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ドラッカーに見るポスト資本主義の困難と、資本あるけど使い方わからないよ!問題

ドラッカーの話の続き。
前回は「ファシズムは人民の福利厚生である」というスゴい話だったけど、今回は「資本主義はすでに終わっている」というもっとスゴい話をしてしまうぞ。

・ドラッカーに見る全体主義の効用と、自由な社会の意味

ポスト資本主義とは何か?

ドラッカー後期の主著「ポスト資本主義社会」のメイントピックスは、「18世紀に勃興した資本主義社会はすでに終わったのではないか」というものだ。

共産主義や社会主義や無政府主義が打倒する前に、システムそれ自体の変質により資本主義は終了したんでないの?という仮説を立てるのだが、その根拠は

・先進国で最も資本が蓄積されているのは年金機構である

というイシューにある。
人文系の人だと「え?それに何の意味があるの?」と思うかもしれないが、「ファシズムが自滅する理由は外部資源の獲得コストの増加である」と同様の慧眼だとヒラクは思う。

つまりね。
資本主義の定義を「資本家が資本を所有し、産業をマネジメントする」とするならば、資本だけがあって、所有者たる資本家がいない社会はもう資本主義じゃなくない?ということなのであるよ。

だって考えてもみてごらんよ。
年金機構って、その投資運用方法を一手に引き受けるCEOもいなければ、筆頭株主によるコミッティーもない(そもそも株式会社じゃないし)。
オーナーシップがない機構なのにどんな大企業や銀行よりも資本を持っている事態は、従来の資本主義の枠組では説明つかない。だけどそれを何といっていいかわからんから暫定的にポスト資本主義としとこうか、というのがドラッカーの言いたいことだ。

そんでね。
ポスト資本主義において、資本主義が抱えていた問題もまた変質したとドラッカーは考察する。20世紀前半までの資本主義においての問題は「資本家が資本を独占しすぎて労働者が搾取される」という、富の再分配のシステムエラーだったが、「年金機構に資本がすげー蓄積される」という事態は、実はそのシステムエラーが是正されてますけどどうよ?ということなのね(年金って、労働者が労働しなくなったときの生活の担保ってことだし)。

マルクスの言う「階級闘争(←ちなみに僕のブログ読んでる人って、こういう言葉知っているのかしら?)」にかわって登場した新たな問題は。資本の運用の仕方がよくわからなくなっちゃった(>_<)ということだ。

資本はある。しかし使い方がわからないよ!問題

さてここから僕の話。
このドラッカーの「ポスト資本主義」を読んで「わかる〜!超わかる〜!」と、思わず膝を叩いてしまったね。

なぜかというだな。
ここ数年来、僕は日本における「相互扶助組織」と一緒に仕事をしてきたからなのさ。
例えば「信用金庫」や「協同組合」なんかは、ドラッカーの言う「年金機構」と非常によく似た仕組みになっている。中小企業や個人がコミュニティ単位で資本を積み立て、ある特定の目的(融資とか商品の協同購入とか)に運用する。少人数の株主会と経営陣で経営する株式会社ではなく、とことん「ボトムアップ」でできている。

初期資本主義の「超トップダウン」に対抗するために生まれた「超ボトムアップ」の方法論は、社会のマジョリティの支持を得て気づけばそんじょそこらのグローバル企業も敵わない資本の蓄積に成功したのであるよ(その規模を知ったときは驚いた。信用金庫においても生活協同組合においても、兆単位のストック!がある)。

さて。ではこの蓄積された資本と事業モデルを運営して得られる利益をどう再投資するのか。
自分で事業をやっている人なら自明なことだけど、事業が儲からない時は正解はひとつしかない(なんとしてでも利益出す)。ところが儲かった時の正解は無数にある(人を育てるか、設備に投資するか、お金をプールするか)。正解が無数にあるなかで、選べる答えに限りがあるとしたら、そこには「決済者」という者が必須になる。

「まあ皆さん色々な考えがあるようですが、まあここはひとつ私の顔を立ててもらって、ボーナスは10%アップで勘弁してもらってですね、そのかわり新工場立てて地域の皆さんを雇用するということで…」

あるいは

「3兆円でCPU開発メーカーを買った!安い買い物ですよ、わっはっは」

となるかは決済者のパーソナリティ次第だが、とにかくこのように「最終的に腹をくくるヤツ」がいないと、適切な投資はできないのであるよ。

変化が激しい時期には特に。

未知に対するチャレンジの阻害

明確なオーナーシップがない状態でも事業の拡大が図れるのは「社会に変化が少ない時期」に限られる。前述の展開でいえば、

「本年度の利益ですが、引き続き前年度をベースにした投資を、ということで理事会も全員一致となりまして…」

ということで、既に確立したモデルの維持と微調整で問題が出ないこともある。
(余談だけど、親父世代の高級サラリーマンと飲んでた時に「オレが若い時は、新しいことをやりたいやる気のあるヤツは、上司に高級料亭とかキャバレーとかに接待されて仕事への情熱をガス抜きする慣習があったよ」という話を聞きました。なるほど、事業が上手く行っている時は拡大再生産モデルが正解なのだね)

ところが既存のモデルが通用しなくなった時はいかがであろうか。
今までのものとは違うモデルの構築に着手しなければいけないのだが、この「未知のものへのチャレンジ」というのは満場一致の賛成は望むべくもない(「それで上手くいく確証はあるのかね?」という詰問に反論できないし)。

かくして今まで巨大な成功を収めた、相互扶助組織モデルは足踏みせざるを得なくなる。ボトムアップ型は拡大再生産には最強だったが(おバカな経営者や株主の独裁を防げるし)、変化の時期には一転して「詰み」の状況が訪れる。

話をドラッカーに戻す。
ドラッカーが『ポスト資本主義社会』を書くきっかけは、日本の企業文化の分析にあった。ドラッカーには日本の企業経営は、組合組織のような「相互扶助コミュニティによるマネジメント」に見えたらしい。トヨタ式カイゼンメソッドと、組合的マネジメントの合わせ技が日本の急速な経済発展をもたらしたが、搾取されていた労働者がなべて「中級サラリーマン」に移行することで、「あ、資本主義終わったわ。これからどうしよ?」という停滞状況を発生させるとドラッカーは予見した。

資本が主役でなくなった社会においては、資本を正しく使いこなす「知識」が最大のリソースになり、経済における最大の価値は「資本から生まれる生産」ではなく「知識から生まれるイノベーション」である。そのために、社会の投資は何よりも知識を生み出す教育に向けられなければならない、というのが『ポスト資本主義社会』の結びであるのだが。

(さて日本はドラッカーの言うとおり、知識に投資する社会にアップデートされたでしょうか? The answer is blowin’ in the wind.)

投資か、さもなくば接収か

ということで。

日本における相互扶助組織及び相互扶助型システムで経営してきた企業の皆さまはだいぶ困っている。
(でなきゃ僕みたいなヤツのとこに相談にきたりしない)

イノベーションが必要なのはわかっているのだが、それを実行するための知識と意思決定システムがないのであるよ。ドラッカーが危惧した「膨大に蓄積した資本が退蔵される」というケースに見事該当してしまっている。

これから「生産人口が減る&政治が混乱して経済政策が底抜けになる」という激重いダブルパンチを受けるにあたって「これまで積み立ててきた資本」の適切な運用は死活問題だ。

…という危機感を持つことを、このエントリーを読んでギクッとした組織の皆さまにオススメしたい。

それはなぜか。
もちろん事業の発展とコミュニティの維持のために必要だからなのだが、実はそれだけではない。

オーナーシップのない資本は、国家施策のための原資として転用される可能性が高いからだ。

これまで国策としてきた経済発展に陰りが見えた時に、過剰な支出の帳尻を合わせるための「埋め金」がいる。国債発行に限界が見えたら次はドラッカーの指摘通り「年金資本」になる(ていうかもうこれは現実になり始めてるな)。
年金というのは、本来の建て付けでは国民の社会福祉以外に使ってはいけないのだが、オーナー不在のためにお門違いの不正運用に抵抗することができない。

国家の財政が弱体化していくほどに、年金をはじめとする各種「積み立て資本」の自立性を剥奪して流用しようとする流れは強まっていくだろう。それでもマトモに使ってくれるならまだマシだが、行政機関も僕が見るかぎり「ギャグか!」と突っ込みたくなるほど意思決定システムが混乱しているようなので、適切な運用というより下手くそなカジノみたいな場当たりな浪費に終わる気がしている(ていうか場当たりな浪費しているから流用しようとするのか)。

なので、今のうちに先人たちが「相互扶助システム」によって積み上げた資本のオーナーシップを取り戻すトライアルを、各組織の皆さまがしっかり取り組む必要があると僕は強く感じている。

「そんなこと言われても、いったいどうすりゃいいのかしら?」

お答えしよう。
greenzにおのっちさんという優秀なビジネスプロデューサーがいるから相談してみるといいと思いますぜ。
(僕、今やっている仕事だけで目いっぱいだし)

日本の未来は彼の肩にかかっている。
頼んだ!

 

【追記】ちなみにヒラクが仕事で関わった、コープ九州事業連合クリエイティブチームやコープこうべの本木さんチーム、多摩信用金庫の長嶋組は「新世代のオーナーシップ」の体現者でした。未来は少しづつだけど生まれてきている…!

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