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価値を育てる、縁を続ける。2016年の振り返り

新しいことをやることは、自分にとっては有益かもしれないが、外から見るとそうでもない。
同じことを長いあいだ繰り返しやり続けることで、ようやく「ヒラクくん、最近何かやってみるみたいだね」と社会に認知される。

年始に「今年は山に篭って微生物研究するぞ!」と宣言した時に決めたことがあってだな。
それは何かというと、

・新しいことにチャレンジしない
・できるだけ社交の場にでない

ということでした。
これは言い換えれば「クリエイターとしての自分のキャリアに待ったをかける」ということで、短期的な自分の欲望よりも、今後10年くらいに自分の身の振り方を客観的に考える機会にしたかったのだな。

・僕は山に篭って菌になります。発酵デザイナーより大事なお知らせ

価値を最大化する

今年は「前にはじめたことを継続して、価値を高める」ということに注力するぞ!と決めた年で、わかりやすい例が定期開催している『こうじづくりワークショップ』。去年1月からはじめて、今年末でほぼ1,000人に麹(こうじ)の作りかたをレクチャーしました(二年でなんと70回以上やっている)。

でね。
最初に初めた時は、物珍しいからメディアの取材とかがけっこうあった。

だけど、そのうち物珍しさもなくなって外からの興味はなくなる。だけど、麹を作りたい人たちの熱意はどんどん高まってコミュニティになっていく。そのうちに口コミが高じて1,000人に噂が広がり「ブームからムーブメントへ!」とかテキトーに言っていたのが現実になった。

そうすると、また取材の依頼が来て、しかも最初の頃とニュアンスが違ったりする。

「最近、麹を手づくりするのが若い人のあいだにトレンドになっているようですけど…」

「麹を手づくりする文化を広めようとしているヘンな奴がいるよ」というところから「麹を手づくりするのがトレンドになっているらしいよ」というふうに、同じ事象を扱うのでもその前提条件が劇的に変わってくる。
何かを「始める」のは勢いでできるけれど、「文化として根付かせる」のは根気と運と時間がいる。

この「思いつきではじめる→文化として定着」のステップが価値を育てるというプロセスだ。

続けること、掘り下げること

思えば今年は、この「継続する」「価値を育てる」ということに心を砕いだ一年だった気がする。

去年は幸いにも「発酵デザイナー」という存在が色んな人に認知してもらえた幸運なタイミングだった。でもそれは「何か面白いことやってる奴がいるよ」という、僕という存在にくっついているレアなキーワードが認知された結果でしかなかった。

「何か面白そうじゃん」と突っつかれて、実際の中身がペラッペラだったらお笑い草でしかない。「いじられているうちに実力がつく」という考えかたもあるかもしれないが、僕はそんなに柔軟じゃないし、成長もはやくない。

・僕がオワコン化する理由。報酬は今でも未来でもなく、過去に支払われる。

なので、「同じことをしつこく続ける」ということと「その裏で新しいことをインプットする」というあわせ技を実践することにしたのね。
(続けることは0→1の時ほどエネルギーがかからないので、その余裕をインプットに回すというみくりさん的小賢しい算段)

・【発酵デザイン入門】暮らしに関わる微生物&バイオテクノロジーの初歩を楽しく学ぼう

「新しいことを次々にアウトプットする」というのはやってる本人は楽しいかもしれないが、受け取る側にとっては混乱を招く原因になる(「あの人何やってんの?」という混乱)。

自分が期待するほど他人に自分のやっていることの文脈は理解されない。
情報量を増やすことよりも、情報量を絞ることのほうが自分の活動は理解されやすい。
(1年かかってようやく気づいた。おせーよ)

外から見ると、2016年の僕は「アクティブなひと」に見えたかもしれないが、内実は逆だ。
2016年以前にはじめたことが、しつこく継続されることによって他人になんとなく認知されるようになった。新しいことをやらなかったので「続けていたものが認知されるプロセス」に余計なノイズが入らなかった。

ラジオ番組を1年以上続けて身をもって知ったのだけど、認知には時間がかかる。即効性のある広告的方法論もあるかもしれないが、同じくらい即効で忘れられる。
「リードタイム」を折り込んで自分の仕事を組み立てないと、何も認知してもらえてないクセに「あれこれ新しいことをやっている」という自己満足に浸っている人生になってしまう。

僕はそれは嫌だ。せっかく一生懸命仕事をするのだから、社会に足跡を残したい。

来年は、もう一度外へ

デザイナーは、仕事の性質上「新しいものをつくり続ける」という宿命を背負っている。
なので、「同じことを繰り返す」ことをやると、すごくストレスがかかる。

「…なんか、ちゃんと仕事してなくない自分?」

さらに僕は中途半端に社交的で、人に褒められるとすぐ調子に乗る性格なわけで。イベントで話したりすると「ヒラクさん、面白いことやりましょうよ!」とか声をかけられると図に乗る。そして中途半端に何か思いついて新しいことをやってしまう。

このスパイラルを断ち切るには、そもそも社交しないことだ!
ということで、調子に乗りやすい自分をいましめるために人前に出る仕事を断りまくった。
しかしこの「断りまくる」ということにもストレスがかかる。

ということで、基本的に充実していたものの、たいへんのストレスを抱えた一年でもあった。

2017年は内にこもるのをちょっと開放して、また外へ出たい。
いっぱい仕事したいし、みんなに話したいこともいっぱいある。

来年は微生物界から人間界にカムバックするぜ!
街で見かけたら、邪険にしないでね。

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