キロク学会 #00レポート!〜キロク芸に萌えるエクスタシーな一夜〜

▶︎ 読みもの,

面白かった!濃かった!エクスタシーだった!!

まさかこんなにも濃密な一夜になるとは…。
去る3/28、++イベント史上最多人数が参加した、キロク学会 #00 〜記録×アーカイブ×コミュニケーションの可能性をシェアしよう〜 の模様をレポートします!

『キロク芸』という新たな芸能。

イベント前半は、4人の『キロク芸人』によるキロクに関わるテクのプレゼンから。

 

トップバッターは、学会の発起人の一人、ロフトワーク広報の中田さん。「広報」という仕事を概念拡張する方法論と、その実践例である石垣島の「USIOプロジェクト」の解説をしてくれました。

 

↑ハイ、ここ芸!!!

アーカイブやコミュニケーションモデル作りって、基本目に見えない領域の仕事。
なのですが、中田さんのプレゼン資料作りは、そういう説明しづらい領域を上手くデザインしている。
概念を言語化してマトリックス化するまでは、有能なビジネスパーソンならできる。
のですが、それを「グッとくる」感じで表現できるのは芸人ならでは。

 

++の広報&アーキビストの小田原さんのプレゼン。様々なジャンルの仕事を記録&コンテンツ化していく方法論を説明しました。

会社の決算をカジュアルに公開しちゃったり、オフィスのリフォームの様子を連載化したり、カキに当ってもがき苦しんだ様を記事化する背景には、実は会社の活動履歴を同時に読み物化するという、元新聞記者のアーカイビストの発想があるんですね〜。

 

ちなみに++お得意の「付箋芸」。最近は、付箋の画像共有が会議の議事録になったりしています。具体的なタスク項目の他に「どど〜ん!」「あげあげ!」等の景気の良い煽りが入るのが特徴。

 

続いて、東京文化発信プロジェクトの熊谷さん。各地で行われるアートプロジェクトのアーカイブとメディア作りの仕掛人です。

 

これ、よくよく考えると大変な仕事です。写真のグリーンカーテン作りのプロセス自体が「アート」なわけじゃないですか。そういう無形の表現・プロジェクトをどのように記録していくのか?熊谷さんの答えは、かなり方法的なんですね。

プロジェクトに関わる普通の人たちに「こうやって写真撮って下さい」「1分でこのアングルで動画撮って下さい」と、フレームを細かく決めて記録素材を集めて、それをWEB上で可視化できるようにしていく。しかもその可視化を、人力編集ではなくてシステムによって可視化されるようにする。

つまり、アーカイブ→メディア化の流れを「標準知」にしようという発想です。
システムをパッケージ化することで、高度な専門家がいなくてもプロジェクトを記録できるぞと。
ん〜、今っぽいよね。

 

ラストは、book pick orchestraの川上さん。本という「情報のアーカイブ」を起点に、見知らぬ人の出会いや、街の歴史の掘り起こしを図るプロジェクトを手がけています。

 

写真は、「Sewing books」というプロジェクト。
見ず知らずの他人が、お互いのお気に入りの本の共通点を見つけ出すワークショップを繰り返します。本をツールとして「他人との距離を縮める」アクションを誘発するんですね。
川上さんのプロジェクトは常に本という「静的な情報アーカイブ」と、人の出会う「動的なコミュニケーション」を横断する視点で設計されている。この2つのせめぎ合いは、後半のトークセッションで「システムか人か?論争」で深まっていくことになりました(←おお、学会っぽいぜ)。

キロク学会のキロクも趣向を凝らしている件。

 

…で、後半は4人の芸人+客席のキロク愛好家によるトークセッションとなりました。
その様子ですが、今回のスペシャルゲストである「セッションレコーダー(ヒラクが勝手に命名)」の前田さん(写真上)が、独自に考案した「話譜(セッションを楽譜のように記録する)」により、スプレッドシート状に保存。

 

 

ダイオウイカか!と突っ込みたくなる長さ。

普通に記録するとこんな感じ。これを…

 

こういう風に並べる。そうすると…

 

斜めに話者が交替していくところが視覚化される。ここ、話が弾んでいるところね。

この「話譜」による記録によって、セッションの内容ではなく、データ分布によって「盛り上がっているポイント」が把握できるようになります。
これ、企画者や登壇者、お客さんが後からセッションを振り返るときに役に立ちそうですね。

前田さん、good job!
→前田さんのレポートはこちら
→前田さんによる記録学会 トークセッション。(エクセル形式)

キロクはエクスタシーだ!記録したいという人間の根源的本能が露呈したッ!

トークセッションの内容に関しては前田さんが克明にキロクしれくれたので、ヒラク視点のまとめをノートしておきます。

▶記録→コミュニケーションの流れの設計が肝。

何らかの出来事があった時に、まず写真や動画、テキスト等で「記録素材」を作ります。次に、それを楽しく共有できるように素材の素敵なアウトプットをデザインしていく。それによって「コミュニケーション」が発生する。
分解してみると、この全く違う技術を必要とされる2つのプロセスを一貫して設計できているかが「良いキロク芸」のキーになりそうです。
今起きている問題は、大学の資料室なんかで「素材はたくさんあるんだけど、誰も見ない」だったり、エンジニアやデザイナーの「見える化できるシステムは作ったけど、素材がない」だったりする。この2つをつないでいくのが重要。

▶「表現リテラシー」が変わって、「キロクリテラシー」も変わった

いま、これだけアーカイブやキュレーションのことが話題にされるかというと、原因は「表現リテラシー」が変わったからではないかと。
例えば、ブログが登場したことによって、マスメディアの専門家による表現ではないコンテンツが増えた(このブログもその一例)。で、それによって表現に関わるリテラシーが劇的に変わったわけです。色んな人が自由にアウトプットできるようになった。
そして次にわかってきたことが「アウトプットを体系化・アーカイブしていくリテラシー」が、専門家以外にも必要とされるのでは…ということ。
発信することが一般の人の手に渡ったように、記録してまとめることも一般の人の手に渡ったんですね。
で、キロク学会が必要とされるのは実は、専門領域外で必要とされるキロクリテラシーの向上と発展なわけです。

▶キロクは、人間の本能でありエクスタシーである。

ここ一番会場が沸いたところね。
突き詰めてみると、キロクすること自体が目的となるぐらい、キロクすることは楽しい。気持ちいい…
のではなかろうか。

大黒柱にナイフを入れて子どもの成長をキロクすることに始まり、結婚式で新郎新婦の想い出写真をつなげてスライドショーにしたり、会社の20年の歴史を社史に編纂したり…
そこには合理性を超えた、「人間が人間であるところの根源的な本能」があるのではないか。

人間は、キロクする葦である。
…と、過去の哲人が言ったとか言わないとか。

▶人にフォーカスするか、仕組みにフォーカスするか。

 

では次回の課題として、このトピックスを記しておきましょう。
熊谷氏と川上氏のあいだで議論となった「キロクの主体は誰か」という深淵な論争(これは在りし日のサルトルとレヴィ・ストロースによる実存主義VS構造主義のそれを思い起こさせるッ…!!)

熊谷氏は「誰もが使える仕組みとデータを使ってキロクされる未来」を示し、川上氏は「街場のおじいちゃんにフォーカスすることによってキロクされる未来」を指し示しました。
※すいません、ちょっと誇張してます。熊谷さん川上さんごめんよ。

今後、リアルでもネット空間でも「いかに出来事をキロクするか」、技術が必要となってきます。
その時に、集合知的な仕組みを活用するのか、それともあくまで個の人間の個性にフォーカスしていくのか…
興味ぶかい問題が提起されたところで、学会のキックオフ集会は終了。

次回は場所を渋谷・ロフトワークに移し、さらに情熱的に「キロク行為を愛でる」ムーブメントを作り出していきたいと思います。
目標は……、路上観察学会!

それでは次回を待て!!

 

記念写真。川上さんが写ってなかったので、卒業アルバム的にジョイン(笑)

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