが世に言う校了前増刷というヤツですね…!」


(ヒラクさん以外からそんな単語聞いたことないけどね…)

ということで。
土壇場でミラクルが起きた!すげーーーー!!!
みんなほんとにありがとう。

新著『日本発酵紀行』、まさかの事前重版出来状態からの船出です。47都道府県の発酵文化を巡る旅。おなじみの醤油や酒から、知られざるローカル発酵文化まで。現代社会に隠された異世界のレイヤーへと皆さまをお連れします。

前作『発酵文化人類学』とは一味、というか五味ぐらい違うディープな旅行記。
・『日本発酵紀行』まえがき先行公開!

どうぞお楽しみに!

おそらく腱鞘炎確定です


前回のサイン風景。800冊で丸二日間かかりました

いやあほんとによかったよかった。
直接の買い切り注文が1500冊以上。ほんとにDIY流通の鏡。自分を褒め称えたい…!


………
…………あれ?1500冊?に?サイン?するって……どういうこと?


田邊「ヒラクさん。D&DEPARTMENTの倉庫、3日間確保したんで!サインよろしくおねがいします!」


(3日で足りるかな…?てかこれ絶対腱鞘炎確定だな)

to be continued…

【補足】なお『日本発酵紀行』のお店向け事前予約、4/24まで受付中です。先行販売やイベント開催できる権利や、ノベルティもついてきます。僕の腱鞘炎を促進させてください。よろしくお願いいたします。ペコリ。

・【店舗売り用特典付き】小倉ヒラクの新著『日本発酵紀行』の注文をお願いします!

 

【店舗売り用特典付き】小倉ヒラクの新著『日本発酵紀行』の注文をお願いします!

全国の本屋さんにお願いです。
小倉ヒラクの新著『日本発酵紀行』を注文してください…!

DIY流通でニッチベストセラーになった前作『発酵文化人類学』から二年。47都道府県の発酵を訪ねた旅行記が5/24に一般発売となります。 本の概要はこちらから。

今回もまた取次の自動配本はしないDIY流通(版元はD&DEPARTEMENT)。
なので、この本が売れるかどうかは本屋の皆さまの力にかかっている…!

・【発酵文化人類学】一週間で重版出来!の舞台裏。マーケットではなくコミュニティに届ける。

ということで。著者自ら本屋さんに呼びかけたいと思います。
僕の本、めちゃ面白いから注文しておくれ〜!

初版は3000部からスタート!

今回の『日本発酵紀行』は、4/26から始まる渋谷ヒカリエの展覧会『Fermentation Tourism Nippon』の公式書籍という立ち位置で制作がスタートしたのですが、

書籍として独立した読み物になっています。

なのでISBNコードを付けて一般流通することになりました。
版元(&展覧会の事務局)のD&DEPARTMENTの出版担当田邊さんとの打ち合わせはこんな感じです。


ヒラク「実は今回、旅で経費使いまくってしまったので、本ちゃんと売らないと大赤字です。ヤバいです…!」


田邊「ふだん展覧会の書籍は2000部くらいなんですけど、今回は強気で3000部で行きましょう」


ヒラク(マジか…経費ぜんぜん回収できねぇ…)

初版は3000部。重版しないと絶対的な赤字です。涙


ヒラク「わかりました。では僕のほうから読者のみんなに事前予約の呼びかけします。」

その結果…

4/11日現在、なんと1,000冊近く個人の事前予約が集まっている…嬉


田邊「スゴいですね!展覧会では頑張れば500冊くらい本が売れるので、これで1500冊は売れる目処がつきました!」


ヒラク「いやあほんとにありがたい。そしたら次は本屋さんにお願いするのどうです?」


田邊「わかりました!それでは特典付きでやりましょう!

本屋さん、事前予約プリーズ!


Shibuya Publishing & Booksellersさんも新著楽しみにしてくれているそう…!ありがとう!

ということで。本屋さん向けに事前予約キャンペーンをやるぞ!
今回のコースはこの2つ!

【A】まとめて注文してくれたら特典付き!コース

本をまとめて注文してくれた本屋さんには、僕の手づくりPOP↑(本屋さんの名前を自筆で入れるよ)と、特製フリーペーパー&ステッカーを特典として送ります。前作『発酵文化人類学』とセットで売ってくれたら嬉しい〜!

【A】まとめて注文コース


条件:新著『日本発酵紀行』と前作『発酵文化人類学』を合計20冊注文してください!
※『発酵文化人類学』の在庫がいっぱいあるよ!という場合は『日本発酵紀行』のみでも。

特典:
特製POP
発酵ステッカー
『日本発酵紀行』に収録できなかった旅のストーリーを掲載したフリーペーパー


【B】買い切りしてくれたら先行発売&イベントやるよ!コース


2017年秋、京都の丸善本店で開催した能楽師安田登さんとのトークイベント

さらにVIP待遇コース。本を買い切り30冊以上注文してくれた本屋さんには、絶対に売り切れるようにトークイベント出張にいきます(地域問わず)。あるいは特別企画で『日本発酵紀行』に収録した写真やヒカリエの展覧会の一部を使った「ミニ発酵展」をやることも可能です。


新著に収録されたフォトジェニックな写真の数々。D&Dといい感じの作品にデザインします。


買い切り本なのでイラスト入りサインもするよ!

【B】買い切りコース


条件:新著『日本発酵紀行』を30冊以上まとめて買い切りしてください!

特典:
本の先行販売権利(5/12までに本をお届けします。一般発売は5/24)
イベント開催権(トークイベント or ミニ展覧会)
僕のイラスト入りサイン
特製POP
発酵ステッカー
『日本発酵紀行』に収録できなかった旅のストーリーを掲載したフリーペーパー


注文は下記フォームからどうぞ。

☆☆日本発酵紀行 本屋さん注文フォーム☆☆
締切:4/24まで!

本屋名&担当者お名前 (必須)

メールアドレス (必須)

申し込みコース (必須)
【A】まとめて注文コース【B】買い切りコース

本の注文/買い切り冊数 (必須)、コメントや要望あればぜひ!

※Aコースは5/24までに、Bコースは5/12までに発送予定です
※イベントの要望はコメント欄にお願いします!

今回も目指すは10000部!


今回も装丁インパクト大…!

去年の夏過ぎから、47都道府県の発酵の現場(離島や僻地多数)をひたすら旅してきました。当然他の仕事はほとんどできず、お金はひたすら出ていくばかり。展覧会を開催するために集めたお金も、僕の予算ぶんは制作費に回してしまった。

つまり、この本が売れないと僕はまっっっったく報われない(経済的には)。
売るしかない…今回も…!少なくとも10,000部は売れないとヤバい。なんなら4/12日現在、僕の口座はほとんどすっからかん。見事に使い切った…!

3,000部スタートで、どこまで伸びるかは全国の志ある本屋さんにかかっています。お願いします…!

と僕の都合を押し付けてもアレなので、内容について言うとだな。
編集してくれた藤本智士さんひきいるRe:SチームやD&Dのスタッフのみんなも「めちゃくちゃおもしろい!」と太鼓判を押してくれています。

事前公開したまえがきにもたくさんのナイスな感想が寄せられています。

・『日本発酵紀行』まえがき先行公開!

たとえば新潟のツバメコーヒー店主の田中くんより。


言語偏重の人間的な世界に人間性が希薄になってきた現代において、言語に置き換えることのできない感覚的な世界にこそ人間性が潜んでいるという見立てはひとつの可能性であると思う。

一方で、主体的に自分で完結してつくることの自立性よりも、主体的に受動性、媒介性を引き受けて(つまり能動的な受動性ね)つくること、というひねりこそ、真に自立性であるという見立てもまた共感するところが少なくない。

そしてこの探求全体が小倉ヒラクにとってのある種の治療にもなっていることに注目する。
前書きだけ読んで紀行文のようでいてなんとなく『苦界浄土』を思わせた。
醸造家はかつての水俣の農民たちよりも言葉を持っているとは思うものの。
なにはともあれ、死の淵に立ちながら帰還して書いた今作をとても楽しみにしています。


みんなの感想を見るに、きっとこの本は面白い…!はず(書き上げたばかりなので客観視できないけど)。

なにとぞ、全国の志ある本屋さんからの注文をお待ちしています。
発酵を通して見える新しい世界、未知の日本のかたち。みんなに届け!

☆☆個人向け事前予約は4/15まで!☆☆

『日本発酵紀行』まえがき先行公開!

こんにちは。小倉ヒラクです。
新著『日本発酵紀行』のまえがきを先行公開します。面白そう!と思った方はぜひ事前予約をお願いします。

・新著『日本発酵紀行』の事前予約をお願いします!

どうぞたくさんの人にこの「記憶のざわめき」が届きますように。

日本発酵紀行 まえがき

 木々が葉を落とし、土や水のなかの生命が息を潜める季節、町外れの蔵からプツ…プツ…と小さな音が聴こえてくる。桶や樽のなかで微生物たちが活動を始めた音だ。川が凍りつくほどの寒さのなか、蔵ではたらく醸造家たちは上着を脱いで狭い室(むろ)に入っていく。

 室のドアを開けると、じっとり湿った蒸気と甘い栗のような香りが押し寄せてくる。室の真ん中には底の浅いプールのような長い箱があり、そこには白く靄(もや)がかかったような米が寝かされている。米についている靄は、カビだ。毒を出さず、人間に有用な成分をつくってくれるニホンコウジカビという不思議な微生物。室に充満する熱と香りは、米を食べて爆発的に増殖していくこのカビから発せられるものだ。

 人間たちは米粒を両腕を使ってかきまぜ、ばらし、曲芸のように米粒を底からすくって噴水のように空中に巻き上げていく。このように撹拌することでカビが呼吸するために必要な酸素を送り込み、火傷させないように適度に放熱させていく。手入れ作業が終わると、醸造家たちはじっとカビの茂った米、麹(こうじ)を見つめる。

「とてもいい。すごく元気に育っている」

「湿度はこのままでいいかな?」

「あと数%だけ乾かそう」

 彼らは手を通して、鼻を通してカビたちと対話をしているのだ。室から出ると、醸造家たちは階段を登って冷たく乾いた踊り場のような場所へ移る。そこには小さなタンクが規則正しく並べられている。タンクでは、ベージュ色のペーストに無数の小さな泡が浮き上がり、プツ…プツ…と音を立てている。

 このペーストは室でコウジカビをつけた麹と米を水と混ぜ合わせたもの。泡を立てているのは酵母。カビが米を食べた時に分解した糖分をエサにして大量のガスを放出する。ガスは麹ペーストに含まれるタンパク質や脂質の薄い膜に包まれて気泡となってふくらみ、爆(は)ぜ、そのバブルの底で酒の材料となるアルコールが生成されていく。

 ここは淡路島の日本酒蔵、都美人。
朝の
時、都会の人たちが眠りこけている(あるいはようやく寝床につく)時間に蔵人たちの仕事が始まる。米を洗い、蒸し、室に運び、カビの手入れをし、タンクに酒の(もと)を仕込み…と、日かけて微生物たちの世話をするのだ。まだ日の昇る前のしんとした空気のなか、人間たちが寡黙に作業をこなしていく。

 誰の声も聴こえないはずなのに、蔵のなかには不思議な賑やかさがある。目に見えない微生物たちが刻一刻とその数を増やし、麹室(こうじむろ)やタンクのなかでさざめいている。蔵人たちは耳を澄まし、じっと彼らの声に耳を傾ける。目に見えない、耳にも聴こえないミクロの対話。

 やがて朝焼けが蔵を照らし、学校へ向かう子どもたちの声が遠くから聴こえてくる。人間の時間が始まった。

               ☆

 僕の祖父は、佐賀の玄界灘の漁師だった。小学生の頃、東京で生まれた虚弱児の僕は、夏休みになると母方の佐賀の実家に預けられ、海で泳いだり、野山を散歩したりして身体を鍛えた。なかでも楽しみだったのは祖父の船に乗って漁に出ることだった。深夜に沖に向かって船を出し、真っ暗な海のうえで網を降ろす。灯台の明かりも見えず、360度ぐるりと闇だ。心配になって祖父にねた。

「おじいちゃん。こんな真っ暗ななかで怖くない?」

「大丈夫。俺には海のうえに道が見える」

 祖父にとって、星や潮のざわめきは自分がいる場所を教えるGPS情報のようなものだったのだろう。高等教育を受けたことのない、人口200人の小さな漁村で育った祖父は、船に乗って朝鮮半島や沖縄、台湾へ行き、現地の言葉を知っていた。僕にはただの水のカタマリにしか見えない海からたくさんのメッセージを受け取、明日の天気や風向きを驚くほど正確に言い当てることができた。都会っ子の僕からするとエスパーにしか見えなかった祖父は、僕が中学生のときに死んだ。縁側で漁網を編みながら居眠りするように息を引き取ったという。

 それから僕は高校に進学し、思春期の男子らしくアートや音楽にハマり、夏休みは都心のギャラリーやライブハウスに行くことに夢中になり、やがて遠い世界に憧れて海外へバックパッカー旅行に出るようになった。佐賀で祖父と過ごした日々は記憶の淵に沈み、僕は20代前半までひたすら未知の情報、新しい情報を追い求めて、気がついたら情報の設計の専門家であるデザイナーになっていた。

 目に見えるもの、文字に書かれたもの、誰かによって見出され、整理され、編集されたもの。そういう「情報」を集め、組み上げてポスターや箱や冊子にする。それは刺激的な仕事で、駆け出しデザイナーだった僕は朝から晩までパソコンの画面や出力されたドラフトの前にかじりついて、人間の社会をコントロールする「情報」の創造主になれることにやりがい、もっといえば優越感を感じていたのかもしれない。他の誰よりも情報を収集し、巧みに操り、世界を動かす。そういう存在になることが優れた人間になることだと思っていた。

 ところが転機が訪れる。

 自分のデザイン事務所を開業し、東京を離れた地方の仕事を始めた頃に、醸造家という不思議な存在に出会ったのだ。酒や味噌や醤油の食品メーカーと言えばそれまでなのだが、彼らの働きぶりを詳細に見てみると、僕がそれまで慣れ親しんできた仕事とはかけ離れたものだった。蔵や工場のなかで日々微生物という目に見えない謎の存在に向かい合って悪戦苦闘している。人間の言葉が通じない生物たちに己を委ねることによって、味わい深い食べ物をつくりだしていく。いや、彼らに言わせれば、つくるのは人間ではなく微生物。人間は微生物たちのはたらく環境をつくるサポート役であるにすぎない。

 人間は魚をつくりだすことができない。生み出すのは水。作物をつくることもできない。つくるのは土だ。漁師や農家、醸造家たちの仕事は直接なにかを生み出すことではなく、生み出すものを観察し、その環境に介在し、生み出す力を人間のほうに引き込む媒介のようなもの。だからこそ彼らの感性の第一は観察すること、感じることに振り分けられる。彼らのアイデンティティは創造主になることではなく、自然の理を受信するアンテナになることだ。

 「創造的であること」を命題としていた当時の僕にとって、人間以外の理(ことわり)と関わり合いながら生きる人々との出会いは未知との遭遇であり、同時にどこか懐かしいものでもあった。

 人間のつくった環境のなかで、朝から晩まで人間とだけコミュニケーションすることで完結する生き方はそもそも近代以降の特殊な生き方なのではないか? 僕の祖父や醸造家たちのように、日本に生きてきた人々は海や森や微生物たちと日常的に関わり、彼らの気配を感じ、人間どうしのそれとは違うコミュニケーション回路を持っていたのではないか?

 独立直後に仕事を依頼してもらった山梨の老舗味噌屋、五味醤油の旦那と飲んでいたときのこと。夜11時を回った頃に突然、

「あ、麹が呼んでる。手入れしにいかなきゃ」

と蔵に帰ってしまったことがあった。年中ニホンコウジカビと一緒にいるので、微生物たちのライフサイクルが身体にシンクロしてしまっている。曜日があ、週末があ、仕事とプライベートのオンとオフがあって…という「人間の時間」とは違う時間軸が身体に刻まれているのだ。僕もその感覚を理解したい! と思って微生物学のイロハを学び、自宅で麹をつくりはじめた。何度も失敗を繰り返し、だんだんコツがわかってきた時期のある夜ふと、

「あ、僕は今呼ばれている…!」

という感じがあった。それはいわゆる第六感的な超能力というよりは、常に自分とは理の違う微生物の存在のことを強く意識し続けた結果生まれてくる、小さな気配への感覚。スポーツ選手や音楽家が感じる、ある領域の解像度が特異的に高まった状態のようなものだろう。

 この感覚があったときに、子供の頃に祖父の言った「海のうえに道が見える」という言葉がおぼろげなから理解できたように思えた。

 情報になる前の、世界の兆しを感じ取るちから。僕がずっと求めていたものとの出会いだった。

                 ☆

 やがて僕は東京でのデザイナーの道に見切りをつけ、様々な土地をまわって発酵文化を訪ねてまわる日々を送るようになった。その旅のなかで、人間の理「ではない」感性で生きている人たちに数多く出会うことになった。何世紀も続く生業を継承し、人生を通してその土地の歴史や文化をごく自然に背負い、風土を呼吸しているような生きかた。

 僕はその生きかたがどのように生まれ、どのように次の世代へと受け継がれていくのか、もっと言えば自分のなかに流れている「人間以外の時間」の手がかりを知りたいと強く願うようになった。

 この旅は、水と土と微生物が織りなす発酵という文化から、日本という土地に生きてきた人々の記憶を掘り起こす試みだ。どこもかしこもコンクリートで固められ、信仰や祭りが消え去り、通りの風景が均質化してしまったように見える世界にも、伸び縮みする時間軸、目や耳では感知できない兆しに気づく感性が生み出した景色と文化が残っている。

 ただしその隠されたレイヤーを見るためには、人間の解像度ではちょっと足りない。もっともっと小さなスケールで生きる微生物たちのセンサーを借りてみよう。そうしたら見えてくるはずだ。あちこちから湧き上がってくる古(いにしえ)の記憶のざわめき、そして新しい生命の明滅が。

 それは僕の祖父が見ることのできた、海上の星の瞬き。暗闇に浮かぶ帰るべきホームを、同時に目指すべき目的地を照らす道標だ。

『日本発酵紀行』事前予約はこちらから

前作『発酵文化人類学』から、さらにディープな世界へと旅する『日本発酵紀行』。気になる方はフォームからぜひ事前予約ください。


<日本発酵紀行 事前予約フォーム>
※締め切りは4/15まで!

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☆何冊注文しても送料無料!価格は1,800円+税。
☆発送は5月初旬を予定しています(一般発売は5/24)
※本はポスト投函のメール便で送ります。その際に振り込み先(銀行振込)の手紙を同封します。お手数ですが振込手数料はご負担ください。
※メールは僕と版元のディアンドデパートメント株式会社に届きます。個人情報は本の発送以外には使いません。


 

▶事前予約スペシャル特典つきます!

▶書籍には収録できなかったアナザーストーリー
訪れた47都道府県全部の話を収録すると本のボリュームが現実離れしてしまうので、泣く泣くカットしたローカル発酵のアナザーストーリーをフリーペーパー形式で同封します!青森の『ごど』と沖縄の『豆腐よう』を収録する予定です。ぜひ本編とあわせて読んで下さい。

▶イラスト付きサイン
通常のサインに加えて、僕のアニメに登場するキャラクターや僕の似顔絵のイラストを入れて本をお届けします。前作では800冊の事前予約があってまる二日間サインをし続けて軽く腱鞘炎になったのですが、今回はまる三日間くらいサインし続ける気合でのぞむぜ…!

今回の本もまた取次の配本を通さずに、直接個人や本屋さんから注文をもらうDIY流通スタイルでお届けします。最初のスタートダッシュを切るためにも、ぜひ事前予約してもらえると嬉しい。

展覧会もどうぞよろしく!

今回の本は、渋谷ヒカリエ8階のd47 MUSEUMで4月末から始まる展示会の公式書籍でもあります。展示とあわせて読むとさらにディープに日本のローカル発酵文化を知ることができます。書籍『日本発酵紀行』の世界をどうぞ実際に体感してみてください。

↓イベント詳細はこちら↓


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新著『日本発酵紀行』の事前予約をお願いします!

これは記憶の方舟。そして未来に進むための船だ。

とても嬉しいお知らせです。
『発酵文化人類学』からまる二年。皆さまに新しい本をお届けできることになりました。知られざる発酵文化を訪ねて47都道府県を旅した旅行記です。

新著もまたスモール流通でスタートするので、僕の活動を見ていてくれる皆さまに予約予約をお願いしたいと思います。どうぞよろしく!

そもそもどんな本になるの?

▶発酵から再発見する日本の旅
今回のテーマは旅。専門書の体裁だった前作とは違う、時系列で読み進めていく読み物になります。北は北海道東の標津から、南は沖縄まで全国の様々な土地を訪ねて出会った不思議な文化や景色、その土地で生きる人々の暮らしを記録がこの『日本発酵紀行』です。

編集を手がけてくれたRe:Sチームの藤本智士さんが今作の素敵なコピーを書いてくれました。


微生物の気配にシンクロすれば、道が見えてきた。
酒、醤油、味噌はもちろん 知られざる発酵食品の現場まで。
47都道府県の 山、海、島、街を巡って、 日本の歴史と未来を見出した
前代未聞の発酵文化論。



▶日本とは、日本人とは何か?

外界から隔絶された離島で生き延び、杉と竹を組み合わせて巨大な産業をつくりあげ、宗教で肉食を禁じられながら、目に見えない自然の力を活かして多様な文化を編んできた日本列島に住む人々の姿。そこから浮かび上がってくるのは、日本とは、日本人とは何か?という根源的な問いです。僕は旅の期間中ずっとこの重たい問いに押しつぶされそうになりながら、自分なりの答えを出そうともがいてきました。

▶海・山・島・街の暮らしの歴史
発酵文化は、その土地に生きる人の記憶そのもの。船に乗ってアジアを股にかける海洋民族がいたと思えば、そこでしかとれない作物を工夫しながら食べつないできた山の民、微生物の力を使って付加価値を生み出し莫大な富をなした街の商人たち、絶海の孤島で人知れず驚きの食文化を編み出した離島の民族など、この本を読むと日本に生きた様々な民族の暮らしがイメージできる驚きのエピソードがいっぱい!

▶日本各地の知られざるローカル発酵食品が次々登場!
『日本発酵紀行』には、酒や醤油にとどまらないユニークなローカル発酵食品が多数登場!宮崎県の日南海岸沿いに生える海藻を使ったムカデノリ、アイヌと和人が出会って生まれたサケの山漬け、火山島の野生菌で醸す謎の焼酎、あおちゅうなど前代未聞のレシピを多数解説しています。

▶旅の臨場感を伝える写真を多数収録!
今回の最大の目玉はコレかも。僕が各地で撮影してきた仕込みの現場やその土地ならではの景色の写真が多数収録されています。こればっかりは言葉では説明できないので、どんな雰囲気なのか見てください。

食文化、生物学、経済史、人類学など様々なアプローチから日本の発酵文化の起源を探っていきます。野宿したり寒空のなか何時間も山道を登ってたどり着いた貴重な記録がこれでもか!と収録された読み応えのある一冊になりました。

皆さまにお願い:事前予約をお願いします!

ということで。
読み応えたっぷりの出来になった『日本発酵紀行』。ぜひ事前予約してくれると嬉しいです。もちろん事前予約してくれた人だけの特典もあるよ。

▶書籍には収録できなかったアナザーストーリー
訪れた47都道府県全部の話を収録すると本のボリュームが現実離れしてしまうので、泣く泣くカットしたローカル発酵のアナザーストーリーをフリーペーパー形式で同封します!青森の『ごど』と沖縄の『豆腐よう』を収録する予定です。ぜひ本編とあわせて読んで下さい。

▶イラスト付きサイン
通常のサインに加えて、僕のアニメに登場するキャラクターや僕の似顔絵のイラストを入れて本をお届けします。前作では800冊の事前予約があってまる二日間サインをし続けて軽く腱鞘炎になったのですが、今回はまる三日間くらいサインし続ける気合でのぞむぜ…!

今回の本もまた取次の配本を通さずに、直接個人や本屋さんから注文をもらうDIY流通スタイルでお届けします。最初のスタートダッシュを切るためにも、ぜひ事前予約してもらえると嬉しい。

もいっかい繰り返します。
下のフォームから書籍『文化人類学』の事前予約をしてくれたらめちゃ嬉しいです。
事前予約してくれた人には、本が一般の書店に並ぶ5/24よりも二週間はやく特典つきで本を郵送します!


☆☆締め切りました!☆☆

☆何冊注文しても送料無料!価格は1,800円+税。
※本はポスト投函のメール便で送ります。その際に振り込み先(銀行振込)の手紙を同封します。お手数ですが振込手数料はご負担ください。
※メールは僕と版元のディアンドデパートメント株式会社に届きます。個人情報は本の発送以外には使いません。


 

発酵デザイナーの新著『日本発酵紀行』は5月初旬に発送予定でーす。

↓↓今回も起こすぞミラクル!↓↓
【発酵文化人類学】一週間で重版出来!の舞台裏。マーケットではなくコミュニティに届ける。

※最初の3日で100冊注文きたら、まえがきをこのブログで公開したいと思います。
※4月中旬頃から本屋さん向けの予約の呼びかけをする予定です。ただいま命を削ってスペシャル特典を用意しているよ…!

展覧会もどうぞよろしく!

今回の本は、渋谷ヒカリエ8階のd47 MUSEUMで4月末から始まる展示会の公式書籍でもあります。展示とあわせて読むとさらにディープに日本のローカル発酵文化を知ることができます。書籍『日本発酵紀行』の世界をどうぞ実際に体感してみてください。
※クラウドファンディング時の公式書籍のリターンはこの本のことです。

☆☆イベント詳細はこちら☆☆

▶今回タッグを組むのは、D&DEPARTMENT!
出版元は、展覧会をご一緒するD&DEPARTMENT。腕利きプロデューサーの田邉直子さん、編集に藤本智士&竹内厚のRe:Sチーム、デザインに堀口勉さんを迎え、最高のチームで大ヒット飛ばすぞ!エイエイオー!!

最後に、ヒラクより今回の本について

実はこの本、当初は出版するはずじゃなかったんです。ヒカリエ展覧会の公式書籍として全国の発酵食品のカタログをつくる予定でした。

ところが!展覧会用の旅をはじめてしばらくして、進捗報告も兼ねて事務局にレポートと写真を送ったら「これはカタログじゃもったいない!」という話に。展覧会のデザインと編集のディレクターを担当してくれたRe:Sの藤本さんの、


「オレ、ヒラクの旅行記読みたいんだけどな〜」

の鶴の一声で、急遽本を一冊書き下ろすことに。この時点ですでに年明け。そこから2月から3月にかけて旅をしながらリアルタイムで旅行記を書いていくというライブすぎる執筆がスタートしました。

僕の10年間の活動の集大成である前作『発酵文化人類学』の後に、いったい何かまだ書くべきことがあるのだろうか?と不安だったのですが、いざ書きはじめてみると、堰を切ったように言葉が溢れ出てきました。しかも出てきたのは前作とはまた違ったもの。

発酵ってこんなに楽しい!というPOPな内容が前作だったとすれば、今回は暗くてディープな話がいくつも出てきます。書いた本人ですら「僕のなかにこんなにドロドロした黒いものがあるんだ…!」と驚きでした。

きっと、今回の旅では「明るい未来」ではなく「消えゆく過去」をたくさん見てきたからなのだと思います。半分見捨てられたような場所で、それでも淡々とその土地の暮らしを続ける人々に出会うことで、自分のなかの無意識のうちに閉ざしていた扉が開いたような感覚がありました。

そういう意味で、この本は「忘れられた日本人」を訪ねる旅であり、同時に「忘れていた自分」を探しにいく旅です。その道のりは時に寂しく、心細いものでした。今校了を間近のタイミングでもこの本が何なのか、うまく言葉にできない自分がいます。

でも。この「言葉にできないくらい深く遠い場所」に行くことこそが、僕のずっと求めてきた旅なのかもしれません。僕が旅で出会ったものの価値が何だったのか。その判断は読者の皆さまに委ねたいと思います。最後に、本文をちょっとだけ引用したいと思います。


旅して旅して旅した末の究極の風景は、雄大な自然でも壮麗な神殿でもなく、自分の心象風景なのかもしれない。膨大な景色を通過した後の心象風景は底の見えないほど深く、無数の記憶の泡が渦巻いている。言葉の通じぬアジアの街の雑踏にはじめて足を踏み入れたときの興奮。ヨーロッパの美術館の地下で古代世界の収蔵品を飽きずに眺めた不思議さ。旅で感じた心の動きはやがて子供の頃に皮膚で感じた記憶を呼び覚ます。川辺に照りつけるジリジリとした日差し、家でひとり熱にうなされたときに窓から見える雲のかたち。小さな頃に泳いだ海の冷たいきらめき。そしてそのきらめきの向こうから、もう会えなくなった祖父や友人が僕に呼びかける声がきこえる。

さあ、もう行かなくちゃ。

 

いいトコいっぱいのヒラノくんの彼女を募集します

元アシスタントで今noteのディレクターとして働いているヒラノくんが彼女できない…と悩んでいるそうなので僕のブログで募集することにしました。

ヒラノくんは歴代の僕のアシスタントのなかでも仕事デキるし、素直だし、同年代でも年上のコミュニティでもすぐに仲良くなるナイスなヤツでした。

で、僕が「ナイスなヤツだよ!」と言っても説得力ないので、ツイッター上で #ヒラノくんのいいトコ を募集してみました。その結果がこちら。

五人くらい他薦があればいいかな…と思ってたら、愛されてるね、ヒラノくん!
そして今の職場、ずいぶん馴染んでるみたいでよかった。仕事楽しんでね〜。

おおお、ヒラノくん本人から独り歩きしている…。
気になる人は、このハッシュタグで色々妄想して下記フォームに申し込んでみよう!

ヒラノくんの彼女受付フォーム

※予想を上回る多数の応募につき、3/7の23:59で締切りました。

☆本人に直接メールが届きます。ヒラノくん一応全員に一言お返事はしてね。後はお任せ!
☆システムの仕様上僕にもメール届くんだけど見てみぬふりします。問題あった時のみ何か対処します。みんな問題起こさないでね!
☆もちろんプライバシー情報は漏らさないよ。

ちなみに僕のブログでは、たまにこんな感じで友人のよろず募集企画をやっています。
過去の募集記事は以下のとおり。

【3/2は甲府に集まれ!】こうふはっこうマルシェ今年もやります!

日本全国から愉快な発酵仲間が山梨県甲府に大集結!の大イベントが帰ってきた!

去年15,000人の来場者で賑わった発酵祭り、今年も開催予定。去年出てくれたメンバーに加え、ニューカマーも登場。

今のところ決まっている感じでいうと、

☆DJみそしるとMCごはんがメインステージでライブ!
☆発酵兄妹のCOZY TALK公開収録もDJみそしるとMCごはん!
☆秋田からのんびりチーム参戦!
☆長野からやってこチームも参戦!
☆栃木からChusチームも参戦!
☆トークイベント用のスペシャル会場設置。しゃべりまくり!
☆熱燗DJつけたろう&澤田酒造の熱燗コラボ!
☆能登の谷川醤油も登場!
☆ミコト屋も屋台出すぞー!
☆今年もカリ〜番長がスペシャル発酵カレーで出店!
☆山梨のヤバいワインが利き酒できすぎる!

…と情報濃すぎる〜!!!。去年登場した、

角谷文治郎商店
KAMO’S KITCHEN
BOOK BUS By VALUEBOOKS
ミツル醤油
戸塚醸造店
寺田本家
みつか坊主
ウシオチョコラトル
青果ミコト屋
はっこうの里こうざき

も出店しています。年に一度の発酵同窓会 in 山梨、どうぞお越しください。発酵兄妹三人で待ってるよ!

こうふはっこうマルシェ 2019
【場所】甲府駅前よっちゃばれ広場
【時間】2019年 3/2 10:00〜16:00

☆☆公式HPはこちら。これから詳細がアップされていきます☆☆

【発酵ツーリズム富山】黒づくり:イカスミで真っ黒なエキゾチック塩辛

富山の発酵ツーリズム:
黒づくり(富山県射水)| 京吉

妖しく黒光りする謎の塩辛

富山の魚介の食文化のレベルの高さは尋常じゃない。街場の回転寿司や居酒屋さんで出てくるものでもめちゃくちゃ美味い。超絶リッチな富山の魚介料理のなかで僕が気になっていたのは、イカの塩辛にイカスミを加えてつくる『黒づくり』だ。こいつで富山のイケてる日本酒を一杯やってみたい…!

と思って山梨から飛騨高山を通って車を飛ばしやってきた富山湾。
江戸時代から黒づくりを製造する京吉さんへやってきた(黒づくりは富山湾一帯の色んなところで食べれるが製造しているメーカーは意外に少ない)。

製造はごくごくシンプルで、イカの塩辛(塩蔵)にイカスミをたっぷり混ぜて数日間発酵させるだけ。しかし発酵中の妖しく黒光りする塩辛のテクスチャーはただごとじゃないオーラを発している。

現場を見た夜に地元の居酒屋さんで黒づくりを食べてみたら、普通の塩辛よりも味にまろみと深みがあり、塩辛さよりも旨味やふくらみが先にくる。つまりめちゃ美味い!こんなにも美味いものが富山ローカルにとどまっているのが不思議でならない。

この黒づくりだけで日本酒をエンドレスに飲める。適度な旨味でアッサリとした富山の酒に黒づくり。この組み合わせは至高のブラック・ヘブン…!

どうやってつくる/食べる?


スルメイカでつくるのがメインだが、富山湾名物ホタルイカでもつくられる

▶How to 仕込み
A:イカの目の部分、硬い皮の部分を外して身を刻み、塩漬けにする
B:半日〜一日ほどしたら塩を洗い、内蔵とイカスミを加えて混ぜる
C:数日〜一週間ほど発酵・熟成させる

☆途中で酒やみりんなどを加えた調味液に漬けることも

▶食べかた
・ご飯のおとも
・酒肴に

▶食べられている地域
富山県

▶微生物の種類
乳酸菌、酵母など

旅のメモ

黒づくりの起源は江戸中期。加賀藩の特産品推進施策の一環として作られるようになったとされる。歴史好きの京吉の旦那さんの語るところによると、当時日本で唯一海外の文化を受け入れていた長崎の魚介加工技術を加賀藩から人を送って研修して、それまで日本ではやられていなかったイカスミを使った塩辛を考案したという。

それってつまり、地中海のイカスミ料理文化なんかとつながっている可能性があるのだろうか?加賀藩の商売上手さとともに海を越えたロマンを感じさせる話ではないかしら?


47都道府県の発酵が一堂に会する大展覧会『Fermentation Tourism NIPPON』、今年春4/26〜7/8に開催予定です。47都道府県のうち、36都道府県まで到達。いよいよラストスパート!


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【発酵ツーリズム広島】酢:西の海運を制した尾道の産業基盤

広島の発酵ツーリズム:
酢(広島県尾道)| 尾道の造酢文化

豆味噌の桶から滲み出る濃厚液体調味料

『時をかける少女』や『君の名は』の舞台として知られる風光明媚な広島の入江の街、尾道は実は西日本屈指のお酢の街だった。今はその面影はほとんど残っていないが、明治後期から大正初期にかけて尾道だけで30,000石以上(一升瓶300万本)の生産量を誇る、愛知県知多半島の半田(ミツカンの本拠地)に次ぐ造酢の要所であったらしい。

尾道駅から続く長いアーケード街をずっと歩いていくと、創業約440年の日本屈指の老舗メーカー尾道造酢がある。ここは尾道の酢の歴史、もっと言えば街の発展の歴史の貴重な生き証人なのだね。

江戸時代までの伝統的なお酢づくりは、日本酒をベースにつくられる。
日本酒に酸素を送り込み、酢酸菌という微生物を増殖させてアルコールを酢に変える。魚などの保存食をつくるために日本全国で重用され、酢の生産の普及とともに和食の代表格である寿司が発展したと言っても過言ではない。

北前船の停泊地であり、海の商人の土地だった尾道では、海路で秋田あたりから安い米を運んできて尾道でお酢に加工して付加価値をつけ、西廻りの航路で日本海側に酢を出荷し、遠くは北海道にまで運んで利益を得てきた。

芸備銀行(現広島銀行)や尾道鉄道の代表を努めた橋本龍一を輩出した豪商・橋本一族が興した尾道の重要な産業のひとつが付加価値の高い造酢であり、お酢をつくりまくることによって尾道は土地に富を蓄積してきた。海の商人町・尾道の商魂はお酢に宿っている。

どうやってつくる/食べる?


酢の発酵に伴ってあらわれる酢酸膜

▶How to 仕込み(伝統的な米酢の場合)
A:日本酒を仕込む(一段仕込みから三段仕込みまで蔵によって仕込みが違う)
B:酒を割り水して、酢酸菌のスターターを入れて40℃前後に温める
C:瓶やタンクなどで2〜3ヶ月で発酵(静置発酵)させそこからさらに数ヶ月熟成させる

☆酒から仕込んで静置発酵させる伝統的な醸造法は現代では希少になっている
☆工業的に精製されたアルコール液を撹拌して酸素を送り込みながら高速発酵させる醸造法が現代の主流

▶食べかた
・酢の物に
・調味料として

▶食べられている地域
全国

▶微生物の種類
酢酸菌

旅のメモ

今回訪れたのは老舗の尾道造酢と、明治時代創業の杉田与次兵衛商店の2軒。
尾道造酢には資料館でしか見たことのないような巨大な瓶や醸造装置が今でも現役で使われており、造酢文化の生きたミュージアムのよう。かつては本格的な米酢もつくっていたが、昭和に入ってからはマヨネーズなどの原料となる洋酢や果実酢の製造がメインとなっている。

一方、杉田与次兵衛商店では伝統的な米酢を製造していて、この2軒をあわせてまわると尾道の酢の文化をうかがい知ることができるよ。

 


47都道府県の発酵が一堂に会する大展覧会『Fermentation Tourism NIPPON』、今年春4/26〜7/8に開催予定です。47都道府県のうち、36都道府県まで到達。いよいよラストスパート!


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【発酵ツーリズム佐賀】松浦漬け:捕鯨一族の執念が生んだ港の珍味

佐賀の発酵ツーリズム:
松浦漬け(佐賀県唐津市呼子港)| 松浦漬け本舗

プリプリ・こりこりの高級珍味

僕の母方の実家は佐賀県唐津の玄界灘の漁村。虚弱児だった僕は中学生くらいまでよく唐津の実家に預けられて漁師のおじいちゃんに身体を鍛えてもらっていました。

その時たまに食べていた不思議な食べ物があったな…と思い出したのが『松浦漬け』。
これなんと!クジラの上顎の軟骨部分を酒粕漬けにして食べるという空前絶後の発酵珍味なのですよ。

佐賀県唐津の呼子港の一角に明治時代から店を構える松浦漬け本舗がこの珍味の唯一の製造元。クジラの上顎部分の油抜きしてスカスカになった軟骨を糖分や唐辛子などで調味した酒粕の床で発酵・熟成させていきます(詳細は門外不出のためシークレット)。

できあがるのはクラゲのような不思議なテクスチャーの食べ物。
食べてみるとプリプリ・コリコリで酒粕の発酵フレーバーが染み込んで味わい深い。
子供の頃は「何このヘンな味?」としか思ってなかったのですが、日本酒とあわせると地獄のように美味い。

今や唐津を代表する高級珍味として地元民に珍重されているようです。
パッケージもレトロで最高。カッパ型の有田焼の器とあわせてゲットしたいところです。

どうやってつくる/食べる?

▶How to 仕込み
A:クジラの上顎の軟骨を油抜き処理して刻む
B:糖分・香辛料などで調味した酒粕にAを漬け込む
C:数ヶ月以上発酵・熟成させて完成

☆詳しい醸造法は門外不出のため不明

▶食べかた
・酒肴として
・地元の人はご飯のおともにも

▶食べられている地域
佐賀県唐津一帯

▶微生物の種類
酵母、乳酸菌類

旅のメモ

松浦漬を考案した山下一族は唐津港で活躍した捕鯨組合の有力スポンサー。
つまり捕鯨一族の名主。クジラのことを知り尽くしているがゆえに考案された発酵食品であると言える。ちなみに江戸〜明治に獲れていたシロナガスクジラは超巨大で、時には30m級の大物が穫れたこともあったらしい。写真のような巨大クジラでは上顎の部分だけでも数十キロあったらしく、油を取った後の使いみちのない軟骨をなんとかしたい…!という執念から生まれたのが松浦漬けなんだね。

当初のレシピでは、山下家の本家のすぐとなりにあった酒蔵(ここもおそらく山下家)の酒粕で漬け込んでいたそう。ちなみにうちの母はその酒蔵(松浦誉)のことを覚えていた。ていうか、どうやら母方の家系(山下家)もどうやら漁師一族の血筋を引いているそうです。僕のおじいちゃんが漁師だったのも系譜があるわけだ。びっくり。

 


47都道府県の発酵が一堂に会する大展覧会『Fermentation Tourism NIPPON』、今年春4/26〜7/8に開催予定です。47都道府県のうち、36都道府県まで到達。いよいよラストスパート!


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【発酵ツーリズム岡山】ママカリ:大漁を告げる魚島の幸

岡山の発酵ツーリズム:
ママカリの酢漬け(岡山県日生)| 活魚 天坊

無限にご飯が進む!ママ(飯)カリ(借り)

岡山に行ってぜひ食べたかったのがママカリの酢漬け。
ママカリ(さっぱ)という小さな魚の頭と内臓を抜き、まず塩漬けに。そして翌日に塩を洗って今度は酢漬けにする二段漬けで保存性を高め、旨味をマッシブにする。

このママカリの酢漬け、酸味と甘味と程よい脂身の三位一体が猛烈にクセになり、エンドレスに食べ続けてしまう逸品なんだよ。
夏〜秋にかけての漁期に大量にとれるママカリ。保存食としては酢漬けがポピュラーだが地元にいくとにぎり寿司スタイルのママカリ寿司や刺し身、煮付けなど様々なスタイルで楽しめる。
ママカリは魚の生臭さが少なく、油っぽくも淡泊すぎもしない絶妙の脂身、そしてペロっと食べれるサイズ感もあいまってご飯のおともにピッタリ。
あまりにもご飯が進むので、お隣にママ(飯)カリ(借り)に行ってしまう…!というのがその名前の起源なんだとか。

どうやってつくる/食べる?

▶How to 仕込み
A:ママカリ(さっぱ)の頭と内臓を取って切り身に
B:切り身を塩漬けにし、一日ほど置く
C:Bを洗い、1〜2ヶ月ほど酢漬けにする

☆酢には糖分などを調味したものを使用

▶食べかた
・ご飯のお供
・刺し身的に食べる

酢漬け以外にも様々な食べ方が。写真は煮付け。
はじめて食べたのが刺し身。めちゃプリプリで美味しかった…!

▶食べられている地域
岡山県全域

▶微生物の種類
酢酸菌、乳酸菌など

旅のメモ

日生(ひなせ)は古くから栄えた由緒正しいローカル漁港。
ここの栄養豊かな入江めがけて、春になると魚群(主にサワラ)が押し寄せてくる。この魚群があまりにも大量で、島のように見えることからこの春の大漁期のスタートを『魚島』と呼ぶようになったという。『魚島』は物理的現象にとどまらず、大漁の海の幸をこれでもか!と食卓に並べる大宴会のことも指す。

取材に伺った割烹料理、天坊の座敷でぜひ『魚島大パーティ』をやりたいものだぜ(展覧会が無事スタートしたら)。

見て下さい、天坊の大将のこの最高の顔。発酵好きの腕利き料理人のつくるママカリは最高でしたぞ。

 


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【発酵ツーリズム福島】三五八:麹大国のフェーバリット漬け床

福島の発酵ツーリズム:
三五八(福島県会津若松)| 石橋糀屋

塩3:麹5:米8の麹漬け床

福島県の内陸寄り、会津若松は麹文化の集積地。
日本酒の銘酒も醤油・味噌蔵も多く、東北の麹文化を代表する土地のひとつ。

会津若松に住む人々のフェーバリット手作り品に『三五八漬け』という漬け物がある。これは塩3:麹5:飯米8の割合で混ぜて漬け床をつくり、そこに主に野菜を漬けていく「麹漬け」の代表格だ。

ぬか漬けや塩麹漬けより甘味や旨味の強い三五八漬けは、この会津の人々のスタンダード発酵食品。日常的に手作りされお茶請けやご飯のおともに重宝されている。

ぬか漬けほど手入れが難しくなく、塩麹漬けよりも玄人っぽい。僕も麹のワークショップをする時に三五八漬けのレシピをオススメしている。

米の生産地でかつ土地に財力があり、日光などを通して関東にも交易路がある会津ならではの贅沢な漬け物。野菜はもちろん魚や肉を漬けても最高の酒の肴になるよ。

どうやってつくる/食べる?

▶How to 仕込み
A:塩3:麹5:飯米8の割合で漬け床をつくる
B:食材をAの床に漬け、1〜3日ほど漬け込む

☆床をつくると麹の酵素により水を入れないのに床がドロドロに溶ける
☆食材を漬けると水分が出てビショビショになるので床を変える
☆つまりぬか床と違って小分けにして常にリフレッシュしながら漬ける

▶食べかた
・香の物に
・酒の肴に

ぬか床より味があっさり、塩麹漬けよりも甘味の強いバランスの良い味が◎

▶食べられている地域
福島県はじめ東北北陸

▶微生物の種類
コウジカビ、乳酸菌など

旅のメモ

今回訪ねた石橋糀屋さんは全国に数多くある麹屋(味噌や甘酒などを手作りする人向けの麹を製造販売するメーカー)のお手本のようなところで、商品の全量を麹蓋(底の浅い箱)で麹をつくっている。この麹蓋で小分けにつくると品質のムラのない麹が出来上がる。

石橋さんのお店には地元の人がひっきりなしに訪れ、お味噌や甘酒の手作りの話に花が咲く。麹の文化は職人文化であると同時に土地に根付いた手作り文化。会津の町は麹の民主主義が今なお残っている。萌え…!

取材のあとに石橋さんオススメの飲み屋に行って会津の酒を堪能したんですが、今回の発酵ツーリズム屈指の趣ありまくりの飲み体験でした。また会津に飲み行きたい…!

二日酔い気味で迎えた会津若松の朝焼け。情緒しかない…!

 


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【発酵ツーリズム京都】しば漬け:山間に吹く風が育てた京の漬けもの

京都の発酵ツーリズム:
しば漬け(京都府大原)| 辻しば漬け本舗

風の吹き抜ける大原の名物漬け物

京都の発酵といえば漬け物。千枚漬けやすぐきも心惹かれるけれど、僕にとっての京つけものといえばやっぱりしば漬け。スーパーで普通に売っている比較的メジャーなものではあるけれど、実は京都のローカリティに根ざした土着な発酵食品なんだね。

しば漬けの起源をたどると、京都市内を北部に登っていった大原地区で伝統的につくられている、赤紫蘇の葉と大原で取れる夏野菜のナス(きゅうりや茗荷を加えることも)と少量の塩で作られる乳酸発酵食品であるとことがわかる。

スーパーで全国流通しているしば漬けは、このシンプルなオリジナルしば漬けに追加で調味料や食材を追加したアレンジレシピで、実は僕はここ大原ではじめて「オリジナルしば漬け」を体験したのだった。

オリジナルしば漬けのポイントをあげるとだな。

・塩分が少なく、主に乳酸発酵によって防腐機能を持たしている
・熟成期間が長い(半年〜一年ほど)
・風通しが良い大原の気候を活かした発酵食品

この結果、比較的味がアッサリして上品、かつ赤紫蘇のピンク色が鮮やかな京らしい雅な漬け物ができあがるんだね。特筆すべきはその香り。フレッシュでフローラルな匂いが赤紫蘇から立ち上ってくる。激しく食欲をそそりつつエレガントなのが京都らしいですなあ。僕のこれまで食べていたしば漬けは何だったのか…

どうやってつくる/食べる?

▶How to 仕込み
A:夏に収穫した赤紫蘇と刻んだナスと塩を混ぜ、樽に漬け込む
B:樽に重しをかぶせ、数ヶ月〜一年ほど熟成させる

☆基本のレシピは赤紫蘇とナスと塩のみ。現在はそこにキュウリや茗荷などを加える
☆基本のレシピでは塩分は10%以下。乳酸発酵によって味をつけていく。

▶食べかた
・お茶請けにポリポリかじる
・お茶漬けにのせる

▶食べられている地域
京都府内(90年代以降より全国)

▶微生物の種類
複数の乳酸菌

旅のメモ

今回お邪魔した辻しば漬け本舗は家族経営のローカルメーカー。
地元でとれた赤紫蘇とナスのみでつくるオリジナルしば漬けの品の良さに感動。

しば漬けのオリジンは、平安時代後期、つまり1000年近く平家の末裔や皇族との関係を持つ由緒正しいもの。中世には大原の山を下って京都市内にしば漬け売りが行商に出かけていたそうです。

実はこの夏の終わりの近畿の旅、京都で体調を激しく崩し、何も喉を通らない状態になってヘロヘロな僕を救ってくれたのがしば漬けのお茶漬けでした。
これから大原には足を向けて寝られない…!

 

赤紫蘇が風に揺れる大原の旅。めちゃ気持ちよかったなあ…


47都道府県の発酵が一堂に会する大展覧会『Fermentation Tourism NIPPON』、今年春4/26〜7/8に開催予定です。47都道府県のうち、36都道府県まで到達。いよいよラストスパート!

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クラウドファンディング大成功!47都道府県の発酵ツーリズムの現在地。

こんにちは。ヒラクです。
渋谷ヒカリエ47都道府県の発酵ツーリズム展覧会のクラウドファンディングが終わったのが1/15。

その後「あれ?クラファン締切直前はやたらSNSに書き込んでたヒラク君はどこ行ったの?」と不審がっていた人も多いと思いますが、クラファンが無事終了したのを見届けた直後からまた旅を再開していたのでした。

小豆島のヤマロク醤油で木桶の研修。全国から集まった醸造家たちと木桶づくりに挑戦(ほとんど役に立たなかったけど)。
木桶野郎どものテンションはつねにMAX。めちゃくちゃ働いてめちゃくちゃ飲んでめちゃくちゃ盛り上がるサイコーの場でした。小豆島で起こっている木桶レボリューションはもちろんヒカリエの展覧会にも登場、ていうか展示会場に木桶が登場します( ー`дー´)キリッ

淡路島の都美人の蔵にも入って麹仕事を体験させてもらいました。
日本酒蔵の繊細な麹造りの現場、めっっっっっっちゃ楽しかった〜!兵庫県代表、都美人の日本酒は会期中の角打ちイベントに登場予定。お楽しみに!

静岡県代表は、西伊豆田子の浦のカネサ鰹節。
鹿児島と双璧の静岡の鰹節文化。今回は延喜式の時代から伝わる幻のカツオ発酵食品が登場します。こうご期待…!

この写真!!!!めっちゃ良くないですか??????

新潟県代表は妙高のかんずり。全国的に見ても超レアな唐辛子の発酵食品。
大寒の日の特別な雪晒し(唐辛子を雪原にまく)に立ち会うことができました。こちらも展覧会場で試食できるよ。めちゃうまいよ…!

47都道府県代表以外にも「カテゴライズ不能枠」もいくつか設けます。徳島県から登場するのは発酵技術を活かした染色技術、阿波藍。

運がいいことに、すくも(染の原料)の発酵の最盛期に立ち会うことができました。タデアイの葉を堆肥状に発酵させてインディゴ色素の定着率を高めていきます。食品の発酵とは全く違う原理の藍染。この様子も展覧会を通じて皆様にお伝えするぜ。

すくもを石灰液に浸した二次発酵の様子。ぎゃ、ギャラクシー…!

蔵仕事の筋肉痛が一日遅れできて動けなくなったりしていますが、僕は元気です。

【御礼】CAMPFIREのページでも報告しましたが、展覧会開催のためのクラウドファンディング、目標の500万円を大きく上回る約580万円の支援をもらって無事サクセス!しました。皆様本当にどうもありがとう。皆様の期待を裏切らない最高の企画にするよ…!

目標金額を大きく超えた585万円達成!クラウドファンディング終了しました。 | CAMPFIRE

47都道府県の発酵が一堂に会する大展覧会『Fermentation Tourism NIPPON』、今年春4/26〜7/8に開催予定です。47都道府県のうち、36都道府県まで到達。いよいよラストスパート!


Fermentation Tourism NIPPON  supported by


謎のロングセラーを続ける発酵文化人類学。ネット通販在庫切れにつきサイン本企画やります。

2017年(つまり一昨年)に出版し、3万部を突破した『発酵文化人類学』。
なんともうすぐ二年経とうというのに相変わらずロングセラーを続けています。

その証拠を見ておくれよブラザー!

名だたる本屋さんで続くロングセラー現象

なんと累計約400冊!!を売ってくれている本屋界の良心、青山ブックセンターの思想書部門で2017年1位、そして2018年2位というミラクル…!

店長の山下さん、ありがとう…!涙
ちなみに山下さんと青山ブックセンターのポリシーも素晴らしいのでぜひご一読を。


・青山ブックセンター書店員 山下優さんに聞く、本が売れる店作り

そして。京都一乗寺の恵文社でも二年越しのロングセラーを続けている模様。
書店のサイトでもコメントをもらいました(ちなみに一位は年末に山梨で一緒にトークした独立研究者の森田くん。彼の本に関連してのコメントもらって嬉しいぜ)。以下引用:

“昨年の刊行ながら、10位に入った『発酵文化人類学』の著者、小倉ヒラクさんも似た立場に身を置かれている書き手です。
「発酵」という現象そのものを対象にするヒラクさん曰く、発酵の分野を研究しようと思うと多くの場合が納豆や酒など、特定の食品にフォーカスをしないと研究機関では予算が出ないそうです。『発酵文化人類学』が面白いのは、発酵というテーマを下地に哲学やその他さまざまなことを学べるからでしょう。この数年は森田さんやヒラクさんのように分野をまたいで活躍する書き手の本が活躍しています”

恵文社さん、どうもありがとうございます。また京都に行った際に寄りますね。


・難解な微生物学を「役に立つ」ようにデザインしたい。『発酵文化人類学』小倉ヒラクインタビュー

去年の夏には、本の雑誌ダ・ヴィンチで新刊じゃないのに異例の『ひとめ惚れ大賞』に選ばれました。ベストセラーの王道から外れまくった本を推薦してくれた佐渡島さんはじめ選者の皆さまに感謝しかない…!

サイン本企画やります!

NHK『ごごナマ』の出演の影響もあって、年末年始にはネット通販でもとんでもない売れ行きに。総合12位ってマジですか…。
※2018年1月5日現在

で。年始早々Amazonの在庫が尽きたそうです。おお、なんということだ…。
そしたらよりダイレクトに本をゲットするしかない!

ということで!突然ですが!!
新年めでたい!サイン本企画をやりまーす!

僕のゆるイラスト入りサイン本を書店&出版社からゲットできるようにします。

▶関東&関西でサイン本企画行脚します
僕の本を置いてくれている本屋さんへサイン行脚をしにいきます。各店10〜20冊くらいなので、欲しい方はおはやめに。ちなみに1〜2時間くらい滞在する予定なので発酵関係のご相談がある方はお気軽にどぞ。

あと僕の過去に出した『てまえみそのうた』とかミシマ社の雑誌『ちゃぶ台』の発酵特集とかにも現地でサインします(在庫があれば)。あるいはすでに本を持っていて「サインだけ欲しい!」という人もカモン!(そのかわり僕のじゃない他の本をお買い物していってね)

【大阪】心斎橋スタンダードブックストア: 1月7日 夕方17:00〜19:00
【東京】青山ブックセンター:1月11日 夕方17:00〜19:00

の二箇所にサインしに行きまーす。山下さん、中川さんお世話になります。

出版社からサイン本直送します
いつもの「サイン本欲しいよ!フォーム」を設置しておくので、上記の本屋さんに行くのが難しい人はフォームから問い合わせどうぞ。締切は1月11日の午前中まで。で午後にサインして順次発送しまーす。
※個人情報はこの企画の目的には使用しません。念のため。

<発酵文化人類学 サイン本申込フォーム>
※1/11の午前中まで受け付けます

お名前 (必須)

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冊数 (必須)
  

住所(必須)
  

ご自由にコメントどうぞ

それでは引き続き『発酵文化人類学』をどうぞよろしくお願いします。

【追記】amazonのレビューにとても丁寧で励まされる投稿がありました。詳しくはこのリンクから読んでほしいのですが、そうそうそう!そうなんです!ライトに見えるかもしれないけどそれなりに系譜的に書いているんです。書いてくれた人、どうもありがとう…涙

2019年は、万能感と焦燥感のあいだで深呼吸する年だ。

毎年新年になると「今年はどんな年になるのだろうか?」と考えるのが習慣なのだが、今年はどうもまったくイメージが見えない。

・2018年は、前に進む自分を信じる年だ。
・2017年は、自分のイカダで未知の海に漕ぎ出す年だ。

なぜなのか?ということを掘り下げてみるに

①最近周りに体系的に未来の社会を考えている才人が多いので適当なこと言えない
②年々謎を深めていく自分の人生のことを考えるだけで精一杯
③社会の変化が激しすぎてもはや予測できない

この3つの合わせ技によって「いやもうよくわからん」ということになっているんだよ。
なんだけどギブアップしないでこの「よくわからん」感に付き合ってみたいと思う。

崩壊していく秩序のなかでどのようにあるべきか?

ここ数年「今まで当たり前だった常識や社会の基盤が崩壊していく」ということを言っているけれど、今年はこれまでの「気づく人はもう気づいている」段階を超えて、この社会に生きる大半の人が日々の生活のなかで「あれ、おかしいな。これまずくない?」というレベルで秩序の崩壊に立ち会うことになる。

つまりこの年はこの社会の構成員のほぼ全員が「危機感」を持つことになる。
カッコに括ってもっかい強調したい。社会に「危機感」が蔓延する。気づく人だけ、ではなく空気に微量に混入したガスのように「危機感」が薄く広がっていく。

空気の変化をなんとなく感じている人は、どこからともなく聞こえてくる、

「お前たち、危機感を持て!そのままでいいのか?今すぐ行動を起こせ!」

という煽りに不安を抱くことになる。今の場所に安住していてはいけない。動かなければいけない。でもどこを目指して?

これがさらなる危機感を募らせる。そして危機感の混入濃度がさらに増加する「危機感スパイラル」が社会を覆っていく…

という重苦しい霧に邪魔されて「いやもうよくわからん」という感じに自分がなってしまったことを今このブログを書いている途中に気づいたぜ。

万能感と焦燥感のあいだに立つ

危機感煽られまくりの社会において発生するのが「少数の万能者と多数の焦燥者」だ。それは言い換えると「危機を煽るヤツ」と「煽られてそいつについていくヤツ」の依存関係が社会の流れを作り出していく。万能感に駆動される少数の者が「私は危機を回避する方法を知っている」と宣言し、漠然とした危機への焦燥感を覚える多数の者への道を指し示す…という場面にあちこちで出くわすかもしれない。

「このままではいけない」
「今いる場を離れて動かなければいけない」

それは正論ではある。誰しも人生に変化が必要な時はある。

なんだけど。えーと、なんて言えばいいんだろうか。
「誰かから煽られた変化」と「自分のなかから必然的に出てきた変化」の欲求を峻別することをなんとなく気にかけるといいと僕は思うんだよね。

自分のなかに変化の必然性を感じなかったら、別に無理して動かなくていい。環境の大きな変化があって、みんながその場所から動いていった時に、なぜかそこを動かなかったごく少数の生き物が結果的に生き延びることもある。

ちょっとヘンな理屈なのだけれど、変化する時期にこそ「いますぐに何かをしなければいけないという焦燥感」あるいは「自分が世の中を何とかしなければいけない万能感」にとらわれない努力が必要かもしれない、と僕は年始に長い散歩をしながら考えた。

極端さに引きずられない感覚、感情が揺り動かされた時にまず深呼吸するような感覚を大事にする。万能感と焦燥感のあいだに立つ。強い極端と弱い極端のあいだでバランスを取る。

極端に陥らない人の母数が増えると急激な変化がもたらすダメージを少なくできるのではないだろうか?

今年はどんな事が僕を待ち受けているのか、さっぱりわからない。
そのわからなさを無理やり解消しようとしないで、まず深呼吸してみる。

わからないことに焦らない。
自分の中から生まれる変化の声に耳を傾けてみる。

そういう1年にしようと僕は思ったよ。あなたはどうだろう?

2018年のブログ&メディア掲載&イベント振り返り

写真はNEUT MAGAZINEの銭湯対談の一コマ。

2019年を迎えました。

大掃除に夢中で年末恒例だったブログエントリーの振り返りを書く時間がなかった…!
ので、新年最初のエントリーにまとめることとします。2018年は例年にもまして寄稿やインタビュー記事も多かったので外部メディアのものもあわせて振り返るぜ。

2018年に書いた読み物系エントリー

今年は旅しすぎ&研究開発とかアニメ制作に時間を割いていたので読み物系エントリーの数は少なめ、といいつつまとめてみるとわりと書いてました。

・2018年は、前に進む自分を信じる年だ。
→これも毎年恒例。年始のエントリー。みんな自分を信じられたかい?

・感性の記憶。
→女子から「わかる〜!」と共感コメントが多数寄せられました。男女問わずこういうのってあるよね?

・ユニークであること、しなやかであること。生物のサバイバル条件について。
→2018年は生物学の基本を学び直した年でした。僕の専門の発酵も大きく括ると生物学のいちカテゴリーなので。

・マイクロバイオームとは何か。身体のなかの生物多様性
→毎年行っているハンガリーの学会でのホットトピックスについて概略まとめ。身体のなかの微生物世界は摩訶不思議すぎる…!

・独学者の不気味の谷。
→去年はかつてなく「素人でも本職の研究者でもない自分の立ち位置の謎さ」に悩んだ年でした。谷を抜けられるかどうかは、自分の研鑽にかかっているぜ。

・「いつもやる気」はありえない。価値の創造と運用のマネージメント。
→メディアアーティストの市原えつこさんからの相談のアンサーをブログにまとめました。まあ、いつもやる気100%の人生は疲れるよね。

・ラブという薬。功利的にならないことの功利性
→友人の精神科医、星野概念さんとその患者であるいとうせいこうさんの対談本がとても面白かったのでその書評。

・「そういう話もある」と「確かにそうなっている」のあいだ。
→インタビューで科学的な話すると記事確認の時の労力が大変すぎる問題について。これ書いて以降WEB媒体のインタビュー依頼は何かご縁がない限り断ることに。だって大変なんだもん。

・「まだやってたのかおじさん」になりたい。
→おじさんシリーズです。

・抽象性のサーカス。
→2018年の衝撃的な出会い、ALL YOURSの木村くんの紹介と、過剰すぎるヤツが集まったコミュニティについて。

・ハスラー・ギーク・ヒップスター。
→自分の職能の見限りと分業の大事さについて。このエントリーは秋のTWDW(働きかたの祭典)のイベント『プロデュースおじさん』に発展しました(いや、別にしてないな)。

・過去の自分は今の自分の地層を成している。おべんとう展がはじまったよ!
→発酵の専門家になったらなぜか美術展に出展することになった不思議さについて。絵描きを目指していた20歳の自分に読んでほしい。

・デザインとデザイノイド
→リチャード・ドーキンスの大好きな概念を自分なりに解釈しなおしてみた。

・僕は立ち向かう人ではなく、逃げてきた人だったのだ。
→夏に心が疲労骨折した時のエントリー。自分のルーツ忘れると心が死ぬ…!

・親戚のおじさんバイブス。
→他人の応援はエンターテイメントである!というお話。

・逃避としての読書。
現実に適応できないヤツのユートピアが読書である、というわかる人にはわかる読書観。地味に色んな人から感想コメントもらいました。

2018年にあったニュース

大きなプロジェクトがたくさんあった1年だったので、告知やレポート系のエントリーが充実していました。いやあ、よく働いたなあ…

・HAPPY&COZY!1万人が醸された『こうふはっこうマルシェ』レポート。

・『発酵文化人類学』一周年記念!3万部重版&フランス語版&続編ができるよ!

・35歳は、垣根を越えてチャレンジする年だ!

・おべんとうの国を旅しよう!アニメ『おべんとうDAYS』ができるまで

・微生物のはたらきを可視化するALIFE 2018ワークショップ

・【ヒカリエ47発酵】発酵から日本を再発見する旅、いよいよスタート!

2018年のメディア掲載ピックアップ!

今年も色んなメディアに取材してもらったり、寄稿の依頼をもらいました。
去年からの流れで今年も紙媒体や新聞、テレビやラジオなどいわゆるマスメディアに掲載される方向性に。

雑誌・紙媒体など


デザイナー時代から愛読している憧れの花椿の特集に登場しました。めちゃ光栄…!


・『発酵文化人類学』が雑誌ダ・ヴィンチ「ひとめ惚れ大賞」を受賞しました。


・ミシマ社の雑誌『ちゃぶ台』発酵×経済号に全力で寄稿しました。


年始のdancyuの日本酒特集で、神楽坂の蒼穹で日本酒のペアリングについて寄稿しました。今年は日本酒関係の仕事けっこう多かったなあ…


これはDiscover Japanの京都特集。比叡山の星野リゾートで発酵ガストロノミーを食べる記事で登場しています。今年はDiscover Japanの皆様とご一緒する機会がたくさん。こないだ出た『風土を醸す酒』でも麹のコーナーで広島の酒類総合研究所の岩下先生と一緒に登場しています。


去年に引き続きBRUTUSにも。春の特集『おいしい魚が食べたくて。』ではくさややシュールストレミングスやホンオフェなどハードコア発酵魚を食べまくるページで登場。編集チーム一同くさやを焼く僕を遠巻きに冷たい目で見ていたよ…!ちなみに年末の『危険な読書』にもちょっとだけ登場。年末に山梨に来てくれた独立研究者の森田真生くんのインタビューの隣で発酵ブックガイドしてます。


自炊の参考に愛読していた料理通信の発酵特集でも大きく取り上げてもらいました。座談会やった青山のAn Diの料理は絶品。はよディナーしにいかねば…!編集部のみなさま、一緒に行きません?


中国の女性誌『健康 与 美容』にて中国メディアデビューしたようです。
「旅行家 兼 発酵設計士」が僕だそうですよ…!ちなみに来年『発酵文化人類学』の中国語版が出ます!


年末には女性誌のミセスにも寄稿しました。発酵目線で旅してみませんか?という魅惑の提案してみたよ。


週刊文春で高野秀行さんの驚愕本『辺境メシ』の出版記念対談をしたのも光栄の限り。
WEBでも読めますよ:なんでも食べちゃう2人が語る「ほんとうにスゴい辺境メシ」


あと地味に嬉しかったのが日本海新聞の『読書絵てがみ感想文コンクール』の課題図書に僕のはじめての本(&アニメ)『てまえみそのうた』が選ばれた記事。実は僕が過去に出した三冊の絵本は子供たちの夏休みの自由研究や感想文の推薦図書として役に立っているようなんです。『発酵文化人類学』から僕の活動を知った人は知らないかもしれませんが、僕の活動の出発点は親子向けの食育なんですね。

(最後に大きな声じゃ言えないんですが育児雑誌の老舗『母の友』で短期連載が始まってまってるんですよ…めちゃ恥ずかしい〜!)

文学・アート系が多かった2017年と比べると、2018年は自分の専門である発酵・食のことについての記事がメインでした。やっぱこっちが本分!な安心感があるぜ。

  ▶WEBマガジン


・紆余曲折な経歴を繋げる。発酵デザイナー小倉ヒラクの生きる知恵
『おべんとう展』の仕事でカルチャーマガジンのCINRAに取り上げてもらいました。『発酵文化人類学』でのブリコラージュ理論がさらに発展したデザイノイド的方法論をお話しました。僕のこれまでの経歴が総決算されたような素敵な記事に編集してもらいました。


・「人生の意味は考えなくていい」。現代のヒッピーが語る無計画な生き方のススメ|ALL YOURS木村のよりみち見聞録×小倉ヒラク
→2018年いちばんお気に入り記事はこのNEUT MAGAZINEでのALL YOURS木村くんとの対談。対談場所が銭湯、しかも今までメディア上では話してない「発酵デザイナーになる前の馬の骨時代」をしました。いやあ、あの時代はほんとにめちゃくちゃで楽しかったなあ…


・「現代人って実は暇?」山梨県で微生物と暮らす発酵デザイナー・小倉ヒラクさん
朝日新聞のWEBメディア&Wでのインタビュー。山の中で暮らすようになってからの価値観の変化について話しています。山梨に引っ越してから年々深まる「人間しかいない世界で生きるのはヒマ」という確信…!


・「人も菌も温度の波に適応して進化してきた」発酵から考える、身体の合理性
静岡のパッシブ住宅システムメーカー、OMソーラーの特設サイトで温度と生物の関係性について話しました。ディレクター平藤さん、編集チーム横石さん&だんごくんという超知り合いチームと和気あいあいと取材しました。ちなみに話終わったあとにみんなで草刈りしたよ。


・SOUQ ZINE INTERVIEW 小倉ヒラク
大阪のgraf服部さんに「大阪で遊ぼうよ!」と誘ってもらって、発酵デザイナーと縁の深い梅田の『みつか坊主』で大阪チームでワイワイ話したことが阪急百貨店のECサイトのインタビュー記事に。ほとんど飲み会だったんですけど、めちゃ濃い内容の記事になってる!全4回あるよ。

・第1回 発酵デザイナーと呼ばれて。
第2回 47の残していくべき文化
第3回 ニッポンの発酵、世界の発酵
第4回 カルチャーとしての発酵

▶テレビ・ラジオなど

今年はマスメディアにもよく出ました。春にはJ-WAVE日曜レイチェルさんのラジオ番組、秋にはJFNの篠原ともえさんのラジオ番組、年末にはJ-WAVE日曜V6の岡田准一さんのラジオ番組の収録がありました(この番組の公開は年明け)。


・リンクから放送聞けます:日本カワイイ計画。 with みんなの経済新聞

とりわけ反響が大きかったのが、12月のNHKの生放送『ごごナマ』。NHKの敏腕ディレクター中山さんによってめちゃ濃い内容の番組になりました。放送前からメールやメッセンジャーでの連絡が止まらず、甲子園出た高校球児ってこんな感じなの〜!?とビックリ。

取材に来てくれたメディアの皆さま、どうもありがとうございました〜!

2018年のイベント色々

だ…だんだん疲れてきた。2018年も色々あったぜ(しかもここに載せてない記事とか媒体もいっぱいある。全部アーカイブできなくてすまない)

2018年は『発酵文化人類学』の出版ツアーやってた2017年ほどでないにしろ、まあまあ色んなイベントがありました。以下ざっくり時系列で、


2月の岩手県、西和賀の発酵ツーリズム。納豆を雪に埋めてワイワイしました。冬の発酵の醍醐味は西和賀にあり…!

・小倉ヒラクさんと発酵のミラクルをめぐる旅へ | colocal


3月は過酷すぎて参加者が次々とお漏らししてしまった道東誘致大作戦で魂抜けた…!
(幸運なことに漏らしはしなかった)

同じく3月はホーム山梨で『こうふはっこうマルシェ』。全国から発酵仲間が集いました。


4月には京都の恵文社でミシマ社企画のイベントで藤本さんと三島さんと。このイベントがきっかけでみんなで秋田の発酵ツーリズムへ。その模様が雑誌『ちゃぶ台』の特集に。


5月には愛知の澤田酒造の170周年記念イベントでの講演会。盛り上がった…!


6月は毎年恒例ハンガリーの国際プロバイオティクス学会。三年目、ついにちゃんとした研究者として扱ってもらえるようになりました。嬉
写真はオーガナイザーのペーターさん(右)とブダペストでアイス食べるの図。


7月は長野県諏訪の銘酒、真澄に講演会に呼んでもらいました。蔵見学のあと杜氏とのトークセッションは最高に楽しかった…!


夏は上野都美術展『おべんとう展』でダンスワークショップ。盟友flep funce!と親子でダンスワークショップを何セットやったんだっけ…?踊りすぎでちょっと筋肉痛に。


夏のもうひとつの大仕事。お台場未来科学館でのALIFEのキッズワークショップ。学会もめちゃくちゃ楽しかった〜!!!


9月からいよいよ47都道府県の発酵ツーリズムがスタート。愛知県岡崎の八丁味噌イベントは会場が異様な興奮に包まれた時間に。ここでの話が、後日GI制度の問題点を問う記事としてBAMPで公開されました。

・「八丁味噌」は誰のもの? 老舗味噌メーカーを翻弄する政策のひずみ


ALIFEからのスピンアウト企画、イギリスの複雑系研究者のAlexandraさんとのフィールドワーク。デザイン&ビジネスのキュレーターの安西さんとのご縁でイタリアミラノチームも合流。渋谷の街を歩いて微生物を捕獲してきました。


10月には国際交流基金アジアセンター企画の『Innovation City Forum』のアジアセッション。アジアの色んな分野の専門家たちと話が尽きなかった…!事務局の皆さま、続きをまたタイとかインドネシアとかでやりません?
(映画監督のトラン・アン・ユンさんに会えたのが嬉しかったぜ)

・国際フォーラム「Innovative City Forum 2018 アジアセンターセッション」開催レポート


同じく10月は馴染みの醸造家の旦那たち(新政の古関さん、寺田本家の優さん、ヤマロク醤油の山本さん、五味醤油の若旦那)と神戸とトークイベント。飛び入りゲストの譽國光の元気くんの話が最高だったな…!


今年は何かとイタリアと縁のある年。ローマの微生物学者Vincenzoさんのお誘いで共同技術開発をスタート。合間に日本酒のテイスティングイベントをやって大盛況でした。うれしー!


『おべんとう展』で一緒だったマライエ・フォーゲルさんから声かけてもらって、オランダ・アイントホーフェンのDutch Design Weekでプレゼンしてきました。今年はスケジュール的に無理だったけど、来年はちゃんと展示するぞー!


11月。今年で三年目となった『プロデュースおじさん』@Tokyo Work Design Week。例によって何もハックできない与太話をクラシコム青木おじさん、greenzおのっちおじさんと繰り広げました(また来年ログミーの書き起こし出るよ)。


2018年最後のイベントは、渋谷ヒカリエでの『47都道府県の発酵ツーリズム出発進行式!』。来年の展覧会に向けて100名で「出発進行〜!」と気合を入れました。


・47都道府県の知られざる発酵食品が大集合!発酵から日本を再発見する展覧会を開催!

ということで、来年は絶対このイベントを成功させるぞ!クラウドファンディングもどうぞよろしくおねがいします。

レギュラー仕事&連載

最後にレギュラー仕事振り返り。


ひたすらマイペースに更新し続けるアマノ食堂の連載、ついに4年目を迎えました(ただいま55回目)。ソトコトの『発酵文化人類学』の連載と並んで全然終わる気配のないご長寿コンテンツになりつつある…!で今年いちばんのお気に入り記事はこれ!

・全国の日本酒ファンに告ぐ! 夏こそ熱燗が最高な理由。| アマノ食堂

今年はミシマ社の連載も。発酵を軸にこれからのサバイバルライフを考える内容なのですが、毎回七転八倒して書いてました。なかでも一番悩み抜いて書いたのがこの回。

・全体性を信じて世界をつくる。発酵が生み出すローカルの可能性 | みんなのミシマガジン

2017年に出版ツアーをやるためにお休みしていた『発酵デザイナーのこうじづくり講座』を復活。場所を東京から甲府の五味醤油に移しました。毎回全国から発酵好きが山梨に来てくれてほんとに嬉しいぜ…!

こちらも四年目を迎えたYBS山梨のラジオ番組『発酵兄妹のCOZY TALK』。2018年も愉快なゲストがたくさん登場してくれました。写真は年内最後の収録。ゲストは左から情報学者のドミニク・チェンさん、独立研究者の森田真生さん、ミシマ社の三島さん。こちらも目指せ長寿番組〜!!

2019年はブログ更新がんばるぞ!

ということで。一年中大忙しだった2018年。
心残りだったのは、家でゆっくり考え事する時間が全然なくてブログあんまり更新できなかったこと(特に後半)。

いつも言ってることですけど、僕にとってブログは「考えの整理整頓」あるいは「思考の素振り」。普段見たり感じたりすることをそのままにしておくとどんどんアタマが散らかっていくので、ブログという引き出しに整理してしまって「はいこれでスッキリ!」という状態にしないと精神衛生がバッドになっていくんだよ…!

なので来年はなるべく寄稿とかインタビューとかイベント出演減らして自分自身に言いたいことを自分自身の場所で言うことにします。

今年も思考の素振りしていくぜ!

挑戦して凹んで限界への旅に励んだ2018年の振り返り。

奈良の正暦寺の庭で放心する図。腰が抜けるほど旅したよ…!

2018年は、移動の年。
日本海外問わずとにかく移動しまくっていました。もはや人生でこれ以上移動しまくりの1年はあるのだろうか(←反語。いや無い)。

ということで。毎年恒例の1年の振り返りブログをどうぞ。

【2017年】一球入魂!旅と学びと出会いに満ちた2017年の振り返り。

【2016年】価値を育てる、縁を続ける。2016年の振り返り

今年の活動の振り返り

まず今年、僕はいったい何をやっていたのか?時系列で振り返ってみるとだな。

前半】発酵文化人類学出版の余波が続く
去年出版した『発酵文化人類学』が新刊の時期を過ぎてもヒットし続け、年を越しても書評の掲載や取材、講演がオファーが続きました。1年かけての3万部到達、そして海外版の翻訳が決まるなど、ありがたすぎる流れが続いたぜ…!

・『発酵文化人類学』一周年記念!3万部重版&フランス語版&続編ができるよ!

3月にホーム山梨で開催された『甲府はっこうマルシェ』は、ラジオ番組のご縁で五味醤油の若旦那と一緒に企画プロデュースに加わり、初年度にも関わらず来場者15,000人超え!の大ヒットイベントになりました。

【中盤】都美術館とALIFE国際学会に出展
上野の東京都美術館『おべんとう展』に招待され、新作アニメと絵を制作。なんと、学生の時に志していた美術作家(いちおう)としてデビューしてしまった…!

・おべんとうの国を旅しよう!アニメ『おべんとうDAYS』ができるまで

音楽にGOING UNDER GROUNDの松本素生さん、ダンスに盟友flep funce!という素晴らしいチームで制作できて光栄でした。熊谷香寿美さんはじめ都美術館キュレーターチームとのディスカッションや、オランダのアーティストマライエ・フォーゲルサングさんや写真家の阿部了さんはじめ出展作家の皆様とのご縁をもらったのも嬉しかったなあ…。


・紆余曲折な経歴を繋げる。発酵デザイナー小倉ヒラクの生きる知恵 | CINRA

で。ちょうどおべんとう展スタートと同時期の7月に開催された、未来科学館での国際学会ALIFE 2018に、複雑系研究の第一人者の池上高志さんはじめALIFE lab.オーガナイザーの岡瑞起さん、青木竜太さんからお誘いしてもらってキッズプログラムを企画。
微生物の働きを複雑なままデジタルデータ化するという実験的なワークショップに挑戦しました。


・微生物のはたらきを可視化するALIFE 2018ワークショップ

このALIFE(人工生命)学会は、「知能=AI」ではなく「生命そのもの」のアルゴリズムを研究する先端分野。コンピューティングや物理学、社会学者や生物学者まで様々なジャンルの研究者が集まるめちゃエキサイティングな領域です。とうぜん僕も刺激を受けまくり、しばらく自分の研究のライフワークにできたら…と思っています。

夏】心が折れて凹む
都美術館での作品制作とALIFEのプログラムが終わり、『発酵文化人類学』出版の余波が落ち着いてきたタイミングで、気分が激しく凹みました

デザイナーへの道をドロップアウトし、山の中で微生物に囲まれて隠遁生活おくるつもりがいつの間にか世間からそれなりに期待され、その期待に応えねば…!という無理がたたって心が疲労骨折。

「もう誰にも会いたくない…」
「何もしたくない…」
「全体的に放っておいてほしい〜!!」

とやさぐれていました。ここ数年間のやたらポジティブモードだったツケが…!汗

・僕は立ち向かう人ではなく、逃げてきた人だったのだ。

後半】渋谷ヒカリエ47都道府県の発酵ツーリズム企画スタート!
ということで。夏にひとしきり凹んだ後、秋から次なる大プロジェクト、D&Departmentと手を込んでの渋谷ヒカリエの展覧会『Fermentation Tourism NIPPON』のチャレンジが始まりました。来年春まで47都道府県の知られざる発酵文化の現場をくまなく歩いてまわり、その旅の模様が展覧会になる!という「コンセプトは面白いけど絶対に実行してはならない類の企画」に手を出してしまった…!


・【ヒカリエ47発酵】発酵から日本を再発見する旅、いよいよスタート!

この無駄に壮大なプロジェクトを達成するには、凹んでいるヒマはない。去年の全国55ヵ所出版ツアーでボロボロになった記憶を完全抹消し、新たな(そして前回よりも絶対ツラい)旅に出るために気合入れるぞ!えいえいおー!


・47都道府県の知られざる発酵食品が大集合!発酵から日本を再発見する展覧会を開催!

11月からはクラウドファンディング企画もスタート。4年前の『こうじのうた』のクラウドファンディングの時に死にそうになりながら集めた100万円を数日で達成し、今回は目指せ500万円!みんな応援おねがい!!と支援を呼びかけた年末のヒカリエのイベントにはおよそ100名の発酵ラバー&メディアが駆けつけてくれました。


・活動報告 \出発進行式を開催しました!/ | CAMPFIRE

夏にあんなに凹みまくっていたのに、いつの間にか去年よりもさらにやる気になっている自分の現金さよ…!

今年は全体的に「規模の大きいこと」にチャレンジする1年だったなと。
僕のやってることは、他の人からニッチに見えるかもしれませんが実は産業的にも文化的にもものすごくスケールの大きい領域と接続されている。

よって目指すはオーバーグラウンド…!
来年もメジャーへの道を歩んでいくぞ!

2018年のトピックス

今年は働きかたが大きく変わっていくタイミングで、色んなことを考えました。

出版オファーがいっぱい来て悩む
大手から専門系まで色んな出版社から「ウチで本出しませんか?」とオファーがありました。ありがたいことなんですけど、このまま「やったー!どんどんいくぞー!!」と量産すると

運が悪いケース→速攻でオワコン化する
運が良いケース→そのうち本を出すのが仕事=作家になる

のどちらかになりそう。前者は絶対イヤで、後者もなんかピンとこない。まだ当面、実践者でありたいし、深く潜って研究したいこともある…!

ということで。2018年は新しい本のことを考えるのを止め、具体的に何かをつくること、行動することを重視することに決めたんですね。僕はまだまだ現場 or DIE!

海外での活動が活発化する


オランダ、アイントホーフェンのDUTCH DESIGN WEEKで出会ったキプロス島のデザインガールズ

今年はこれまでになく海外に行きました。年始にベトナム、2月にフィンランドとエストニア、リトアニア。5月にフランスとイタリア。6月にハンガリー。10月にまたイタリアとオランダ、12月に台湾とあちこち旅したなあ。

とりわけヨーロッパでの仕事がだんだん増えてきて、日本でも国際会議への登壇(7月のALIFE、10月のInnovative City Forum)、イギリスの複雑系の研究者Aleandraさんとのフィールドワークなど国内にいても海外の研究者やクリエイターの人たちとご一緒することが多くなってきました。この流れは来年さらに加速する予定です。

ディープルーツに心動かされる


和歌山県湯浅で金山寺味噌の伝統を守る太田久助吟製

去年も『発酵文化人類学』の出版ツアーで全国行脚していたのですが、呼んでくれた人たちの多くはローカルで新しい動きを起こしている「今時のイケてるヤツ」だったので、土地は違えどグルーヴ感は一緒。なので気持ち的にはわりとラクな旅でした。

しかし今回の47 都道府県の発酵ツーリズム企画。訪ねるのは山のなかに住む80歳のおばあとか、断崖絶壁の離島にある蔵とか、どうやってたどり着くのそこ?的な場所ばっかり。ネットに載ってる情報はアテにならず、全国の友人のツテを頼って訪ねていくか、あるいはアポ無しでとにかく現地に行ってから考える!スタイルで旅して、しかも出会うのは現代人の僕とはぜんぜん違う世界観で生きている人たち(メールも使わない場合が多いので、連絡はFAXとか手紙の場合も)。

肉体的にも精神的にも試されすぎる…!マジでツラい…!!

途中なんども体調を崩して倒れながらもなんとか旅を続けてこれたのは、苦しい道中のなかで出会う人と景色が素晴らしすぎたから。今年の旅は、かつてないほど日本のディープルーツに迫っている確信がある。

つまり「真の旅」をしている確信がある…!

心動かされた旅

それでは今年ご縁のあったナイスな土地のなかでも、とりわけ強く心を動かされた土地は以下。

【北海道】道東誘致大作戦に巻き込まれすぎる…!

盟友、徳谷柿次郎さんから「道東の元気な若いヤツに呼ばれてるから一緒に行かない?」と誘われて、Re:Sの藤本さん、かもめ柳下さん、鶴と亀の小林くん、ALL YOURSのきむ兄とともに旅した北海道の東(オホーツクや北見、網走や釧路、十勝や阿寒湖など色々)。

どこまでも続く平野、近代の歪みのなかでたくましく生き抜いてきた北の地の偉大な先輩たち、そして謎にアタマのネジにすっ飛んでる若きローカルプレイヤーたち。

・「怒られないローカル」の先へ。道東を発信する88年生まれの覚悟 | BAMP

色んな意味で「人は辺境で逞しくなる」という実例を見ました。おい厚顔無恥のテトリス野郎ども、来年もお世話になるからな!ヒカリエ企画にも来いよ〜!!

【秋田】革命の狼煙はいつも辺境から

Re:Sの藤本さんからご縁をもらって、新政の古関さんや羽場糀店との出会いを経て大好きになった秋田。夏には藤本さんとともにミシマ社の社長三島さんも連れて五城目の福禄寿(一白水成)へ。そして冬にはチームのんびりのヤブちゃんと八森のハタハタフィーバーの現場へ。

五城目のうっしーこと丑田くん、ANDONのトラ男や福禄寿の康衛さんたち、秋田のみんなは本当にタフで根気強くてリスペクトするしかない…!

少子高齢化が極まった秋田で起きている「辺境から生まれるイノベーション」の行方は、秋にミシマ社の雑誌『ちゃぶ台』の発酵特集につながりました。来年も秋田を深掘るぞ〜!


・トージ!・コージ!福禄寿酒造編 | なんも大学

【近畿】己の関西気質に気づく2018年…!

いやあ今年は関西でよく遊んだ!毎月のように大阪・京都・神戸・奈良を訪ねてイベントやったり取材受けたりフィールドワークしたり散歩したり飲み会したり…と満喫しました。

特に思い出深いのは、NHKでも放映された守口・富田の発酵ぶらり旅。おじさん達がアポ無しで謎の漬物を探して奔走する最高に意味不明でエキサイティングな一日でした。上の写真はその旅の日の夜に開催された心斎橋スタンダードブックストアのイベントにて。

夏に春日大社、冬に正暦寺の森歩きをした奈良も最高!菩提酛の起源や奈良漬の現場を訪ねるツアーが最高に盛り上がりました。奈良の「しっかり弥生のステップを踏んできた感」が僕のホームである、縄文オンリーの山梨とは違いすぎて新鮮でした。

そういや年始に柿次郎さんと柳下さんと一緒に、神戸の藤本さん参りにいったな。
よく考えたら今年のやってこ!旅地獄はこの時から始まったのかもしれない…!汗

【北欧・バルト三国】国とは何かを再認識

2月に訪れたフィンランドとエストニア、リトアニア。とりわけエストニア、リトアニアは人口100万人ぐらいの超小国。ロシアやポーランド、EUの大国との関係のバランスを取りながら未来への舵取りをしていくそのフットワークの軽さとしたたかさに「国とは何か?」を考え込んでしまいました。

翻って僕の住む日本は、21世紀のタイミングにおいて大きすぎるのかもしれない。拡大再生産モデルが崩れて情報と人の移動のハードルが低くなったこの時代「サイズが大きい」というのは国家にとってデメリットの方が大きくなったのでは?

行く先々で地元の人たちと話し込みながら、そんなことを考えていました(ちなみに上の写真はクラフトコンブチャメーカーのKUMAの二人。発酵好きに国境は関係なし)

【青ヶ島】日本人はどのようにサバイブしてきたのか?

今年最大の衝撃は、青ヶ島への旅。伊豆諸島と小笠原諸島のあいだにある人口150人の孤島に、日本のルーツの最深部が残っています。50年前まで年に2〜3回しか定期船が来なかった辺境中の辺境に摩訶不思議な発酵文化や信仰が発達。

麦と芋と牛の農業サイクル、神官と巫女が織りなす独自の神事。限られたものでなんでもつくるブリコラージュ精神。青ヶ島に滞在したことで、来年のヒカリエの企画の背骨が定まってきた感があります。

青ヶ島のみなさま、本当にありがとう…!

2019年は何をする?

それでは最後に来年の活動について。
来年はこんなことするぞ!

渋谷ヒカリエで展覧会やります
今年〜来年にかけてのメインプロジェクトはこれ!4/16〜7/8の二ヶ月半、渋谷ヒカリエ8階のd47 MUSEUMで、現在死にそうになりながらまわっている47都道府県の発酵ツーリズムの模様が展覧会になります。

2月までに47都道府県をまわりきって、3〜4月に展示準備。そして会期中はたぶん20回以上の関連イベントを開催している予定。つまり来年の前半はひたすらこのプロジェクトに打ち込むことになります。死なずにやり遂げるぞ〜!!

『発酵文化人類学』のヨーロッパツアーに出ます
無事展覧会がスタートしたら、今度は『発酵文化人類学』のヨーロッパツアーに出ます。フランス・パリを皮切りにイギリス、ハンガリーやチェコをはじめとした東欧をまわります。それまでに翻訳をなんとかせなばならない…!

ちなみに中国語(本土)も出るので、アジアでもツアーできるといいなあ…。

ミシマ社から本出します(たぶん)
去年から今年にかけて連載していたミシマ社のWEBマガジンの連載が本になる予定、なんですけど『発酵文化人類学』を世に出してしまったことで上がりまくったクオリティのハードルを越えることができるのだろうか…めちゃ不安だぜ!ちなみに秋頃に刊行予定なんだけど、大丈夫かしら?汗

山に籠もって菌になります
展覧会とツアー終わったら、ここ数年の旅三昧の生活を見直して、基本ホームの山梨から動かないライフスタイルに移行します。移行するよ。移行するってば!

・【新規案件停止のお知らせ2017】僕は山に籠もって菌になります。

そもそも僕そんなに社交的じゃないし、自己顕示欲もないし。愛する微生物の世界に没頭して研究三昧の日々を送りたい。どんどん高くなる積読の山を解消したいし、発酵食品の仕込みとか大好きな料理もしたい。毎日違う部屋で起きて「あれ、ここどこだっけ?」「てかなんでここにいるんだっけ?」「だいたい僕なにやってんの?」「そもそも僕ってだれ?」と頭がバグり続ける日々に一区切りつけたい。

落ち着いて暮らしたい〜!!

来年からラボが稼働します

「そんなこと言ったって、どうせまた仕事しまくりの旅しまくりなんでしょ?」

と薄ら笑いを浮かべながら僕に用事を言いつけようとしているそこの諸兄姉!
僕は本気だ。その証拠に来年からいよいよセルフビルドの発酵ラボが稼働するのだよ。

ちなみにラボの敷地には、今年の開高健ノンフィクション賞を受賞して時の人となっている川内有緒さんも小屋を建てています。

発酵ラボと川内さんのDIY小屋が並んでイケてるランドスケープが出現予定。

来年もさらに発酵デザイナーとして高みを目指し、深く潜るぞ…!

大陸ルーツの面影を残すおかず味噌。湯浅の金山寺味噌

和歌山の発酵ツーリズム:
金山寺味噌(和歌山県湯浅)| 太田久助吟製

大陸ルーツの面影を残すおかず味噌


麹づくりの様子

味噌といえばお湯で溶いて味噌汁にする調味料を思い浮かべるが、ご飯のおともにして食べる「おかず味噌」というカテゴリーもある。和歌山をはじめ近畿・東海で食べられる金山寺味噌もおかず味噌のバリエーションの一つ。

醤油の銘醸地でもある和歌山県湯浅の旧市街に、150年近く金山寺味噌の製造を続ける太田久助の風情のある蔵を訪ねてみた。
何度か食べたことはあったものの、具体的な製法は知らなかった。「せっかくなら麹づくりを身においで」と声をかけてもらって現場に入ってみるとびっくり仰天!金山寺味噌は、米・麦・大豆の3つの穀物を混ぜてそこにコウジカビの種菌をつけて「三種混合麹」をつくっていく。


三種混合麹

普通、味噌は米か麦か大豆のどれか一種を原料に麹をつくる。ブレンドすることがあるとしても二種類まで(ちなみに醤油は大豆と麦の二種混合)。三種全部混ぜる麹ははじめて見たぜ。

さてこの金山寺味噌。
三種混合麹を漬け床にして、塩漬けしておいたナスやきゅうり、ウリ、ショウガ(つまり夏野菜)などを樽に仕込み、さらに山椒やシソなどを薬味として加え3〜4ヶ月発酵させて味噌にしていく。と書いてみたけど、これよく考えると「味噌と漬物の中間」のようなもの。より正確に言えば「漬け床ごと食べる麹の野菜漬」と言えばいいだろうか。


塩漬けにした野菜を麹にあわせる

「味噌」と名がついているものの、既存のカテゴリーでは分類不可能な金山寺味噌。ルーツは何ですか?と旦那さんに聞いてみると、

「もとは800年前に中国で修行したお坊さん(法燈国師)が日本に持ち込んだ発酵食品と言われている。中国の醤(ひしお)の一種、醤菜(ジャンサイ)と呼ばれるものの名残なんでしょうなあ」

と、小さな蔵の一角で突然大陸スケールのエピソードが出てきてそれにも仰天。

なるほど、これは味噌というよりは大陸的な醤(ひしお)の系譜なのであるよ。調味料 or おかずという二項対立に分岐する前の「発酵の旨味が溜まった食べ物」として、ここ湯浅の地でご飯のおともに重宝されてきたんだね。

金山寺味噌は、ご飯にかけて「味噌丼」にするととっても美味しい。お茶漬けにしても美味しいし、お酒のアテにしても絶品。
中世の大陸とのつながりを妄想しながら食べる金山寺味噌、ロマンある…!

どうやってつくる/食べる?

▶How to 仕込み
A:蒸した大豆・米と炒った麦を混ぜ、麹にする
B:麹と塩漬けにした夏野菜(ナス、ウリ等)を混ぜ、山椒やシソを薬味に樽に仕込む
C:数ヶ月樽のなかで発酵・熟成させる

☆夏野菜が出揃ったタイミングで仕込み、その年の晩秋〜春まで発酵させて食べる
☆入れる野菜や味付けは仕込む蔵や家によってバリエーションがある
☆熟成期間は数週間〜半年と仕込む蔵や家によってバリエーションがある

▶食べかた
・ご飯のおともに
・味噌汁には使わない

▶食べられている地域
和歌山はじめ近畿・東海地方

▶微生物の種類
麹菌、酵母、乳酸菌など

旅のメモ

湯浅は日本における醤油醸造の先駆けとして有名。
前回取り上げた小豆島の醤油の文化ともつながりが深く、湯浅の醤油職人たちが小豆島に製造の指導をするために、2つの土地を人が行き来したとの記録が残っている。

熊野古道の一部を成す太田久助吟製周辺の旧市街は、まるでタイムスリップしたかのような不思議な風情を残している。発酵ツーリズムの醍醐味は、こういう素敵な場所でアジアのルーツと深くつながった醸造家たちと出会えること。

太田夫妻のこのポートレート、めちゃ素敵じゃない?


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【11/25】森田真生×ドミニク・チェン×小倉ヒラク 〜風と菌のシンポジウム〜

こんにちは。小倉ヒラクです。
僕がリスペクトしてやまない二人の研究者、森田真生さんとドミニク・チェンさんを山梨にお呼びできることになりました。

きっかけは森田さんの「ぼくは風になりたいんです」という一言。ジャンルも場所も飛び越える独立研究者のその言葉を聞いて、菌になりたい僕としては「それでは醸造蔵に良い風を吹かせに来てください」とオファーするしかなかったね。

ということで話はトントン拍子で進み、山梨県甲府市の老舗、五味醤油の蔵でお話会をする運びに。

さらに!ご縁が重なって、これまたジャンル横断の新世代の思想家、ドミニク・チェンさんも仲間に加わってくれることになったんだよ。

森田さん、ドミニクさん、僕の三人でお互い興味のある話題を持ち寄って、完全即興の愉快なトークをしたいと思います。数学やITや生物学が一緒に発酵する饗宴(シンポジウム)、どうぞご期待ください。

そして!実はまだあるサプライズ。
ニュースを聞きつけたミシマ社の社長三島さんが「僕も山梨行きます!」と参加表明。森田さんと僕の記事が掲載されている雑誌『ちゃぶ台』最新号を持って会場に駆けつけてくれる模様。

五味醤油の五味仁・洋子兄妹とともに全力で「風のフィロソファー」を迎える菌になるぞー!

人数限定のアットホームな会になります。気になる人は速攻で予約することをオススメします。それでは山梨で会いましょう。

イベント詳細はこんな感じ!

森田真生×ドミニク・チェン×小倉ヒラク
〜風と菌のシンポジウム〜

【日時】2018年11月25日 17:00〜19:00予定
※新宿から特急で1時間半。東京から余裕で日帰り可能です

【場所】五味醤油ワークショップスペース KANENTE
→会場へのアクセスはこちらから
→新宿駅からのバスも便利です ※中央三丁目で下車徒歩2分

【参加費】3,000円(1drink付)
【定員】30名

【予約方法】
info(あっと)yamagomiso.com まで「風と菌のシンポジウム参加希望」の件名で、

・お名前/参加人数/電話番号

を記載してメールを送ってください。

ミシマ社の雑誌『ちゃぶ台』発酵×経済号に全力で寄稿しました。

個性的すぎる本づくりで各地のブックラバーに愛されているミシマ社さんが年に一度刊行している雑誌『ちゃぶ台』最新号、発酵×経済特集の号に寄稿しました。

…と書くと、ちょっとしたコラムのように思えますが、なんと二段組20ページ超え約15,000字の超ロング寄稿です。今年春に開催されて雑誌制作のキックオフとなった京都恵文社のイベントで、代表の三島さんと仲良しのRe:S藤本さんの三人でトークをし、さらに初夏に三島さん藤本さんと秋田を訪ね…と、まるで三島さんと一緒に雑誌をつくっているかのようなディープコミットでできあがった労作です。

「今号の『ちゃぶ台』はヒラク号といっても過言ではありません!」

見本誌に同封されていた一筆箋にはミシマさんからのアツいコメントが…!
お世辞だとしても嬉しいデス。わーい!
(しかも巻末の著者紹介では、僕の『発酵文化人類学』が「この号の支柱的一冊」とまで褒められている。光栄…!)

さてその内容はというと。
秋田五城目にある老舗酒蔵、福禄寿酒造(一白水成)の再生の物語。昭和の大量量産システムをやめ、五城目でしかできない「土と水と菌に向かいあった醸造」に挑んだ結果、これまでのものづくりのセオリーを覆すようなミラクルが起きる…!

…という「発酵文化人類学のその後」のストーリーになっています。
紙の雑誌では普通ありえない長尺の記事なので、じっくり読んでもらえたら嬉しいデス。ていうかめちゃ七転八倒しながら書いたので読んでね!

そして。
ある意味今回の雑誌制作の裏のフィクサーであるRe:Sの藤本さんや、タルマーリーの渡邉夫妻、今度山梨にも遊びに来てくれる独立研究者の森田真生さん、一緒に関西森歩きの会をやっている三浦豊さんなどなど、僕のリスペクトしてやまない人たちも登場しまくっています。

どの記事も熱量が高く、しかも内容が一貫しているようでけっこうカオスなのもミシマ社さんらしい痛快さ。本の最後を飾る平川克美さんのインタビューがとっても味わい深いです。

ちなみに帯の『黄金の10年がやってくる!』というキャッチコピーは、なんと新政の杜氏の古関さん。三島さんと一緒に訪ねた鵜養の田んぼで放たれた名言が、今回の発酵×経済を象徴する言葉になっています。

・トージ・コージ! | なんも大学

本に登場する新政の古関さん、福禄寿の康衛さん、タルマーリーの格さんはじめ、全国各地の僕の大好きな醸造家たちは、いつでも前を向いて未来を信じている。

社会の流れが反民主主義的に傾き、テクノロジーの急激に発展に起きざりにされ、人口がどんどん減っていく。たくさんの不安に取り囲まれて「どうやって生きていこう?」と不安になった時に、なぜか田舎の片隅の小さな蔵のなかに揺るがぬ未来が見える。

ありとあらゆる苦難を乗り越えて、何百年も続いてきた発酵文化には不思議な安心感とポジティブなエネルギーの渦があります。微生物と人間がともに作り出すその発光に僕の人生は導かれてきました。

前を向いて未来を信じる。黄金の10年間を自分の手で育てていく。
そんなメッセージがビシバシ伝わるミシマ社の雑誌『ちゃぶ台』。速攻でゲットしてね。あと面白かったら僕にコメント下さい。

ミシマ社の皆様、Re:Sの藤本さん、秋田の醸造家の皆様、お世話になりました!

余談ですけど、日本の発酵のシンボルであり僕の研究している麹菌(ニホンコウジカビ・Aspergillus Oryzae)は、顕微鏡で見るとアフロヘアをしています。

お米からピヨーンと胞子が伸びていって…

先っぽはこんな感じのアフロボンバーヘアになっています(二枚ともヒラク撮影)。発酵するとアフロになるのは当然!ということを補足しておきますね。

みんな最寄りの本屋さんにダッシュだ!

恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。

音楽好きの大学の先輩に連れて行ってもらって好きになった渋谷宇田川町のBar Bossa。

いつも心地良い音楽がレコードでかかっている、お酒のセレクトも雰囲気も素敵なお店だなあと思っていて。で、こないだデザインの目利きの安西洋之さんと渋谷で会った時に「ちょっとワインでも」ということでBar Bossaに一緒に行った。

そしたら安西さんが「ここのマスターって、WEBマガジンで人気のコラムニストだよ!」と教えてくれた。帰り際、レジの横に置いてあったマスターの林さんの本を買って帰りの特急あずさで読み始めたら、そのまま夢中で読み終わってしまった。

その本のタイトルは、『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』

バーカウンターにやってくる妙齢の男女の恋愛エピソードのオムニバスだ。主人公はバーのマスター。そこにワケありの男女がやってきて、マスターおすすめのお酒のグラスを傾けながら、恋の話をし始める。報われない恋もあれば、既婚女性がはるか年下の男の子に片思いする恋もある。各エピソードの前後には、ジャズやボサボノヴァの名曲の歌詞が引用され、十人十色の恋のエピソードと重ね合わされる。

「へえ〜。やっぱりバーテンダーやってるとこんなに他人の色恋の話を聞くもんなんだねえ」

と思って読み進めると、やがてこの本が「恋愛小説」であること、虚構の物語であることに気づく。

それはなぜか。
話ができすぎているからだ。死んだお母さんから譲り受けた口紅をつけてデートに行ったら、どんな素敵な男の子もその子に夢中になる。新人女優の同級生を勇気を出してデートに誘ったら成功して、家に芸能事務所のスタッフが土下座して誤りにくる。バラバラだったエピソードが、ワインのラベルの絵を通してつながったりする。

いくらなんでも、できすぎている。

そしてもうひとつ。

カウンターの座る登場人物たちの声音。彼女/彼たちの声音は「対話の声」ではない。「マスター聞いてよ」と始まったとしても、その声は返事を求めることなく、グラスの中の泡のように消えていく。問わず語りよりもさらに儚い、まるで夢の中で響くような声音だ。

この儚さは、虚構の儚さで片付けていいものなのだろうか?

僕はこの小説の登場人物のように、一人でバーカウンターでお酒を飲むのが好きだ(残念ながら気の利いた恋バナはできないけど)。
で、カウンター座って何をしているかというとだな。グラスを傾けながら物思いに耽る。日常のコミュニケーション過多を切断して、黙って静かにお酒を飲む。

この瞬間がたまらなく幸せだったりする。
なぜ幸せなのかというとだな。日々のリアリティから離れた自分の姿を好き勝手に想像できたりするからなんだよね。一ヶ月どこか外国行ってバカンスするのでもいいし、自分の趣味にひたすら没頭する生き方を想像してもいい。

あるいは。
かつて好きだった誰か、まだ見ぬ誰か、手の届かない誰かとの身を焦がすような恋を想像したっていい。

バーカウンターに座っている間だけ、人は自分の望む人生を夢見ることができる。
薄暗い照明のなかで「語られるはずだったストーリー」に耳を傾けることができる。

この本の最後に、著者であるバーテンダーが「これは小説だ」と種明かしをするのだけど、僕はこのできすぎたエピソードたちが著者のアタマの中だけで生まれたフィクションであるとは思えない。

もしかしたら、彼女/彼たちは実際にBar Bossaにやってきたのかもしれない。
でもね。たぶん

「マスター、私の恋の話を聞いてくれますか?」

とは言わなかったんじゃないか。バーカウンターでお酒を飲みながら、夢見るような目で沈黙しながら、ありえたかもしれない幻の恋の映画を見ていた。そしてバーテンダーも一緒にその映画を見ていたのかもしれない。

この本に描かれたエピソードは「実際に語られた話」ではなく「語られるはずだった沈黙」から生まれたのではないだろうか。

素敵なバーには素敵なストーリーがある。
そしてそのストーリーは、沈黙の声によって語られる。

バーテンダーのかける古いレコードは「ありえたかもしれない恋」のサイレント映画のサウンドトラックだ。この本で語られる恋のエピソードは、Bar Bossaのカウンターで過ごす一晩だけカラフルに輝き、バーを出た瞬間に色あせて消えてしまう。

甘い感情は長続きしない。ひとときの夢を再生しておしまいのレコードや映画のように。日常の瑣事のなかですぐに見失ってしまう甘い気持ち、ひとときの夢を取り戻しに僕たちはバーカウンターに座るのかもしれない。

木桶の伝統が未来の多様性を生む。小豆島の醤油文化

鳥取の発酵ツーリズム:
醤油(香川県小豆島)| 小豆島の木桶仕込み

木桶だらけ!の醤油の島


小豆島の醤油文化の顔のひとつ、マルキン醤油の果てしなく続く木桶の景色。圧巻…!

香川県高松沖、瀬戸内海に位置する小豆島は、島の主産業の筆頭が醤油醸造という「醤の郷(ひしおのさと)」として知られている。「知られている」というと、行政やメディアが無理やり話題づくりして「そういうのもないことはない」ぐらいのレベルかと思ってしまうが、実際に行ってみると、予想の斜め上を行く「醤の郷」っぷりで衝撃を受ける。

一つの島のなかに、なんと22もの醤油蔵がある。瀬戸内海では淡路島に次ぐ大きな島とはいえ、驚異的な密集っぷりだ。明治の最盛期にはなんと400以上の醤油蔵があったらしく、醤油とともに歩んできた島なんだね。

なぜこんなにも醤油醸造が盛んになったかというとだな。
中世から小豆島は製塩業が盛んだった。ところが江戸時代に塩田技術が確立すると他の土地でも次々とライバルが現れてレッドオーシャンに。そこで大豆や麦などを本土から運んで塩とまぜて醤油に加工し、付加価値の高いビジネスモデルをつくりあげた。

接する土地が多いので、原料を運び込むのも容易、そして高い値段で買ってくれる都市部(岡山や姫路、神戸など)にも近いという地の利を活かした作戦勝ちだ。江戸時代から明治にかけて関西一円に醤油を卸していたのだろう。
ちなみに山の上に登って島を一望してみると、入江が港になっている。水害の影響を受けにくい地形も加工食品貿易のモデルに向いていたんだね。

さて。
醤油とはそもそも何だろうか?
大豆と麦に麹菌(コウジカビ)をつけて麹とし、それを塩水に漬けて発酵させてもろみとし、それを搾って使う液体調味料。個体調味料の味噌、液体調味料の醤油が日本の発酵調味料の2トップだ(発酵の原理もかなり似ている)。

味噌と比べると、塩分が若干高く甘味が弱く旨味が強い。刺し身から煮物まで、和食になら何でも使える汎用性があり出汁やみりんや酢など、他の調味料との相性も良い。

九州では糖類などを加えた甘い醤油、東海では小麦主体でつくる白醤油などいくつかのバリエーションがあるが、全国各地で多く使われるのが、大豆と小麦を混ぜた醤油麹を黒褐色になるまで熟成させてつくる『濃口(こいくち)醤油』だ。

小豆島でつくられる醤油の多くもこの濃口醤油。そして小豆島の醤油醸造で特徴的なのが醤油を杉でできた『木桶』で仕込む文化だ。メンテナンスに手間がかかり、コンディションによって味が変わりやすい木桶は現代では金属や強化プラスチック製のタンクに取って代わられつつある。のだけど、小豆島は島をあげて木桶仕込みの伝統を継承しようとしているんだね。


ヤマロク醤油の木桶の表面。100年以上使い込まれて表面も菌でビッシリ!

衰退しつつある木桶の文化に新たな流れをもたらしている代表格がヤマロク醤油。何トンもの酒や醤油を仕込める大型の木桶を作れるメーカーが絶滅しつつある中で、醤油蔵自らが木桶をつくるために技術を学び、その試みに共感する県内外の醸造蔵がヤマロク醤油に桶づくりの研修に行くという「木桶づくりのトレーニングセンター」になりつつある。

普通の人よりもだいぶ木桶を見慣れた僕ですら、小豆島の木桶の数と使い込まれた貫禄には圧倒される。間違いなく日本で最も大量の木桶が集まっている集積地がこの小豆島だ。

前述のヤマロク醤油では、醤油を木桶に仕込んで製品として出荷するまでに三年という長い熟成期間を経る。木桶に棲み着いた野生の微生物を使い、じっくりと発酵させた醤油は香りが特徴的だ。奥深いのにフルーティ、官能的なフレーバーが生まれるんだね。

そしてもちろん蔵ごと、桶ごとにコンディションが違うので生まれる風味も個性が生まれる。手間がかかる、コントロールしにくい部分が多いという要素を、デメリットではなく多様性を生み出すメリットと捉える。

醤油文化の未来、ローカル発酵文化の未来が、ここ小豆島から生まれている。

どうやってつくる/食べる?

▶How to 仕込み
A:蒸煮した大豆、炒った小麦を混ぜてコウジカビをつけ醤油麹にする
B:醤油麹と塩水を混ぜて桶に仕込み、半年〜3年発酵・熟成させる
C:熟成したもろみを搾り、熱加工(火入れ)して発酵作用を止め出荷する

☆菌の元気な暑い時期に発酵を促し、菌の動きが鈍る寒い時期に味を落ち着かせる、という季節のサイクルを利用して味を整えていく
☆醤油麹は味噌や酒の麹と違って旨味を強く引き出したもの。素人が見ると同じ麹とは思えない。
☆木桶や蔵の室内は基本的に洗わない。微生物の生態系が変わってしまうリスクを避ける。

▶食べかた
・刺し身醤油として
・煮物、焼き物の味付けに

▶食べられている地域
全国津々浦々
(沖縄周辺の諸島部では伝統的には醤油は使われなかった)

▶微生物の種類
醤油醸造に特化した麹菌、耐塩性の乳酸菌、酵母など

旅のメモ


高松や岡山、姫路や神戸など都市部に接する地の利を活かして加工食品産業が発展した

小豆島を取材した一番の理由は、発酵友達で醤油ソムリエのケリーちゃんこと黒島慶子さんの存在。醤油蔵がひしめくエリアで生まれ育ち、親も醤油蔵に勤務。幼い頃から醤油とともに育ってきたケリーちゃんが醤油文化の素晴らしさを伝える生業を選んだのはごく自然なことだった。彼女の精力的な活動によって、手間をかけてつくる自家醸造の醤油の魅力が若い世代にも改めて認知されている。情熱もセンスも知識もある、醤油界の伝道師なんだね。

そんなケリーちゃんと小豆島の醤油蔵を訪ねると、どこに行っても「慶子ちゃん、元気か?」と声をかけられ、世間話が始まる。ケリーちゃんにとって小豆島の醸造家たちみんなが親戚のようなもの。こういう「土地そのものと結びついた存在」が文化の守護神になるんだね。

醤油とともに歩んできた小豆島の歴史。その歴史は抽象的に受け継がれるのではなく、生身の人間にパスされる。伝統は資料のなかにではなく、人の身体のなかに宿るのだな。

ケリーちゃん、小豆島は最高だったよ!また遊びに行きます〜。


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逃避としての読書。

何かを得るために、ではなく何かから逃げるために本を読む。

僕の本やブログ読んでくれたり、トークイベント遊び来てくれた人から「なんでそんなに色んなジャンルの本読んでるんですか?」と言われることがたまにあります(しかし知り合いの博覧強記の傑物たちに比べたら僕は小僧っ子レベルなので結構恥ずかしい)。

ただ確かに小さい頃から手当たり次第にやたらめったら色んな本を読んできたのは事実。でもそれは「知識をゲットしたい!」というアクティブな好奇心とはちょっと違っていたように思います。

逃げるために本を読む

思うに。
多感な時期にする読書は「何かを得るため」だけではなく、実は「何かから逃げるため」という側面も大きい。僕は身体弱くて協調性ゼロの性格だったので現実から逃げるために本を読みまくった。本を読んでるあいだは熱がツラい!とか友達いない!という現実から逃避することができるからね。

つまりだな。僕が「これだけの本を読んできた」というのは「これだけの現実から逃避してきた」ということに等しい。たくさん勉強して賢い人間になるぞ!という気持ちは一ミリもなくて、本を読んでいる間だけは自分の将来とかいう面倒くさそうなことを考える必要がなかったので没頭していたに過ぎない。

そう。読書は逃避。本を読んでいる時だけは空想のアルカディア(理想郷)で憩うことができるんだよ。

逃げるは恥だが役に立つ

しかし。社会人になってからの読書は、残念ながら「何かを得るための読書」になってしまいがちなんだよね。仕事に必要だから、とか教養が必要だから、という理由でする読書にはロマンがない。

最強に没頭できる読書は功利から離れた「非現実の孤島」で一人きりでするもの。でもいまや社会に出て現実と悪戦苦闘するおじさんになった僕にはその島に渡る船がない。涙

とはいえ。「どれだけ色んな世界に逃避したか」という経験は、意外にも社会に出てから役に立つ。社会の不条理に直面した時、例えば上司や顧客からパワハラ受けた時に、話を聞いたフリして「半分あっちの世界」に行くことができる。愚直に壁にぶつかって粉々になるより、逃げてしまったほうがいいこともある。

人の言葉や起こった出来事を真面目に受け取りすぎると生きづらい。
どんなエラい人が言った説得力ある言葉も、身に降りかかった苦境も「話はんぶん」で受け取るのがいい。

本で色んな物語、色んな思考のパターン、色んな領域の知識を得ることで世界を相対化するスキルをゲットすることできる。心の持ちようは簡単に変えられないので本を読んで「言葉とストーリーのサンプル数」を増やせば、不条理な現実からスススっと華麗な逃避をキメることができる。

この世界で成功した経験、勝ち取った経験だけじゃなく、別の世界に逃げおおせた経験もまた役に立つ。読書は逃避。そして逃避はロマン。人生にはロマンが必要だ…!

神さまと人をつなぐ山の寿司。柿の葉寿司

鳥取の発酵ツーリズム:
柿の葉寿司(鳥取県智頭町)| 國政勝子さん

お盆の精進落しに食べる華やかな郷土寿司


日本昔話に出てくるような牧歌的な景色。智頭は古くからの林業地だ

日本各地の発酵文化には、それがあまりにもローカルに流通しているゆえ醸造メーカーすらなく、地元のお母さんたちが手づくりで継承しているものも少なくない。今回紹介する鳥取県智頭町の『柿の葉寿司』もその一例だ。

鳥取県南部にある智頭町は、人口6000人強の山間の町。川沿いの集落の小高い丘の上に住む料理名人、國政勝子さんが智頭の柿の葉寿司の伝統を守っている。


桶のなかにギッシリとお寿司を詰めていく

関西でメジャーの柿の葉寿司は、ちまきのように柿の葉でご飯を包んでつくる押し寿司スタイルなのだが、智頭町のスタイルは柿の葉に握り飯を乗せ、さらにそのうえに具を乗せる江戸前寿司スタイル。葉の緑、飯の白、具のピンクが目に鮮やかで可愛らしい。

初夏から秋口までにちぎった柿の葉に、酢で〆た白米と鱒(ます)で握った寿司を載せ、その上に山椒の実や穂など季節の香草をアクセントにする。それを桶に仕込んで何段も重ね、1〜5日間ほど発酵させる。柿の葉と酢によって腐敗を防ぎ、お盆の暑い時期の防腐対策としたのだろう。

写真の通り一度に何十個と仕込むので、柿の葉寿司は親族や村の共同体で集まって食べるパーティ食なのだ。

「いつからこのお寿司があるのかは知りません。私は祖母から教わって、その祖母もまた彼女の祖母から習ったの。そうやってずっとおばあちゃんの味が続いてきたのよ。私も気づいたら50年以上柿の葉寿司を作り続けているみたい」

と勝子おばあちゃん。超絶シャイで可愛いぜ…!

今でこそ一年を通してお祝いの場で食べられる柿の葉寿司だが、元はお盆の終わりをつげる『精進落し』として食べらていた。
(ちなみに現代の精進落しは死者の火葬が済んだ夜に食べる食事のことを指すけれど、元は神事や巡礼、重大な災害などが落ち着いた後に「おつかれ!」という気持ちを込めて食べる食事のことだった)

山深く、肉食を禁じられた土地で、貴重な魚肉と白米をいっぺんに食べられる柿の葉寿司はお盆という夏の一大事を終えた共同体の労をねぎらう「ありがたい山のお寿司」だったのだろう。年に一度のことだから、見た目も美しく、味も酸味と甘味が効いている。智頭のおばあちゃんの優しさが泣けるほど伝わってくる郷土寿司の真髄だコレ!

どうやってつくる/食べる?

▶How to 仕込み
A:柿の葉の上に、酢で〆た白米と鱒で握った寿司を載せる
B:寿司の上に山椒の実や穂など季節の香草を乗せアクセントとする
C:それを桶に仕込んで何段も重ね、1〜5日間ほど発酵させる。

☆発酵しないうちに食べると甘酸っぱいフレッシュな味、発酵が進むと酸味とコクが効いた旨味の強い味に。どちらを選ぶかは人の好みだそう。
☆鱒ではなく紅鮭を使う場合もあるが、味が淡白すぎて鱒のほうが上等とされるらしい。

▶食べかた
・家族や村の寄り合いでみんなでガシガシ食べる

▶食べられている地域
握り飯スタイル:智頭町はじめ鳥取・石川
押し寿司スタイル:和歌山・奈良

▶微生物の種類
主に柿の葉に棲み着いている野生乳酸菌

旅のメモ


柿の葉を集める様子。勝子おばあちゃんは家の近所のものをたくさん集めて料理に使う

郷土寿司はスピリチュアリティと深い関係を持っているらしい。
勝子おばあちゃんによると、智頭には2つの郷土寿司の文化がある。

一つはお盆の精進落しに食べる柿の葉寿司。
もう一つは、正月に歳神さまにお供えするサバのなれずし。

前者はご先祖様が帰った後の「おつかれ!」で、後者は新年を迎える「ようこそ!」だ。

勝子おばあちゃんの話を聞いている時に、僕の母方の実家の佐賀の漁村の文化を思い出した。漁師だったおじいちゃんは、お盆が始まると漁に出なくなる。この時期に海に行くと「ご先祖様に連れて行かれてしまう」ということなのだそう。

お盆の最後の日に海に紙や木でつくったミニチュアの船にお供え物を入れて流し、その儀式が終わったら漁に出て、魚が食べられるようになる。海や川など、水と深くつながった土地において、お盆の終わりに魚を食べることは彼岸と此岸の境界線を引く特別な食事であることがわかる。

かつての地域文化において、お寿司は神様と人の間をつなぐ重要な食べ物だったのだ。


もはや時空を超えた存在といえる勝子おばあちゃん。尊い…!

ちなみに今回の旅は、野生菌でパンとビールを醸すタルマーリーの女将、渡邉麻里子さんにコーディネートしてもらいました。古くからの発酵と新世代の発酵が同居する町、智頭は景色も人もサイコー!また遊び行きますね。


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