富山の発酵ツーリズム:
黒づくり(富山県射水)| 京吉

妖しく黒光りする謎の塩辛

富山の魚介の食文化のレベルの高さは尋常じゃない。街場の回転寿司や居酒屋さんで出てくるものでもめちゃくちゃ美味い。超絶リッチな富山の魚介料理のなかで僕が気になっていたのは、イカの塩辛にイカスミを加えてつくる『黒づくり』だ。こいつで富山のイケてる日本酒を一杯やってみたい…!

と思って山梨から飛騨高山を通って車を飛ばしやってきた富山湾。
江戸時代から黒づくりを製造する京吉さんへやってきた(黒づくりは富山湾一帯の色んなところで食べれるが製造しているメーカーは意外に少ない)。

製造はごくごくシンプルで、イカの塩辛(塩蔵)にイカスミをたっぷり混ぜて数日間発酵させるだけ。しかし発酵中の妖しく黒光りする塩辛のテクスチャーはただごとじゃないオーラを発している。

現場を見た夜に地元の居酒屋さんで黒づくりを食べてみたら、普通の塩辛よりも味にまろみと深みがあり、塩辛さよりも旨味やふくらみが先にくる。つまりめちゃ美味い!こんなにも美味いものが富山ローカルにとどまっているのが不思議でならない。

この黒づくりだけで日本酒をエンドレスに飲める。適度な旨味でアッサリとした富山の酒に黒づくり。この組み合わせは至高のブラック・ヘブン…!

どうやってつくる/食べる?


スルメイカでつくるのがメインだが、富山湾名物ホタルイカでもつくられる

▶How to 仕込み
A:イカの目の部分、硬い皮の部分を外して身を刻み、塩漬けにする
B:半日〜一日ほどしたら塩を洗い、内蔵とイカスミを加えて混ぜる
C:数日〜一週間ほど発酵・熟成させる

☆途中で酒やみりんなどを加えた調味液に漬けることも

▶食べかた
・ご飯のおとも
・酒肴に

▶食べられている地域
富山県

▶微生物の種類
乳酸菌、酵母など

旅のメモ

黒づくりの起源は江戸中期。加賀藩の特産品推進施策の一環として作られるようになったとされる。歴史好きの京吉の旦那さんの語るところによると、当時日本で唯一海外の文化を受け入れていた長崎の魚介加工技術を加賀藩から人を送って研修して、それまで日本ではやられていなかったイカスミを使った塩辛を考案したという。

それってつまり、地中海のイカスミ料理文化なんかとつながっている可能性があるのだろうか?加賀藩の商売上手さとともに海を越えたロマンを感じさせる話ではないかしら?


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