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大陸ルーツの面影を残すおかず味噌。湯浅の金山寺味噌

和歌山の発酵ツーリズム:
金山寺味噌(和歌山県湯浅)| 太田久助吟製

大陸ルーツの面影を残すおかず味噌


麹づくりの様子

味噌といえばお湯で溶いて味噌汁にする調味料を思い浮かべるが、ご飯のおともにして食べる「おかず味噌」というカテゴリーもある。和歌山をはじめ近畿・東海で食べられる金山寺味噌もおかず味噌のバリエーションの一つ。

醤油の銘醸地でもある和歌山県湯浅の旧市街に、150年近く金山寺味噌の製造を続ける太田久助の風情のある蔵を訪ねてみた。
何度か食べたことはあったものの、具体的な製法は知らなかった。「せっかくなら麹づくりを身においで」と声をかけてもらって現場に入ってみるとびっくり仰天!金山寺味噌は、米・麦・大豆の3つの穀物を混ぜてそこにコウジカビの種菌をつけて「三種混合麹」をつくっていく。


三種混合麹

普通、味噌は米か麦か大豆のどれか一種を原料に麹をつくる。ブレンドすることがあるとしても二種類まで(ちなみに醤油は大豆と麦の二種混合)。三種全部混ぜる麹ははじめて見たぜ。

さてこの金山寺味噌。
三種混合麹を漬け床にして、塩漬けしておいたナスやきゅうり、ウリ、ショウガ(つまり夏野菜)などを樽に仕込み、さらに山椒やシソなどを薬味として加え3〜4ヶ月発酵させて味噌にしていく。と書いてみたけど、これよく考えると「味噌と漬物の中間」のようなもの。より正確に言えば「漬け床ごと食べる麹の野菜漬」と言えばいいだろうか。


塩漬けにした野菜を麹にあわせる

「味噌」と名がついているものの、既存のカテゴリーでは分類不可能な金山寺味噌。ルーツは何ですか?と旦那さんに聞いてみると、

「もとは800年前に中国で修行したお坊さん(法燈国師)が日本に持ち込んだ発酵食品と言われている。中国の醤(ひしお)の一種、醤菜(ジャンサイ)と呼ばれるものの名残なんでしょうなあ」

と、小さな蔵の一角で突然大陸スケールのエピソードが出てきてそれにも仰天。

なるほど、これは味噌というよりは大陸的な醤(ひしお)の系譜なのであるよ。調味料 or おかずという二項対立に分岐する前の「発酵の旨味が溜まった食べ物」として、ここ湯浅の地でご飯のおともに重宝されてきたんだね。

金山寺味噌は、ご飯にかけて「味噌丼」にするととっても美味しい。お茶漬けにしても美味しいし、お酒のアテにしても絶品。
中世の大陸とのつながりを妄想しながら食べる金山寺味噌、ロマンある…!

どうやってつくる/食べる?

▶How to 仕込み
A:蒸した大豆・米と炒った麦を混ぜ、麹にする
B:麹と塩漬けにした夏野菜(ナス、ウリ等)を混ぜ、山椒やシソを薬味に樽に仕込む
C:数ヶ月樽のなかで発酵・熟成させる

☆夏野菜が出揃ったタイミングで仕込み、その年の晩秋〜春まで発酵させて食べる
☆入れる野菜や味付けは仕込む蔵や家によってバリエーションがある
☆熟成期間は数週間〜半年と仕込む蔵や家によってバリエーションがある

▶食べかた
・ご飯のおともに
・味噌汁には使わない

▶食べられている地域
和歌山はじめ近畿・東海地方

▶微生物の種類
麹菌、酵母、乳酸菌など

旅のメモ

湯浅は日本における醤油醸造の先駆けとして有名。
前回取り上げた小豆島の醤油の文化ともつながりが深く、湯浅の醤油職人たちが小豆島に製造の指導をするために、2つの土地を人が行き来したとの記録が残っている。

熊野古道の一部を成す太田久助吟製周辺の旧市街は、まるでタイムスリップしたかのような不思議な風情を残している。発酵ツーリズムの醍醐味は、こういう素敵な場所でアジアのルーツと深くつながった醸造家たちと出会えること。

太田夫妻のこのポートレート、めちゃ素敵じゃない?


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