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2017年の読書まとめ。旅とこれからの未来と人類学。

今年は良い本にたくさん出会えた一年でした。
とりわけ知り合いの本に名著が多かったのも嬉しい。というわけで2017年にとりわけ印象深かったものをブログでまとめておくことにしました。
※リテラシーが特殊すぎるのでふだん読んでる微生物の専門書は除外

2017年に印象深かった本はこれだ!

▶アタマ発酵本

・謎床〜思考を発酵させる編集術:松岡正剛&ドミニク・チェン
・魔法をかける編集:藤本智士
・あわいの時代の『論語』:安田登

全く別ジャンルなのに著者と出版イベントで対談したことをきっかけにamazozn上でセット扱いになったサイコーの三冊。

『謎床』は古代文明からITの最先端まで膨大なトピックスが高速移動しながら最後は発酵の世界に辿り着くという前代未聞の対談本。ドミニクさんと僕はお互いの本が出るちょっと前から夜な夜なチャットで情報交換していたので『謎床』と『発酵文化人類学』は個人的には姉妹本のような位置付けです。ちなみに青山ブックセンター企画の『100人がこの夏おすすめする一冊』フェアでは僕もドミニクさんも選者に選ばれてお互いの著書をオススメし合うという相思相愛っぷりでした。笑

藤本さんの『魔法をかける編集』は全国60ヶ所以上を回る出版ツアーの時期が僕とかぶっていたこともあり、各地でトークを共演しました。編集という定義を拡張し、日本全国のローカルに生きるニュージェネレーションを金八先生のごとく励ます魂のこもったマスターピースです。

安田さんとの出会いは今年のハイライトの一つ。発酵と能の世界が代アジア的世界のなかで共鳴するというスゴい発見がありました。『あわいの時代の「論語」』は安田さんの古代文字に対する博覧強記があますところなく炸裂、そこから人類のシンギュラリティまで見通すという古典の入門書のフリしたリーサルウェポンのような本。余談ですが僕が安田さんと対談したのを知ったヒラク母が「私昔からのファンなのよ〜」とウキウキでした。

リスペクトすぎる著者のお三方とは2018年も色んな企画でご一緒することになりそうです。

・アタマ発酵本。発酵文化人類学から生まれた関連本セット販売企画やるよ!


 

▶知的好奇心ドライブ本

・21世紀の民俗学:畑中章宏
・数学する身体:森田真生

・臨床の知とは何か:中村雄二郎
・建築という対話:光嶋裕介

数学や民俗学、建築など様々な専門領域から世界の捉えかたを深める素晴らしい本に出会えた一年でした。

フジテレビの収録でもご一緒した畑中さんの本はポケモンや宇宙葬など21世紀の現象を民俗学的に解釈する楽しい一冊。

『数学する身体』はチューリングと岡潔という二人の大数学者の思考から数学を哲学的に考察する森田さんの新鮮な視点がとても気持ちよかった。

哲学の大家、中村雄二郎さんが30年近く前に書いた『臨床の知とは何か』は、ガリレオ以降の近代科学のパラダイムの虚構性を暴くハードコアな本。「臨床の知」の方法論の延長線上にあるのが僕の『発酵文化人類学』であることに事後的に気づいてビックリ。

光嶋さんの本は、従来の建築家のエッセイとは違う「建築することで人は何を感じ、学ぶのか?」というパーソナルな視点がこれまた新鮮(前の世代の建築家って壮大な方法論の話が多いからね)。光嶋さんとは近々会う約束をして今から楽しみデス。


 

▶旅する人類学

・「その日暮らし」の人類学:小川さやか
・謎のアジア納豆:高野秀行
・幻の黒船カレーを追え:水野仁輔

・バウルの歌を探しに:川内有緒
・旅する音楽:仲野麻紀

世界各地に赴いて奇想天外な世界を見せてくれるニューウェーブ人類学に熱狂したぜ!

スタンダードブックストアで対談した小川さやかさんの本は「マチンガ」というアフリカのストリート商人の研究から進歩主義のカウンター的世界観を提示した衝撃的すぎる一冊(本人のキャラも衝撃的)。刮目すべきはケニアのスマホ小額決済サービス「エムペサ」の考察。21世紀における野生の思考を活写した楽しい人類学本です。

母校早稲田の企画で対談した高野秀行さんは大学生からの大ファン。大学の先生では絶対にできないやり方でアジアの納豆文化を描く『謎のアジア納豆』は発酵本における金字塔になること間違いなし!

年末山梨のイベントでご一緒した東京カリ〜番長(カレースター)の水野さんの新著は、日本のカレーの起源を文化人類学的に探る痛快すぎる内容。近々本格的にカレー文化人類学に挑戦するぞ!と山梨で盛り上がりました。楽しみだぜ〜!

来年我が家の敷地で小屋づくりプロジェクトをスタートする気鋭のノンフィクション作家の川内さんの『バウルの歌を探しに』は、バングラディシュに放浪の旅芸人を探しにいくルポ、なんだけどまるで旅行文学のように読めるアーティスティックな本です。川内さんのこの文学的才能のほとばしり、何なの?

河口湖で出会ったフランスを拠点に活動する仲野マキさんの本は自身の「旅する音楽家」っぷりが詰まった楽しい一冊。アフリカや中東など、ふだんなかなか知る機会のないリアルローカルな音楽の世界にどっぷり憑かれます。

どの本も知らない世界を紹介してくれるだけでなく、著者の世界の見方やものの考え方が濃厚に詰まっていて読み応えありますぜ。


 

▶愉快&深すぎマンガ&小説

・盆の国:スケラッコ
・あさひなぐ:こざき亜衣
・ハルシオン・ランチ:沙村広明
・猫のゆりかご:カート・ヴォネガット
・キッズファイヤー・ドットコム:海猫沢めろん

今年は例年になくフィクションもたくさん読みました。
2017年に最も耽溺したマンガは『盆の国』。8/15が無限ループする世界のなかでご先祖さまが見える特殊能力を持った女の子が彼岸へ旅するぶっ飛びな世界観と夢幻能的なあわいの世界と切ない青春恋愛が共存する稀有なストーリーにドハマリして4回くらい読み返しました。

薙刀に青春をかける女子高生たちの物語『あさひなぐ』はバトル系少女マンガの最高峰とも言えそう(連載は青年誌なので厳密には少女マンガじゃないけど)。特に15巻以降からストーリーが深くなっていき、主人公の旭ちゃんとライバル一堂寧々ちゃんの対決は哲学すら感じます。

『ハルシオン・ランチ』は宇宙からやってきた何でも食べる美少女がひたすら嘔吐してワケわからない物質を生成し続けるというシュールすぎるマンガ。本来なら本筋に関係ない小ネタからストーリーが展開してしまう初期ブニュエルのシュルレアリスム映画みたいでクセになります。

大学生の頃に好きだったヴォネガットを十年以上ぶりに再読してみたらた思いがけず自分がヴォネガットの世界観と思考方法に影響を受けていることにビックリした一年でもありました。

『キッズファイヤー・ドットコム』は今年読んだ小説のなかでぶっちぎりに面白かった!「ホストが捨て子を育てるクラウドファンディングサービスをつくる」という奇想天外なストーリーに新世代の倫理観と人類愛が込められた傑作です。

ちなみにヴォネガットの『猫のゆりかご』と続けて読んだんですが「奇想天外のなかに正論を隠す」という方法論と「笑いのなか見え隠れするほろ苦さ」という読後感が共通でした。マジの話です…。


 

▶これからの未来を照らすソーシャル本

・壊れた世界で”グッドライフ”を探して:マーク・サンディーン
・僕らは地方で幸せを見つける:指出一正
・「小商い」で自由にくらす: 磯木淳
・恐れるなかれ:ビノーバ・バーベ&サティシュ・クマール
・なめらかなお金が流れる社会:家入一真
・ReBuild New Culture:Rebuilding Center Japan

僕のキャリアの原点であるソーシャルデザイン関連では、新機軸の価値観が提示された一年でした。

greenz.jp編集長のナオさんから「ヒラク君は絶対読んだほうがいいよ!」と大プッシュされた『壊れた世界で”グッドライフ”を探して』は、正義を目指して生きる苦しさと人間らしい暮らしとは何か?という大問題に著者が等身大でもがき苦しむ切実さが胸に迫ります。

ソトコト編集長の指出さんの著書も出色でした。長年ローカルの世界を見続けてきたからこそ言葉にできる明快なキーワードとポジティブさが本当に素晴らしい。

東京時代によくいすみから我が家に泊まりにきていた磯木さんの初の著書は、磯木さんらしい丁寧な洞察力でユニークないすみのコミュニティに迫った編集力高い一冊です。

イギリス・トットネスで薫陶を受けたサティシュさんとその師匠ビノーバさんの本はBRUTUSの「危険な読書」でも紹介した印象深い一冊。ガンディーから連綿と続くインドの「メタメッセージとしての思考を込めたアクション」の真髄が詰まっているぜ。

春に福岡、年末に渋谷で対談した家入さんの本もサイコーでした。家入さんは思想ベースのWEBサービスをつくれる日本でも稀有な事業家ではないでしょうか。

会社案内をつくるはずがボリュームありすぎて本になってしまったリビセン本。新しい時代の美意識とデザインセンスが詰まったインスピレーションありすぎの内容です。詳しくはこのブログでどうぞ。

・新しいデザインの美意識の話をしよう。リビセンの本を読んで考えたこと


 

▶食と微生物を深める教養本

・酒の科学:アダム・ロジャース
・食の人類史:佐藤洋一郎
・パンの文化史:舟田 詠子
・マイクロバイオームの世界:ロブ・デサール、 スーザン・L. パーキンズ

このへんは僕の専門。もうコメントする力を使い果たしたので興味がある方はとりあえず手にとってみてください。読みやすい本ではないんだけど、全部めちゃ面白いよ。

【追記】このエントリーで取り上げたもの以外にも面白かった本がたくさん!全部紹介しきれない〜。そして今年はかつてないほど大量に献本が届いた1年でした。時間はかかりますが拝読しているので時期を見てまたコメントをアップする予定です。

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