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類型と元型【前編】


はい。
これ、知っている人も多いことでしょう。
詩人の谷川俊太郎さん作、日本生命の広告文です。
今回はこの広告文を枕に「類型と元型」というお話をさせてください。
この有名な文章ですが、読んで頂いてわかる通り保険商品のブランディングというか、PRの意図で書かれています。しかし、読後の感触としては、広告であることを超えた一種の感動がわき起こってくる。
それはなぜなのか。よく読んでみましょう。
まず第一に、ことばの選択。難しい語彙や説得のために複雑のロジックは使われておらず、あくまで平易なことばが選択的に使用されています。
第二に、保険の実用的な情報が限りなく排除されている。利率が何%だとか、死んだらいくら払われるとか、50年続いた信頼のブランドです、みたいなことが書かれれいない。
第三に、不思議な視点から書かれていること。企業目線ではなく、よく言われる消費者目線のようなものでもなく、「詩人の目線」から人間の切なさやちっぽけさが語られている。
この時、「詩人の目線」は「表現者の目線」とは違うものになっています。
「保険」というものを切り口に、人間の基底をなす感情の奥底まで入っていこうとする、ある種「シャーマン」のような目線です。
なぜ保険をかけるのか?それは、人は家族や親しい人への愛を恒久的に望む存在だから。
そこまで答えを掘り下げたときに、平易なことばはありきたりを超えて「元型」というものにリーチすることができる。

では本日の本題に入りましょう。
上の本は、谷川俊太郎さんと精神分析学者、河合隼雄さんの対談集「魂にメスはいらない」。谷川俊太郎さんが、河合さんへ「精神分析ってなんですか」と聴きに行く本なんですが、これ面白い本なんですよねえ。
河合隼雄さんは、日本の精神分析学のオリジネイターの一人で、ユングの研究者。箱庭療法を日本に普及させた人でもあります。
ヒラクは昔から河合さんの本が大好きなのですが、何がすごいのかというと「日本的な精神のモデル」に対しての洞察が鋭いんですね。原則「父系」から無意識を見るフロイトの考えかたに対し、ユングのアイデアを「母系」の視点で編集しなおして、日本人の主体性のなさや自我のあいまいさを肯定したうえで、無意識の働きを捉えようとする。
…で。
この対談本には様々なトピックが出てくるんですけど、全編にわたって感じるのは、「河合さんは(谷川さんも)根気強い」ということなんですね。どんな患者がきてどんな話をしても「ふーん、そうなのね」と聞く。患者をすぐに理解しようとしない、というかそもそも病気を直そうと焦らない。精神分析学者の上位ステージは「簡単に精神病なんて治せませんよ」と開き直ることだと言い切る程で、じゃあいったい河合さんは何をやっているんだって話ですよね。
ここからはあくまでヒラクの私見ですけど、河合さんがやっていることって、冒頭の谷川さんの文章のようなことばを患者さんから引き出そうと、ひたすら網を張って待っていることなんですよ。
その人の深層にリーチすることばを、ひたすら待つ。
口にした瞬間に、患者の人生が統合され、新たな意味を付与するような決定的なことばが自ら出てくるようにひたすら話を聴き続ける。自分で治すのでなく、患者自ら治る瞬間まで根気よく付き合う。
これって、口にすると簡単ですけど実際はしんどい作業だと思うんですね。
だって、わけわからん妄想とか強迫観念の話を延々聞き続け、それでもあきらめず「きっとこいつは良い事言うはずだ」って待ってるわけじゃないですか。
でね。
この根気強さって、デザイナーにとっても非常に参考になる要素だと思うんですよね…
というところまで書いたところで結構な長文になっているので、続きはまた次回。

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