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微生物染色の極北、藍染(あいぞめ)の秘密に迫る!

vol22

『発酵文化人類学』の出版記念企画として、雑誌ソトコトの連載バックナンバーを無料公開!  なぜそんなことをするかというと、書籍版は過去の連載記事を全部無視した「完全書きおろしREMIX」だからなのだ!

▶微生物染色の極北、藍染(あいぞめ)の秘密に迫る! | ソトコト2017年2月号掲載 

「発酵」と言って思い浮かべるのは食べ物やお酒ですが、実は食以外にも発酵技術は大いに活用されています。例えば、日本の植物染色の代表格である藍染。あの独特のインディゴブルーは、微生物の働きによって生まれるのだな。

藍染ってそもそも何?

藍染とは、蓼藍(タデアイ)やインド藍などの「藍の葉」を使って深いブルーの色味に布を染める植物染色。その起源は古代エジプト文明まで遡り、日本には奈良時代前後にシルクロード経由で入ってきたといいます。インド起源と中国起源が二大ルーツで、日本に入ってきたのは蓼藍を使う中国ルーツで、江戸時代に徳島(阿波)で大きく発展しました。他にも北海道や沖縄には独自の藍染カルチャーがあります。様々なバリエーションのある藍染ですが、基本となる徳島スタイルの方法論としては以下の通り。

・藍(アイ)の葉をコンポスト状にして固めたものを、石灰液のなかで発酵させた染色液で布を染める。

もっと原理的に言えば「藍の葉に含まれるインディゴ色素を、発酵のちからによって布に移す」ということ。
藍染は、他の草木染めと比べて濃厚で深い風味と、色落ちしにくい特性があります。その秘密はズバリ「発酵のちから」なのだぜ。

インディゴ色素を取り出す

通常の草木染めと違い、なぜ藍染に発酵菌が必要とされるかというと、染色するための「インディゴ色素」が植物の外に出てこない「引きこもり色素」だから。そこで発酵菌がカウンセラーのごとく、色素を植物の外に引っ張り出すのさ。

それでは順を追って説明しよう。まず、藍の葉をカラカラに乾燥させて丸めます。酸素と植物酵素の力により、インディゴ色素を分離するんですね。この乾燥葉を丸めたものを「すくも」と言います。

次に、このすくもを灰汁やふすま、酒などを入れたプールのなかに入れ、発酵させます。ここにいるのは「インディゴ還元菌」と呼ばれる特殊な菌で、石灰によってつくられるルカリ性の環境で繁殖します。

この菌の働きによって、藍の葉のなかに引きこもっていたインディゴ色素が、プールのなかに溶け出していきます。

最後に染色。プールのなかに布を浸し、その後、野外で布を干し…というプロセスを何度も繰り返します。野外で干すのは、布を酸素に触れさせて「酸化」させるため。アルカリ性になって動けるようになった色素を、酸化させることでもう一度布のなかに閉じ込めるわけです。

例えるならば。「引きこもりをシステムエンジニアに就職させて、今度はオフィスに引きこもらせる」みたいな状態ですね。

藍染はツンデレ発酵である

藍染の特性は「濃厚な色味で、色落ちしにくい」であると定義しました。
これが可能になる理由は「染めにくい色素をあえて使う」という発想にあります。インディゴ色素は、基本葉っぱから出てこない。だから一度他の物質(布)に移ると、強力に定着するわけです。

いい年になるまで恋愛経験無しのエンジニアが一度濃厚に恋をすると、もう目移りしない=脱色しない、という原理になるわけなのですね。平匡さん…!

 
【追記】伝統的な藍染は発酵プロセスを使ってインディゴ色素を取り出しますが、最近は化学作用で直接色素を取り出す方法がメインに。とはいえ日本のあちこちに、発酵藍染の工房が今でも元気に活動しています。

 


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