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酒とファッションはよく似ている。トレンドという逃れられぬ宿命。

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写真は去年カフェ・フェルマータで開催した利き酒イベントのラインナップ。

今年の農大の研究テーマは「お酒の醸造」。
なので、お酒を「じっくり考えながら飲む」ようになりましたた。

とりわけ最近よく飲むようになったのは日本酒。
おなじみ千葉の寺田本家の自然酒をはじめ、宮城の山和酒造、山形の渡會本店や竹の露、愛知の澤田酒造、長野の中善酒造等など、ここ2~3年で出会ったナイスな酒蔵の日本酒を楽しんでいるのだぜ。

トレンドという逃れられぬ宿命

でね。
気づいたんだけど、酒とファッションはよく似ている。

喉を潤すなら、水を飲めばいいわけで、暑さ寒さを防ぐんだったらわざわざ高いブランドの服を着る必要はない。
でも僕たちはお酒を飲んで、お気に入りの服や雑貨を身につけて楽しむわけじゃん。

ここには「美しさ」や「愉しさ」という付加価値があるわけなのだね。

それでだな。この「付加価値」というヤツにはトレンドという宿命がある。
バブル期のDCブランドブームの時に流行った「肩パッド入ったスゴいかたちのギャルソンのジャケット着たお姉さん」とか、「アルマーニのソフトスーツを着てセカンドバッグ持ったお兄さん」は、当時は大金をはたいた最先端のお洒落だったのかもしれないけど、今見ると「ああ、そういう時代だったのだなあ…」と微妙な気分になるでしょう(あ、ワタシ/オレのことだ!という世代の人いたらごめんよ)。

日本酒にもこういう現象があるのね。
80年代終わり〜90年代の「純米酒ブーム」の世代のお酒に、この「バブルファッション感」を感じるのですね。「うん、美味しい…けどなんか『今』じゃない」てな感じで。

これね、そもそも酵母菌の選び方が今と違っていたりするんだけど、そういう難しい話を抜きにすると、「味覚のトレンドが変わった」ということだと思う。
「純米酒ブーム」の頃のお酒は、系譜でいうと「高度経済成長期に量産された、甘ったるい大衆酒」の反動で生まれた。「淡く麗しく、辛口でキリッとしたお酒」。ボルドーの熟成ワインのような「神の水」的な味を目指したのね。

でさ。この味って「わかりやすく高級」なんだよね。「ウマい酒呑んでるなあ、オレ」という気持ちになるわけ。加えて「この味は子供にはわかるまい」という優越感も持てる(高いお金払って「水」飲むわけだからさ)。

それはそれでよかったと思う。系譜としてはきちんと大義があった。
なのだけれども、実はこの頃のお酒には弱点があってだな。「合わせる食事を選ぶ」ということなのですよ。
端麗辛口の純米酒って、割烹料理とかお寿司とか「ハイソな和食」と一緒に飲んで真価を発揮するのね。つまり、「ちゃんとした温泉宿」とか「ヒノキのカウンターの料理屋」みたいなシチュエーションで飲む酒だということ。

「僕たちの日本酒」が欲しい!

「若者の日本酒離れがうんぬん…」というのは、このあたりが原因だとヒラクは思う。
僕ら、こういうシチュエーションそんなに遭遇しないもん。デザインホテルとかゲストハウス大好きだし、イタリアンとかエスニック料理のレストラン行くし、何よりお家で友達や恋人と一緒にご飯つくって飲みたいでしょ。

家でもし和食をつくったとしても、割烹料理とかお寿司とか作るかって話なんですよ。

つまりだな。
僕たちの日本酒」というのが少ない。圧倒的に少ないのだよ。
「僕たちの食卓」にしっくりくる日本酒と出会いたい、と僕はずっと思ってきた。
「高級さ」よりも「親密さ」を感じさせてくれる日本酒。そいつを呑みたいのだぜ。

そして最初に名前を挙げたのが、「僕たちの日本酒」と感じられるようなお酒なのです。肉じゃが的なカジュアルな和食に合うし、銘柄を選べば洋食やエスニック料理にも合わせられる。端麗辛口な要素もありつつ、香りも味わいもお米とこうじの旨味をしっかり残している。だけどサラリとして、どこかお洒落なわけさ。

ヘンな例えだけど、マーガレット・ハウエルの白シャツのようなエヴァーグリーンな上質感、あるいはミナ・ペルホネンの手触りの良いラブリーさ、あるいは今一緒に服をつくっているenricaの柔らかな色気、そういう「上質さ」と「親密さ」が同居しているようなクオリティ。これが今のトレンド。

じゃあこういうお酒をつくれるのは誰なんだって話だよね。
答えは決まってる。いいファッションが理解できる「お洒落醸造家」さね。

新しい美意識の潮流をちゃんと身体で感じている、そういう人のつくるお酒がいいよ。

ということで、最近ちょくちょく聞かれる、

「どうしたらワタシが好きになれるような日本酒を選べますか?」

という質問に対しては

「自分と世代の美意識の近い人のつくる酒がいい」

とお答えしときます。

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