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自分のセンスを育てる。

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定期開催している『こうじづくり講座』のおはなし。

米麹をつくるときに、毎回必ず「お米は玄米でできますか?」「無農薬米のほうがいいですか?」という質問があります。

それに関しては、僕は「まず普通の白米からはじめてください」と答えています。そう答える背景には色々考えがあるので、ブログでまとめておきます。

まずは「ふつう」からはじめる

こないだの雑誌、SPECTATORの特集でも図として整理しておきましたが、僕のワークショップに来てくれる人には「オーガニック志向」の人が多くいます。で、僕のライフスタイルもおそらくその傾向が強い。

・「原点回帰」でも「進歩」でもなく。テクノロジーへの「良い距離」を考える。

なんだけど、僕は自分のワークショップでは「そのへんのスーパーやホームセンターで売っているもの」でできるように組み立てています。つまり「こだわりのない材料で再現できる組み立て」になっている。

それはなぜなのか。一つは「そっちのほうがハードル低くて始めやすい」という理由。もう一つは「ふつうのクオリティから始めたほうが、自分のセンスを鍛えられる」という理由。

この2つ目の理由、ワークショップではちゃんと話す時間がないのできちんと説明しますね。

微細な違いを感知する

冒頭のお米の話に戻ります。
僕、いくつかのお米で麹を作り分ける実験をしてみました。

量販店で5kg1,500円以下で売っているものと、その三倍くらいする値段の無農薬栽培の有機米で、同じ方法で麹を仕込んでみたんですね。

で、結論はどうだったかというと「どっちでもほぼ同じ」ということでした。
発酵菌によっては農薬に敏感なヤツもいるのですが、麹菌が意外に鷹揚なヤツで、どんなお米でも元気に繁殖してモコモコした麹になります。

こうじづくり初心者は最初失敗することが多いので、あんまり高いお米でやるとガッカリするから、最初はまあふつうのお米でやるほうがいいんでないかと思うのね。

さて。ここからが本題。
お米の種類による麹のクオリティは「ほぼ同じ」と言いましたが、それはあくまで「ふつうの人にとって」の話です。発酵デザイナーの感覚でいうと、そこには有意な違いがあります。ただ、それは僕が発酵の研究をしているからわかる「微細な違い」なわけですよ。
(素人にはマイルスとディジーガレスピーの違いなんてわからんし)

「それはつまり、微細な違いだから無視していいってことですか?」

いや、逆です。「微細な違い」がわかるようになるのが楽しいってことなのさ。

「???じゃあいいお米使ったほうが良くないですか?」

そうねえ。
いいお米ってのは、能書きじゃなくて自分の舌で感じなきゃあいけない。最初っから「オーガニック」とか「天然」という能書きから入ると、「微細のクオリティの違い」を自分で発見する機会をロストしてしまうのです。

自分らしいセンスを、発酵を通して学ぶ

発酵の道を深めるとはつまり、「自分の身体的センサーを鍛える」ということです。
人間の味覚って、何が美味しいっていうグルメ的は話ではなくて「生きるか死ぬか」のシビアなジャッジ力なわけです。同じ牛乳であっても、自分のカラダにいいヨーグルトになっているのか、それとも食中毒になる腐った物質になっているのか、それは自分の舌で判断する。

自分で繰り返し麹をつくって、甘酒やお味噌を仕込むと「どんな人の味覚にもなじむような工業的な調整」がなされてないガチな味になるので、これによって眠っていた「発酵センサー」が蘇っていく。これがたいへん楽しく、有意義なわけです。

・【2/6】発酵を止めないで…!生きている菌を味わう、利き発酵ワークショップ

このセンサーを鍛えるのに、逆説的ですが「ごくふつう」から始めるのがいいと僕は思う。そこからはじめて「何かものたりないな」とか「こっちのほうが自分にしっくりくる」という微細なセンスを育てていってほしいと思います。

その結果たどり着くのが例えば「オーガニック」とか「天然」であれば、それがその人にとっていちばんしっくりくるわけです(別に他のキーワードでも全然かまわない)。
ほら、能書きだけでモノを判断していると、それぞれの正義がぶつかる宗教戦争みたいになるでしょ。そうではなくて「自分の感性でしっくりくるもの」であれば、それはもう音楽の好みみたいな話なので「マイルスが神だと言われてるけどさあ、ディジー・ガレスピーもマジでヤバいの知ってた?」みたいな楽しい話になる。

僕は昨今の発酵ムーブメントのただなかにいるので「食」というものの周りにいっぱい社会的な要素がくっついているのは理解している。そのうえで僕は、食や発酵を「文化として愛でる」というのが好みなんだよね。自分のセンスを育て、そこから表現されるものをシェアして、各自のセンスで楽しむ。

オーガニック志向のひとも、おいしいもの好きも、流行に敏感なシティガール/シティボーイも僕はウェルカムします。みんなで楽しく遊ぼうぜ。待ってるよ。

【追記】情報が簡単に検索できるような時代の特徴の一つは「自分の実感のまえに能書きをゲットできる」というところにあり、それは有益である一方、「自分の感覚でわかっていく」という学びのダイナミズムを奪っているとも言える。興味のある方はこんなエントリーもご一読あれ。

・「わかる派」と「わからない派」。
・世の中には二通りの人間がいる。「一流」を見つける者と待ち続ける者だ

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